2017年11月28日火曜日

【記者手帖】街並みタイムスリップ

〈行春や鳥啼魚の目は泪〉。「奥の細道」出立の地、江戸・千住で松尾芭蕉が詠んだ句だ。上野や谷中の桜の木のこずえを再び見ることができるだろうか。そんな旅の前途への不安を詠んだものとされる◆時折、ふらっと句碑や歌碑を巡る旅に出る。これが思いのほか楽しい。彼らが当時どのような景色を見て心を動かしていたのかを想像しているうちに、自分もその時代にタイムスリップしたかのような感覚を得られるからだ◆正岡子規が余生を過ごした東京・東日暮里には、〈雀より鶯多き根岸かな〉の句碑がある。JR鶯谷駅が近くにある。今、あの辺りでウグイスの声を聞くことは少ないと思うが、江戸時代にウグイスの名所だったことが地名の由来ともいわれる◆句碑に残るはずもないが、現代の街並みを自分で俳句にしてみたいと思うことも。ビルが立ち並んで画一化されつつある風景の中、どうやって個性のある句にしようかと考えるのもまた一興。そして万が一、それが後世の人の目に触れ、同じようにタイムスリップしてくれたら…。考えるとわくわくする。(結)

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