2018年5月2日水曜日

【現場人】佐藤機工・新堀文也さん

 ◇職人とのコミュニケーション重視◇

 神奈川県立磯子工業高校の定時制を昨春卒業。建設揚重業の佐藤機工(横浜市金沢区、大平道成社長)にクレーンオペレーターとして就職して1年が過ぎた。

 この間、数々の現場に赴き仕事をこなす新堀文也さん(20)が何より重視してきたのが「職人の皆さんとのコミュニケーション」だ。会社に入って間もないころ、オペレーターとして何をすべきかが分からず、職人たちに教えを請い得たことが自身の礎となっている。

 会社に入ったきっかけは、17年2~3月にかけて行われた「かながわクレーン塾」第5期の受講だった。建設業振興基金が厚生労働省から受託している建設労働者緊急育成支援事業の一環で行われ、技能訓練や資格取得、講習終了後の就職支援までをセットで行う。

 工高在学中に新堀さんは、アルバイトでとびの仕事をしていたこともあり、卒業後の進路として建設業界が視野に入っていた。そんな折、担任の教師から「こんなものがあるぞ」と渡されたのがクレーン塾の募集用パンフレット。オペレーターに必要な資格も取れるし、就職も支援してくれる。

 教師の誘いに乗りクレーン塾の訓練を通して玉掛け技能講習や大型特殊免許、移動式クレーン運転士といった資格を取得することができた。クレーンオペレーターに不可欠な技能を身に付けたことに加え、社会人として必要なマナー研修を受講できたことも大きかった。もともとコミュニケーションを取るのは得意だと自負していた。これに加え、名刺の渡し方や対話の仕方などを覚えたことは、就職後の新堀さんにとって大きな武器になった。

 オペレーターとして活動し始めたころ、現場での立ち居振る舞いに戸惑っていた新堀さんは、喫煙者ではないのに休憩時間に喫煙所へ出向いた。そこで職人たちに初心者だと説明した上で「皆さんはオペレーターにどんなことを求めていますか」と聞いて回った。相手の懐に飛び込むのは苦手ではなかったが、意を決した行動が現場で職人たちとのコミュニケーションを円滑にする上で、大きな効果を生んだ。こうした取り組みの成果もあり、クレーンオペレーターとして指名が掛かるようにもなった。

 1年間で赴いた現場は数え切れないが、それぞれに思い入れがある。目に見える仕事の成果はやりがいにもつながっており、「自分が従事した現場には休日、ふらっと立ち寄ることもある」。自分が携わった現場の仕事を家族や友人に自慢することもしばしばだ。

 訓練に当たって提出しておいた履歴書を見ただけで大平社長から「ぜひうちに」と声が掛かった。自宅が会社に近いこともあったが、その誘いにためらうことなく、就職を決めた。

 もしクレーン塾を受講していなければ、今の自分はない。あの時、パンフレットを見せて紹介してくれた工高の恩師には感謝してもしきれない。残念ながら工高の卒業式とクレーン塾が重なり、「最後のお礼ができなかった」ことは心残り。転勤してしまった恩師に「ありがとうございました」と素直な気持ちを伝えたいと今でも思っている。

 (しんぼり・ふみや)

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