2018年7月30日月曜日

【建設業の心温まる物語】イスルギ(石川県)・篠原光弘さん

 ◇あの時の職長の言葉が私を支えてくれた◇

 左官の職に就いて2年目の夏のころのことです。私は決して才能があるわけではありませんが、少しずつでも上達しているつもりでした。しかし、会社の酒の席で、私が周りの職人さんから「あいつはダメだ」「やる気があるのか?」と思われていることを知りました。頭の中が真っ白になり、仕事に自信が持てなくなってしまいました。

 そんなある日、職長のAさんが、担当している現場に呼んでくれることになりました。私は、「もしも、この現場で自分の腕が進歩しなければ、もう左官職は辞めよう。この現場が最後になるかもしれない」と決意しました。

 自分なりに必死でがんばったのですが、やはり小さなミスや聞き間違えによる不具合が続きました。なぜうまくいかないのかが分からなくなり、日に日にやる気がなくなっていきました。

 そんなある日、職長のAさんが「どうしたんだ」と聞いてくれました。私は胸のうちをAさんに正直に話しました。するとAさんからは説教やお叱りを受けることなく、逆に「分からないことがあるなら何度でも聞け。何回でもいいぞ。次に何かあったら電話して相談してきなさい」と優しく言ってくれました。私は次の日から本当に何度も相談しましたが、Aさんは面倒がらずに教えてくださいました。その結果、次第にミスが減っていったのです。

 今もまだ、一人前ではありませんが、あの時のAさんの言葉が私を支えてくださり、今もがんばって仕事ができています。

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