2018年3月28日水曜日

【回転窓】江戸の「御船橋」づくり

江戸時代に将軍が日光社参や鷹(たか)狩りへと向かう際、川にいくつもの船を連ねて架けた仮橋は「御船橋」と呼ばれたという。どのような橋であったかが分かる貴重な絵図や史料を、千葉県野田市の上花輪歴史館が展示している▼嘉永2(1849)年、鷹狩りのため江戸川に架けられた御船橋は、長さ約131メートル、幅約5・5メートル。21もの船を並べて固定し、その上に丸太や板、ねこだ(大型のむしろ)、砂などをいく層にも重ねた▼専門知識はなくとも、この仮橋工事がいかに大掛かりだったかは容易に想像できる。しょうゆ醸造が家業の高梨兵左衛門家と豪農・石川民部家が工事を請け負い、完成までに11カ月を要したと記録されている▼幕府が大きな権勢を振るっていたとはいえ、周辺一帯から多くの船や資材、人材を集めた仮橋づくりに地域の協力は不可欠であったろう。数万人に上る武士や農民たちが動員されたという鷹狩りの歴史などを、そうした土木史の観点からたどるのも面白い▼上花輪歴史館で開催している春季企画展「御船橋」は7月29日まで。高梨家が保存してきた歴史的価値の高い居宅や庭園なども見学できる。

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