2019年2月18日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・221

自治体職員は公共事業の最前線に立っている
 ◇住民の窓口として耳を傾ける◇

 地方自治体の職員として働く佐藤弘さん(仮名)は、本年度から街づくりを推進する部署の課長に就いた。周辺で都市基盤整備事業を控えた駅前の街づくりを担当。「1年生で分からないことが多い」と不安はあるものの、それでも「なんとか事業を軌道に乗せたい」という思いを胸に、「住民の窓口」としてさまざまな人の声に耳を傾けている。

 緑豊かな郊外で生まれ幼いころから、生き物などと触れ合うことが好きだった。将来は自然を守る仕事に就きたいと考えるようになり、大学で造園などを学んだ。就職活動を始めたころ、何げなくテレビを見ていて目に留まったのは、住宅が立ち並ぶ人口の多い地域に整備された親水公園の映像。多くの人と自然が共存する「地元にはない光景」に心を奪われた。整備した自治体は水辺の多い景観を重視し、公園などの整備を進めていた。「この事業に携わりたい」。そう考え、現在の自治体に入ることを決めた。

 最初に配属されたのは道路保全などを担当する部署。「工事してすぐに、目に見えて道路がきれいになっていく」過程に面白さを感じた一方で、厳しい工期や夜間作業の多さに戸惑った。現場監督を務めた夜間工事で、予定の明け方までに作業が終わらず、上司に「これまでの人生の中で一番きつく怒られた」ことを、今でも思い出す。

 数年後に異動となり、念願だった水辺の景観整備を手掛ける仕事に就くことができた。担当したのは河川両岸に遊歩道を整備する事業。護岸整備に併せて遊歩道を設け、景観と調和する桜並木を作る計画だった。完成後、満開の桜並木を多くの人が行き交う光景を見た時の喜びはひとしおだった。

 道路や河川といった土木部門で約10年キャリアを積んだ後、建築部門への異動を命じられた。配属されたのは都市計画などを扱う部署。「用途地域、建ぺい率、容積率についてさえよく知らなかった」当時は、慣れない言葉や業務に悪戦苦闘した。問い合わせに的確に答えられず、「厳しい言葉もいただいた」。それでも「自分の視野を広げるチャンス」と勉強を重ね、5年以上担当することができた。

 現在担当している街づくりの業務は、「道路保全とは違い、すぐに結果が出ない」。長期間にわたって取り組まなければならないところに事業の難しさを感じている。心掛けているのは「こちらの一方通行」で事業を進めないこと。丁寧に話を聞き、住民がどういった街を求めているのかを正確に把握し、事業に反映することが大切だと考えている。

 部署ごとで業務内容に違いはあるが、「事業の最前線に立って、住民の声を聞く」ことは変わらない。住民とのつながりが深まり、事業完了後に喜びの声が直接届いた時が、「自治体職員としての最高の喜び」だという。3歳になる自身の子どもにも、職員としてこのうれしさを体験してほしいとひそかに願っている。

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