2017年9月29日金曜日

【久しぶりに帰ってきた、ちょっとひと息】電車の遅延、あなたなら何分待てる?

マーケティング支援事業を展開するディーアンドエム(東京都新宿区、杉村昌宏社長)は、20歳以上の男女1万人を対象に「電車遅延」に関する調査を実施した。

 「電車が遅延した時どのような行動をとるか」という質問への回答は「すぐに来る電車に無理矢理でも乗り込む」が36・5%でトップ。続いて「数本見送ってから少しでも空いている電車に乗る」(28・5%)、「遅延していない別の路線を探して使う」(19・2%)の順だった。

 人身事故や車両故障で運休している時は一体どうするか-。この質問で最も回答が多かったのは「違う路線を利用しすぐ目的地に向かう」で31・3%。僅差の28・9%で「運転再開時間を聞いてどう行動するか決める」が続いた。

 待てど暮らせど到着しない電車にイライラ、駅間で止まってしまいギュウギュウ詰めの車内に閉じこめられてしまった…。こうした経験がある人はきっと多いはず。では電車の到着遅れや運転再開は何分までなら待てるか。「電車が止まってから何分くらい経ったらいら立つか」という質問に対して、最も回答が多かったのは「~30分」の23・2%。続いて「~20分」が21・3%、「~10分」が20・2%だった。

 回答の中で興味を引くのは8・7%が「特にいら立ちは覚えない」と答えたこと。怒ってもいら立っても電車は急に動かないと、広い心で待ち続けられる人が増えれば、駅員に詰め寄ったり、乗客同士でケンカになったりといったいら立ちトラブルは減るのかもしれない。

 調査結果は同社が運営するインターネットサイト「勝手にランキング」で詳しく紹介している。

【回転窓】内側から見た記者クラブ

手元の辞書で「記者クラブ」を引いてみると、〈国会・官庁などで取材活動する各社の記者が親睦のため、また共同会見などの取材に便利なように組織した団体〉とある。明治期に始まったというそれは、日本独特の組織とされる▼記者クラブに対しては、取材の便宜を特権的に受けているのではないかと、非加盟の海外メディアやフリーランスの記者から批判が出ることが少なくない。確かに関係者以外の入室が制限されるなどの閉鎖的空間は、外部の人には排他的と映ってしまうことも否定できない▼国土交通省を中心に取材する記者が加盟する記者クラブに建設省時代から断続的に10年ほど在籍し、本紙読者の関心が高い国土交通政策を同僚記者と共に取材してきた。最近の働き方改革を巡る記事の多くも記者クラブで書かれている▼所属記者は、取材先との信頼関係を築く努力を重ね、他紙よりも良い記事をより速くと競争している。決して特権的に取材の便宜を受けるだけの組織ではないことを読者の皆さんにも知っていただきたい▼記者クラブを去るに当たり、あえて舞台裏を書いた次第。後に続く記者のためにも。
 記者クラブを辞書で調べてみると、「国会・官庁などで取材活動する各社の記者が親睦のため、また共同会見などの取材に便利なように組織した団体」とある。明治期に始まったというそれは、日本独特の組織とされる▼この記者クラブに対し、取材の便宜を特権的に受けているのではないかと、海外メディアやフリーランスの方々から批判されることも少なくない。確かに関係者以外の入室が制限される閉鎖的な空間であり、外から見れば排他的と見えるだろうことも否定できない▼私事で恐縮だが、本紙読者にとって関心事の一つであろう、国土交通省を中心に取材する記者クラブに何人かの同僚記者と共に在籍している。建設省時代から断続的に合計10年ほどを過ごしてきただろうか▼時々の業界に関連深い事項を取材してきた。今の「働き方改革」を巡る記事の多くも記者クラブで書かれている。所属記者は取材過程で信頼関係を積み上げるなどの努力を重ねている。決して、特権的に取材の便宜を受けるだけの組織でないことを、長く在籍した記者クラブを去るにあたり、読者の皆様にも知っていただきたい。後に続く記者のためにも。

【大型補正に期待高まる】選挙戦スタート、建設業界の課題への対応問う

 衆院は28日召集の臨時国会冒頭で解散された。政府は直後の臨時閣議で総選挙の日程を10月10日公示、同22日投開票と決定。選挙戦が事実上スタートした。建設業界にとっては、大都市と地方の間の事業量や景況感の格差が顕在化する中での政権選択選挙。公共事業予算の安定的な確保に向けて大型補正予算の早期編成を求める声も強まっており、注目度の高い選挙戦となりそうだ。

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【想定規模は延べ8800㎡】第1・2体育館建替(福岡県飯塚市)、11月中に候補地決定へ

福岡県飯塚市は、老朽化した飯塚第1体育館(枝国)とこれに隣接する第2体育館(横田)の建て替えに向け、11月中をめどに建設候補地を絞り込む。

 候補地として市有地5カ所の比較検討を進めており、候補地が固まればそれに沿って本年度末までに基本計画を策定する見通し。18年度当初予算案での関連事業費の計上も視野に入れている。

 体育館の施設整備については5月に有識者らの体育館等施設整備検討委員会が建て替えが望ましいとする答申書を市に提出。これを受け市では建設候補地ごとの事業費やメリット・デメリットの比較検討を進めている。

 18年度当初予算案に設計などの関連事業費を計上することも視野に入れているもようで、予算要求をにらみ11月中には候補地を1カ所に決定したい考え。候補地によっては県や関係機関との協議・調整が必要になるため、候補地決定後に引き続き事業スケジュールなどを盛り込んだ基本計画を本年度末までに庁内で策定する。

 検討委員会の答申書によると新体育館のメインアリーナは現在の第1体育館アリーナと同程度の規模のバスケットボールコート3面、バレーボールコート3面、サブアリーナはバスケットボールコート公式1面、バレーボールコート公式1面の規模を確保。

 武道場は併設が望ましいが、できない場合はサブアリーナを柔道や剣道などの武道でも使用できる多目的アリーナとする。弓道場も併設・集約する。観客席は可動席を検討し、トレーニングルームや防災倉庫なども設ける。

 市がこれまで議会の特別委員会に提示した資料では新体育館の規模を延べ8800平方メートルと想定し、候補地のうち健康の森公園周辺(吉北)、市民公園広場周辺(鯰田)、地方卸売市場(菰田)の3カ所では約41億3000万円と概算事業費を試算。庄内温泉筑豊ハイツ周辺(仁保)と穂波B&G海洋センター周辺(平恒)の2カ所は配置計画が不確定のため事業費は算出していない。

 事業スケジュールとしては健康の森公園周辺または市民公園広場周辺に建設する場合は18年度に設計プロポーザルを行い基本・実施設計を委託し21年度の着工、22年度の完成を想定。これら以外の候補地では23年度の着工、24年度の完成を想定している。

【代々木競技場耐震改修は不落に】選手村整備、国産材無料提供に43件名乗り

東京・晴海にある選手村建設地(ⓒ tokyo2020)
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、2020年東京五輪の選手村関連施設「ビレッジプラザ」(中央区晴海4)の整備で用いる国産木材の無償提供者の公募に、43件(64自治体)の申し込みがあったと明らかにした。ビレッジプラザの整備に必要な数量をおおむね確保できる応募数としている。10月中旬に協力自治体を決定・公表する。

 ビレッジプラザは、五輪の出場選手と関係者(メディア、VIPなど)が出入り可能な木造主体の仮設施設とする計画。18年に実施設計、19年に本体工事を進め、五輪までに完成させる。使用した木材は五輪後に協力自治体に返却し、大会のレガシー(遺産)として残していく。
 日本スポーツ振興センター(JSC)は、6日に一般競争入札(WTO対象)を開札した「国立代々木競技場耐震改修工事」が不落になったことを明らかにした。

 応札者すべての入札金額が予定価格を上回ったため。2020年東京五輪の競技会場として使用することから、12月中の契約締結を目指し再公告の手続きに入る。

 代々木競技場(東京都渋谷区神南2の1の1)の第1体育館と付属棟、第2体育館を耐震改修する。工期は19年7月31日を予定していた。

【最優秀は木村友美さんに】東理大理工学部創設50周年記念デザインコンペ、公開審査開く

最優秀作に選ばれた「夢の架橋」のイメージ
東京理科大学理工学部の創設50周年記念デザインコンペ「利根運河〈夢の架橋〉」(日刊建設工業新聞社ら後援)の公開審査会が23日、千葉県野田市の同大野田キャンパスで開かれ、最優秀賞に木村友美さん(東京芸術大学大学院美術研究科建築専攻修士課程2年)が選ばれた。表彰式は10月29日に同キャンパスで行われる。

 同キャンパスの脇を流れ、長年にわたり地元住民に親しまれてきた自然豊かな利根運河に架ける新しい橋(歩行者専用)のデザインを求めた。公開審査会では1次審査を通過した11点の提案者が自作の内容を発表。千葉県流山市の井崎義浩市長、鈴木和男土木部長、同大の藤嶋昭学長、岩岡竜夫理工学部建築学科主任教授、木村吉郎理工学部土木工学科主任教授、鈴木啓氏(構造家、ASA主宰)の6人が審査員を務めた。

 最優秀賞に輝いた木村さんは、美しい運河の風景にできるだけ何もしない「架け方」をコンセプトに、「可能な限り薄い橋をすっと架ける」ことを提案。土手沿いの景観を守りながら、記念橋としての美しさを与えるため、あえて水の中に柱を落とすデザインとし、新しい回遊性も生み出すなどのアイデアを盛り込んだ。

 最優秀案は、流山市の担当部局での基本計画案の一つとされ、将来事業化された際には提案者がデザイン監修者として意見を述べることができる。

 同大理工学部建築学科の卒業生でもある木村さんは「こうしたチャンスをつくっていただいたこと、つかめたことに感謝しています。ぜひ実現してほしいと思います」と受賞の喜びを語った。

2017年9月28日木曜日

【回転窓】挑戦するリーダーを

「若い人がリスクを負ってチャレンジすべきだ」。地方に移住して街づくり事業を手掛けている30代の経営者がそう話していた。地域の食材を使う飲食店が開業。交流の場となる子育て施設なども建設している▼街づくりコンサルタントの知人は、故郷の離島で古い住宅のリノベーションを展開中。自身は故郷を離れたが、移住してくる若者もいる。「新しく来た人に生かしてもらえる場を作りたい」と東京と故郷を往復する▼印象に残ったのは「地元にいる人の方が地域を諦めている傾向がある」との言葉。地域では口にできないし、誰もそうとは言っていない。だが、そうしたムードを感じずにはいられないそうだ。「今リスクを取らないと、将来もっと大きなリスクになるのに」とも▼どこに懸念があり、どこまで踏み込んでいくべきか。将来世代のためになる行動か。そうした自問自答をしながら前へ向かって挑戦している▼少子高齢化や激動する世界情勢などを考えると、今必要なのは、本当の意味で未来を見据えた挑戦だろう。きょう、衆院が解散される。どのようなリーダーを選ぶべきか。しっかりと見定めたい。

【関西3空港を一体運営】神戸空港コンセッション、神戸市と関西APが契約締結

 オリックスと仏ヴァンシ・エアポート、関西エアポートが共同で設立した関西エアポート神戸と神戸市は26日、「神戸空港特定運営事業等公共施設等運営権実施契約」を締結した。

 市役所で開かれた会見には久元喜造神戸市長、小島一雄オリックス取締役兼代表執行役副社長グループCFOらが出席。関西国際空港・大阪国際空港・神戸空港の一体運営により関西地域全体の経済発展に貢献していく考えを強調した。

 実施契約の事業期間は18年4月~60年3月末を予定(合意延長の場合は70年3月まで)。市が空港用地と施設の所有を継続し、関西エアポート神戸が航空管制業務を除く空港の運営・維持管理などの業務を行う。

、久元市長は「実質的な関西3空港の一体運営が実現し、神戸と関西経済の発展に貢献することができる。来年4月から豊富な空港運営経験をもつ関西エアポート神戸による空港の魅力向上や活性化、安全対策に大いに期待している」と話した。

関西エアポート神戸の山谷社長は「3空港が個別に発展するのではなく、関西地域の一つの空港システムとして一体で発展していくことが重要だ」と強調。その上で「安全安心な空港を運営していくためにスムーズな引き継ぎが必要となる。それぞれの空港に歴史や苦労があり、われわれが努力を受け継いで成長につなげていきたい」と述べた。

【概算総事業費は374億円】世田谷区本庁舎建替基本設計、佐藤総合計画に

佐藤総合計画の提案イメージ
東京・世田谷区は27日、「世田谷区本庁舎等整備基本設計業務」の委託先を決める公募型プロポーザルで、最優秀者に佐藤総合計画を選定した。10月下旬に契約を結び、本庁舎の現在地建て替えに向けた基本設計に着手する。20年度に解体・建築工事を開始し、25年度の完成を目指す。佐藤総合計画が提案で試算した総事業費は約374億円(区の試算は約410億円)。

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【幕張にサッカー日本代表新拠点】ナショナルフットボールセンター整備(千葉市美浜区)、戸田建設JVに

日本サッカー協会(JFA)は、千葉市美浜区の県立幕張海浜公園内に設置する「(仮称)JFAナショナルフットボールセンター」の設計・施工者を戸田建設・三菱地所設計JVに決めた。

 設計を三菱地所設計と戸田建設、施工を戸田建設が担当する。公募型技術提案総合評価見積もり方式で選定した。

 年内にも基本設計を終え、18年からの実施設計、施工、20年の竣工、供用開始を目指す。クラブハウス、天然芝ピッチ1面+1・2面、フットサルアリーナ、芝・外構管理棟の建設と外構整備を行う。人工芝ピッチはJFAから別途発注し、並行して整備する。
ナショナルフットボールセンターの建設地

2017年9月27日水曜日

【回転窓】危険な生物ランキング

人間にとって、地球上で最も危険な生物は「蚊」だそうである。途上国を中心にマラリアやデング熱など命に関わる感染症を媒介するためで、蚊に刺されて死ぬ人の数は年間100万人近くに上るとの推計も。恐るべし▼グローバル化で海外との人や物の行き来が活発化する中、近年は日本でも蚊のほかにも、ヒアリ、セアカゴケグモなど小さな強敵への関心が高まっている。「蚊に刺されたぐらい」とばかにしてはいけない▼一方、日本で最も危険な生物は、スズメバチを中心とするハチ。国内でハチに刺されて死ぬ人の数は毎年20人ほどに上り、人が襲われてよくニュースになるクマなどに比べても圧倒的に多い▼都市環境にも適応したスズメバチなどは身近で最も恐ろしい強敵といえるだろう。秋は野山に遊ぶ機会も多いが、ハチの活動が活発になる季節でもある。屋外作業の建設現場も工事場所によっては十分な注意が必要だ▼ところで、世界で蚊に次いで危険な生物は何か。それは「ヒト」。紛争やテロなどで毎年50万人近くが殺される。毒ヘビやサメ、サソリなどをも大きく引き離して堂々の2位。何をか言わんや。

【★星二つ★は29機種】日本トイレ研究所、現場の「快適トイレ」57機種認定

日本トイレ研究所(加藤篤代表理事)は、建設現場に設置する仮設トイレで、男女ともに快適に使用できる「快適トイレ」として57機種(13社)を認定した。

 国土交通省が定める快適トイレの標準仕様に適合した仮設トイレに認定マークを付与。現場導入に当たり、快適トイレの仕様を満足しているかどうかを確認する指標として認定マークを参考にしてもらう。

 国交省は快適トイレに求める機能として、標準仕様6項目、備える付属品5項目、推奨する仕様・付属品6項目を昨年8月に設定。費用の積算基準も整え、10月から直轄土木工事の現場に原則導入した。

 日本トイレ研究所は、国交省が定める標準仕様に適合した仮設トイレに認定マークを発行。標準仕様と備える付属品を満たすと「★」、さらに推奨する仕様・付属品まで適合すると「★★」を付与する。

 25日付で同研究所のホームページに快適トイレ認定リストを公開。★に28機種、★★に29機種の計57機種を掲載している。今後も受け付けや認定、公開を随時行う。

【都内工事で労災急増】東京労働局が緊急対策、一斉立ち入り前倒し実施

2020年東京五輪関連の施設工事が本格化する中、東京労働局は労働災害防止の緊急対策に乗りだした。死亡災害、休業4日以上の死傷災害とも昨年に比べ急増している状況を踏まえ、22日に業界関係者800人以上を集め、都内で事故防止の決起大会を開催。例年は年末に実施している一斉立ち入り調査の前倒しも決めた。都内の建設現場では22日時点で20人が死亡し、死傷災害の発生件数も8月末時点で700件に迫っている。

 一斉立ち入り調査は東京労働局管内の各労働基準監督署が、大規模工事(請負額50億円以上)を除く約300カ所の現場を対象に実施する。▽職長を対象にした能力向上の再教育が適正に行われているか▽リスクアセスメントのリスクレベル再評価が定期的に実施されているか▽労災発生時の原因分析結果や再発防止策が現場関係者に周知されているか-の3項目をポイントに、10月初旬までに各現場の取り組みを詳しく調べる。

 東京労働局が7~8月、都内に支店などを置く建設会社100社を対象に実施した「労災防止活動の取り組み状況」調査によると、熱中症対策やハーネス型安全帯の普及、高所作業の低減といった取り組みは進ちょくしている。その一方で新規就就業者に対する教育や安全衛生に必要な経費の積算、職長などに対する再教育は改善の余地があった。

 安全衛生教育の取り組みを見ると、労災発生割合が低い上位20社はすべての会社が現場所長に対する教育を実施し、職長らに対する定期的な再教育も65%が行っていた。一方、労災発生割合が高い下位20社は10%が現場所長に対する教育を実施しておらず、職長らに対する定期的な再教育も実施率が40%にとどまっていた。労災発生時の分析結果や再発防止策の周知も、上位20社と下位20社で実施率に開きがあった。

 東京労働局は工事が繁忙期に入る年末、年度末に向けて注意喚起と安全対策の実施に一層力を入れる方針。決起大会を共催した建設業労働災害防止協会(建災防)東京支部など、関係団体と連携しながら建設現場での労災防止を徹底する考えだ。

【JICA海外ボランティア事情】〝育てる〟㊤・海外で活躍する人材の成長後押し

タイで現地工員を指導する岡本さん㊧
社会・経済のグローバル化の進展により、海外で活躍できる人材の育成が、建設分野を含め産業全体にとって重要課題の一つになっている。こうした産業界のニーズを踏まえ、国際協力機構(JICA)は、途上国を中心に展開するボランティア事業を企業の人材育成や海外進出などの経営課題と結び付ける活動に力を入れている。途上国開発を支援しながら日本企業の人材力も高める同事業の可能性を探った。

 ◇途上国支援で活躍、企業ニーズへの対応に課題も◇

 JICAが派遣するボランティアには青年海外協力隊(対象年齢20~39歳)、シニア海外ボランティア(40~69歳)のほか、中南米の日系社会を支援対象とする青年・シニアの両ボランティアの計4種類がある。1965年の協力隊発足から半世紀が過ぎ、ボランティア全体の派遣実績は累計5万人を超える。

 参加者の門戸を広げるため、企業・団体や自治体などの職員が所属先に身分を残したままボランティア事業に参加できる現職参加制度では、人件費の補てんなど所属先の理解を得るための支援策を講じている。12年に創設した民間連携ボランティア制度では、各社のニーズに合わせて派遣国・地域、職種、派遣期間(原則1~2年)などを調整できる仕組みも設けた。

 プラスチック成形や金型製造などのプロニクス(京都府宇治市)は、中国、ベトナムに続いてタイに進出する際、民間連携ボランティア制度を初めて活用。若手技術者の岡本和大さんが協力隊員としてタイの技術高等専門学校に派遣された。14年10月からの1年間、同社に籍を置いたままタイの学生たちに工作機械やCADによる設計指導などに当たり、任期を終えて15年11月にタイ現地法人の工場長に着任した。

 それまで工員たちの定着率が低かったタイ工場での指導・管理で、岡本さんは「良いところを見つけて褒めて伸ばす」を心掛けたという。プライドの高いタイの人たちに対し、上から押さえ付ける指導は逆効果と分析。ボランティア活動を通して知ったタイの文化、国民性などを踏まえ、工員たちとのコミュニケーションを積極的に取ったことが奏功したのか、定着率が改善し、勤続1年以上の工員も増えつつあるという。

 今年は初の社員旅行を企画するなど、工員たちとの信頼関係をさらに深めようと模索する。工場の安定操業と事業拡大に向けて工員の募集活動にも注力。赴任していた高専のインターンシップ(就業体験)で自社を紹介するなど、ボランティアで築いたネットワークも積極活用している。
タイの高専で教壇に立つ新木さん㊧
高専側がボランティアの継続派遣を要請し、JICAの依頼もあったことから、プロニクスの岡本さんの後輩で女性技術者の新木千尋さんが16年1月から教壇に立っている。それまで人前で話したり指導したりするのが苦手だった新木さんは、ボランティア活動を通して積極的な性格に変わったという。外国人との接し方を学び、自分一人で抱え込まずに相手に頼り、力を借りることもできるようになったと振り返る。

 18年1月で任期が満了する新木さんはタイ現法に配属される見通し。事業拡大に向けた新戦力として期待がかかる。

 民間連携制度を活用し、2人続けてタイでの事業を担う若手の育成に取り組んだプロニクスだが、3人目のボランティアは出さない方向だという。異国での経験は成長の大きな糧になる一方で、企業がボランティアに社員を出し続けるには限界もある。特に中小企業は大手に比べて経営基盤がぜい弱でボランティアに人を回す余力に乏しい。

 海外での事業戦略や人材の育成方針など、多様な企業ニーズにどこまで適応した制度とするか。営利を追求する企業の行動原則などを踏まえ、ボランティア制度自体の枠組みを見直す必要もありそうだ。(つづく)

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/建設現場、青年層の雇用が減少

 韓国建設産業研究院によれば、建設現場の最前線で仕事をする建設技能労働力の中で20~30歳代の比率は24.2%にとどまっている。

 20歳代が10.5%、30歳代が13.7%の水準に過ぎない。韓国雇用情報院が発表した建設業の青年層雇用比率を見ても、昨年末時点で3.0%に過ぎず、製造業の19.6%にはるかに達しない水準だ。

 2012~16年の5年間で、製造業の青年層雇用比率は0.3ポイント増えたが、建設業は0.9ポイント減少した。他方、建設技能労働力全体に外国人技能労働力が占める比率は、09年の5%から13年には7.4%に増えた。

 韓国建設産業研究院のチェ・ウンジョン副研究委員は「建設現場への青年層の流入が低調な最大の理由は、職業経路(キャリアパス)が不透明で、職業としてのビジョンを提示することができないためだ」と指摘。さらに「今は技能労働者の熟練度を評価するための体系がない」とし、「段階的に建設技能労働者等級制に熟練度を反映させ、建設現場に優秀な人材を引き込まなければならない」と語った。

CNEWS 9月21日)

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/越日大学に2期生96人が入学

 ベトナム・日本の両政府が協力してハノイ市に設立した越日大学が9月9日に入学式を開き、第2期生となる96人の新入生を迎えた。

 来賓として出席した梅田邦夫駐越日本大使は、「勉学に励み、ベトナムの発展と両国の友好関係の強化に貢献できる人材に育ってほしい」と祝辞を述べた。

 先に発足した大学の理事会役員が紹介された後、2015~16年度の優秀学生と入学試験で優秀な成績を収めた新入生への表彰が行われた。

セイ・ズン 9月20日)

2017年9月26日火曜日

【不動産の災害リスクを視覚化】アジア航測、リブセンスと情報提供ツール開発

IESHIL CONNECT(β版)の画面イメージ
 アジア航測はインターネットメディア事業を展開するリブセンスと、不動産物件の災害リスクを可視化する営業ツール「IESHIL CONNECT(イエシルコネクト、β版)」を共同開発した。

 リブセンスが扱う不動産の物件情報に地震や洪水、液状化といった災害リスクの情報を付加し、営業マンの提案活動をサポートする。アジア航測は保有する防災・空間情報技術・データを提供。リブセンスは自社運用する不動産のリアルタイム査定システムに災害リスクの情報を乗せて活用する。リスクを含めた不動産の物件情報を可視化することにより、不動産流通市場の透明性向上、サービス水準の引き上げを目指す。

 イエシルコネクトは、タブレット端末を使った営業活動で特定の不動産物件を指定すると、位置図や査定価格と一緒に地震や洪水、液状化、津波、土砂災害といった自然災害に対するレポート、評価がその場で引き出せる。消費者と営業マンのコミュニケーションを円滑化し、スムーズで丁寧な説明が可能になる。
地理空間情報と不動産情報の融合によって不動産市場の活性化を狙う
 リブセンスが保有する27万棟に達する不動産物件データと、アジア航測が持つ80億件の災害発生データを活用し、査定価格と総合的なリスク評価が素早く可視化できる。災害発生データは全国をカバーしており、地域に関係なくツールは利用可能だ。

 β版は災害リスク情報の提供を先行したモデル。今後、不動産情報に厚みを持たせ使い勝手の良さを高める。両社はIT(情報技術)を活用した不動産ビジネスサポート事業で連携を深め、サービス向上につながる情報ツールを開発・実用化する。アジア航測はG(地理)空間情報技術の用途を広げることで、業容拡大を図っていく。

【回転窓】600億円にふさわしい1票を

 永田町にまたしても解散風が吹き荒れた。衆院議員の任期は4年だが、任期満了によって総選挙が行われたのは戦後、1976年の1度しかないという。任期を1年以上残したこの時期に伝家の宝刀を抜き、解散に踏み切る安倍首相の決断は果たしてどのような結果をもたらすだろう▼前回2014年の総選挙では、600億円余りの経費が税金から支出されたという。投票用紙や選挙ポスターの制作費、選挙管理委員会の事務費などが主な内訳だ▼公職選挙法が改正され、国政選挙で政党がマニフェスト(選挙公約)を配布するようになったのは、03年の衆院選から。以後、選挙のたびに作られているが、肝心の公約の中身がどれほど実現したかといえば、評価ははなはだ怪しいと言わざるを得ない▼少子高齢化を背景にした人材の確保・育成と働き方改革、景気浮揚への対応、緊迫する国際情勢への対処…。直面する課題は枚挙にいとまがない。選挙になれば耳に心地よい言葉があちこちから聞こえてくるのが常だ▼多額の費用をかけて選挙が行われるのなら、各党や立候補者の考えをしっかり比較検討して1票を投じたい。

【〝勤務時間〟、世代間で考え方に差】建築技術者の転職、若手ほど「長時間労働」理由に

人材紹介や技術者の派遣事業などを手掛けるヒューマンタッチ(東京都新宿区、高本和幸社長)は25日、建設業界の人材市場に関するデータを公表した。

 転職希望者などを対象に実施した転職意識に関するアンケートによると、若手の技術者ほど「労働時間が長い」を理由に、転職を考えていることが分かった。

 アンケートは転職を希望し、同社に登録している建築技術者(316人)を「34歳以下」「35~44歳」「45~54歳」「55歳以上」の四つの年齢層に分類し、転職したい理由を調査。いずれの年代でも「給料が少ない」がトップだった。労働時間が長いことを理由に転職を検討している割合は、34歳以下で44%と最も高く、35~44歳では28%、45~54歳では23%、55歳以上では9%と、年齢を追うごとに減少していく。

 同社はこの結果を踏まえ、企業が若手人材の離職を防ぐためには、給料面だけでなく、残業時間の削減や週休2日制の導入など、労働時間短縮へ取り組むことが有効だと分析している。

 このほか、35~44歳では「もっとキャリアアップしたい」、45~54歳と55歳以上では「仕事内容が不満」がそれぞれ転職したい理由の2番目に挙がった。2020年東京五輪に向け、首都圏を中心に建設需要が旺盛になっている。若手技術者の労働時間をしっかり管理しながら現場を運営していくことが、今後、企業の課題になりそうだ。

【基本構想策定や施設マネジメント支援】山下PMC、スポーツ関連施設分野の対応強化

山下ピー・エム・コンサルタンツ(山下PMC、川原秀仁社長)が、スポーツ関連施設分野への対応を強化している。

 プロスポーツ施設建設の基本構想策定業務など、これまで手掛けたプロジェクトは進行中を含め70件弱(9月現在)と、昨年同時期の約4倍に達した。

 2020年東京五輪開催に向け国内のスポーツ熱が高まる中、豊富な経験を強みに、高収益で地域のにぎわい創出にもつながる最適な施設づくりを支援する。

 同社は、施設戦略や運営管理までカバーする総合的なプロジェクトマネジメントのサービス体制を構築。発注、設計、施工、運営管理に至るプロジェクトの全段階で顧客に寄り添ったサービスを提供し、数々のプロジェクトを成功に導く中、ここ数年はスポーツ関連施設の整備に伴うマネジメント業務の受託が急増しているという。

 直近の実績には、「北海道日本ハムファイターズ新球場建設構想調査検討サポート業務」「京都スタジアム(仮称)運営権PFI事業導入可能性調査業務に関わる技術的支援」「(仮称)JFAナショナルフットボールセンター建設に伴うCM業務」「横浜スタジアム増築・改修計画CM業務」などがある。

 この分野で国内トップシェアを誇るが、PR活動も強化。9月12~14日に千葉市美浜区の幕張メッセで開かれた「スタジアム&アリーナ2017」に、昨年に続きブースを出した。

 英国メディアのアラッド・リミティッドが主催する国際的なイベントで、日本での開催は2回目。同社のブースを訪れた人は昨年より3割増で、プロスポーツの運営者をはじめ、行政、メーカー関係者が目立つという。

 スポーツ産業は、インバウンド(訪日外国人旅行者)を取り込む観光分野と並ぶ日本の成長戦略の一つ。市場規模を、現在の5・5兆円から2025年には15・2兆円に拡大するとの方針が打ち出され、同社は次世代スポーツビジネス創出の施設参謀役を担う。

 川原社長は「競技者のためだけの単なるスポーツ施設ではなく、観光やインバウンドを見据え、ホテルや商業施設を組み合わせた提案もしていきたい。バスケットボールの試合会場の横でバーベキューをしたり、子どもがプールで泳いだりと、プレーや観戦だけでない、人々が集う場を提供していきたい」と話している。

【聖橋や緑橋防潮水門など23件】17年度選奨土木遺産決まる

 土木学会(大石久和会長)は25日、17年度の「土木学会選奨土木遺産」として23件を選定したと発表した。関東大震災の復興橋梁として建設された「聖橋」(東京都)や、大正時代の石材とれんがを使った防潮堤と橋を兼ねた「緑橋防潮水門」(三重県)などが選ばれた。江戸時代から昭和40年代までに整備された現存する土木施設を対象に、社会へのアピールやまちづくりへの活用といった観点から選奨土木遺産選考委員会(小林一郎委員長)が審査を行った。

 17年度の土木学会選奨土木遺産は次の通り(▽件名=〈1〉所在地〈2〉完成年〈3〉選定理由)。
滝の上発電所施設群(北海道夕張市)
滝の上発電所施設群=〈1〉北海道夕張市〈2〉1925年(2014年改修)〈3〉落差のある岩盤に竪坑を設けた落水方式を採用し、改修を経て地域に貢献し続ける水力発電所

 ▽網走橋=〈1〉北海道網走市〈2〉1934年(1974年改修)〈3〉80年以上に渡り国道橋として活躍する北海道内で現存最古のゲルバー鈑桁橋
聖橋(東京都千代田区・文京区)
聖橋=〈1〉東京都千代田区神田駿河台四丁目~文京区湯島一丁目〈2〉1927年〈3〉関東大震災の復興橋梁として、土木と建築分野でそれぞれ大家となった山田守と成瀬勝武の設計で建設された鉄骨コンクリートアーチ橋

 ▽京浜港ドック=〈1〉横浜市神奈川区山内町〈2〉1926年〈3〉近代横浜港の整備に大きく貢献した土木遺産

 ▽JR上越線清水トンネル関連施設群=〈1〉群馬県みなかみ町~新潟県湯沢町〈2〉清水トンネル等(1931年)、新清水トンネル等(1967年)〈3〉トンネル掘削技術の進歩と貴重なループ線を今に伝える貴重な土木遺産
万内川砂防堰堤群・日影沢床固工群(新潟県妙高市)
万内川砂防堰堤群・日影沢床固工群=〈1〉新潟県妙高市〈2〉1921~1934年〈3〉現地産の石を極めて精巧に組んで作られた石積み構造の堰堤

 ▽亀甲橋=〈1〉山梨県山梨市〈2〉1933年〈3〉昭和8年に架橋された県内で珍しい3連の下路式アーチ鋼橋

 ▽東武鉄道渡良瀬川橋梁・砥川橋梁=〈1〉栃木県佐野市~群馬県館林市(渡良瀬川橋梁)、栃木県日光市(砥川橋梁)〈2〉渡良瀬川橋梁(1914年頃)、砥川橋梁(1896年製、1946年転用)〈3〉英国製から米国製への移行期以降の輸入トラス2橋で、歴史的風格を醸す土木遺産

 ▽里川水系水力発電所群=〈1〉茨城県常陸太田市、同日立市〈2〉1908年~1926年〈3〉茨城県で最初に電源開発された水系にかかる発電所群

 ▽玉川橋=〈1〉埼玉県ときがわ町〈2〉1921年竣工、1987年度高欄改装〈3〉大正10年に完成した清流・都幾川に架る埼玉県最初のRCアーチ橋
緑橋防潮水門(三重県御浜町)
緑橋防潮水門=〈1〉三重県御浜町市木〈2〉1918年〈3〉熊野灘に注ぐ市木川の河口部分に建設された防潮堤と橋を兼ねた石材とれんがによる構造物

 ▽駿府御囲堤(薩摩土手)=〈1〉静岡市葵区井宮町妙見下〈2〉1600(慶長年間)年ごろ〈3〉駿府の町を安倍川の洪水から守るために設置され、今でも洪水防御機能を有した貴重な御囲堤

 ▽往生地浄水場=〈1〉長野市西長野往生地1220番地2〈2〉1915年〈3〉長野市の水道創設事業で建設された市内最古の浄水場

 ▽樫野埼灯台=〈1〉和歌山県串本町大島樫野〈2〉1870年〈3〉英国技師ブラントンによる石造洋式灯台で、日本初の回転式洋式灯台

 ▽奈良市水道関連施設群=〈1〉奈良市、京都府木津川市〈2〉1922年。市坂ポンプ所のみ1957年〈3〉意匠的特長に富む高地区配水池、奈良阪計量器室などいずれも創設時の姿を残し現存する貴重な水道遺産群
鵬雲洞・毛見隧道(和歌山市)
鵬雲洞・毛見隧道=〈1〉和歌山市毛見〈2〉鵬雲洞(1991年)、毛見隧道(1925年)〈3〉紀州青石を用いた秀逸な意匠を持つ土木遺産

 ▽前河原橋りょう=〈1〉滋賀県米原市飯〈2〉1889年〈3〉独自規格のれんがによって構築され、スプリングラインに石材の挿入された特徴的構造を持つ歴史的鉄道橋

 ▽竹野川橋りょう・田君川橋りょう=〈1〉兵庫県豊岡市(竹野川橋りょう)、兵庫県新温泉町(田君川橋りょう)〈2〉竹野川橋りょう(1911年〈ラチス桁部分は1920年〉)、田君川橋りょう(1912年〈ラチス桁部分は1922年〉)〈3〉国内で3連現存するラチス桁のうちの2連で、架設当時の橋梁工事事情を現代に伝える土木遺産

 ▽大阪京都間鉄道煉瓦拱渠群=〈1〉京都府西京区(馬場丁川)、長岡京市(七反田、老ケ辻)、大山崎町(円妙寺)、大阪府高槻市(後藤川、奥田ノ端、藪ケ花)、大阪府茨木市(門ノ前、尻戸三)、大阪市北区(樋口暗渠)〈2〉1875年(樋口・円妙寺・馬場丁川暗渠、後藤川避溢橋、藪ケ花跨道橋)、1876年(尻戸三避溢橋、門ノ前跨道橋、奥田ノ端暗渠、七反田・老ケ辻拱渠)〈3〉欠円アーチやねじりまんぽなどの特徴を持つ土木遺産群

 ▽金慶橋=〈1〉神戸市北区有馬町孫七1762の2〈2〉1961年〈3〉構造用強度材としてアルミニウム合金が使用された土木遺産
山陰道の石畳-駟馳山峠・蒲生峠(鳥取県岩見町)
山陰道の石畳-駟馳山峠、蒲生峠=〈1〉鳥取県岩美町〈2〉駟馳山峠(1812年)、蒲生峠(1892年以前)〈3〉通行が困難であった峠道を改良するために施された石畳

 ▽府能隧道=〈1〉徳島県佐那河内村、神山町〈2〉1923年〈3〉れんが積みと飾り石など丁寧な意匠が施された土木遺産

 ▽中島川変流部護岸=〈1〉長崎市〈2〉1889年〈3〉第1次長崎港改修事業の唯一の遺構で、設計や調査にはデ・レーケが携わるなど、歴史的にも貴重な土木遺産。

【記者手帖】AIがもたらすもの

先日、米アップルから最新モデルの「iPhoneX(テン)」が発表された。顔認証で端末のロックが解除できるなど最新技術が盛り込まれた。小さな白黒の液晶画面で、通話ぐらいしかできなかった十数年前の携帯電話とは雲泥の差だ◆技術の進歩は暮らしや企業活動に変化をもたらす。中でも最近、注目を集めているのがAI(人工知能)。日進月歩の勢いで活用が進められている。先日、ある講演会で車の自動運転へのAI活用に関する話を聞いた。車体の全方向を認識できるカメラを取り付け、人の飛び出しや信号の確認、障害物の検知などを瞬時に行う。人が運転するよりも安全という◆さらに驚かされたのは、現在ある仕事の約半分はAIによって支配されるというのだ。われわれ記者の仕事も例外ではなく、AIに代替される仕事の一つに入っていた。これからはAIと競争する時代になるのかもしれない◆だが、人にしかできないことは多くある。それは血の通ったコミュニケーション。こんな時代だからこそ、人と人とのつながりをさらに大切にして取材に臨みたい。(敬)

2017年9月25日月曜日

【プールは民活導入検討】宮崎県、国体施設整備400億円の事業費見込む

宮崎県は2026年に開催予定の2巡目国体に向け計画しているスポーツ施設の整備方針を県議会常任委員会に報告した。陸上競技場と体育館は建設地の各市と共同で整備し、プールはPFIなど民間活力の導入を検討する。類似施設を参考にした概算事業費は3施設と県総合運動公園(宮崎市)の津波対策で総額395億~415億円程度を見込む。今後、1年ほどかけて基本計画の策定を進める。

 整備方針によると、都城市の山之口運動公園に整備する新たな陸上競技場は市が用地提供と付帯施設などの整備、県が用地造成と競技場などの整備を行う。

 主競技場の観客席は1万5000~2万人規模。国体開会式では3万人分が必要となるため不足分は仮設対応を検討する。大規模大会に対応するため駐車場を追加整備する。概算事業費は競技施設が120億円程度、用地造成が60億円程度、駐車場が20億円程度の計200億円程度を見込む。

延岡市の市民体育館敷地に計画する体育館は市が用地を提供し、施設は県と市で共同で整備する。観客席の規模は荒天時の開閉会式会場として使用するかによって設定する。

 概算事業費は競技施設が70億円程度、用地造成が15億円程度の85億円程度。荒天時の開閉会式会場とせず観客席の規模を縮小する場合は整備費も減額となる。体操やスポーツクライミングなど特殊設備の整備のあり方は基本計画の中で検討する。

 プールは民間との連携により整備費や維持費を抑える方向で、宮崎市内の県有地に全屋内プールを整備する手法の可能性や整備内容を市と協議する。全屋内が難しい場合は一部屋外として整備する。

他県の例で一部屋外とした場合の整備費は30億~50億円程度。民間との連携により費用を抑えられれば競技場プールや補助プールなどすべてを屋内施設として整備する。県総合運動公園または錦本町県有グラウンドの2カ所を挙げていた整備場所は民間との連携の可能性と併せて検討する。

 県総合運動公園が競技会場となる場合は、必要な施設基準確保のため既存施設の改修などを行い、南海トラフ巨大地震への備えとして津波避難施設を追加整備する。工作物を想定して試算した津波避難施設の整備費は80億円程度を見込む。県では今後、コンサルタントに業務委託し、より詳細な施設配置や規模、仕様の検討、事業費の試算などを進め、おおむね1年程度かけて基本計画を策定するとしている。

【女子パトレンジャー見参!!】加藤建設(愛知県蟹江町)、女性目線で現場の作業環境改善

 加藤建設(愛知県蟹江町、加藤徹社長)は、建設現場の環境改善を進めるため、女性社員で構成する「女子パトレンジャー」(女子パト隊)を編成し、活動を展開中だ。

 女性の目線で建設現場の作業環境を改善してもらうのが目的。現場のトイレや休憩所の装飾をはじめ、自社が進める環境改善活動「エコミーティング」などにも参加し、建設現場の環境改善策やイメージアップ対策、環境対策などを提案し、実践している。

 女子パト隊は昨年2月に設置。当初、自社の現場を訪ね、作業環境の評価などを行っていたが、誰もが働きやすい現場環境を具体的に提案し、それを現場の担当者と相談しながら実施するように活動を変更した。

 例えばトイレの出入り口が外から見えないように目隠しパネルを設置したり、殺風景な現場事務所や休憩室に装飾した鍵掛けやハンガー掛けなどを設けたりしている。野外の休憩スペースも木調パネルで囲い、ベンチや椅子、さらには植物なども置き、作業員がくつろげる空間を創出している。

 現在、本社の女性事務系職員5人で構成。東京支店にも同様な組織を今年に入り設けた。同社では女子パト隊の活動を本格化させるため、各担当者を漫画で描いたイメージポスターを作成した。

 現場で働く人たちの声を聞きながら、多くの現場に女子パト隊を派遣し、現場の作業環境の改善に取り組む方針だ。

【回転窓】観戦力を鍛えてみよう

女子テニスの世界ランク4位まで上り詰めた伊達公子さんが引退した。1996年にいったんコートを離れたが、2008年に37歳で現役復帰。けがを抱えながら9年半にわたって世界最高峰の舞台で輝きを放ち、2度目の引退を決断した▼「得意だから」との理由で、主導権を握りやすいサーブよりレシーブを好んだ。上がり際のボールをたたく「ライジングショット」が代名詞。テンポを変えてボールを打ち返す特技は、観客だけでなく相手選手も魅了。まねをしたテニス愛好家も少なくない▼最初に世界ランク上位に躍り出たのは90年代初頭。日本人がテニスでも世界を相手にできることを実証し、メディアやファンとプロスポーツ選手の向き合い方にも新風を吹き込んだ▼ゴシップ記事を書いたメディアには「取材は受けません」と言明。日本での熱戦中、ボールをネットに引っ掛けた際に客席から漏れた「あぁ~」のしぼみ声に、「ため息ばっかり」と叫び返し、落胆より鼓舞を求めた▼世界のトップ選手の試合を間近に観戦できる東京五輪まで3年弱。迎える側として観戦する目と姿勢をさまざまな競技で鍛えたい。

【凜】長谷工コーポレーション・足立佳葉さん

 ◇目標は1級建築士と現場所長◇

 父親の実家が姫路城(兵庫県姫路市)の近くにあり、よく遊びに行っていたことで、世界遺産などの古い建物に興味が湧いたという。大学はデザイン工学部建築学科に進学し、古い建物の調査などを行った。

 就職活動の時期に差し掛かった時、ゼネコンで施工管理に携わりたいと考えていた。「長谷工コーポレーションに女性の現場所長がいると聞き、入社を強く希望した」という。

 今年で入社3年目を迎える。これまで、東京都内のマンションの建設現場に配属され、コンクリートや内装の工程管理などに携わった。「竣工直前の内覧会に参加した時、自分が施工に携わったマンションを見てお客さまが喜んでくれた時に大きなやりがいを感じた」と笑顔で話す。

 現在は、横浜市金沢区で施工中の新築マンションの建設現場で、仮設と鉄筋、コンクリート型枠の管理などを任されている。仕事に打ち込む熱心さでは人に負けないつもりだが、「職人さんから専門的な質問をされた時に、自分の知識不足から即座に答えられず、もどかしさを感じることも少なくない」という。「今後は、現場での知識不足を少しでもカバーし、自信を付けたい」。

 「1級建築士の資格取得にも挑戦したい」と意気込みを語る。「将来は、現場の方から信頼される技術者に成長し、所長になる」のが目標だ。

 (建設部門第三施工統括部、あだち・かよ)

【サークル】ライト工業 フットサル同好会

 ◇目標は年末の大会、若手加え雪辱果たす◇

 フットサル同好会が発足したのは約15年前。社内のサッカー好きの有志が集まって活動を開始した。メンバーは8月時点で約20人。代表を務める石岡崇さん(財務経理部)は、「部署や年齢は問わず、幅広い社員が参加し、積極的に活動している」と話す。

 活動のモットーは、「健康増進と社内コミュニケーションによる親睦」。練習はコートが取れた所で不定期に行っている。技術を磨くと同時に、試合勘を養うため、他社のチームとの練習試合にも精力的に取り組んでいる。

 毎年5月ごろに開催される東京都土木建築健康保険組合主催のフットサル大会に、昨年から連続して出場している。「今年の大会では成績が振るわなかった。年末に企画される別の大会があるので、雪辱を果たしたい」と石岡さん。

 チームは40代が中心で年々、平均年齢が高くなり、高齢化が目下の悩みだったが、今年は社内の若手が新たに加わった。「フットサルは5人で行う競技。交代要員が多いと、試合中にスタミナが切れて動けなくなる心配もない。社内でもっと声を掛け合い、活動を盛り上げていきたい」と意気込みを語る。

【建設業の心温まる物語】船谷建設・竹内要さん(三重県)

 ◇あんたには現場で助けてもらっていたから◇

 数年前に三重県津市内で、賃貸マンションの建設をしているときのことです。悪天候が続いたことで、長尺シート張りの工事が引き渡しまでに完了できるかどうかギリギリのところまで追い込まれました。もう自分ではどうすることもできないと思い、協力会社に作業員の増員をしてくれるように頼みました。しかし、激しい口論になってしまい、作業員の増員どころか「もう現場から作業員全員を引き上げる」と言われてしまいました。引き渡しまであと2日。目の前が真っ暗になりました。

 工事を完成できなかったらお客様に対して、どのようにして責任をとればいいのかを考えながら現場前の歩道をとぼとぼと歩いていました。すると偶然、口論になった協力会社の方が車で通りすぎたのを見かけたのです。ダメもとで、思い切って携帯電話に連絡をしました。

 「嫌な思いをさせて申し訳ありませんでした。どんなことでも手伝いますから、作業を進めていただけませんでしょうか」と何度も何度もしつこく頼みました。すると「そこまで言うなら、なんとかしてやる」と言ってくれたのです。そして他の現場で作業している職人さんを数人呼んでくれ、なんとか間に合わせてくれました。

 工事終了後、その方に「なぜ最後の最後で助けてくれたのですか」と聞いたところ「あんたには普段から現場で助けてもらっていたから気になっていたんだよ。そうしたら、電話がかかってきて真剣に頼まれたから放っておけなかった」と言われました。その言葉を聞いて、普段の行いが大切なこと、そして工事に携わる方々の優しさに心が温まりました。

【建設業の心温まる物語】前田道路中部支店・前田亮太さん(愛知県)

 ◇いつの日か「父のような父」になりたい◇

 私がこの建設業界に入ったきっかけは「父」と「祖父」の存在です。祖父が立ち上げた建設会社を父が継いでいます。子供のころから2人が働く姿を見てきました。

 父は昔から私には「自分のやりたいようにやれ」と言って大学生まで好きなようにさせてくれました。そのおかげでずっと本格的に野球を続けることができました。

 父の会社は舗装工事、外構工事を主体として行っており、私が現在勤務する会社が発注する工事も協力会社として施工しています。私の就職が決まってからも、アルバイトとして父の会社で地元の国道のバイパス拡幅工事を施工しました。元請現場監督と仕事の話をしている父、測量をしている父。一緒に地元を車で移動しているとき、「あそこはうちが施工した」と誇らしげに語る父。その全てがかっこいいと思いました。

 昨年の夏季休暇にて地元に帰った時、私が関与した国道が完成していました。地元の人なら誰もが通るバイパスを私も協力できたという喜び、そして誇らしい気持ちは忘れられません。

 今では建設会社に入社して一年が経ちました。実家に帰ると父と仕事の話ができるようになりました。父はそんな私の話をじっと聞いてくれ、私はすごくうれしく思います。今後も祖父、父、私の三代で建設業について話をしていきたいと思います。今は私が働く静岡と祖父、父のいる広島とで離れていますが、いつか一緒に仕事をすることが私の夢です。

 いつの日か「父のような父」になりたいです。

【建設業の心温まる物語】地下室・坪崎陽一郎さん(東京都)

 ◇父の感じていた感動◇

 私の父は、個人で一級建築士事務所をしていました。私は幼いながら、当時、父の収入はかなり波が激しく、多い時と極端に少ない時の差がとても激しかったことを覚えています。そのため、父は親族から「仕事を変えろ」とよく言われていました。そのため私も、建築業だけは絶対やりたくないと思っていました。

 私は学校を卒業して以来、建築業とは異なる業界で働いていました。事情があり、転職を考えているとき、ふと父の仕事ぶりを思い出しました。父はあんなにも親族たちに反対されていたにもかかわらず、なぜ設計の仕事を続けてきたのだろうか。そしてなぜ今まで続けることができたのだろうか。それまで考えたこともなかったのですが、父の気持ちが不思議に感じたのです。

 私が小さいころから通っていた夫婦で経営している病院は、父が昔設計した建物でした。そのご夫婦に会うと今でも「良い病院を建ててもらってよかった」と言ってくれます。もう建築して30年以上経つにも関わらず、綺麗に使っていただいています。また父が設計したビルや総合病院も、現在も立派に残っています。父の仕事は長いあいだ、人の心や街に残り続けている素晴らしい仕事だと改めてわかりました。

 その後、私は建設会社に就職しました。現在までに何件か引き渡した物件があります。そのうちの1件の住宅にメンテナンスに伺ったときのことです。お施主様が「本当に良い家を作ってくれてありがとう」と言ってくださり、飾ってある一枚の木彫りプレートを見せてくれました。そこには私も含め施工に携わった大工さん、職人さんの名前が彫ってありました。

 それを見た時、父が感じていた感動を少しでも感じることができるようになったのだ、と思いました。

【駆け出しのころ】松尾工務店専務取締役工事統轄本部長・松本文明氏

 ◇技術者のプライドを教えられる◇

 入社して最初に配属された現場は、神奈川県内のマンション建築工事でした。ここで先輩と一緒に墨出しをしている時のことです。風が吹いて飛ばされそうになった図面をとっさに足で踏んで押さえると、その先輩から「貴様、神聖なる図面を踏むとは何事だ!」とものすごい勢いで怒られたことがありました。

 突然のことでびっくりしましたが、すぐに意味が分かりました。当時の施工図は職員が自らの手で書いていましたので、一枚一枚に対する思い入れが強く、技術者としてのプライドが詰まっていたのです。それを新人が踏んだのですから、怒られても当然でした。

 入社2年目になり、大学の夜間(二部)に通い始めました。入学試験に合格するまでは誰にも言わず、合格してから会社にお願いして認めていただきました。高校時代はレスリングに熱中し、そのまま進学せずに就職することを選んだため、社会人になってから勉強したいという思いが強くなっていました。

 在学中は一日の仕事を必ず終えてから大学に行くようにしていました。次第に大学での課題が増え、仕事との両立に悩んだ時期もありました。でも「良い成績を残そうと思わず、とにかく卒業しよう」と割り切ると、次第に気持ちが楽になっていったのを覚えています。卒業できたのは会社の理解と協力があったからです。通っている時はかなりのプレッシャーがあったのか、30代半ばの頃まで、「あの単位が足りない」と焦っている夢をよく見たものです。

 初めて所長を任されたのは28歳の時で、学校の体育館建設工事でした。発注した物が所定の時期までに納入されず、そのメーカーに出向いて「遅れて余計にかかる費用を負担するという念書を書いてほしい」と直談判したこともあります。今振り返ると、若造だった自分がよくそんなことを言ったものだと思いますが、ある工程が遅れた責任を後工程の人たちに負わせるわけにはいきません。それに卒業式までに工事を完成させることが必達目標でしたから、とにかく「何とかやり切らなければ」という考えで動いていたのでしょう。

 若い人たちには、人と人との触れ合いを大切にしてほしいと思っています。相手が何を考えているかというのはメールだけでは分かりません。建設は一人でできる仕事ではなく、人と接しながらいろいろなことを吸収していってほしいと思います。

 現場にはうるさくておせっかいな親方がいたものです。でも心はとても温かい人たちです。私たちは「おやじ」と親しみを込めて呼べるこうした人から多くのことを学びました。これからも現場にはそんなおやじさんがもっといてほしいと願っています。

 (まつもと・ふみあき)1976年長崎県立島原工業高校建築科卒、松尾工務店入社。82年関東学院大工学部第二部建設工学科卒。積算部長、第一建築部長、執行役員、取締役、常務建築本部長を経て、16年4月から現職。長崎県出身、59歳。
入社3年目、神奈川県内の現場で