2017年7月31日月曜日

【建設業の心温まる物語】ニッカホーム福岡・岡本勝宣さん(福岡県)

 ◇しっかり確実に掘れているから頑張れ◇

 私の実家は祖父の代から続く水道工事業です。そんな家に産まれ育った私は幼い頃から「大きくなったら一緒に水道屋の仕事をするんだぞ」という父の魔法の言葉により、大きくなったら父親と一緒に仕事をするものだと思い込んでいました。そして月日は流れ見事に兄も私も水道屋になりました。

 学校を卒業してから現場ではスコップしか持たせてもらえず、約1年間は毎日毎日穴掘りの日々。父からは「水道屋は穴掘りが基本だ! あとから配管する人のことを考えながら掘ればいい堀山になる」と言われる毎日でした。それがすごく大変で嫌でした。

 早く配管工事や器具の取付けをしたいと思い、モンキーレンチやパイプレンチを勝手に触ると、父から怒られました。「職人は目で見て盗め」が父の口癖で、特別何かを教わった記憶がありません。

 そんなある日、現場で父と2人で浄化槽を設置しました。その現場の立地では重機が入ることができないため、掘削は手掘りでした。深さ2メートル以上掘らないといけないので、先の見えない作業に心が折れかけていました。

 その時、父が「スコップ1杯でもしっかり確実に掘れているから頑張れ!」と言ってくれたのです。その一言がすごく嬉しく、やる気になって無事掘り終えたときのことを鮮明に覚えています。そしてその時、思いました。「やはり水道屋は穴掘りが基本なんだ」と。穴掘りばかりの日々は決して無駄ではありませんでした。今、職人としての自分があるのは父の背中を見て学んだおかげです。そんな父は80歳を超えましたが、まだ現役で穴を掘っています。

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