2017年11月20日月曜日

【駆け出しのころ】佐藤工業執行役員管理本部長・金子慶仙氏

 ◇経験と知識で判断力を養う◇

 入社して最初に配属された部署は東京支店経理課です。当時は簿記のボの字も知らず、「大丈夫だろうか」と不安な気持ちでいっぱいでした。まだ電卓が高価だった時代です。上司から長年にわたり使い込んできたと分かるそろばんを渡され、女性社員に鍛えてもらいながら覚えていきました。こうして振り返ると、新人の頃は会計の参考書も読み、とにかく足を引っ張らないようにするので精いっぱいだったと思います。

 無駄口などはほとんどなく、聞こえてくるのはそろばんの音だけ。そんな職場で緊張感のある日々を過ごしていることなど知らず、現場に出ている同期の事務系社員から「経理課は女性が多くていいな」などとうらやましがられるのは困ったものでした。

 経理課におられた一つ年上の先輩は、同じことを2度は絶対に教えないという厳しい方でした。入社から3カ月ほどたった頃からでしょうか。何とか仕事の流れが分かり、社会人としての意識も持てるようになると、大変に厳しかった先輩が徐々に優しく接してくれるようになりました。最初の数カ月間は「甘やかすとろくでもないヤツになる」と新入社員の私をあえて厳しく指導してくれていたのかもしれません。経理課にいた3年間で、自分で考え行動するという基本姿勢を学ぶことができました。

 続いて建築、土木それぞれの現場で事務を担当しました。現場というのは一つの会社組織と同じであり、所長が社長なら、事務担当者は社歴が浅くても総務部長としての役割を果たさなければならないという自負を持って仕事に臨んでいました。

 多い時には十数現場の事務を担当し、毎週のようにある起工式や竣工式の準備に追われていた時期もあります。徹夜で竣工資料を作成し、翌日に式典の司会を務め、それが終わると次の現場の式典を担当するといった目まぐるしい日々でした。準備が間に合わず、失敗したこともありましたが、周りの人たちの協力もあって役割を果たすことができました。

 どんな経験でも自分の身になって返ってくるものです。起きた問題には必ず本質があり、うわべではなく、そこをよく把握することが大切です。本質を見極めた上で判断する。この判断力を養うには経験と知識が必要です。経験に加えて知識を持っていなければ判断できませんし、人を説得することもできません。

 若い人たちにはタフであり、「よしやってやろう」という気構えを持ってほしいと思っています。働き方改革というのは簡単に実現できるものではなく、知恵の出しどころです。若い人たちからも「そうではなく、こうしましょう」などといった提案がどんどん出てくることを期待します。

 (かねこ・よしのり)1984年慶応大法学部政治学科卒、佐藤工業入社。札幌支店管理部長、東京支店管理部長、東京支店管理部長兼札幌支店管理部長兼東北支店管理部長などを経て、15年9月から執行役員管理本部長兼コンプライアンス・人権啓発推進室長。東京都出身、57歳。

入社1年目、仕事始めの日に東京支店経理課の同僚と

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