2017年11月27日月曜日

【駆け出しのころ】東急建設取締役専務執行役員土木本部長・寺田光宏氏

 ◇自らの判断で信じた道を◇

 静岡県を流れる天竜川の近くで生まれ育ちました。佐久間ダムや秋葉ダム、天竜川に架かる橋梁、そして東海道新幹線などのインフラに囲まれた中で子ども時代を過ごしたことも、後に土木技術者を目指した動機の一つかもしれません。

 東急建設への入社が決まり、会社からどのような仕事に従事したいかと聞かれたため、造成工事を希望しました。これを受け入れてくれたのか、最初に配属されたのは神戸市内の造成現場です。この工事に約7年間携わりました。

 ここでの新人の主な仕事と言えば、ひたすら測量して丁張りを掛け続けることでした。造成は民間工事でしたが、この間に造成に伴う河川改修工事を任されたこともあります。

 初めての公共工事で何も分からず、発注者が立ち会う配筋検査に黒板とカメラも持っていかなかったために「何しに来たんだ」と言われ、慌てて取りに戻ったこともありました。しかし、そんな頼りない入社2年目ぐらいの若い技術者に発注者の方はいろいろ教えてくださり、今でも感謝しています。

 続いて担当したのは東京都内の鉄道工事です。現在は入社5年目の定期異動に変更していますが、当時は7年目の社員全員を定期異動させるという社内制度が導入された年で、その第1弾が私たちでした。都市土木の鉄道工事はそれまでの造成工事とは大きく異なり、夜勤も多く生活が一変しました。中堅社員と言っても鉄道工事はまったくの素人です。後輩の若手たちには随分と助けてもらいました。

 この現場を皮切りとし、鉄道工事に長年携わりました。大規模な駅改良工事でのことです。夜間のわずか2時間半という短い時間で大掛かりな線路の切り替え工事を行うため、何年も前から準備し、さらに数カ月前からは練習を重ねて臨みました。無事に切り替えが完了し、始発電車が走るのを見た時の達成感は、言いようがないほど大きいものでした。

 これは私の経験でもあるのですが、上司や先輩が言ったことをそのまま実行するのではなく、自分で判断して信じた道を歩むことが大事です。私たちの仕事というのは、何らかの問題が起きた時に「誰々がこう言ったから」と言い訳ができるものではありません。責任を負う自らが判断するしかないのです。

 人々に安全で安心できる生活を送ってもらうために、見えないところで一生懸命に努力するのが土木の仕事です。こんなに誇りとやりがいを持て、しかもいろいろなプロジェクトに携われる仕事は他にあまりないでしょう。当たり前のことを当たり前に続けていくというのは目立ちませんが、若い人たちにはこうした大事な仕事に携わっているというモチベーションを持ち続けてほしいと思います。

 (てらだ・みつひろ)1979年徳島大工学部建設工学科(土木専攻)卒、東急建設入社。鉄道本部建設部工務部長、鉄道建設事業部土木部長、執行役員鉄道建設事業部事業部長、取締役常務執行役員土木総本部総本部長などを経て、16年4月から現職。静岡県出身、60歳。
初めて鉄道工事に携わった東京都内の現場で
(2列目左から3人目が本人)

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