2018年9月10日月曜日

【駆け出しのころ】三機工業執行役員建築設備事業本部技術統括本部副本部長・野口哲氏

 ◇造り終えて満足してはいけない◇

 一緒に入社した同期56人ほどの中で、機械専攻の新人は私も含めて8人ほどいたでしょうか。まずは神奈川県逗子市にあった会社の研修所で2週間、続いて東京都内で2週間ほどの新人研修がありました。

 当時、新入社員は最初の1年間に施工現場と設計の仕事を半年ずつ経験することになっていました。私は初めに現場、次に設計の研修を受け、2年目に設計を行う建築設備事業本部設計部に配属となります。

 設計部では最初のころ、空調設備に関する基本計算ばかり行っていましたが、だんだんと小さな物件の設計も手掛けるようになり、4年目に初めて大型物件の設計に携わります。これは大学の移転に伴う大規模なプロジェクトで、私はその設計だけでなく技術部に異動し、施工管理も経験しました。

 大学の先生方からは着工後、設計図書の仕様とは異なるさまざまな要求が出されるなど、設計変更も多かったためにいろいろと対応に追われる日々でした。当然、大学の方針やコスト面での制約もあってすべての要求に応えることはできないのですが、実際の現場で建築が形づくられていくのを見られたことや、現場でさまざまな性能試験を行えたことも含め、このプロジェクトを担当できたのはその後につながる大変に貴重な経験になったと思います。

 これまで空調設計に一貫して携わってきました。自身が心掛けてきたのは机上の理論にとどまらず、必要であれば気流実験なども行って必ず確認することです。こうした設計に取り組む姿勢は、若いころに担当した現場での仕事がベースになっているのかもしれません。

 若い人たちに伝えたいのは、造り終えた時に満足しないことです。「これで満足だ」と思ってしまうと、その後に何かあるとリカバリーできないものです。あらかじめこういうこともあるだろうと想定し、リカバリーの方法も決めておくことが必要です。設計や施工でも最後の結果をどう捉え、さらにどう発展させられるか。ここまで考えることでエンジニアリング力が高まり、お客さんの信用を得られるのだと思います。

 今はインターネットがさまざまな情報源として利用される時代です。確かに書物などで調べるのと比べて早くて便利ですが、インターネットで得られるのは一般的な知識であり、系統立っている知識や情報では無いことが多い。そうやって理解したつもりになるのが怖く、調べた情報がどういうもので、本当に現状の環境下において正確なものと言えるかを考えなければいけません。仕事をしている時は集中しているので気が回らないとしても、ふとした瞬間にでも第三者的な目でものを見られるようになってほしいと期待します。

 (のぐち・さとる)1984年武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部機械工学科卒、三機工業入社。空調衛生事業部設計部設計課長、東京支社設計部設計副部長、同設計部長、同常任理事副支社長、建築設備事業本部常任理事技術統括本部副本部長などを経て、18年4月から現職。福岡県出身、58歳。

入社1年目、施工現場研修での1枚

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