2017年10月17日火曜日

【駆け出しのころ】竹中土木常務執行役員東京本店長・西條俊一氏

 ◇個々が自主性を発揮するために◇

 中学生の頃、家の近所に大学の土木工学科に通っている方がおられました。釣りに連れていってくれるなどとても親しくしていただき、大学で描いた土木の図面を見せてもらうこともありました。当時はまだ漠然としたものでしたが、いつしか大学へ行くなら土木を勉強したいと思うようになっていました。

 竹中土木に入社し、2週間の研修を経て配属されたのは、東京都内のシールドトンネル工事現場です。次に担当したのは神奈川県内の道路拡幅工事で、かなり山深い所にある現場でした。都内で開かれた懇親会に出て終電が無くなり、途中の駅から真っ暗な山道を2、3時間かけて歩いて宿舎に帰ったこともありました。

 入社2年目からは東北支店の工事に携わります。東北自動車道や東北新幹線の建設が進んでいた頃で、東北支店は非常に忙しい時期でした。私は異動してすぐ、福島県内で延長1・5キロほどの道路工事を任され、安全、工程、品質など全ての施工管理や測量を一人で行わなければならない状況に置かれます。

 ここではわからないながらも会社の先輩に教えてもらったり、自分で工夫したりしながら頑張りましたが、いろいろ失敗もありました。杭を打つ日のことです。現場に杭打ち機が到着するまで、私はその進入路や施工基盤をつくっていないことに気付かず、杭屋さんに怒られてあわてて対応しました。何事も自分がやらなくては工事が進みません。大変な経験でしたが、自立心が芽生えた現場でもありました。それに忙しくても自分がつくった工程通りに工事が進んでいくと、仕事が楽しくなっていったものです。

 東北支店の現場に3年半ほど携わった後は、技術研究所で2年間研修を受けました。再び現場に出てからは、この研修が生き、自分で難易度の高い技術計算なども行えるようになっていました。そうした技術的な視点からも現場を見られるようになったのは大きく、現場で生じる問題も自ら解決していく姿勢につなげることができたと思っています。

 人にはそれぞれの特色があり、それを自ら創造力を働かせて引き出してくことが大切だと考えています。口で言うほど簡単ではありませんが、職場では細かな指示を出すのではなく、できるだけそうした自主性を発揮できる雰囲気で部下や後輩と接するようにしてきたつもりです。個々が持っている能力を発揮することが、会社や組織としての大きなパワーとなります。

 仕事ではいろいろと困難な問題に遭遇するでしょう。でも決して逃げることなく、正面から解決に向けて努力する。若い人たちにはそうした姿勢で頑張ってほしいと期待します。

 (さいじょう・しゅんいち)1978年早大理工学部土木工学科卒、竹中土木入社。横浜支店長、東京本店統括営業部長、執行役員東京本店長などを経て、16年3月から現職。東京都出身、61歳。

技術研究所での研修終了時に行った旅行先での一枚
(左側の上から3人目が本人)

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