2017年9月26日火曜日

【聖橋や緑橋防潮水門など23件】17年度選奨土木遺産決まる

 土木学会(大石久和会長)は25日、17年度の「土木学会選奨土木遺産」として23件を選定したと発表した。関東大震災の復興橋梁として建設された「聖橋」(東京都)や、大正時代の石材とれんがを使った防潮堤と橋を兼ねた「緑橋防潮水門」(三重県)などが選ばれた。江戸時代から昭和40年代までに整備された現存する土木施設を対象に、社会へのアピールやまちづくりへの活用といった観点から選奨土木遺産選考委員会(小林一郎委員長)が審査を行った。

 17年度の土木学会選奨土木遺産は次の通り(▽件名=〈1〉所在地〈2〉完成年〈3〉選定理由)。

滝の上発電所施設群(北海道夕張市)
滝の上発電所施設群=〈1〉北海道夕張市〈2〉1925年(2014年改修)〈3〉落差のある岩盤に竪坑を設けた落水方式を採用し、改修を経て地域に貢献し続ける水力発電所

 ▽網走橋=〈1〉北海道網走市〈2〉1934年(1974年改修)〈3〉80年以上に渡り国道橋として活躍する北海道内で現存最古のゲルバー鈑桁橋
聖橋(東京都千代田区・文京区)
聖橋=〈1〉東京都千代田区神田駿河台四丁目~文京区湯島一丁目〈2〉1927年〈3〉関東大震災の復興橋梁として、土木と建築分野でそれぞれ大家となった山田守と成瀬勝武の設計で建設された鉄骨コンクリートアーチ橋

 ▽京浜港ドック=〈1〉横浜市神奈川区山内町〈2〉1926年〈3〉近代横浜港の整備に大きく貢献した土木遺産

 ▽JR上越線清水トンネル関連施設群=〈1〉群馬県みなかみ町~新潟県湯沢町〈2〉清水トンネル等(1931年)、新清水トンネル等(1967年)〈3〉トンネル掘削技術の進歩と貴重なループ線を今に伝える貴重な土木遺産
万内川砂防堰堤群・日影沢床固工群(新潟県妙高市)
万内川砂防堰堤群・日影沢床固工群=〈1〉新潟県妙高市〈2〉1921~1934年〈3〉現地産の石を極めて精巧に組んで作られた石積み構造の堰堤

 ▽亀甲橋=〈1〉山梨県山梨市〈2〉1933年〈3〉昭和8年に架橋された県内で珍しい3連の下路式アーチ鋼橋

 ▽東武鉄道渡良瀬川橋梁・砥川橋梁=〈1〉栃木県佐野市~群馬県館林市(渡良瀬川橋梁)、栃木県日光市(砥川橋梁)〈2〉渡良瀬川橋梁(1914年頃)、砥川橋梁(1896年製、1946年転用)〈3〉英国製から米国製への移行期以降の輸入トラス2橋で、歴史的風格を醸す土木遺産

 ▽里川水系水力発電所群=〈1〉茨城県常陸太田市、同日立市〈2〉1908年~1926年〈3〉茨城県で最初に電源開発された水系にかかる発電所群

 ▽玉川橋=〈1〉埼玉県ときがわ町〈2〉1921年竣工、1987年度高欄改装〈3〉大正10年に完成した清流・都幾川に架る埼玉県最初のRCアーチ橋
緑橋防潮水門(三重県御浜町)
緑橋防潮水門=〈1〉三重県御浜町市木〈2〉1918年〈3〉熊野灘に注ぐ市木川の河口部分に建設された防潮堤と橋を兼ねた石材とれんがによる構造物

 ▽駿府御囲堤(薩摩土手)=〈1〉静岡市葵区井宮町妙見下〈2〉1600(慶長年間)年ごろ〈3〉駿府の町を安倍川の洪水から守るために設置され、今でも洪水防御機能を有した貴重な御囲堤

 ▽往生地浄水場=〈1〉長野市西長野往生地1220番地2〈2〉1915年〈3〉長野市の水道創設事業で建設された市内最古の浄水場

 ▽樫野埼灯台=〈1〉和歌山県串本町大島樫野〈2〉1870年〈3〉英国技師ブラントンによる石造洋式灯台で、日本初の回転式洋式灯台

 ▽奈良市水道関連施設群=〈1〉奈良市、京都府木津川市〈2〉1922年。市坂ポンプ所のみ1957年〈3〉意匠的特長に富む高地区配水池、奈良阪計量器室などいずれも創設時の姿を残し現存する貴重な水道遺産群
鵬雲洞・毛見隧道(和歌山市)
鵬雲洞・毛見隧道=〈1〉和歌山市毛見〈2〉鵬雲洞(1991年)、毛見隧道(1925年)〈3〉紀州青石を用いた秀逸な意匠を持つ土木遺産

 ▽前河原橋りょう=〈1〉滋賀県米原市飯〈2〉1889年〈3〉独自規格のれんがによって構築され、スプリングラインに石材の挿入された特徴的構造を持つ歴史的鉄道橋

 ▽竹野川橋りょう・田君川橋りょう=〈1〉兵庫県豊岡市(竹野川橋りょう)、兵庫県新温泉町(田君川橋りょう)〈2〉竹野川橋りょう(1911年〈ラチス桁部分は1920年〉)、田君川橋りょう(1912年〈ラチス桁部分は1922年〉)〈3〉国内で3連現存するラチス桁のうちの2連で、架設当時の橋梁工事事情を現代に伝える土木遺産

 ▽大阪京都間鉄道煉瓦拱渠群=〈1〉京都府西京区(馬場丁川)、長岡京市(七反田、老ケ辻)、大山崎町(円妙寺)、大阪府高槻市(後藤川、奥田ノ端、藪ケ花)、大阪府茨木市(門ノ前、尻戸三)、大阪市北区(樋口暗渠)〈2〉1875年(樋口・円妙寺・馬場丁川暗渠、後藤川避溢橋、藪ケ花跨道橋)、1876年(尻戸三避溢橋、門ノ前跨道橋、奥田ノ端暗渠、七反田・老ケ辻拱渠)〈3〉欠円アーチやねじりまんぽなどの特徴を持つ土木遺産群

 ▽金慶橋=〈1〉神戸市北区有馬町孫七1762の2〈2〉1961年〈3〉構造用強度材としてアルミニウム合金が使用された土木遺産
山陰道の石畳-駟馳山峠・蒲生峠(鳥取県岩見町)
山陰道の石畳-駟馳山峠、蒲生峠=〈1〉鳥取県岩美町〈2〉駟馳山峠(1812年)、蒲生峠(1892年以前)〈3〉通行が困難であった峠道を改良するために施された石畳

 ▽府能隧道=〈1〉徳島県佐那河内村、神山町〈2〉1923年〈3〉れんが積みと飾り石など丁寧な意匠が施された土木遺産

 ▽中島川変流部護岸=〈1〉長崎市〈2〉1889年〈3〉第1次長崎港改修事業の唯一の遺構で、設計や調査にはデ・レーケが携わるなど、歴史的にも貴重な土木遺産。

0 コメント :

コメントを投稿