2018年11月20日火曜日

【現場人】関西スチールフォーム(大阪市西淀川区)・小林美穂さん

 ◇経験21年、建設マスターに◇

 鉄筋工として働き始めて21年目の今年、関西スチールフォーム(大阪市西淀川区、田中勲社長)の小林美穂さんは、優秀施工者として国土交通大臣から顕彰される「建設マスター」の称号を得た。鉄筋工の女性マスターは極めて珍しい存在。所属会社はもちろん、職長として現場を担当するゼネコンからもお祝いの電報や電話が数多く寄せられたという。

 工業高校の機械電子科を卒業した後、警備員として働いていた現場で鉄筋工事の仕事を間近で見る機会があった。もともと「ものづくり」が好きで、体を動かして働く仕事にも興味があった。鉄筋工事に触れて居ても立ってもいられなくなり、会社を調べていくつかに電話を掛けてみた。だが女性だからという理由で断られ続けた。

 ようやく受け入れてくれたのが最初に勤務した会社だった。当時、女性だけのチームで鉄筋作業を手掛けるといった活動を展開していた。念願の職に就けたものの1人、2人と抜けていき、数年後に残ったのは小林さんだけ。それでも好きで始めた仕事を辞めようとは思わなかった。

 鉄筋工として働き始めたといっても何も知らない。そんな自分を指導してくれた職長から、一冊の分厚い本を渡された。そこには鉄筋のことが詳しく書かれていた。難しかったが分からないまま読み続け、現場作業を通じて「これはあのことか」「あれはこのことか」と繰り返し確認するうち、現場作業の一つ一つに意味があることを知った。そして仕事がそれまで以上に面白くなった。

自分が携わった現場が完成すると、その建物に足しげく出向いた。「マンションに人が
住み、店舗にお客さんが訪れる様子を見ることがうれしく、家族や友人にも自慢した」。ものづくりのやりがいは、人々の暮らしに貢献することだと思っている。そのことに誇りもある。

 鉄筋工の仕事は重い材料を抱えなければならないことも多い。決して大きくない体では、男性にかなわないことも多い。だから「現場でできるだけ力作業がないように」と、図面から材料を拾い出す作業に時間を割き、現場作業が極力少なくなるよう鉄筋加工を行う施工図の作成に注力。体力を工夫でカバーすることに腐心した。

 今の会社に入って16年。8年ほど前から職長として現場に立っている。今は大阪府東大阪市の物流センターの工事で、ベトナム人技能実習生に仕事を教える日々。「素直で仕事にも一生懸命。責任感を持ち、前向きに取り組んでくれる」と実習生の姿勢に目を細める。いずれはどういう人材に来てもらうかなど、経験を生かして実習生の採用にも取り組んでみたいという。

 (こばやし・みほ)

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