2018年12月17日月曜日

【駆け出しのころ】建設技術研究所代表取締役副社長執行役員企画本部長・兪朝夫氏

 ◇新たな気付きを得るために◇

 大学では河川工学の研究室に所属し、こうした分野の研究が生かせる会社に入りたいと建設技術研究所に入社しました。

 1週間の新入社員研修を終え、河川関係の仕事を手掛ける東京本社技術第3部に配属されると、その初日にいきなり予想もしない指示を受けました。翌日に予定されている役所との打ち合わせ資料を1人で作成するよう言われたのです。

 業務計画書を見ながら慌てて手書きで資料をつくったのですが、当然に十分な内容のものができるはずもなく、役所の方からは「建設技術研究所の資料でこんなにひどいのは見たことがない」と厳しく指摘されました。胃はきりきりと痛み、「これでコンサルタントとしてやっていけるのだろうか」と早くも入社2週目に思い悩みました。

 当時は現在と違い、新人が丁寧に指導してもらえるという環境ではありませんでした。まずは経験して覚える。そんな時代でした。ですから会社の書庫で過去の報告書を調べたり、社内でどの方がどういう分野のことに詳しいのかについて調べ、分からないことがあれば自らお願いして教えてもらったりしながら仕事を覚えていきました。こうした時代の人の育て方には良い面と悪い面があり、人によっては成長が早く、一方でいずれ優秀な技術者になったであろう人が途中で挫折してしまうことも少なくなかったかもしれません。

 入社2年目から、複数の業務を持ちながら阿賀野川水系の工事実施基本計画の改定に携わりました。大変に忙しくてプレッシャーも強く、会社を辞めたいと思った時期もありましたが、5年かけて改定業務をやり遂げ、これでコンサルタントとしてやっていけるかもしれないと自信を持つことができました。

 私が担当してきた計画分野の仕事には、筋道や出口がなかなか見えない業務もあります。これもあれもやってみようと本質的でない細かいことに執着し、変な迷路に入ってしまうのです。そんな時は、周りの人たちとディスカッションするか、その業務から少しの間だけ離れ、別の業務をこなしてからまた戻るのが効果的です。新たな気付きを得られて前に進め、焦る気持ちも抑えられます。

 私たちコンサルタントの役割は、クライアントが何に困っているのかを把握し、専門家として問題の解決に当たることです。これは昔も今も変わりません。解析技術などがどんどん進化しても、なぜこの問題が出てきたのか、あるいはどのような背景があって発注された業務であるのかを考えるという基本的なことが抜けてしまっては駄目です。若い人たちには発想と工夫が求められるコンサルタントの仕事にやりがいを覚え、クライアントの要望にしっかり応えられる技術者となるよう期待します。

 (ゆ・あさお)1979年京大大学院修士課程土木工学専攻修了、建設技術研究所入社。大阪支社河川部長、取締役東京本社副本社長、同中部支社長、同常務執行役員大阪本社長、同専務執行役員東京本社長、副社長執行役員などを経て、2017年3月から現職。京都府出身、63歳。

1982年、東京本社で阿賀野川水系の業務を担当していた

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