2019年4月12日金曜日

【回転窓】職人育成も生産性向上を

こてで壁面に土を塗りつけた後、はがす作業を繰り返す「塗り壁トレーニング」。左官職人の久住章氏は、自ら考案したこの練習法を10年は続けたという▼1999年に日本建築学会文化賞を受賞した「カリスマ」であっても技能を維持・向上させるために、人知れずトレーニングを重ねている。ただただ感服する話だ▼久住氏によれば、若い職人を育てる上で「現場だけでは不十分」。材料の調合などを一人で理解できるようになるまでに相当の年月を要する。「一生は短い」。短時間での習得には「実戦を補う教育が必要」と説く▼左官業界で今、久住氏の塗り壁トレーニングを効果的に行おうという取り組みが広まっている。アスリートのトレーニングでも採用される「モデリング」と呼ぶ手法。動画に撮ったプロの動きをまね、同じように塗れるようになることが技能習得の近道。「技は見て盗む」を現代的に置き換えたものといえる▼ICT(情報通信技術)を用いるなどして現場の生産性を向上させる取り組みが進む。現場を支える職人の育成にも、生産性を高める手法をもっと追求する視点があって良いのではないか。

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