2018年3月7日水曜日

【現場を担う】東京メトロ・銀座線新橋駅改良土木工事(施工=大成建設)

 ◇良き相談相手と課題解決に奔走、技術者の高みを目指す◇

 東京メトロが総額500億円を投じ銀座線の全駅で進めるリニューアルプロジェクト。90年前に東洋初の地下鉄として誕生した銀座線の各駅では、大規模な改良工事が順次進められている。

 新橋駅(東京都港区)の改良土木工事は大成建設が施工を担当し、ホーム延伸に向けた既設トンネルの改良や支障物の撤去が進む。発注者と施工者が一体となり、日々のコミュニケーションを密に取りながら安全かつ円滑に作業を進める。

 銀座や新橋、汐留などのオフィス街で働く会社員ら、毎日多くの人たちが利用する銀座線新橋駅。1日の平均乗降客数は約25万人に上り、渋谷方面行きホームは出勤時間帯に改札階まで長蛇の列ができ、入場規制がかかるほどの混み具合だ。

 混雑緩和に向けて新橋駅では15年度に駅改良工事が本格スタート。渋谷方面行きホームを約27メートル伸ばし、利用客の滞留スペースを確保するとともに、地下1階の改札階と地下2階のホーム階を結ぶ階段や昇降設備を新設する。

 現在進行中の第1期工事は、20年度までにホームの渋谷駅側で上下線の間を掘削し、延伸スペースを確保。これまで利用客が少なかった西新橋方面改札を、円滑な旅客流動に配慮した位置に再整備する。続く第2期工事はホームの浅草側で昇降設備の移設・新設を行い、22年度の全体完成を予定している。

 工事の出来形や品質、進捗(しんちょく)確認などの管理業務に当たるのは、東京メトロ鉄道本部改良建設部第四工事事務所技術課第一担当の辻口貴大さん(24)。現場周辺には想定外の支障物が数多く埋まっており、その対応に頭を悩ます。

 「支障物を撤去するにはコストも工期もかかる。一方で、定めた完成時期や予算の枠もあり、さまざまな面で関係者と折り合いを付けていくのが難しい」と辻口さん。気になることが出てくる度に、間髪入れずに施工者側と頻繁に打ち合わせを行う。

 大成建設東京支店工事主任の吉永尚司さん(33)も良き相談相手の一人だ。同じ現場で働く若手同士の2人だからこそ、ざっくばらんに本音で話し合うことができる。

 その日の運行が終了し、き電停止中の夜間に現場は動きだす。現場の施工管理を担う吉永さんも、辻口さんと相談しながら支障物の問題など、現場で噴出する課題解決に奔走する。

 「施工者にとって、毎日動いている駅を傷つけず、列車の運行を止めないことが第一。その中で発注者の要望に応えて、安全作業で改良工事の工程を縮めることに知恵を絞り出す」と吉永さん。

 長い歴史を持つ地下鉄である銀座線のトンネルには、鋼材を溶接でつなぎ合わせた「鉄鋼框(かまち)」という珍しい構造が採用されている。地上部を走るJRの鉄道構造物の橋脚などが載っている箇所もあり、改良工事に伴う構造体への影響を抑えることに細心の注意を払う。柱などに測定器具を設置し、躯体のひずみなどをリアルタイムで監視している。

 現場勤務は苦労も多いが、その分やりがいも多い。この点は2人の共通認識だ。辻口さんは「現場で刻々と変わっていく状況を見るのは楽しく、特に自分が調整した作業がうまく現場に反映されているとうれしくなる」と話し、吉永さんも「改良工事の現場には先人たちが過去に造ったものに手を加え、つないで残していくという新設とは違った魅力がある」と強調する。

 西新橋方面改札とホームの間に新設する二つの階段のうち、掘削範囲に入らない方の階段は昨年12月に供用を開始。動線を切り替えた日の朝、2人とも階段の利用状況が気になり、現地へ様子を見に行った。目立った混乱もなく、スムーズに流れる人波にほっとすると同時に、工事関係者として喜びを感じた。

 最近、結婚した吉永さんは子どもに自分が造ってきたものを見せることを夢見る。「土木構造物は建築ほど主張するものはないけど、そこに当たり前のようにあり続けることの大切さを伝えたい」と話す。独身の辻口さんも「早く家庭を持ち、これからも技術者として頑張り続ける力にしたい」と考えている。

 発注者と施工者。立場は異なるが、技術者として高みを目指す志に違いはない。これからもさまざまな思いを抱きながら、ともに土木の道を歩み続ける。

 《工事概要》

 【工事名】 銀座線新橋駅改良土木工事

 【発注者】 東京メトロ

 【施工】  大成建設東京支店

 【工事場所】東京都港区新橋2の7

 【工事数量】掘削440m3、コンクリート造の工作物(鉄鋼框構造部を含む)の解体360m3など

 【工期】  2015年2月~22年6月

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