2018年1月4日木曜日

【変わる建設産業の働き方】建設団体、労働時間短縮は不可避の課題

政府が「働き方改革実行計画」を閣議決定した17年3月以降、土木・建築の元請関係、設備関連の建設団体は、若い担い手の確保とともに時間外労働の罰則付き上限規制の導入に備えようと、週休2日の定着や時間外労働の段階的な削減を会員企業に促す措置を相次いで打ち出した。「難しいながら避けられない課題」(元請関係団体首脳)と認識し、現場作業の時間に制約を課すこともいとわない姿勢を見せる団体もある。働き方改革に伴って生産や受注を巡る建設会社の対応は今後、一段と慌ただしくなりそうだ。

 「土日の閉所は原則。工事を行うなら、特急料金を別にいただくような環境にしていかなければならない」。17年9月に「時間外労働の適正化に向けた自主規制」の導入に踏み切り、同12月に「週休二日実現行動計画」をまとめた日本建設業連合会(日建連)の幹部は、働き方改革と向き合うに当たっての決意をそう語る。

 工事量が豊富なために職員の1カ月の時間外労働が100時間超となっている労使協定が存在する建設現場は少なくない。建設業の年間総実労働時間は全産業平均に比べ約300時間も長く、施工管理に携わる技術者をはじめ建設会社の職員の労働時間の短縮は最優先の課題。担い手確保のための就労環境の改善と、6年後にも建設業に適用される時間外労働の罰則付き上限規制への備え、その両面からの取り組みが欠かせない。

 カレンダーに3連休が目立ち、19年には天皇陛下の退位と皇太子さまの新天皇即位による10連休も取り沙汰されるようになった。「月1回程度の土曜休みでは不十分」(専門工事業団体幹部)。若者に入職を促すために、休日を増やすことの必要性を専門工事業者は重く受け止めている。

 働き方改革のために複数の建設関係団体が打ち出した新しい取り組みは、いずれも工期を延伸し、生産活動のペースを緩めれば実現が見込める。「施主の協力を含めて全政府的なバックアップが必要」。建設業を罰則付き時間外労働規制の適用対象とするに当たって安倍晋三首相が出した指示に期待する声は小さくない。それでも建設業界側は「自助努力なしで(工期延伸などの)施主の理解は得られない」(別団体幹部)という認識で一致している。

 目指すのは休日確保・時間外労働削減と施主の期待に応えることの両立。工業化や自動化といった省力化工法を駆使するなど、生産ペースを落とさずに現場の造り方を変革する難題に挑んでいる。

 「週休2日が前提の工期設定で受注活動を展開するのか、他社の動向を注視したい」「競争のポイントは工期、生産性と人材を獲得できるかだ」「若者は休日を望むが、住宅ローンを抱えていたり、子育て世代だったりする職人の中には休日より収入を優先したい声がある」。

 働き方改革をめぐっては、ゼネコンや技能者などそれぞれの立場からさまざまな意見が噴出している状況にある。それでも働き方改革は「産業として生き残る条件」(山内隆司日建連会長)となった。個々の企業としても、産業全体としても、持続的な発展に道筋を付ける努力を重ねる1年になる。

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