2017年10月17日火曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・180

地域を守る地元建設業の存続には担い手確保が不可欠
 ◇「天職に転職」いつか言えれば◇

 2年半前に地元の建設業関連団体の事務局に転職した田端修平さん(仮名)。前職は建設専門紙の記者。10年間、地域建設業に寄り添った取材を続けていた。

 転職当初は、情報を求めて東奔西走していた記者時代が恋しくなることもあったが、そのたびに「やりがいは自分で見つけるもの。それが持てるか否かは自分の責任」と自らを奮い立たせた。近ごろはやっと団体の仕事にも慣れ、手応えを感じ始めている。

 そもそも転職を決断したのは、取材で地元の建設業者と関わるうちに、「より深く、内側から業界を支えていきたい」と考えるようになったからだ。地元でも、業界全体の課題となっている人材不足が深刻化している。「災害時に最前線で復旧作業に当たる地元の建設業が機能しなくなれば、地域の安全は誰が守るのか」。そんな危機感が募った。

 記者時代も地元の建設業関連団体が取り組む学校への出前講座や地域貢献のボランティア活動などをつぶさに取材していたが、「外側からではなく内側から、より川上から情報発信をしたい」と思った。「記者としての経験が業界のアピールの強化に役立つのではないか」。そんな思いも背中を押した。

 以前は取材対象者として対等な関係で付き合っていた会員企業に対し、今は事務局の方が立場が下だと思っている。「かゆい所に手が届く、ではなく、先回りしてかく必要がある」。そこが仕事の難しさだ。

 総会や出前講座などの行事は準備を完璧にし、成功させるのが当たり前。失敗は許されない。並々ならぬ決意を持って団体に入ったものの、刺激の多かった記者時代と比べ、入念な段取りがものを言う事務局の仕事には物足りなさを感じることも転職当初はあったという。

 転機となったのは、初めて小学生向けの出前講座を準備から運営まですべて任されたことだった。学校側との調整はもちろん、当日の進行では、安全管理に神経を使い、夏場だったため熱中症対策で塩あめを用意したり、水分補給の時間をスケジュールに組み込んだりもした。

 取材の経験から講座の流れは分かっていたが、実際に自分でやってみると気力も労力も使い果たす重労働だと気付かされた。と同時に、建設機械に目を輝かせながら乗る子どもたちの顔を見て、入念な準備や積み重ねてきた努力が報われたと実感した。「安堵(あんど)感や達成感を味わえる」。この仕事の妙味が分かった気がした。

 会員企業が何を求めているのか、常にくみ取ろうとしている毎日だ。「考え過ぎて白髪が増えた」と苦笑するが、その表情からは仕事への手応えや意欲がにじむ。今は「天職に転職したといつか振り返ることができれば」と思っている。いつも前向きな姿勢を心掛け、情報発信力に一層磨きをかける。それが目標だ。

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