2018年11月29日木曜日

【回転窓】生活習慣の見直しは睡眠から

睡眠は疲労回復や健康維持に欠かせない体調管理の一つ。十分な睡眠時間を確保できていない人が多いからなのか、最近「睡眠負債」という言葉をよく耳にする▼経済協力開発機構(OECD)が14年に実施した国際比較調査によると、日本人の睡眠時間は7時間43分(15~64歳平均)。最も長かった南アフリカと比べ1時間30分以上も短い▼現在取り組んでいる働き方改革では「勤務間インターバルの確保」も重要事項に挙げられる。短時間の断続的な休息ではなく、体をしっかり休ませることは、結果的に仕事の生産性向上につながる▼快適な睡眠を実現するためのビジネスチャンスも広がりを見せる。東京ガスはバイオ・IT企業と共同で、睡眠・疲労回復など健康をサポートするサービスの開発に乗りだした。睡眠中の生体データなどを分析し、働き盛りの人たちの疲労度の見える化と疲労回復のアドバイス、高齢者の健康見守りサービスを展開するという▼休日の寝だめでは蓄積した疲労やストレスは解消されず、睡眠のリズムなど体内時計を乱して逆効果になることも。自戒を込めて、ぜひ生活習慣の抜本的な見直しを。

【東京港臨港道路トンネル部、長さ134m】鹿島、国内最長の沈埋函を高精度沈設

 鹿島は28日、東京港臨港道路南北線(東京都江東区)の海底トンネル部分を構成する沈埋函のうち、初弾となる1号函の沈設作業が完了したと発表した。

 国内で最長となる約134メートル(幅約28メートル、高さ約8・4メートル)の沈埋函を高精度に施工するため、正確に誘導するシステムなどを導入した。過去の事例では、沈設精度が目標値から水平方向に100ミリ程度の誤差となることが多い中、5分の1の21ミリに収めた。

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【中部整備局長賞に吉原知里さん】中部建設青年会議「国土をつくる人写真展」の表彰式開く


 中部建設青年会議(吉川幸義会長)は27日、第7回「国土をつくる人」写真展の表彰式を名古屋市内で開いた。

 今回のテーマは「建設業で輝く若者」。中部5県から応募があった193作品の中から中部地方整備局長賞1点、中部建設青年会議会長賞2点など9点の優秀作品が選ばれ、勢田昌功中部整備局長や吉川会長らから表彰状が贈られた。

 写真展は、社会資本整備に携わる地域建設業や、そこで働く人たちの姿を広く知ってもらい、魅力ある建設業を育成する目的で開いている。表彰式で吉川会長は「テーマがにじみ出る作品だった。写真展を通じ地域で活躍する若者の姿を紹介していきたい」、勢田局長は「今後も業界と一緒に建設業の魅力づくりに取り組んでいきたい」とあいさつした。表彰式後、山根孝之中部整備局企画部技術調整管理官が生産性向上をテーマに講演した。

 受賞者、作品名は次の通り(敬称略)。

 【中部地方整備局長賞】

 ▽吉原知里(中部土木)=僕に任せてください!

 【中部建設青年会議会長賞】

 ▽紀伊保(矢作建設工業)=目力と汗

 ▽村松圭介(吉川建設)=仕事 笑顔 二刀流!

 【建設産業再生賞】

 ▽栗屋剛(木曽土建工業)=高所作業中!

 【中部建設青年会議長野県南部支部長賞】

 ▽池田直史(ヤマウラ)=輝く現場

 【同岐阜県支部長賞】

 ▽伊藤巧(大脇建設)=道路の安全を守るために

 【同静岡県支部長賞】

 ▽長谷川直紀(中林建設)=ものづくりから国づくりへの第一歩

 【同愛知県支部長賞】

 ▽冨田結有(中部土木)=誘導は僕に任せて

 【同三重県支部長賞】

 ▽後藤博伸(アイケーディ)=昔はタケコプター?今はドローン!。

【JR東海が立坑工事現場を公開】リニア新幹線・北品川非常口、深さ90mの立坑掘削が完了


 ◇東京・品川に巨大な穴◇

 JR東海は28日、東京都品川区で施工中のリニア中央新幹線(東京・品川~名古屋間)「北品川非常口」の現場を報道陣に公開した。都市部の非常口の現場内部を公開するのは初めて。北品川は首都圏9カ所に設ける非常口の中でも先行して工事が進む。現在は内部の壁の構築に向けた鉄筋の組み立て作業が進んでいる。

 北品川非常口の建設地は北品川4。リニア新幹線品川新駅から1・5キロ南側に位置する。工事期間はリニア新幹線が走行するトンネルを構築するシールドマシンの発進立坑となる。開業後は避難設備や換気設備などを設け、非常口として活用する。

 JR東海は北品川非常口の工事契約を16年4月に結び、工事に着手。地中連続壁の構築を経て、今年6月に地下約89メートルの掘削が完了した。今月10日には底面のコンクリート(厚さ約6メートル)の打設を終えた。

 ◇内部の壁面構築作業進む◇

 北品川非常口の現場について、現場で取材に応じたJR東海の吉岡直行中央新幹線建設部担当部長は「京浜東北線や東海道新幹線といった鉄道に加え、目黒川、山手通り(環状6号線)にも面している中、固い地盤を掘削する難易度の高い工事」と説明。「関連する地域と連携を密にしながら、工事の安全と環境の保全に配慮していく」と話した。

 北品川非常口の掘削や、南側に設ける変電施設の地下部の施工は、清水建設・鴻池組・竹中土木・名工建設JVが担当している。工期は20年7月まで。非常口は北品川のほか、首都圏8カ所、中京圏4カ所で計画。およそ5キロ間隔で整備する。

 北品川非常口は第一首都圏トンネル(延長約36・9キロ)のうち、東京都港区港南~川崎市中原区等々力間(延長約9・2キロ)の発進立坑となる。

 トンネルの都内区間はほとんどが地下40メートル以上の大深度地下となる。施工者は熊谷組・大豊建設・徳倉建設JV。現在、シールドマシンの設計作業中で、発進に向けた準備が着実に進んでいる。

 吉岡担当部長は「土かぶりは最大90メートルに及び、難工事が予想される。地域住民に十分な説明をしながら進めていく」と語った。

2018年11月28日水曜日

【回転窓】「きみたちはどう生きるか」

師走をにぎわすイベントの一つに「ユーキャン新語・流行語大賞」の発表がある。その年の世相をよく反映し、多くの話題に上った言葉を選ぶもので、今年は12月3日に大賞が発表される▼候補に挙がっているのは、平昌冬季五輪のカーリング女子日本代表メンバーが使った「そだねー」、サッカーワールドカップロシア大会で活躍した大迫勇也選手を称賛する「(大迫)半端ないって」など30語。今年は国際舞台で活躍する日本選手に関する用語が目立つという▼一方で「あおり運転」や「悪質タックル」なども候補に。いずれも眉をひそめてしまう言葉だが、それだけ社会的な影響が大きい出来事だったと言えよう▼候補の中でも小欄が注目するのは「君たちはどう生きるか」。約80年前に出版された名著のタイトルで、漫画家の羽賀翔一氏が漫画化し、これまでに200万部を超える大ヒットとなっている▼この作品づくりと土木には意外な関係がある(本紙4月5日付1面に羽賀氏インタビュー)。流行語大賞の行方は分からないが、作品を読みながら、なぜ今、多くの人に受け入れられているのかに思いを巡らせるのもいい。

【改正JISと新構造規格に対応】スリーエムジャパン、日本人向けフルハーネス型安全器具で攻勢


 ◇欧米で得た製品開発のノウハウ活用◇

 来年2月1日から改正労働安全衛生法令が施行され、建設現場で着用する墜落制止用器具(安全帯)の規制が厳しくなる。

 スリーエムジャパン(東京都品川区、スティーブン・ヴァンダー・ロウ社長)は、高所作業での着用が原則化される身体の複数箇所を支持するフルハーネス型の販売に注力している。同社の製品は厚生労働省の告示で定める新しい構造規格や改正JIS(T8165)に適合済み。作業の汎用(はんよう)性でも日本人ならではのこだわりに合わせ工夫を凝らしている。

 同社は75カ国以上でフルハーネス型墜落制止用器具の販売実績がある。昨年1月から日本でも販売を始めた。背景には、日本の建設現場で突出して多い墜落・転落災害を防ぐ観点から、安全帯の標準タイプを従来の胴ベルト型からフルハーネス型に移行する厚労省の方針があった。

 主に米国で人気が高い「3MDBI-サラエグゾフィットネックス」(想定売価5万2500円)と、欧州で人気の「3Mプロテクタ」(1万3800円)の販売を先行している。

 ◇作業員の使いやすさと安全性を追求◇

 昨年10月からは、日本人作業員を念頭に置いた「3MDBI-サラエグゾフィットライト(回転式ベルトアジャスター)」(2万9000円)と「同(パラシュート式ベルトアジャスター)」(2万7000円)の販売を開始。先行品と同様の安全機能を確保した上で、日本人の要望を踏まえ着脱やフィット調整のしやすさに配慮した。

 同社製品はすべて年明けに告示される新構造規格と、細則を定めた改正JISに適合している。落下・宙づり時、体を圧迫する力を臀部(でんぶ)全体に分散。太ももに装着したベルトが股に食い込んでしまうのを抑制する骨盤サポートベルトも採用している。宙づり時の姿勢安定性としゃがんだ姿勢での作業のしやすさを両立させる「X字」型の背面ベルトを導入している。

 日本人向けの2製品では、作業員が腰に装着するケースが多い道具ベルトとの併用も考慮。各国で販売してきた製品と比べ、道具ベルトを通しやすくした。

 同社の中辻陽平安全衛生製品事業部事業部長は、命綱に当たるランヤードも含めたフルハーネス型について、18年第3四半期(7~9月)の売り上げが前年同期比で約5倍に増えていると説明。19年は前年比3~5倍程度の売り上げを目標としている。法令で規定されるフルハーネス型着用者向けの特別教育をサポートする取り組みや、周知活動にも注力していくという。

【デベやIR関連企業の提案活発化】2025年大阪万博、都市開発の機運醸成に追い風

2025年万博の会場になる大阪湾の人工島「夢洲」
2025年国際博覧会(万博)の大阪・関西開催が決定し、デベロッパーなど関連企業の開発機運が高まっている。大阪市内で大規模な開発事業を推進している三菱地所の吉田淳一社長は「日本がますます国内外の注目を集める機会となり、人やモノ、投資資金を呼び込むことで日本の持続的な成長につながる」と語った。万博の隣接地ではカジノを含む統合型リゾート(IR)の開発に向けた検討が本格的に動きだす。欧米のIR関連企業による提案活動も一段と活発化する見通しだ。

 万博の会場は大阪湾の人工島「夢洲」の約155ヘクタールに整備される。パビリオンなどの施設建設に約1250億円を投じる見通し。地下鉄など交通インフラの整備・拡充も進めるほか、万博の隣接地では大阪府・市がカジノを中核とするIR施設を24年度までに開業させる考えを表明している。

 陸側でも大規模な開発プロジェクトが始動。JR大阪駅北側に広がる「うめきた2期地区」(大阪市北区大深町)の開発事業者として、都市再生機構が三菱地所を代表とする民間15社のグループを7月に選定。約4・6ヘクタールの敷地にオフィスやホテル、商業施設、マンション、MICE(国際的イベント)施設など、総延べ52万平方メートル超の施設群を建設する。

 万博前年の24年夏には「うめきた2期」開発事業が街びらきを迎える予定。吉田社長は「うめきた2期のプロジェクトでは『みどりとイノベーションの融合拠点』を街づくりの目標に掲げ、中核機能として国際集客・交流施設のほか、最先端技術を積極的に取り入れたイノベーション拠点を整備する」と説明。未来志向の考え方は大阪万博の方向性と類似していることを踏まえ、地域の発展・活性化や日本の国際競争力の向上などで相乗効果をもたらすことに期待を込める。

 他のデベロッパー関係者からも「大阪万博を機に交通インフラの拡充など、未来に向かい、より継続的・持続的な経済効果をもたらすような大阪湾部の開発を望む」(大京幹部)、「万博のオフィシャルスポンサー・パートナーとして関わっており、大阪という土地が注目される起爆剤となり、長い目線で非常に影響力のあるイベントだ」(東京建物関係者)といった期待の声が上がっている。

 日本市場でIR施設の開発プロジェクトへの参入を目指す欧米の関連企業も大阪万博の決定を大きな商機ととらえている。米ラスベガス・サンズのグローバル開発担当者は「万博とIR施設の相乗効果によって、大阪を国際観光都市としてさらなる段階へ発展させる。大阪の新たな歴史を刻むことに貢献できる日が来ることを楽しみにしている」とコメントを発表。香港のメルコリゾーツ&エンターテインメントの首脳も「プレミアム層の観光客を引きつける21世紀型の新しいIRをつくることで、日本経済に貢献していく」とメッセージを発信した。
米シーザーズ社が公表した大阪でのIR施設開発イメージ
今秋、米シーザーズ・エンターテインメントが大阪を含む国内4カ所を想定したIR施設の開発構想案を公表。今月5日にはオーストリアのカジノオーストリアインターナショナルが日本市場への参入を表明した。東京五輪が閉幕した後、国内経済の持続的な成長をけん引する役割として、大阪万博を契機にしたビジネスチャンスは膨らむことになりそうだ。

【民間活力の導入を想定】都立明治・代々木公園再整備(渋谷区)の配置施設案公表

東京都は27日、渋谷区の都立明治公園と都立代々木公園の拡張に向けた整備計画のコンセプトや配置施設のイメージなどを明らかにした。

 明治公園は都営霞ケ丘アパート跡地など1・6ヘクタール(新宿区霞ケ丘町)を公園区域に追加し、新たなにぎわいや緑を創出する。代々木公園は公園南側の未開園区域1・2ヘクタール(渋谷区神南1)を開発し、交流施設や都水道局の関連施設などを整備する。両公園とも民間活力の導入を目指す。

 明治公園の開園面積は2・8ヘクタール。園内には東京体育館などのスポーツ施設が立地する。2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとして日本スポーツ振興センター(JSC)が建設中の新国立競技場の人工地盤の一部と、競技場南側の霞ケ丘アパート跡地を活用し、公園を拡張する。

 アパート跡地西側をにぎわいと交流ゾーン、東側を豊かな緑ゾーンに位置付ける方向だ。にぎわいと交流ゾーンは、民間活力を生かしたにぎわい施設(飲食店、物販店舗、遊び場、アウトドア空間など)の配置を見込む。計画地近隣を旧渋谷川が流れていた歴史を伝える水辺空間も一体で整備する。豊かな緑ゾーンでは、計画地が含まれる神宮外苑地区などの緑と連続した樹林、憩いの場などを創出する。

代々木公園の開園済み面積は54ヘクタール。未開園区域には解体が予定されている岸記念体育会館や、都水道局が改修を検討中のポンプ所などがある。この区域北側を緑と集いのゾーン、南側を雑木林とヒーリングガーデンのゾーンに指定するイメージを持つ。

 緑と集いのゾーンはJR渋谷~原宿駅間の結節点となるよう、飲食店や物販店舗、子育て支援施設、スポーツ施設、宿泊施設などの配置を想定する。用途の複合化も検討する。区域南側のゾーンにある水道局のポンプ所は給水所として改修する。水道施設の上部空間も活用し、オフィスと住宅が混在する隣接市街地に配慮した空間を構築する。

 都から両公園の整備計画審議を諮問されている都公園審議会(会長・高梨雅明日本公園緑地協会副会長)は19年1月の中間まとめ、同2月の意見募集を経て同5月の答申を目指す。都は答申を踏まえ、設計に移行する。整備着手は五輪などの閉幕後になる見通しだ。

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/建設現場の求人難が深刻化

週52時間労働制適用と政府の不法外国人労働者集中取り締まりで建設現場の「求人難」が深刻化している。外国人労働者が主に活動する鉄筋コンクリート工種を中心に建設現場で働く技能労働者の採用が困難に直面している。

 首都圏の鉄筋専門建設会社の関係者によると、作業時間が制限されても、発注者からは工事費や工期は「当初契約通りに」と要求され、そのことが人手不足に拍車を掛けているという。

 韓国建設産業研究院が30社の総合建設業者を対象に実施したアンケートでも、4割以上の会社が「季節的・一時的に人材需要対応が不可」を問題点に上げる。

CNEWS、11月19日)

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/三菱重工が廃棄物処理発電を検討

ホーチミン市人民委員会のレ・タイン・リエム副委員長は7日、三菱重工業の河相健常務執行役員と会談し、廃棄物発電施設の建設計画などについて協議した。

 河相氏はベトナムの経済センターである同市で、都市開発に伴う社会課題の解決に向けて協力していくことを表明。これまで同社がベトナム国内で行ってきた部品製造やインフラ整備などからさらに発展させ、人材育成を通じた最先端技術の展開を支援するとした。

 三菱重工業は廃棄物処理事業で40年の実績を持ち、世界各国で314施設の建設を手掛けてきた。会談で河相氏は、地域の条件に合った発電技術を適用し、地元への技術移転を図りたいと述べた。ホーチミン市と同社は、近く協力事業の詳細について協議を始め、PPPの事業モデルを検討することで合意した。

セイ・ズン、11月15日)

2018年11月27日火曜日

【回転窓】市場移転後の築地

 東京都中央卸売市場「豊洲市場」が開場して間もなく50日。市場移転正式決定から17年。土壌汚染問題など紆余(うよ)曲折を経ての開場だっただけに当初は種々の混乱も報じられたが、新しい物流システムが徐々に軌道に乗ってきたようだ▼市場移転後の築地はどんな様子かと、お昼時に合わせて足を運んでみた。休市日に当たる水曜は場外市場商店街が指定する自由営業日であったが、銀座に近い地の利もあって、平日ながらまっすぐ歩けないほど多くの人出でにぎわい、その8割近くを訪日客が占めていた▼築地が「市場のまち」として都内でも有数の観光スポットとなり得たのは、プロのための場内市場だけでなく一般も利用できる場外市場があったことが大きい。店舗数460店。鮮魚はもとより、魚類加工品、生鮮品、乾物から調理道具、厨房器具まで手に入る▼場内市場の豊洲への移転で場外市場の来客数減少を危惧する声が多く聞かれ、実際、移転直後は売り上げの落ち込みを嘆く店主のため息も漏れ聞こえていたものの、安定したインバウンドの需要に支えられ、ひとまずは胸をなでおろしている様子だった。

【2025年万博、大阪招致決まる】建設業界は技術力で貢献、関西圏発展の起爆剤に

淡路島や明石海峡大橋を背景にした会場イメージ
(経済産業省の公表資料より)
2025年国際博覧会(万博)の開催地が大阪・関西に決まった。大阪湾の人工島「夢洲」を舞台に185日間(25年5月3~11月3日)にわたって開かれ、持続可能な共通ビジョンを作る世界的な取り組みが推し進められる。2020年東京五輪・パラリンピックに続く大規模国際イベントの招致成功に、建設関連業界も施設や関連インフラの整備で貢献する意向を示す。

 招致決定を受け、安倍晋三首相は26日の衆院予算委員会で「世界中の人に夢や驚きを与え、日本全体を明るくするように全力を尽くしたい」と述べた。

 今後は、開催に向けて招致委員会(会長・榊原定征経団連名誉会長)を引き継ぐ新組織が立ち上がる予定。国や経済界、自治体などで構成し、民間負担の調整役などを担うことになる。新組織トップへの就任が取り沙汰される中西宏明経団連会長は同日、明確な態度は示さなかったが、20年五輪後の重要イベントを「皆が結集しやすい目標ができた」と歓迎する考えを示した。

 会場は夢洲内の約155ヘクタール。パビリオンなどの施設建設費に約1250億円を見込み、国と自治体、民間事業者が負担。会場へのアクセスとして大阪市は大阪メトロ中央線延伸を計画する。大阪府・市は隣接地にカジノを中核とするIR(統合型リゾート)を24年までに開業させたい考えだ。
開催決定に沸くビューイング会場
(24日未明、大阪市北区のリーガロイヤルNCBで)
ハード整備を担う建設業界では、日本建設業連合会(日建連)の山内隆司会長が同日の会見で「明るい話題が増え、日本に活気が生まれればこれに勝るものはない」と喜びを語った。

 建設投資の集中で労働需給が逼迫(ひっぱく)するのではとの懸念に「生産性を上げるなど対応能力を高め、需要がこなせるよう足腰を鍛えていきたい」と決意表明した。全国建設業協会(全建)の近藤晴貞会長は「成功に向けて協力していく」とコメントした。

 大手ゼネコン各社も「関西経済圏のさらなる発展に寄与したい」(大林組)、「博覧会コンセプトの具現化に貢献できるよう務める」(竹中工務店)、「国を挙げたイベントに貢献できれば」(鹿島)、「資材高騰、労務不足など課題はあるが要望に応えるべく取り組む」(清水建設)、「魅力ある建設業の構築を実現する契機とも考えられる」(大成建設)などとした。不動産業界も大手を中心に「大阪という土地が注目される起爆剤となるだろう」と期待を寄せている。

【会社の姿、ありのままに】大豊建設、新卒採用向けパンフレット刷新

 大豊建設は、新卒採用活動向けのパンフレットを刷新した。土木の三大特許技術や建築の最新施工実績など、同社を印象付ける記事を多く掲載した。

 雑誌のような編集を意識し、若い世代に読みやすく興味を引きやすいフォントやレイアウトを採用した。「新しい価値」を創造し、変化し続けるニーズに寄り添う同社の姿を表現したという。

 同社は19年3月に創立70周年を迎え、「新生大豊」の出発の年と位置付ける。パンフレットは「ありのままに伝える」がコンセプト。インタビュー対象者として、若手の教育を行いながら異なる世代の価値観に接している現場所長を選んだ。入社後のギャップを少なくするためにも、「今の若手をどのように考えるか」を率直に答えてもらい、人材育成の現状とこれからを紹介している。

 社会人として日々成長している入社4年目の社員にアンケートも実施。「上司に対してどんなイメージを持っているか」「入社して身に付いた処世術とは」などの意見を紹介するコンテンツ「リアルな大豊建設」を設けた。

 パンフレットの編集を手掛けた管理本部人事部人事課の橘ひかるさんは、「見た目で学生の目に留まり、読んでいて飽きることがなく、最後まで内容が伝わるようものにしたかった」と狙いを説明する。

 A4判10ページ(表・裏表紙除く)。1000部を発行した。2年程度のスパンで改訂を予定している。17日に東京都内で行われたインターンシップ(就業体験)イベントで配布した。

【メインスタンドを段階的に改修】中山競馬場スタンドリフレッシュ2期(千葉県船橋市)、105億円で安藤ハザマに

日本中央競馬会(JRA)は、「中山競馬場スタンドリフレッシュ(第2期)工事」の施工者を105億6300万円で安藤ハザマに決めた。

 1990年に完成したメインスタンドを大規模リニューアルする。22日に一般競争入札(WTO対象)を開札した。予定価格は非公表。入札には同社のほか大成建設(入札価格106億9000万円)が参加した。

 総合評価方式を採用。技術評価点は両社ともに130点だったため、1番札の安藤ハザマが総合評価値1・14で落札を決めた。

 「中山競馬場がウマれかわる。」をコンセプトに、中山競馬場(千葉県船橋市古作1の1の1)のメインスタンド(S造地下1階地上6階建て延べ11万1114平方メートル)を段階的に大規模改修する2期目の工事。建築と電気・機械設備の改修を一括で行う。工期は21年11月30日まで。実施設計は松田平田設計が担当した。

 1期工事は松田平田設計の設計、安藤ハザマの施工(落札金額55億9440万円)でゴンドラ指定席や女性用トイレなどをリフレッシュする工事が進んでいる。工期は19年3月末まで。

【候補地6カ所、建設費101億円以上】鹿児島市、サッカースタジアム立地調査で中間報告

鹿児島市は22日、有識者らの「サッカー等スタジアム整備検討協議会」を開き、都心部を対象に実施しているスタジアム建設に関する立地調査の中間報告を提示した。

 県有地3カ所を含む6カ所を候補地に挙げ、既存建物解体や付帯施設整備も含めた建設コストは約101億~161億円と試算した。19年1月に開催予定の次回会合で協議会としての方針を固め、市長に報告する予定だ。

 中間報告によると立地調査の前提となるスタジアムはサッカーJリーグ1部(J1)の施設基準を踏まえ定員1万5000人規模を想定。

 都心部の3ヘクタール規模の候補地として〈1〉浜町ゴルフ練習場(浜町、想定敷地面積約3・4ヘクタール)〈2〉浜町バス車庫(同、約4・1ヘクタール)〈3〉かんまちあ(同、約4ヘクタール)〈4〉ドルフィンポート(本港新町、約3・3ヘクタール)〈5〉住吉町15番街区(住吉町、約3・1ヘクタール)〈6〉鹿児島中央駅西口(武、約5・1ヘクタール)-の6カ所を挙げ、法令などの適合性やアクセスなど6項目で評価した。

 法令などの適合性では〈2〉〈4〉〈5〉は臨港地区のため建設するには知事の許可が必要となる。西日に配慮したスポーツ施設としての立地は〈4〉〈5〉〈6〉が優れ、アクセスは公共交通機関では〈6〉が最も優れていた。商業用地への波及効果は〈4〉〈5〉が大きかった。

 建設コストについては本体建設費を約101億円と想定。これに既存建物の解体や付帯施設の整備を含めた場合、線路の一部が整備地に含まれる可能性が高く人工地盤の整備を検討する必要がある〈1〉が最も高額な約161億円。敷地が手狭で護岸の埋め立てが必要な〈5〉が約138億円でこれに次いだ。これら以外は約101億~106億円で解体費、付帯施設ともに不要な〈4〉が最も安価と試算した。〈4〉〈5〉は県有地で県が鹿児島港本港区エリアの開発に向けたグランドデザインを策定中、〈6〉は県が総合体育館の建設構想の策定を進めている。

 全体の考察では〈1〉は人工地盤の整備検討と関係者との協議・調整、〈2〉〈3〉は既存施設の移転や代替用地確保、〈5〉は護岸の埋め立て、〈6〉は県やJR九州、日本郵便の所有地だけでは手狭なため周辺の民有地を含めた用地の確保と周辺環境への影響を踏まえた対策などをそれぞれ比較的大きな課題として挙げた。

 スタジアムはサッカーJ3に所属する鹿児島ユナイテッドFCのホームスタジアムとすることを想定している。立地調査業務は梓設計が担当。

【記者手帖】切手に時代の変遷を見る

1964年の東京五輪を控えた時期に発行された寄付金付き切手の小型シートを求めて切手店を訪ねた。全6種類がそろっており、購入することができた。店のご主人に聞くと、2020年東京五輪が近づいてきた影響もあって、前回の五輪関連の切手を探しにやってくる客が増えているそうだ◆購入ついでに日本切手カタログも買い求めた。戦前から今日までに発行済みの全ての切手を完全収録したカタログだ。帰宅して見ていると、面白いことに気付いた◆高度成長期に鉄道、橋を含めた土木施設完成を祝う記念切手が非常に多い。56年の佐久間ダム、57年の小河内ダム、58年の関門トンネル、59年の児島湾堤防、62年の北陸トンネル、若戸大橋、63年の名神高速道路、64年の首都高速道路、東海道新幹線、69年の東名高速道路、73年の関門橋…。今も日本を支える施設がめじろ押しだ◆以降、その数は極端に減り、平成では北海道新幹線開業だけ。土木施設への関心が薄れているのか。それとも切手の魅力が低下しているのか。カタログに時代の移り変わりを見た気がする。(石)

2018年11月26日月曜日

【回転窓】女性も活躍する業界に

体力では、どうしても男性にかなわない面がある。だからどうすれば良いか考えた-。まだまだ男社会な建設施工の分野で奮闘する女性職人の方からそんな話を聞いた▼鉄筋工として「建設マスター」に選ばれた小林美穂さん(関西スチールフォーム)。現場作業前に図面から必要な材料を調べる「拾い出し」作業を丹念に行い、現場作業ができるだけ少なくなるよう鉄筋加工の指示を出すという▼同じく鉄筋工として働く中村奈々さん(正栄工業)も現場で資材が運びやすくなるよう置き方や段取りを工夫し、体力面をカバーするのだと話してくれた▼鉄筋工事業界には全国の現場や加工場で働く女性が276人いるという(全国鉄筋工事業協会調べ)。協会は女性技能工のネットワークを作って情報を発信し、女性も働きやすく、できるだけ多くの入職希望者を迎え入れられる環境の整備に取り組み始めた▼少子高齢化で労働力人口は減少が続く。女性の活躍に期待し、建設業では働きやすい環境づくりが精力的に進む。知恵や工夫でより良い仕事の在り方を探る。小林さんらの取り組みは働き方改革の推進で参考になるはずだ。

【高力ボルトが足りない】需給逼迫、納期長期化で工期に影響も

建築構造材の接合などで使用する「高力ボルト」が足りない-。

 国土交通省が10月時点の動向を調査した結果、全国的に需給が逼迫(ひっぱく)傾向にあり、通常1・5カ月程度の納期も6カ月程度まで長期化していることが分かった。旺盛な建築需要と鋼材供給の遅れが主因。納期の遅延が工期にも影響している。3カ月後も同様の傾向が続く見通しだ。

 国交省は建設現場で高力ボルトの需給逼迫の声を受け、鋼材などを取り扱う供給と需要の両者を対象に緊急調査(10月25日~11月2日)を実施。有効回答は305社で、このうち高力ボルトの取り扱いがあると答えたのは159社だった。

 調査結果をみると、全国平均で価格は「やや上昇」、需給は「逼迫」となった。地域ごとのばらつきはなく、全国的に「やや上昇」「逼迫」の傾向となった。3カ月後も同様の傾向が予想されている。

 納期も長期化していることが判明。要因には「ここ数年建築の物件が多く、鉄骨需要が旺盛な状況が続いている」をはじめ、「鋼材の供給が追い付かず、ボルトメーカーの生産が需要に追い付いていない」や「溶接工不足により鋼材の継ぎ手部がボルトに変更されたため需要が増えた」といった回答が寄せられた。

 納期の遅延が工期に影響していると約8割の社が回答。対応策には「工期や工法の変更などを発注者と協議している」「必要なボルトの早期発注を行う」などが上がった。

 建設だけでなく自動車や機械などでも鋼材需要が増加している。鉄鋼メーカーはフル生産を続けているが、需給緩和に向けて「なかなか打つ手が見つからない」(土地・建設産業局建設市場整備課)状況にある。

【新橋駅前ビル1号館などを再開発】新橋駅東口地区再開発(東京都港区)、事業協力者に大成建設

 新橋駅東口にある「新橋駅前ビル」(東京都港区)を中心とする区域で再開発事業を計画している新橋駅東口地区再開発協議会(加藤功時会長)は、事業協力者を大成建設に決めた。

 年内に事業の基本構想をまとめ、19年3月に準備組合を設立する予定だ。施設計画の作成に当たり、19年度にデベロッパーも選定する。20年の都市計画決定、22年の着工、27年の竣工を目指している。

 複数の鉄道路線が乗り入れる新橋駅は乗降客が多く、駅東口は都営バスやタクシーの乗降場など交通インフラが交錯している。協議会は、混雑する駅至近での再開発事業は難工事になると見ており、事業協力者を建築・土木工事に精通したゼネコンにすることにした。加藤会長は「これまでは助走期間だったが、事業協力者の決定によってスタート地点に立てた」としている。施工者は別途入札で決める方針だ。

 再開発の検討区域は新橋駅前ビルを中心に、国道15号(第1京浜)と外堀通り、JR線路に囲まれた三角形のエリア。区域面積は約1・9ヘクタール(国道15号、外堀通りを除いた計測値)で、権利者(約280人)のうち約7割が協議会に加入しているという。
基本構想では基盤整備を中心に計画を練る。再開発によって交通インフラの複雑な構造を解消し、交通結節拠点としての機能を強化。再開発が進む西口と東口を地下で接続し、新橋エリア全体の回遊動線を確保することなども明記する方針。策定作業はコンサルタントとして事業参画するアール・アイ・エーが担当。今後大成建設が助言する。

 施設建築物の計画は都市再生特別区域制度の活用を視野に入れ、19年度に選定するデベロッパーとともに詰めていく。解体着工から竣工までの工期を5年程度と見込んでいる。駅東口の機能を維持しながら事業を推進するため、本体工事の工期を分割し、段階的に施工する方向で検討している。

 新橋駅前ビルは、1966年に都施行の市街地改造事業(再開発事業の前身)で竣工した。1号館(新橋2の20の15、SRC造地下4階地上9階塔屋3階建て延べ約3万3200平方メートル)と2号館(同2の21の1、SRC造地下3階地上9階塔屋3階建て延べ約7200平方メートル)で構成。駅西口にあるニュー新橋ビルと共に新橋駅周辺のシンボルとして親しまれてきた。

【インフラツーリズムが地域に活力】関東整備局が積極展開、建設中・稼働後とも大きな集客効果

 関東地方整備局が取り組むインフラツーリズムの人気が高まっている。

 首都圏外郭放水路(埼玉県春日部市)では、民間企業と連携して観光資源化を展開中。昨年度を大きく上回る見学者が詰め掛け、17日に同施設の役割などを紹介するミュージアム「龍Q館」の来場者が50万人を突破した。

 建設中の八ツ場ダム(群馬県長野原町)も人気が高く、4~10月だけで約3万8000人が見学した。建設中も稼働後も地域活性化に一役買っている。

 首都圏外郭放水路は、大規模水害に備える施設で、6・3キロの地下トンネルなどが設けられている。地下神殿のような調圧水槽が人気で、同局と春日部市が東武トップツアーズ(東京都墨田区、坂巻伸昭社長)と連携し、民間運営による施設見学の社会実験を行っている。

 1日当たりの見学会回数を3回から7回に増やし週末や祝日も実施するようにしたところ、8~10月の3カ月間で、前年に比べて約3・9倍の2万2162人が集まった。見学者アンケートによると、64%がインフラツーリズムと一緒に食事や買い物、観光などを行っており、地域活性化にもつながっている。同施設を組み入れた旅行会社のツアー商品も販売されている。

 民間と連携した背景には、土日祝日も含めて観光客を呼び込む体制を構築する狙いがある。同局の佐藤寿延河川部長は「職員だけで土日を対応しているとうまくいかなくなる。民間が収益を上げられるビジネスモデルに持っていけたら」と今後を見据えている。

 今回の社会実験は12月26日までとなっている。魅力を高めるための改修などを行った上で、来春ころに再開する予定だ。

 八ツ場ダムでは、昨年度は約2万9000人が見学したが、今年は4~10月だけで前年度実績を大きく上回っている。予約不要で参加可能な「ぷらっと見学会」は、多い時に平日で200人超、土日には700人超が集まり、満員になることもあるという。

 同ダムは首都圏からアクセスしやすく、草津温泉などにも近い。周辺観光地と組み合わせている人も多いようだ。同局は「建設中の現場であり、見に来た瞬間が常に見どころとなる。見学会を契機に、地域活性化へつながるとありがたい」(八ツ場ダム工事事務所地域振興課)と話している。

【大垣市、基本設計を発注】大垣競輪場をサイクルパークに再整備

 岐阜県大垣市は、「大垣競輪場施設再整備基本設計業務委託」の委託先を選定するため公募型プロポーザルの手続きを開始した。提案意向申出書は12月3日まで、提案書は同14日まで受け付ける。ヒアリングを経て同下旬に委託先候補を選定する。履行期間は19年3月末。契約限度額は5000万円(税込み)。

 老朽化した大垣競輪場(早苗町1)を、競輪場と公園が一体となったサイクルパークとしてリニューアルする。改修後の施設規模は、競輪場が約4万7800平方メートル、公園は約1万5000平方メートル。本体工事費は概算で約16億6000万円(税込み)。建設期間は2020年度から22年度まで。

 3月に策定した施設再整備計画基本構想によると、建物はメインスタンド(改修面積約2000平方メートル)と選手管理棟(新築、延べ約3000平方メートル)に集約する。北門側と正門側の老朽施設は撤去し、オープンスペースを確保。サイクルスポーツができるエントランス広場やスポーツ広場、芝生広場などを整備する。基本構想策定業務は三菱UFJリサーチ&コンサルティングが担当した。

 質問書の受け付け締め切りは28日。29日に回答する。実施要領などは市ホームページに掲載。資料の提出、問い合わせ先は経済部公営競技事務所(電話0584・78・3185)。

【技能五輪全国大会で金賞獲得】トーエネック・清水貴央さん「この1年間徹底的に練習した」

 ◇21年ぶりの世界大会、「どんな課題も柔軟に」◇

 11月2~5日に沖縄県で開かれた第56回技能五輪全国大会に、電工職種の愛知県代表として出場したトーエネックの清水貴央選手(21)が金賞を受賞した。同社の社員が金賞を獲得したのは9年ぶり5人目。今大会は来年8月にロシア・カザンで開かれる技能五輪国際大会の選考会も兼ねており、日本代表の切符も手にした。

 前回の全国大会で銅賞を受賞するなど、清水選手は大会前から金賞の大本命。本人も「十分な練習をしてきたので自分にも(金賞の)チャンスがあると思っていた」。

 競技は課題図面に基づき、与えられた材料を使って配線工事を施工し、その正確さと出来栄えなどを競う。競技時間は5時間。清水選手は「大会出場は3回目で緊張はしなかった。ダクトの切断や接合など、この1年間徹底的に練習してきたので、思い通りにできた」という。

 競技中のハプニングにも冷静に対応。競技用の電線が足らず急きょ主催側が用意するのを待ちながら作業を続けることになったが、「条件は各選手とも同じ。必要な電線が届くまで他にできる作業を考え、そちらを先行させた。うまく対応でき、時間を無駄にせずに済んだ」と振り返った。

 来年の国際大会に向けては「これまでもチームメートなど多くの方々に支えられ、“オールトーエネック”で戦ってきた。国際大会でも皆の期待に応えられるように頑張りたい。今後競技内容などの情報を集め、どんな課題でも柔軟に対応できるようにしていきたい」と意気込んだ。同社から世界大会に出場するのは21年ぶり。オールトーエネックで上位入賞を目指す。

 (しみず・たかお)

【サークル】日本工営トライアスロン部「NKロケッツ!」

 ◇レベルや目的に応じて楽しめる部に◇

 日々の多忙な仕事から解放され、美しい景色を楽しみながら汗を流し、おいしいビールを飲みたいという思いからトライアスロンに挑戦しようという社内の有志が集まった。会社公認の部として登録された部員数は本・支社所属の41人。入部の動機は健康増進やレクリエーション、大会での表彰台狙いとさまざま。各人がそれぞれのレベルや目的に応じて楽しんでいる。

 トライアスロンは、スイム、バイク、ランの3種目をこなす過酷なスポーツと思われがちだが、同部はいずれか1種目だけでも参加でき、より多くの人々が交流の機会を持てるよう活動している。現在は週末の個人練習と、全国で行われる各種大会への参加が活動のメイン。4月の石垣島トライアスロン、8月の手賀沼トライアスロン、9月のツールド東北は皆が参加を目標に掲げる三大大会だ。

 同部の部長を務める津島博志統合情報技術部課長は「レース中に景色を楽しんだり、地元の方の温かい声援を受けたりすることがトライアスロンの魅力」と話す。ここ数年、若手の入部がなく、活動も停滞しがちなのが目下の悩み。「社内で広報し、部員を増やして活性化させたい」と今後の活動に意欲を見せる。

【駆け出しのころ】名工建設取締役常務執行役員建築本部長・里川幸夫氏

 ◇原寸の目と500分の1の目で見る◇

 入社後、最初に配属されたのが名古屋市内の住宅工事の現場でした。工事途中からの担当で、どう管理すればよいのかなど、何も分かりません。先輩方に言われるままに掃除と片付け、墨出しといった“汗かき仕事”ばかりをしていた記憶があります。

 数カ月間その現場に勤務し、次に担当したのが県外の宗教団体施設の工事。著名な建築家が設計し、その建築家の仕事ができるということだけで、ワクワクしました。基礎の杭打ちから加わり、最初は鉄筋の管理を担当しました。施工図を何枚も描き、協力業者の方々に施工をお願いし、管理する。やっと現場監督らしい仕事ができたと喜んだものです。

 ある日、所長に呼ばれ、本館脇に造る地下2階建ての付属棟を「一人でやってみろ」と言われました。水槽のような形状で、地上に出ているのは小さな入り口だけ。完成後は電気・機械設備などが配置される施設でした。入社2年目に入るころで、付属棟といえども任されたことがうれしくて、土留めのための土圧計算の書物を買ってきて一人で勉強しながら、計画から図面、施工とすべてをやり遂げました。人が往来する施設ではありませんが、建築物を造ったという達成感がありました。

 現場勤務で最も印象に残っているのが27歳の時に担当した地下1階地上3階建ての個人病院でした。当時、コンクリートの打ち放しの建物が流行し、その病院もそうした設計でした。狭い敷地に地下部分を造り、きれいなコンクリート壁面を構築していく。工期を守るのが精いっぱいで、仕上がりや品質までなかなか手が回らず、周囲の人たちに迷惑を掛けたと、今でも申し訳なく思っています。

 特に苦労したのがコンクリートで「ピン角」と言われるとがった建物の角の形状をどう作るかでした。それを実現するため、バイブレータだけではなく、長い竹を買ってきて、現場にいる人たちみんなで型枠内のコンクリートを突き、満遍なく行き渡るようにし、「ピン角」を造りました。

 現場には約20年勤務しましたが、どの現場も苦労の連続でした。施主や設計事務所の方々との折衝、協力業者や周辺住民の方々とのコミュニケーションの取り方など、丁寧に対応しなければならないものばかりで、忍耐力だけは養われた気がします。この業界ではよく使われますが、建築の仕事は「二つの目」が必要です。一つは施工上で求められるミリ単位の「原寸の目」。もうひとつは全体を俯瞰(ふかん)して見る「500分の1の目」。この両方の目で見ることで、良い建築物ができると思います。

 若い技術者には困難な課題が出てきても、逃げずに立ち向かってほしい。それが個人の技術力を高め、人間としての成長にもつながるはずです。三洋電機の後藤清一元副社長(故人)の本に「何も咲かない冬の日は下へ下への根を伸ばせ」という言葉が書かれています。現場では苦労の連続かもしれませんが、それはその人の“根”を伸ばす時期です。そう思って若い技術者には頑張ってほしい。

 (さとがわ・ゆきお)1979年名古屋工業大建築学科卒、名工建設入社。09年執行役員建築本部建築部長、10年同北陸支店長、13年取締役執行役員建築本部長を経て14年から現職。三重県出身、61歳。
30歳の頃、海外洋上研修での1枚

2018年11月22日木曜日

【回転窓】インフラ整備での決断

群馬県長野原町で建設中の八ツ場ダムには、ダイナミックな建設現場を一目見ようと多くの観光客が訪れている。ここ数年盛んになっているインフラツーリズムの舞台として代表的な存在だ▼国土交通省は「八ツ場ダムぷらっと見学会」を展開中。多い日には参会者が700人を超えることもあるそう。近くには名勝・吾妻渓谷もあり、今は多くの人が現場見学と紅葉を一緒に楽しんでいる▼渓谷の散歩道は地元にとって「貴重な観光資源」(東吾妻町担当者)。当初は渓谷にダム本体が建設される予定だったが、素晴らしい景観を残そうと計画が変更された▼工事のことだけを考えれば造りやすい場所を選ぶ方が効率的だが、必ずしもそれが最適解とは限らない。先日八ツ場ダムを視察した東京商工会議所の三村明夫会頭は「自分がその場に置かれたら、なかなか難しい。よく渓谷を残すという決断をされたと思う」と話していた▼完成に向け工事は終盤に入りつつあるが、地域の魅力アップという効果は既に出始めている。八ツ場ダムは着工を巡って紆余(うよ)曲折があった。だからこそ地域に愛される存在になってほしい。

【施工は鹿島JVと戸田建設JV】国道401号博士トンネル(福島県会津美里町~昭和村)が起工

 福島県が奥会津地方で事業を進めている国道401号博士峠工区の「博士トンネル」が起工し、21日に安全祈願祭と着工式が福島県昭和村の同トンネル終点付近で開かれた。関係者や地域住民など約100人が出席した。

 博士峠工区は福島県会津美里町~昭和村を結ぶ延長7・5キロで、1トンネルと6橋梁、2アースシェッドで構成。博士トンネルは延長4503メートル、幅員7メートルの片側1車線で、昭和村から会津中央病院までの救急搬送時間が従来の1時間10分から56分まで短縮されるほか、冬期間通行止めが解消され、通年での安全な通行が確保される。

 県発注工事で初の両側掘削工事となり、完成すれば県が管理する最長のトンネルとなる。施工は起点の会津美里町側工区(2238メートル)を鹿島・滝谷建設工業・大和建設工業JV、終点の昭和村側工区(2265メートル)を戸田建設・フジタ・会津土建JVが担当する。20年度の貫通を目指す。

【女性職員が学生にアドバイス】日建連九州、福岡市でけんせつ小町活躍現場見学会

 日本建設業連合会(日建連)九州支部(河野健吾支部長)は17日、福岡市で「けんせつ小町活躍現場見学会」を開いた。

 支部会員各社で働く建築・土木分野の女性技術職員や事務職員ら12人に加え、市内で建築を学ぶ大学・専門学校の女子学生12人が今回初めて参加。鹿島が施工中のビル工事現場を見学し、その後の懇談会で仕事のやりがいや就職活動について話し合い、交流を深めた。

 見学したのは福岡市博多区で九州フィナンシャルグループが福岡の拠点として計画し、建設中の「(仮称)九州フィナンシャルグループ福岡ビル新築工事」。建物規模はS・CFT(地下部RC・SRC)造地下2階地上11階建て延べ6797平方メートル。完成は19年5月の予定。設計・監理は日建設計。

 見学会の冒頭、同支部の園田康行事務局長は「女性就業者が増えることは建設業での働き方の多様化につながり、現場を含めた職場環境の改善、長時間労働の是正が進むことが期待されている」と述べた。

 その後、鹿島の女性職員が建設業が社会全体で果たす役割や同社の概要、女性に対しての研修や制度があることについて説明し、業界全体で女性を採用したいという流れになってきていると話した。

 引き続き堀田保徳工事事務所所長から工事概要や工事工程などについて説明を受けた後、現場に移動し、堀田所長の先導で床工事が完了した地階や低層階に組まれた配筋、座屈拘束ブレースなどを見学した。女性職員から学生に現場の様子を説明する場面もあった。

 その後、鹿島の会議室で三つのテーブルに分かれ懇談会が行われた。和やかな雰囲気の中、学生は仕事で大変なことややりがい、就職活動に関して質問した。

 女性職員らは仕事のやりがいについて「緻密に計算するのは大変だが図面通りに作ってもらえたら、頑張ったかいがあったと感じる」「性別や年齢に関係なくチームみんなで建物を作るのが楽しい」と笑顔で話し、就職活動を控えた学生に「現場見学などに行き実際に働いている人の話を聞き参考にしては」などとアドバイスした。

【主塔部分が虹色に】レインボーブリッジ、12月1日からライトアップ

 東京の都心部と臨海副都心エリアを結ぶ首都高速道路の「レインボーブリッジ」で、主塔部を虹色に照らすスペシャルライトアップが12月1日にスタートする。

 初日には主催者の首都高速道路会社が東京・台場のデックス東京ビーチで点灯式を開催する予定(荒天中止)。レインボーブリッジ全景が望める特設会場では、音楽・お笑いライブショーのほか、ドライブレコーダーなどが当たる「お楽しみ抽選会」を行う。参加は無料。

 周辺のお台場エリアでは商業施設や宿泊施設、交通機関などの各施設をさまざまな電飾で一斉に彩る「イルミネーションアイランドお台場2018」を開催中(12月25日まで)。東京臨海部の観光スポットとして、ライトアップやイベントなどで盛り上げる。

 ライトアップは19年1月6日までの夜間(日没~午前0時)に行われる。12月の22~24日と31日は翌日の日の出まで時間を延長する。

【回転窓】日本人の歩き方と膝

周囲を見ても膝の痛みに悩まされている人は意外と多い。さまざまな原因があろうが、日本人の歩き方は膝に負担がかかると、スポーツ医学の専門家が本に書いている▼日本人の多くがひざを曲げ、上体を揺らしながら進む「ひざ歩き」なのに対し、欧米では膝が伸び、腕を振って大股で進む「股関節歩き」の人が多いのだとか(『ひざのスポーツ障害を自分で治す本』マキノ出版)。昔からの生活様式に起因する違いらしい▼趣味でウオーキングやランニングを楽しむ人は増えているが、それぞれのフォームにまかせて膝関節や周囲の筋肉を使い過ぎると、思わぬ痛みが出ることも。自分の歩き方などの特徴を理解し、正しいフォームやケアの方法を知っておきたい▼スポーツ中のケガでも突発的なアクシデントで起こる捻挫や打撲、靱帯(じんたい)損傷などの「スポーツ外傷」は基本的に予防が難しいとされる。長期間のリハビリを余儀なくされるプロ選手も珍しくない▼先週、大相撲の九州場所を休場した横綱稀勢の里は、右膝のケガが全治するまで1カ月を要するという。一日も早く完治し、土俵に帰ってくるのを待とう。

【授賞式は来年1月、全12作品選定】土木学会デザイン賞2018、最優秀賞に「津軽ダム」など3作品

道央自動車道(和寒IC~士別剣淵IC)
土木学会(小林潔司会長)は20日、「土木学会デザイン賞2018」の受賞作品を決めた。応募23作品を審査し、最優秀賞には「道央自動車道(和寒IC~士別剣淵IC)」(北海道和寒町・剣淵町)、「高速神奈川7号横浜北線」(横浜市)、「津軽ダム」(青森県西目屋村)の3作品を選んだ。このほか優秀賞4作品、奨励賞5作品も選定した。授賞式は来年1月26日に東京・四谷の同学会で行う。
高速神奈川7号横浜北線
デザイン賞は、優れた公共的な空間や構造物の設計作品の表彰を通じて、土木デザインや設計者・デザイナーの重要性を社会に広める目的で、同学会景観・デザイン委員会(選考委員長=佐々木葉早大創造理工学部教授)が01年度に創設した。
津軽ダム
各賞の概要はホームページで公開している。優秀賞、奨励賞の受賞作品は次の通り。

 【優秀賞】

 阪神高速道路三宝ジャンクション(堺市)

 美々津護岸(宮崎県日向市)

 柏の葉アクアテラス(千葉県柏市)

 伊賀川 川の働きを活かした川づくり Space for River(愛知県岡崎市)

 【奨励賞】

 夢翔大橋(奈良県五條市)

 瀬下排水樋管及び石積み護岸と周辺施設群(福岡県久留米市)

 トコトコダンダン(大阪市)

 東急池上線戸越銀座駅(東京都品川区)

 グランモール公園再整備(横浜市)

【こちら人事部】若築建設/入社前5日間の集合研修実施

 1890年に創業した若築建設は、2年後の20年に創立130周年を迎える。

 日本産業を支えた筑豊炭田の石炭積み出し港として、洞海湾の若松港(北九州市若松区)を築営することを目的に設立されたのが始まりだ。以降、海上土木を中心に、陸上土木、建築と活躍の場を広げている。

 建設業は多くの人と関わりながら一つのものを造り上げる。採用を担当する東京本社総務人事部の大坪岳彦人事課長は、求める人物像として▽人と人の関わりを大切にできる人▽物事を前向きに捉えられる人▽プレッシャーに打ち勝つ意思を持つ人-の3点を重視する。

 新卒採用活動は激しい争奪戦が続いている。同社の採用に対する意識は年々高まり、企業合同セミナーをはじめ、学内説明会、国土交通省などが主催する建設フェアなどに積極的に参加している。メッセージアプリ「LINE」を活用した採用支援ツールの導入やウェブでの会社説明会の開催なども予定する。

 建設業の仕事を身近に感じてもらうための取り組みにも積極的だ。朝礼から測量、写真整理に至るまでの現場の一日を体験する5日間のインターンシップや、手軽に参加できるセミナー形式のインターンシップを実施。会社の概要説明だけでなく、与えられた課題に対してグループワーク形式の発表を行う機会も設けている。

 ◇大きく育てる土壌が売り◇

 4月の入社式前に実施する新入社員を対象とした5日間の集合研修は、学生から社会人へ移行する重要な期間と位置付ける。会社の制度を学んだり、社会人としてのマナーを身に付けたりするだけでなく、寝泊まりを共にして同期の絆を強くできるとあって、新入社員からの評判は毎年上々だ。

 入社6カ月後には、フォローアップ研修を実施。そこで半年後の短期目標を設定する。上司による面談を行い、目標を共有しながら細やかな指導を行っていく。

 大坪課長は「当社は一言で表すと働きやすい会社。職場の雰囲気は明るく温かみがある」と強調。「一人一人に目が届き、その成長を見守り、さらに大きく育てることができる土壌がある。早い段階で現場を任せられるので、自ら考え行動することが求められる。それが個々の成長と自信につながり、レベルアップを促進している」という。

 経団連は、就職・採用活動の解禁時期を縛る「就活ルール」の廃止を正式決定した。21年春入社以降の新卒者から対象にする。目安となるルールがなくなることで、学生と企業の両方が活動を本格化させる時期を大幅に早めかねない。

 「情報を容易に手に入れられる時代になった。ただ、今後働いていく会社だからこそ妥協せず、足を運んで会社を訪れ、見聞きしてほしい。情報だけでは見えてこないものを感じることも重要な選択肢の一つになる」と大坪課長。「面接では、勉強のほかにも学生時代に一生懸命取り組んだことなど、自信を持ってアピールできるものをぶつけてほしい」とアドバイスを送る。

 《新卒採用概要》

 【新卒採用者数】 男性25人 女性7人(17年度実績)
 
 【3年以内離職率】7・1%(14年度新卒)
 
 【平均勤続年数】 男性19・7年、女性11・0年(18年3月末時点)

 【平均年齢】   44・9歳(18年3月末時点)

2018年11月20日火曜日

【回転窓】規制の変更にご用心を

11月も半ばを過ぎ、朝晩の冷え込みを感じるようになった。冬の訪れに歩調を合わせ、松の木などにわらでできた「こも」を巻き害虫から守る伝統行事の便りが各地から届いている▼冬将軍が到来し雪が降り始めると、毎年のように問題になるのが除雪作業の担い手不足。過酷な環境の中で地域の交通を守るため、地域建設業の方々は奮闘する。一朝一夕で解決できるものではないのだろうが、暮らしの安全安心を守るのに欠かせない役割をどうやって維持していくのか、多くの人に関心を持ってほしい▼本格的な降雪時期を前に知ってもらいたい話題が一つある。それはこの冬から一部の道路でスタッドレス車を含む全ての車でタイヤチェーンの装着が義務付けられることだ▼国土交通省によると、対象は大雪時に車が立ち往生する可能性が高い国道の一部区間など。来月上旬に省令を改正し、豪雪地を中心に運用が始まる▼昨冬は北陸地方で大規模な車の立ち往生が発生するなど各地で大雪の被害が起こった。どの区間が規制の対象になるかは道路管理者が指定し、道路情報板などに新たな標識を表示するそう。ぜひご注意を。

【自転車をもっと身近に】石井国交相、土浦市のサイクリング拠点視察

 石井啓一国土交通相は18日、茨城県土浦市にあるJR土浦駅に直結したサイクリング拠点施設「りんりんスクエア土浦」を視察した。

 来訪者が気軽にサイクリングを楽しめるよう設けた自転車貸し出し窓口や更衣室、シャワー、ロッカーなどの機能について説明を受け、石井国交相は「規模も中身も素晴らしい。土浦が自転車の町として生まれ変わる予感がした。期待したい」と述べた。

 同施設は茨城県が土浦市、JR東日本と連携して整備し3月に開業した。駅直結のサイクリング拠点は国内初。駅ビルの地下1階と地上1階にショップや充実した設備、交流スペースなどを設けた。東京圏から約1時間とアクセスしやすく、霞ケ浦を周遊する全長約180kmの自転車専用道「つくば霞ケ浦りんりんロード」のスタート地点となる。

 政府の自転車活用推進本部長を務める石井国交相は、「本部長ながら最近は自転車に乗れていない。自転車活用をしっかり後押ししていきたい」と語った。

【金沢の冬支度を体験】造園工訓練生、金沢市で雪つり作業

 造園工を目指して金沢市内で訓練中の未就業者たちが18日、冬の風物詩として知られる樹木の「雪つり」作業を体験した。湿った重い雪から木の枝を守る雪つりは、この地域の造園業者にとって欠かせない技能。ベテラン職人の手ほどきで竹と縄を使って作業を仕上げた。

 建設業振興基金(振興基金、佐々木基理事長)では、厚生労働省から受託している建設労働者緊急育成支援事業で行われる訓練の一つとして、石川県造園業協同組合(吉村務理事長)の協力を得た「建設ものづくりコース(造園)in金沢」(11月6日~12月7日)を実施中。年間を通じて緑を創り、守り、育てる仕事の一端を教えている。

 訓練生たちがこの日体験したのは、竹を芯柱として数十本の縄で枝をつる「リンゴつり」と呼ぶ技法。金沢市では毎年、11月1日から始まる兼六園を皮切りに、市内各地で冬支度として雪つり作業が見られるようになる。地域の造園業者にとって、最も忙しい時期になるという。

【新東名・御殿場JCTの工事進む】中日本高速会社、通行止め伴う最後の架設工事実施

 ◇4夜間で段階的に作業推進◇

 中日本高速道路会社が20年度の全線開通に向けて整備を進めている新東名高速道路の建設工事が大詰めを迎えている。

 未開通区間のうち、静岡県御殿場市の御殿場ジャンクション(JCT)付近では、東名高速道路の通行止めを伴う最後の架設作業を実施。今月に入って4夜間(13、15、17、20日)かけて巨大な橋桁を段階的に運搬・設置している。

 新東名の未開通区間のうち、神奈川県内の厚木南インターチェンジ(IC)~伊勢原JCT間(延長5キロ)が本年度、伊勢原JCT~伊勢原北IC間(2キロ)が19年度の開通を予定。伊勢原北IC~御殿場JCT間(45キロ)では、20年度の開通を目指して工事を進めている。

 東名高速道路を通行止めにして新東名の橋梁架設作業を現在進めている工事名は「新東名高速道路 新駒門東第二高架橋他1橋(鋼上部工)工事」。架設作業の実施箇所は、新駒門東第二高架橋の本線部上下線(鋼5径間連続箱桁橋、橋長470・0メートル、有効幅員10・0メートル)、Cランプ第二橋(鋼3径間連続I桁橋+鋼3径間連続箱桁橋+鋼3径間連続I桁橋、橋長633・3メートル、有効幅員8・5メートル)の3カ所となる。施工は横河ブリッジ・JFEエンジニアリング・IHIインフラシステムJV。工期は20年8月15日まで。

 13日の通行止め(全車線交通規制午後7時~翌午前7時)では周辺の地組みヤードで製作していた橋桁のうち、Cランプ第二橋の橋桁(桁長93メートル、重さ約516トン)を架設場所付近の待機ヤードまで多軸式特殊代車で運搬した。2日目の15日は本線下り線側の橋桁(桁長95メートル、重さ約571トン)を同様に待機ヤードに運搬。併せて、Cランプの橋桁を架設箇所の直下まで移動させた後、つり上げ装置で一括架設した。

 17日には上り線側の橋桁(桁長102メートル、重さ約658トン)の待機ヤードへの運搬、下り線側の橋桁の運搬・架設作業を実施。最終日の20日は上り線側の橋桁の運搬・架設作業を実施し、通行止めを伴う一連の架設作業が完了する。

 今回の橋桁の運搬作業では1主桁当たり7軸・14軸・7軸構成の多軸台車(1軸当たり搭載可能重量60トン)を使用。地組みヤードから待機ヤードへの移動の際、東名本線の砂沢川橋を台車が直接通過することができないため、橋の反対側に別の台車を用意し、受け替え作業を行って橋上を横断させた。

【記者手帳】絶景を眺めて思うこと

中央径間長390m、幅1.5m、地上からの高さ173m-。大分県九重町にある「九重“夢”大吊橋」は国内最大規模の歩行者専用つり橋として、2006年10月に完成した。日本の滝百選に選ばれた雄滝と雌滝からなる「震動の滝」の勇壮な姿が目の前に広がり、足元には鳴子川渓谷の豊かな原生林が生い茂る◆開業以来、順調に入場者数を増やし16日に1100万人を突破した。開業後1年間の経済波及効果は町から100km圏内で356億円との試算もある。町の財政に貢献し、「夢」ブランドの地元特産品も開発されている。この季節は紅葉を目当てに訪れた観光客でにぎわった◆町は自力で橋を架け、「鳥しか見ることがかなわない」と言われた絶景を眺めるという夢を実現した。約20億円の事業費を投じたが国や県の補助はゼロ。公共事業への逆風が強まる中、よほどの覚悟と思いを持って挑んだ事業だったに違いない◆地元の良いところを見直し、夢を語る。錦繍(きんしゅう)に彩られた九重連山を日本一のつり橋から眺めながら、地域の活性化に大切なことを改めて教えられた気がした。(松)

【団体28チーム、女性剣士15人が技競う】建設業剣道大会、RFテクニカが団体戦2連覇達成!!

 ◇女子個人、工藤選手(伊田テクノス)が初優勝◇

 第39回建設業剣道大会(日刊建設工業新聞社後援)が18日、東京・東新橋の日本通運武道場で行われた。団体戦に18社28チーム、女子個人戦は15人が出場。団体戦は決勝戦でアールエフテクニカ(東京都渋谷区、宮原禎社長)Aチームが清水建設Aチームを下し、2連覇を果たした。女子個人戦は伊田テクノスの工藤礼佳選手が初優勝に輝いた。

 開会式の冒頭、大会委員長を務める小倉隆氏(大成建設管理本部)は「150人を超える剣士の皆さんの日ごろの努力、たゆまない精進に深く敬意を表す。普段の稽古の成果を遺憾なく発揮し、良い試合を期待する」とあいさつした。

 来賓の祝辞に続き、昨年の団体戦を制したアールエフテクニカ剣道部主将の飯田竜矢選手が「同業者の皆さんとの交流も深め、有意義な大会になるよう全力で臨み、正々堂々最後まで戦い抜くことを誓います」と選手宣誓した。

 団体戦は、午前の予選リーグを勝ち抜き▽安藤ハザマ▽シンドウA▽同B▽鉄建建設▽五洋建設A▽アールエフテクニカA▽伊田テクノスA▽同B▽大成建設▽清水建設A-の10チームが決勝トーナメントに進出。決勝戦では4大会ぶりの優勝を狙う清水建設Aチームに競り勝ち、アールエフテクニカAチームが優勝杯と日刊建設工業新聞社杯を手にした。

 同社剣道部の監督を務める宮原社長は「昨年の優勝から1年頑張り、ここでまた一つ結果を残せてよかった。これからも1試合1試合頑張ります」と喜びを語った。大将を務めた神崎力選手は「対戦相手の方々といい剣道ができたのがうれしい」と述べた。3位はシンドウBと伊田テクノスBだった。

 女子個人戦の決勝は、伊田テクノスの工藤選手が同門の小林日南乃選手を下した。3位も同社の松本実姫、高橋杏奈の両選手となり、入賞を独占した。工藤選手は「みんなと練習してきた成果が出せてよかった。連覇できるように今後も頑張りたい」と語った。

 閉会式では中田琇士審判長(関東管区警察学校名誉師範、江戸川区剣道連盟副会長)が「大変内容が濃く、練度の高い試合を見せていただいた。次を目指して頑張ってほしい」と講評し、大会を締めくくった。

【現場人】関西スチールフォーム(大阪市西淀川区)・小林美穂さん

 ◇経験21年、建設マスターに◇

 鉄筋工として働き始めて21年目の今年、関西スチールフォーム(大阪市西淀川区、田中勲社長)の小林美穂さんは、優秀施工者として国土交通大臣から顕彰される「建設マスター」の称号を得た。鉄筋工の女性マスターは極めて珍しい存在。所属会社はもちろん、職長として現場を担当するゼネコンからもお祝いの電報や電話が数多く寄せられたという。

 工業高校の機械電子科を卒業した後、警備員として働いていた現場で鉄筋工事の仕事を間近で見る機会があった。もともと「ものづくり」が好きで、体を動かして働く仕事にも興味があった。鉄筋工事に触れて居ても立ってもいられなくなり、会社を調べていくつかに電話を掛けてみた。だが女性だからという理由で断られ続けた。

 ようやく受け入れてくれたのが最初に勤務した会社だった。当時、女性だけのチームで鉄筋作業を手掛けるといった活動を展開していた。念願の職に就けたものの1人、2人と抜けていき、数年後に残ったのは小林さんだけ。それでも好きで始めた仕事を辞めようとは思わなかった。

 鉄筋工として働き始めたといっても何も知らない。そんな自分を指導してくれた職長から、一冊の分厚い本を渡された。そこには鉄筋のことが詳しく書かれていた。難しかったが分からないまま読み続け、現場作業を通じて「これはあのことか」「あれはこのことか」と繰り返し確認するうち、現場作業の一つ一つに意味があることを知った。そして仕事がそれまで以上に面白くなった。

自分が携わった現場が完成すると、その建物に足しげく出向いた。「マンションに人が
住み、店舗にお客さんが訪れる様子を見ることがうれしく、家族や友人にも自慢した」。ものづくりのやりがいは、人々の暮らしに貢献することだと思っている。そのことに誇りもある。

 鉄筋工の仕事は重い材料を抱えなければならないことも多い。決して大きくない体では、男性にかなわないことも多い。だから「現場でできるだけ力作業がないように」と、図面から材料を拾い出す作業に時間を割き、現場作業が極力少なくなるよう鉄筋加工を行う施工図の作成に注力。体力を工夫でカバーすることに腐心した。

 今の会社に入って16年。8年ほど前から職長として現場に立っている。今は大阪府東大阪市の物流センターの工事で、ベトナム人技能実習生に仕事を教える日々。「素直で仕事にも一生懸命。責任感を持ち、前向きに取り組んでくれる」と実習生の姿勢に目を細める。いずれはどういう人材に来てもらうかなど、経験を生かして実習生の採用にも取り組んでみたいという。

 (こばやし・みほ)

2018年11月19日月曜日

【回転窓】勤労感謝の日を歓喜の日に

会社勤めをする身として人ごとではない「働き方改革」。勤労感謝の日を前に、該当する記事を会社の検索システムで調べてみると、その数は今年、1000件を大幅に超える▼統一土曜閉所運動の毎月実施、週休2日工事を拡大、関係法改正…。建設業界にとって働き方改革は欠かせないキーワードとなった。法制度が整い、これからは決まったルールや制度をどう運用していくかが焦点になろう。祝日に閉所される現場が少しでも増えるよう期待したい▼今年の勤労感謝の日は働き方改革とは違った面でも重要な日になる。パリで開かれる博覧会国際事務局の総会で、日本も開催に名乗りを挙げる2025年国際万博の開催地が決まる▼大阪・夢洲を候補地に大阪府や大阪市、地元経済界らが誘致活動を進めた。建設業界も「業界を挙げて協力する」(関西の建設関係団体首脳)と意欲を見せてきた▼ライバルは初開催をアピールするロシア(候補地エカテリンブルク)とアゼルバイジャン(バクー)。国際交渉力が試される勝負の日。両都市の方々には申し訳ないが、大阪が歓喜に沸く日になるよう願ってやまない。

【凜】国土交通省関東地方整備局東京国道事務所・下平幸英さん


 ◇未来切り開く技術者に◇

 計画から維持管理までインフラに幅広く携わりたいと考え、技術系公務員の道を選んだ。「皆さんの安全を守るとても重要な仕事。愛着も湧いてきた」と笑顔で語る。

 現在は、道路空間を利用したカーシェアリング事業の運営などが担当。全国初の社会実験として、小型モビリティーの貸し出し・返却拠点が東京・大手町などに設けられている。利用状況を踏まえつつ、課題整理などを進めている段階だ。

 道路の安全対策の面では、ETC2・0で収集した車両交通のビッグデータを利用して、生活道路の安全性を高める業務に取り組んでいる。データを分析して次の施策を考える点でどちらも共通する。「周りと相談しながらデータをしっかり読み解いて、道路の上手な利用につなげたい」。

 地元関係者と調整する場面も多く、理解しやすい資料の作成にも力を入れている。自分の思いを相手に伝えるセンスがあるというのが上司の評。「新しい道路の計画や維持管理なども経験し、技術者の基礎を形づくっていけたら」と将来を見据える。

 勤務する東京国道事務所では、品川駅(東京都港区)の西口駅前広場の再整備なども検討中だ。最先端モビリティー導入などを見据えている未来型プロジェクト。「もう少し実力が付いたら、品川の計画づくりに携わってみたい」と今後を思い描いている。

 (交通対策課、しもだいら・ゆきえ)

【中堅世代】それぞれの建設業・215

現場のマネジメントも生産性向上も、職人との向き合い方が鍵となる
 ◇お互いにスパイラルアップ◇

 安全表彰を受けるための出張から現場に帰ってくると、あるベテラン職人が昼休みにトイレの清掃を行っていた。誰もが気持ち良く使えるよう、現場では1日に必ず1回は清掃することを決まりにしている。ルールを超えて清掃する理由を職人に尋ねると、「1日1回ではきれいになりにくいこともあるから」と淡々と答えてくれた。

 「こういう職人に現場は支えられている」。ゼネコンに入社して25年になる現場所長の小関裕太さん(仮称)は、現場を大切に思ってくれるこの職人の善意に感謝し、表彰することにした。回数や時間を決めれば、職長会が当番を決めてくれて、丁寧にトイレの清掃を行ってくれる現場は多いが、求められたからではなく、ただ現場のためを思ってしてくれた行動が素直にうれしかった。「現場はきれいでないといい仕事はできない」と先輩から教わってきた。労働環境の整備にはこれからもこだわるつもりだ。

 「表彰されたことを伝えたら、かみさんがすごく喜んでくれたよ」と、表彰した職人が照れながら話してくれた。現場関係者の懇親を深めようと思って企画したイベントに孫を連れてきてくれたこともあった。「こういうつながりを大事にしたい。職人と職長会を大切にする」。当然のことながら、そう心掛けている。「やらされている感じではうまくいかない」。職人との付き合い方をそう感じており、「良かった、悪かった、もっとできた、とタイムリーに評価すること」を現場のマネジメントのポイントに挙げる。

 休日を増やしたり、残業を減らしたりするために、会社が生産性の一層の向上を目指している。必要性を理解し、協力は惜しまないが、実現に欠かせないのは「現場からのアイデア」だと思っている。大量の部材を効率的に組み上げたり、揚重の回数を減らしたりするような工夫は、着工前から視野に入れている。それでも現場では刻々と変化する条件に応じて段取りや作業を変更する必要がある。

 「おもしろいアイデアが生産性向上の鍵」。いいアイデアは、すぐ生まれることもあるし、時間がかかることもある。現場の技術者と職人それぞれからアイデアを引き出す必要があり、「まずは発想を否定しないこと」を会社に求めたいと考えている。

 現場では、手順の確認や合意形成を促すのに加えて、元請と協力会社の英知を結集するために、構造物のモックアップの作成に努めている。「自信を持って作業に臨める」と手応えを感じており、機会があれば社内外に成果を積極的にアピールしている。

 経験を重ねる中で、同業他社の所長との付き合いも長くなってきた。竣工に伴って他社の所長に譲った清掃道具や植栽用のプランターが巡り巡って自分の現場に戻ってきた。「この仕事は、人と人とのつながりで成り立っている」と改めて思うようになった。「いいとこ取りしながらお互いスパイラルアップしよう」。現場で奮闘中の同世代の活躍を励みに、所長として負けないよう「選ばれる現場づくり」にまい進する。

【女子高生がまちづくりに貢献】福井県鯖江市、全国地域づくり協議会会長賞受賞

 ◇JK課、自由な発想で各種企画◇

 女子高生が街づくりに貢献-。福井県鯖江市が14年度に立ち上げた「鯖江市役所JK課」は、市内の高校に通う女子高生の自由な発想で、自分たちの街を楽しむ数々の企画や活動を展開している。

 このほど国土交通省が創意と工夫を生かした個性的な地域づくり活動に贈る18年度地域づくり表彰で、全国地域づくり協議会会長賞を受賞した。

 JK課は、女性の高校卒業後の転出や地域離れを食い止めようと、若者や女性が日常生活の中で気軽に地域活動に参加する実験的プロジェクトとして始動。これまでに、市の地場産業であるめがねフレームのデザイン、伝統薬味の「山うに」を使用したおにぎりとサンドイッチの開発、市内のパティシエグループと協働したオリジナルスイーツの開発・販売などの活動を展開。発足以来、年間80日、20回以上の事業実施という実績を上げている。

 大人を巻き込みながら地域活動を実践することを通じ、若者や女性が進んで地域活動に参加する新たなモデルの構築を目指している。地域の産業振興や街づくりの活性化に寄与し、プロジェクトの趣旨に賛同する全国の自治体への横展開も始まっている。

【駆け出しのころ】みらい建設工業執行役員施工本部副本部長・久野木哲也氏

 ◇ステップアップへの努力を◇

 三井不動産建設(現みらい建設工業)に入社したのは1981(昭和56)年で、就職難の時代がようやく終わり、各社が採用人数を増やし始めた頃であったと思います。就職試験の面接の中で突然、「相撲を取れますか?」と質問されました。当時は三井不動産グループの運動会に相撲があったようで、質問にはびっくりしましたが、「明るい雰囲気の会社だな」と感じたのを覚えています。

 箱根の研修施設で新入社員研修を受けた後、中部支店に配属となり、名古屋港の現場に赴任しました。学生の頃は映画のように、現場に出たらネクタイを締め、図面を脇に抱えて、いろいろと指示している格好いい自分の姿を思い描いていましたが、現実の仕事は測量や丁張り設置などが中心で、イメージとはかなり違ったものでした。ただ、現場や寮ではいい先輩たちに恵まれ、仕事も遊びも充実した、楽しい新人時代を過ごさせていただきました。

 20代半ばに担当した漁港工事でのことです。漁船を岸壁から海に降ろすためのレールをスロープに設置したのですが、竣工検査の時に漁船を載せる台車が途中で「コットン」と止まってしまうのです。後で調べると、設計とは違う長さのボルトでレールをつないでいたのが原因と分かるのですが、検査中に何度やっても止まってしまい、これには焦りました。この日のことを知っている先輩たちからはしばらくの間、「コットン事件」と言ってからかわれました。細かな点までチェックしなかったミスでした。

 30代、40代はほとんどの期間、高速道路の工事に従事しました。自分でいろいろと施工計画を考え、発注者や協力業者との調整に当たることができる年代になっていたこともあり、今振り返っても最高に充実した時期でありました。

 そんな中、1人の所長からは大きな影響を受けました。仕事に対する指導が非常に厳しく、私は怒られてばかりの日々。時には意見が合わずにぶつかり合い、「もう二度と同じ現場では働きたくない」と思ったこともありました。しかし、後で考えると、現場のことは何でも知っておられ、意見が対立して嫌われても、自分が正しいと思うことははっきり伝えるという姿勢は現場を預かる者として大切なことであると思いました。後に自分が主任、所長の立場となり、この方から教えてもらったことの大きさを実感したものです。

 私たちが仕事を教えてもらった時代とは違い、今は若い人たちを「褒めて育てる」と言われます。でも、ワンステップ上がる時にはそれぞれが苦しい思いをしながらも努力することが必要で、これは建設業に限ったことではないでしょう。新入社員が経験を積んでどんどん成長していく姿は頼もしく、どんな場面でもしっかりとした土木の知識で判断できる技術者に育ってほしいと思います。

 (くのぎ・てつや)1981年法政大学工学部土木工学科卒、三井不動産建設(現みらい建設工業)入社。本社、横浜支店、関西支店、中部支店で下水道工事や港湾工事、高速道路工事などに従事。中部支店工事部長などを経て、17年4月から現職。東京都出身、60歳。
高速道路工事の竣工を記念して
(後列右から2人目が本人)