2018年1月4日木曜日

【職人が語る「技の極み」】左官・三上誠司さん(三上工業)

 ◇こてさばきで多様な表現、進歩続ける職人魂◇

 建設現場には、ベテランの職人から若い技能工まで幅広い年齢層の人材が従事し、職種ごとの施工が行われている。現場で直接ものづくりに携わった仕事の成果は、地図の上にも形が残り、他産業ではなかなか味わうことができない喜びと醍醐味(だいごみ)がある。「現代の名工」から若手まで4人の技能工に、建設の魅力は何か、普段どのようなことを意識して施工に臨んでいるかなどを語ってもらった。

 青森で生まれ育った幼少期に、左官屋が大きな家の土の壁をしっくいの白い壁に塗り替えた光景が目に焼き付いた。とにかく家を出て自分の道を見つけ、生きていこうと考えていた中学時代。地元の職業訓練校に左官の科目があることを知り、これだと思った。

 それから半世紀以上にわたって左官業一筋で生きてきた。昨年11月、卓越した技能を持ち、各分野の第一人者とされる「現代の名工」に選ばれた。会社の倒産など苦労も多かったが、「この仕事は奥が深く、何年たっても難しい。だから面白い」と言い切る。

 20年前に携わった「小田原城櫓門の復元工事」(神奈川県小田原市)は自身の職人人生の中でも忘れられない現場の一つ。地元の左官仲間らで、同じような工事が行われた城などを見て回りながら情報を収集。「分からないことだらけで苦労したが、職人としてすごく勉強になった」と振り返る。

 多様な種類のこてを駆使し、いろいろなものを作り、表現できる左官の仕事に無限の魅力を感じる。「職人をやっている限り、自分流でより良いものを考え、進歩を続ける努力が求められる」。過去と現代の技術・経験を掛け合わせながら、自分ならどのように早くきれいに仕上げられるかを常に考える。

 職人として自分を磨き続ける一方、後進の育成にも積極的に取り組む。左官業に魅力を感じて入ってくれた若手は仕事の難しさよりも、人間関係に悩んで辞めてしまうケースが少なくないという。中堅・熟練の職人たちには「すぐ怒らず、仲良く、現場の輪を大切に」と言い続ける。

 左官の魅力を広く伝えようと、学生たちへの出前講座や現場体験といった活動も頻繁に行う。「将来のことは簡単に決められないだろうが、若い世代が少しでも左官という仕事に興味を持ってくれればうれしい」。

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