2019年4月1日月曜日

【回転窓】消えるインフラがつなぐもの

東日本大震災の被災地では復興に向けた取り組みが着実に進展している。生活や経済活動を支える基幹インフラとして道路の開通や鉄道の再開が相次ぐ中、役目を終え、姿を消していくものも少なくない▼大津波で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市に震災の年に建設された「竹の会所」もその一つ。被災者が自由に集い未来を語り合うことを目的に、大学生たちが自力で作り上げた仮設建築物だ▼「一人一人は小さな力でもみんなの力を合わせれば大きな力になる」ことを実感した学生たちは毎年、地域の子どもたちのためのお祭りを訪ねた。延べ100人を超える学生が建物を維持し、多くの地域の方々が集まった▼だが設計者の陶器浩一氏は「人々や町が元気になったら消えていく、ずっとあってはいけない建築」という。当初は4年間の期限で仮設建築許可を得たが、地域のよりどころとして特別に3年半延長。先月解体された▼建設時に小学生だった現在の学生たちは「人と建築、人と人とのつながりが豊かに深まる。終わりの時間が始まりの場になる」と語る。竹の会所は姿を消したが、そのストーリーはまだ終わらない。

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