2017年5月30日火曜日

【記者手帖】安全大会の時期に思うこと

テーブルの下に忍ばせたスマートフォンで、ゲームアプリに興じる男性。熱心に操作しており、前方で登壇している人物の話は聞こえない様子◆高校や大学の教室ではない。建設会社の安全大会の最中に実際に目にした光景だ。最後列に設けられることが多い記者席から、参加者の様子がよく見える。毎年取材をしていると、会場に居ながらも大会に「参加」していない人物を見掛けることは珍しくない◆厚生労働省の発表によると、昨年の建設業の労働災害による死亡者は294人と前年より1割減ったが、産業別では最も多い。安全大会の季節になると、改めて災害の多い業界だと気付かされる。「安全大会では自分が遭遇した死亡災害について話す」という支店長を取材した。「事故の様子を生々しく話していると、それまで聞いていなかった参加者がはっとして顔を上げる」という◆発表される労災統計は無味乾燥な数字でも、被災者はすべて生身の人間。その誰もが誰かにとって大切な人だったに違いない。毎年の行事をマンネリ化させない秘けつは、そこに訴えかけることにある気がした。(ゆ)

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