2018年8月22日水曜日

【回転窓】どんぐりの恵み

 フランスの昆虫学者ジャン・アンリ・ファーブルの『昆虫記』(全10巻)の初巻が出版されてから、今年は140年となる▼あらためて読んでも昆虫の不思議な生態に驚かされるが、『昆虫記』が書き続けられていたころの売れ行きはよくなかったようだ。子供だましの内容と非難されることもあったというから、人の評価は分からない▼この季節にコナラやクヌギの木の下を見ると、緑色の葉と若いドングリの付いた枝先が落ちていることに気付かれるのでは。ゾウムシの仲間ハイイロチョッキリがドングリに穴を開けて産卵した後、枝ごと切り落としているのだという▼ふ化した幼虫は実を食べて成長し、ドングリの外へ出て土の中でさなぎになる。ファーブルが生態を記したカシシギゾウムシも同じように産卵するが、こちらは枝を切り落とすことはしない▼ドングリには難敵の昆虫だが、地面に落ちたドングリすべてが芽を出したら森は枯れてしまう。そしてゾウムシにも人間と同じくドングリを平等に分けてもらう権利がある、とファーブルは書いている。『昆虫記』が名作として長年読み続けられる理由の一端であろう。

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