2017年5月25日木曜日

【回転窓】書写山と落書き

兵庫県姫路市の書写山円教寺を訪れた。天台宗三大道場の一つ。岩山の中腹に設けられた舞台造りの摩尼(まに)殿や、国内最大規模の仏堂である食堂(じきどう)などが森の中に連なる。「西の延暦寺」との評も納得がいく見応えだった▼宝物殿に弁慶が学んだという勉強机がある。鬼若と名乗っていた若い頃に同寺で修行に励んだという。だが、寝ている時に顔に落書きをされて激怒。いたずらをした兄弟子と大げんかになり、そのいさかい時に火が講堂などに燃え移ってしまう▼その再建に向け、資金を集めようと太刀を奪い歩く中で牛若丸と出会う。伝説も含まれようが、歴史の一幕を想像しながら見入った。もう一つ興味深かったのが、戦国時代に柱に彫り込まれた落書き。羽柴(豊臣)秀吉に占領された時代のものという▼険しい地形で守りに有利な上、兵士が寝泊まりできる施設も豊富。秀吉は、播磨地方を支配下に収めようと争う中で本陣に選んだ。僧侶は追い出され、多くの仏像や寺宝が略奪されたと伝えられる▼争いの時代に文化より時の権力者の思惑が優先されるのは歴史の常。そうしたことが繰り返されないよう願うばかり。

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