2017年10月30日月曜日

【建設業の心温まる物語】アイワ産業・山本嘉彦さん(広島県)

 ◇あんたを待っとったんじゃ◇

 7年前のことです。広島県農林水産事務所の依頼で、広島県呉市音戸町の急傾斜地崩壊対策工事を担当することになりました。

 最初現場を見に行った私は、現場条件の厳しさに唖然としました。音戸町のメイン通りを一つ入った旧道に並ぶ民家の裏山は、長年の風化や、植物、イノシシに荒らされ、崩れ落ちた箇所や今にも崩壊しそうな箇所がたくさんありました。その法面を安全な形に補修し、法枠やアンカーで補強することが私たちの仕事でした。

 しかし民家の裏山は狭くて、大きな重機やダンプカーを持ち込む手段がありません。私は頭を抱えてしまいました。その時、民家の持ち主のAさんが私に声をかけてくださいました。

 「私はあんたを待っとったんじゃ。みんな首を長うして工事が始まるのを待っとった。やれうれしい。なんでも協力するけぇ、裏山を直して安心して住めるようにしてくれんさい」

 その後、Aさんや周辺の町内のみなさんの協力で、仮設道路を整備し、ラフタークレーンの置場を設置して、重機、ダンプカーを持ち込むことができました。その後も、とんとん拍子で話がまとまり、工事を無事終えることができました。

 「もうだめだ」と思った時にかけていただいたAさんの温かい一言のおかげで工事が進みました。ホッと胸をなでおろしたことが今でも忘れられません。

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