2017年8月30日水曜日

【海外ボランティア事業の運営方針は】JICA・山本美香青年海外協力隊事務局長に聞く

 ◇制度発足から半世紀、多様なニーズに柔軟対応◇



 国際協力機構(JICA)が展開する海外ボランティア事業の推進役を担う青年海外協力隊事務局。15代目の事務局長に今春就任した山本美香氏は、途上国支援にとどまらず、国内産業界の人材育成に役立つボランティア事業の意義を強調する。国内外の社会・経済環境が大きく変化する中、「従来の制度や事業の進め方などを柔軟に見直し、より多くの参加者が活躍できる体制整備に力を入れたい」と意気込みを語る。

 --初の女性事務局長として、ボランティア事業をどう運営する。

 「女性ならではの視点というものもあるかもしれないが、今や協力隊員の半分以上を女性が占める。赴任先でも女性が多方面で活躍している。女性だからと意識せず、自然体で業務に当たる。開発途上国の社会・経済発展への貢献、相互理解の深化、帰国後の社会還元といった当初からの事業目的は変わらない。ボランティア事業への『持続する情熱』を大切にしながら、国内外のニーズに柔軟に対応していきたい」

 「世界も日本もさまざまな分野で変化が進む中、ボランティア事業には変わらぬ情熱に加え、柔軟性が一段と求められている。海外では治安問題が深刻化しており、安全対策が最優先事項に挙がる。派遣できる国も治安悪化で制約を受ける。途上国も開発が進んで中進国になるなど、新たな要望・要請が出てきており、ボランティア事業へのニーズも多様化している」

 --人口減少が続く国内では人手不足が深刻化している。ボランティア事業への影響は。

 「予算の範囲内で派遣者数が決まるため、ここ数年は年間1800人程度の隊員を継続的に派遣している。東日本大震災直後は応募者数が大幅に落ち込んだが、その後は少しずつだが増加傾向にある。大きな災害を経験し、ボランティアに対する意識は国民全体で高まっている。より効果的な広報活動に知恵を絞り、途上国支援の機運を醸成していく」

 「国内では生産年齢人口が減少傾向にあり、働き方の価値観も変わってきている。企業側のボランティア事業への理解を深め、関心を高めることも大きな課題だ。従来のボランティア事業のプログラムを企業側のニーズを踏まえてカスタマイズできる『民間連携ボランティア制度』は、まだまだ活用の余地が大きい。企業側が人材を出しやすい形を模索しながら、派遣した社員が途上国での活動を通じて得た経験・情報や人的ネットワークといった価値をアピールしたい」

 □業界団体へのPR活動強化□

 --民間連携ボランティア制度の活用状況は。

 「ボランティア事業全体では依然として一般応募が大半を占めるが、民間連携制度を取り入れた企業からは高い評価を得ている。海外人材の育成には時間とコストがかかり、特に中小企業では対応が難しい。JICAは中小企業の海外展開支援事業も行っており、民間連携ボランティアによる人材育成と併用することで、企業の海外進出をきめ細かくバックアップできる。企業のニーズを踏まえ、いろんな形で複合的に使ってもらえるプログラム、制度に継続的に改善していく」

 --シニア海外ボランティアの派遣状況は。

 「青年海外協力隊員に比べて経験値が高く、工学分野などで長年培った技能や知識を生かし、参加する人たちが目立つ。途上国では都市計画がないまま開発が進み、測量や都市計画などの技術者のニーズが高まっている。その一方、国内の建設・インフラ関連の需要増でシニアボランティアの参加者は伸び悩んでいる。中長期的には国内需要が落ち着き、高齢化も進むことから、新たな活躍の場として海外にも目を向けてもらえるようにPR活動を強化する。業界団体を訪問して制度の説明や活動事例の紹介などに重点的に取り組む」

 --今後の途上国支援のあり方をどう考える。

 「円借款で地下鉄や橋などインフラを造ることも重要な協力の形であり、現地でも非常に喜ばれる。ボランティア事業のように現地のコミュニティーに入り、活動することで生まれる信頼関係や絆は、現地の人たちの記憶に直接的に残る。インフラ整備と草の根レベルでの支援活動の両面から日本を見てもらうことが、真の国際協力につながる。ボランティアに参加する人たちにとっては、必ず自身の成長につながることを約束できる。帰国後はその経験を国内外でさらに生かし、将来の日本を元気にする人材になってほしい」。

1 件のコメント :

  1. 沢山給与貰えて、沢山退職金貰えるから羨ましいですよ

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