2018年12月11日火曜日

【政府の環境整備を注視】改正入管法成立、建設業界で交錯する賛意と不安

8日未明に成立した改正出入国管理法を巡って、建設業界内でさまざまな意見が交錯している。

 人手不足が深刻化しかねない将来への懸念がある中、堅調な建設需要を前に企業努力としての外国人材の活用に賛意を示し、「新制度の運用に協力する」姿勢の建設団体は少なくない。ただ元請業者、専門工事業者、国それぞれの役割分担と責任の明確化を求めたり、積み残しの検討事項に注文を付けたりする意見なども出てきている。

 国会審議などでは、建設業で働く外国人材の不法就労や不当な労働条件が問題になった。ある団体の幹部は「すべて建設業の責任と捉えられているなら残念」と指摘する。違法な外国人労働者の存在や労働条件の是正は、在留外国人としての問題であり、正すべき責任を負うのはまず国と考えているためだ。国内には工事に関わる人材の4%が外国人という現場もあるとされる。

 安全や品質を統括する元請業者にとっては、最低限の指導を理解できる語学力がない外国人材の存在は大きなリスクでもあるだけに、日本建設業連合会(日建連)のように元請業者の役割などに関する検討を開始した団体がある。

 政府は19年4月の新制度の導入を目指し、環境整備を進める。同法は国会審議前から注目を集めてきた。外国人材が安い賃金で雇用された場合に、日本人労働者の処遇改善の動きが後退しかねない懸念があるためだ。政府は、建設分野の外国人材の処遇などをチェックする仕組みを新設し、制度の適正な運用に努める。

 年内には、受け入れる外国人の規模などを定める建設分野の運用方針や、日本語教育をはじめ支援策を盛り込む総合的対応策がまとめられる見通し。建設分野は職種別に求める技能水準などが決まる。

 「改正出入国管理法の新制度も積極的に活用したい」と語るのは、技能実習制度に前向きに対応してきたある専門工事業団体の事務局幹部。少子高齢化による労働人口の減少に対する危機感が高く、「人材の不足は深刻化していく」と見ているためだ。「法律からは見えない部分が多い」とも指摘。外国人材の転職の在り方など政府による環境整備の行方を注視するという。

 受け入れた企業の倒産に伴う外国人材の受け皿の整備、外国人材を生かしたい企業への配慮、外国人材の送り出し・受け入れや制度の運用チェックに関するコスト負担、日本への就業を促すための魅力づくりなど、業界の関心は枚挙にいとまがない。

 人手不足がクローズアップされ、18年度補正予算や19年度公共事業予算の執行を不安視する声が再び大きくなることを懸念する見方もある。「制度を適正に運用するための自警的な役割を民間に求め過ぎるのはいかがなものか」(団体幹部)との意見もあり、政府の環境整備に関心が集まる。

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