2019年5月30日木曜日

【回転窓】インベーダー今昔物語

40年前、国内外でブームを巻き起こしたゲーム「スペースインベーダー」。先日訪れたアミューズメント施設には、超大型スクリーンに映し出されたインベーダーを、専用シートから光線銃で撃ちまくる新型機が置かれ、老若男女が楽しんでいた▼開発先のタイトー(東京都新宿区)がアーケードゲームとして発売後、全国各地にゲームセンターが次々開店。当時は喫茶店などにもテーブルタイプのゲーム機が置かれ、日本中を「侵略する(インベード)」ほどの社会現象に▼未成年の育成に悪影響を与えるなど、ゲームにマイナスイメージを持つ人も少なくなかろう。そんな心配をよそに家庭用や携帯型のゲーム機によってゲームはより身近なものになった。スマートフォンの普及がその流れに拍車を掛ける▼ゲームのやり過ぎで日常生活に支障を来す「ゲーム障害」を、世界保健機関(WHO)が国際疾病として正式に認定。ギャンブル依存症と同じ精神疾患とし、世界的に深刻化するゲーム依存に警鐘を鳴らす▼「eスポーツ」など、ゲームの概念や価値観も多様化が進む。心身の健康のためにもどうか依存にはご注意を!

【わーい!みんなであそべる!!】茨城建協、毎月第2土曜を一斉休工日に

 茨城県建設業協会(石津健光会長)は現場の週休2日制を後押しするため、6月から毎月第2土曜日を「県内公共工事一斉休工日」に位置付ける。休日が増え小さい女の子が「わーい!みんなであそべる」と喜ぶ様子を表現したポスターを作製。休日取得に取り組む建設業への理解促進とイメージアップを図る。

 石津会長は「発注者や建設関連団体と連携しながら、建設業の働き方改革を積極的に進めていきたい」とコメントした。

 ポスターのほか、来年3月までの休日が一目で分かるカラー刷りの年間カレンダーも作った。これらを利用して広く一般にも建設業の取り組みを周知していく。将来の担い手確保にも役立てる。

 協会は1~2月の一斉休工試行で会員各社にアンケートを実施。若手技術者の入職を促すには必要な取り組みと評価する声があった一方、日給作業員の給与が減り実現は困難と指摘する意見もあった。協会は本年度の活動で問題点を把握し、課題解決を目指す考えだ。

【10年間で20棟建て替え、総投資2600億円】福岡市、博多コネクティッドの施策メニュー発表

福岡市は29日、博多駅周辺の老朽化した民間ビルの建て替えを促し、にぎわいと活力を周辺に波及させる新たなプロジェクト「博多コネクティッド」の施策メニューや目標を発表した。

 にぎわいの拡大に寄与するビルへの容積率加算、公開空地の要件緩和といった容積率緩和制度の拡大などにより28年までの10年間で20棟の建て替えを目指す。建設投資額は約2600億円を見込む。JR九州など博多駅周辺の地権者で構成する「博多駅エリア発展協議会」の設立も発表された。

 対象エリアは駅から半径約500メートル以内の約80ヘクタール。インセンティブでは「博多コネクティッドボーナス」として容積率緩和制度を拡大する。広場の創出などにぎわいの拡大に寄与するビルに容積率を最大50%加算。屋根のある広場なども公開空地評価の対象とし、評価を最大2・5倍とする。

 市は認定ビルにテナントを優先して紹介し、航空法高さ制限の個別計画の特例承認で国と協議する企業に同行しバックアップする。このほかにぎわい創出に向けた官民連携の取り組みで博多駅筑紫口駅前広場の再整備検討なども行う。

 建て替えが実現すれば建物の延べ床面積は現在の約1・5倍に当たる約49万8000平方メートルに増え、完了後の経済活動波及効果は年間約5000億円を見込む。

 同日設立の協議会は▽JR九州▽西日本シティ銀行▽福岡地所▽NTT都市開発▽竹中工務店▽西日本鉄道▽JR西日本▽三井不動産▽福岡銀行▽朝日新聞社▽紙与産業▽九州勧業▽シティビル▽住友生命保険▽日本生命保険▽八百治▽安田不動産-の17社で構成。今後、会員企業の拡大を目指す。「グランドビジョン」を策定し、街区や通りごとなどに分け、建て替えに向け具体的な検討を進める。

 共同会見で高島宗一郎市長(写真㊨)は「民間と行政が一体となってこのエリアを次のステージへ飛躍させたい」と期待を込めた。JR九州の青柳俊彦社長(写真㊧)は「線路上空(への駅ビル増築)などこれまでと違った概念でまちづくりに貢献したい。ボーナス制度を最大限生かしたい」と意欲を見せた。

【経済成長に工事で貢献】ゼネコン各社、18年度下期も東南アジアで大型案件受注

三井住友建設らが受注したミャンマー「バゴー橋」の完成イメージ(提供:JICA)
ゼネコン各社が東南アジア各国で堅調に実績を積み上げている。2018年度下半期(18年10月~19年3月)も三井住友建設がフィリピンで高架鉄道工事を受注するなど、政府開発援助(ODA)関連を中心に大型案件が目立った。国内建設市場は好調を維持しているが、人口減少などを背景に中長期的な環境変化が予想される。各社は海外により目を向け、東南アジアなどの成長が期待できる市場での受注活動を、より積極的に展開する。

 三井住友建設がフィリピンで受注したのは「南北通勤鉄道事業(マロロス-ツツバン)CP2工区」工事。首都マニラ市と周辺都市を結ぶ高架型鉄道「南北通勤鉄道計画」(総延長約38キロ)の一部で、マニラ市~マロロス市間(延長14キロ)と、北側の起点駅となるマロロス駅など高架駅舎3駅を施工する。工期は約42カ月。受注総額は約539億円。急激な人口集中や交通需要の増大が課題となっている中で、交通円滑化につなげる計画だ。

 鉄建建設、IHIインフラシステム、大林組、JFEエンジニアリングの4社は、インド初となる高速鉄道建設事業のうち「バドーダラ駅付近工区」のプレ・コンストラクションサービス業務を、国際協力機構(JICA)から受注した。鉄建建設とIHIインフラの2社が主担当となる。同事業では日本の新幹線方式が採用される。案件名は「インド国ムンバイ-アーメダバード間高速鉄道建設事業 バドーダラ駅付近工区におけるプレ・コンストラクションサービス(有償勘定技術支援)ステージI」。既存在来線と近接し難易度が高いため、施工性を考慮したレビューや助言を行う。

 ミャンマーでは複数のODA案件で受注があった。三井住友建設・横河ブリッジJVは、受注総額約280億円の「バゴー橋建設事業(CP1-CP2)」を手掛ける。発注者は同国の建設省橋梁局。ヤンゴン市のバゴー川に架かるバゴー橋を整備する事業で、全長約3・6キロのうち約2・7キロを担当する。PC箱桁橋・鋼箱桁橋・鋼斜張橋(11径間)や、鋼箱桁橋・PC箱桁橋(13径間)、アプローチ道路、料金所を建設する。工期は32カ月。

東洋建設らが手掛けるインドネシア「パティンバン港外周護岸工事」の完成イメージ
住友商事とフジタ、日本信号の3社は、ミャンマー国鉄から「ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズ1CP101工区」を受注した。老朽化している同国の主要鉄道路線・ヤンゴン・マンダレー線のうち、ヤンゴン近郊のパズンダン駅~バゴー駅区間(約71キロ)が対象で、軌道・土木・橋梁・構内・信号一式・通信一式の改修工事を行う。契約金額は約180億円。23年3月の完成予定だ。

 安藤ハザマ・ピーエス三菱JVは「東西経済回廊整備計画(パッケージ1、ジャイン・コーカレー橋建設事業)」に取り組む。同国建設省橋梁局が発注者で、380メートルのメイン橋梁などを建設する。受注総額は約68億円。工期は21年5月まで。

 港湾分野を見ると、インドネシアで東洋建設と若築建設、現地国営建設会社のアディ・カルヤによる3者JVが、大型港湾工事を受注した。工事名は「パティンバン新港開発事業フェーズ1のうち、『パッケージ2外周護岸/防波堤築造及び外港航路浚渫工事』」。同国運輸省海運総局の発注で受注金額は約130億円。防波堤や護岸などを整備する計画で24カ月の工期を見込む。

 東亜建設工業はシンガポールで同国に本社を置くPSAから、トゥアス港開発第1期建設工事の一部を受注。六つのコンテナバースと120ヘクタールのコンテナヤードを建設する。22年後半の完成を予定している。受注額は非公表。トゥアス港は今後20年をかけて段階的に整備される予定になっている。完成すれば世界最大の自動化コンテナ港となる見通しだ。

 カンボジアでは鉄建建設と愛亀(松山市、西山周社長)による2社JVが「国道5号線改修事業(スレアマアム-バッタンバン間)パッケージ3」、三井住友建設が「教員養成大学建設計画」を受注した。受注金額は鉄建建設JV約99億円、三井住友建設約22億円。

東亜建設工業が工事の一部を受注したシンガポール「トゥアス港」の将来イメージ
クボタの全額出資会社であるクボタ工建(大阪市浪速区、荒川範行社長)ら4社コンソーシアムは、同国北部のコンポントム州で進めている「コンポントム上水道拡張計画」事業を受注。取水施設や浄水場、導水管・配水管の設計・施工のほか、浄水場の運営・維持管理までを一括で担う。コンソーシアムには同社のほか、建設技研インターナショナルとジオクラフト、メタウォーターが参画している。

 フィリピンでは、東洋建設が、同国の公共事業道路省から「カガヤンデオロ洪水対策工事(パッケージ2)」を受注。受注額は約59億円。カガヤンデオロ川流域で河川堤防の整備などを行う。工期は36カ月。

 取水施設の処理能力は1日当たり8250立方メートル、浄水場は同7500立方メートルで、導水管・配水管の整備延長は152キロとなる。現時点の事業期間は設計・建設期間が約3年、運営・維持管理が5年。契約金額は30・2億円。

 民間開発での注目案件は、台湾で熊谷組の現地法人・華熊営造(稲豊彦董事長)と中華工程による2社JVが手掛ける「新店裕隆城開發案商業区新築工事」。現地の大手自動車メーカー・裕隆グループが進める大規模複合プロジェクトで、16年に死去した英国の建築家ザハ・ハディド氏が基本設計を手掛けた。同氏の遺作となるという。

【OMO7大阪新今宮、6月1日から工事着手】星野リゾート、大阪市浪速区に大型ホテル開発

 星野リゾートは、JR大阪環状線新今宮駅北側(大阪市浪速区)に開発する大型ホテル「星野リゾート OMO7大阪新今宮」の建設工事に6月1日着手する。

 「都市観光」に特化したホテルブランド「OMO(おも)」の第3弾となり、客室数は436室。設計を日本設計、東環境・建築研究所、オンサイト計画設計事務所、岩田尚樹建築研究所、施工を竹中工務店・南海辰村建設JVが担当し、2021年11月の竣工、22年4月の開業を目指す。本格着工を前に28日、現地で起工式が行われた。

 建設地は大阪市浪速区恵美須西3の38の2(敷地面積約1・4ヘクタール)。新世界・通天閣、天王寺・阿倍野など、多くの市民・観光客が訪れる集客エリアに近く、関西国際空港にも直結する優れた立地条件にある。

 施設規模はRC造14階建て延べ3万6922平方メートル。客室は個性的な7タイプで構成し、パブリックスペースとしてレストランやカフェテリア、ショップ、ガーデンエリア、温浴棟を配置する。

 OMOは「星のや」「リゾナーレ」「界」に次ぐ第4のホテルブランド。「寝るだけでは終わらせない、テンションが上がる都市観光ホテル」をコンセプトに、昨年4月に「OMO7旭川」、同5月に「OMO5東京大塚」を相次いで開業した。大阪での事業展開を重要な拠点と位置付け、国内外の旅行者に新たな地域魅力を提供していく考えだ。

 起工式には田中清剛大阪市副市長ら来賓を含む約60人が参列。起工の儀では、千鳥義典日本設計社長が鎌入れを、星野リゾートの星野佳路代表が鋤入れを、宮下正裕竹中工務店取締役会長が鍬入れを行い、工事の無事完成を祈願した。

 星野代表は「東京とは全く異なる文化や魅力、食、体験があるこの場所は非常に大きなポテンシャルを持っており、アジアの中でもトップ10に入る観光都市になると確信している。地域の期待や思いを大切にし、どのような時代を迎えても地域に貢献し続けられるよう頑張っていきたい」と決意を述べた。

【2021年秋開業めざす】イオンモール則武新町・ノリタケスクエア(名古屋市西区)、6棟総延べ15・4万㎡

 イオンモールが名古屋市西区則武新町に計画している「(仮称)イオンモール則武新町・ノリタケスクエア」の出店概要が明らかになった。

 店舗とオフィスで構成するモール棟を中心に6棟総延べ15万4000平方メートルの施設を建設する。2020年1月に着工し、21年秋完成・開業を目指す。

 建設地はノリタケカンパニーリミテド、三菱商事、イオンモール、三菱地所レジデンスの4社が共同開発するノリタケ工場跡地。このうちイオンモールの敷地は約8万1200平方メートルで、S造6階建てのモール棟、同7階建ての立体駐車場棟、同3階建てのノリタケスクエア・カフェ棟、同2階建てのギャラリー・レストラン棟、同5階建てのウェルカムセンター棟、同5階建てのクラフトセンター・ミュージアム棟を配置する。

 モール棟は、同社初のオフィス併設型商業施設。27年のリニア中央新幹線開業を見据え、名古屋駅から約1キロの立地を生かし、ビジネス需要も取り込む。1~3階に店舗やフードコートなど(約3万6870平方メートル)、4~6階にオフィス(2万9400平方メートル)が入る。年内に大規模小売店舗立地法などの必要な手続きを完了させる。設計・施工者は非公表。

【庭園の魅力を国内外に発信!】ガーデンツーリズム登録制度の初弾に「北海道ガーデン街道」など

 国土交通省は、地域活性化と庭園文化の普及を目的に創設した「ガーデンツーリズム登録制度(庭園間交流連携促進計画登録制度)」の初弾登録施設を決めた。

 北海道内の8カ所の庭園を結ぶ観光ルート「北海道ガーデン街道」(写真は帯広市にある真鍋庭園)など6計画を選定。30日に横浜市中区の横浜情報文化センター情文ホールで登録証の交付式を行う。

 国交省は各地にある庭園間の連携や多様な庭園の魅力の再発見を促すため、同制度を創設した。登録されたガーデンツーリズムの取り組みを国内外にPRする。全国的な連携も図り、ノウハウの水平展開や全体のレベルアップにつなげる。

 初弾の登録計画は次の通り

 △北海道ガーデン街道(北海道大雪地域~十勝地域)△ガーデンネックレス横浜(横浜市)△富士・箱根・伊豆「皇室ゆかりの庭園」ツーリズム(神奈川県、静岡県)△にいがた庭園街道(新潟県)△アメイジングガーデン・浜名湖(静岡県)△宮崎花旅365(宮崎市)。

2019年5月28日火曜日

【回転窓】どう打つ次の一手

蒸気自動車が欧州で誕生したのは18世紀。人や荷物を運ぶ機械として使われるようになり、その後、電気自動車やガソリン自動車が発明された▼今や巨大産業に成長した自動車業界で欧米連合のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と仏自動車大手のルノーが経営統合も視野に入れ、提携協議に入っているという▼ニュースを報じた欧米メディアによると、両社は自動運転や電気自動車(EV)など日進月歩で高度化している技術を共同開発するそうだ。ルノーは日産、三菱自動車と深い関係にあり、この3社連合にFCAが参加した場合、合計販売台数は1500万台(2018年)を超え、現在トップの独フォルクスワーゲンを上回る▼世界規模で繰り広げられる将来を見据えた自動車産業の再編。成長が期待できる新興国市場の需要をカバーしながら、産業の垣根を越えた事業展開への布石も打ち続ける▼先日、パナソニックとの住宅関連事業の統合を発表したトヨタ自動車も仲間づくりに余念がなく、虎視眈々(たんたん)と成長を狙う。建設産業はどのような将来像を描くのか。次の一手に期待したい。

【歴史的施設を後世に】世界かんがい施設遺産、国内候補に十石堀(茨城県北茨城市)など

 国際かんがい排水委員会(ICID、本部インド・ニューデリー)の日本国内委員会は、世界かんがい施設遺産の候補として十石堀(茨城県北茨城市)など4施設をICID本部に申請することを決めた。本部の審査を経て、9月1~7日にインドネシア・バリで開かれる第70回ICID国際執行理事会で登録施設が発表される。

 候補施設は△十石堀(茨城県北茨城市)△見沼代用水(埼玉県行田市など)△倉安川・百間川かんがい排水施設群(岡山市)△菊池のかんがい用水群(熊本県菊池市)。

 世界かんがい施設遺産は、歴史的に価値の高い施設を認定・登録し、かんがい施設への理解促進や適切な保全を目指す制度。建設から100年以上経過した施設が対象で、独自の登録基準も設定している。

 同遺産への登録により、かんがい施設の持続的な活用・保全方法の蓄積、研究者や一般市民への教育機会を提供。かんがい施設を核とした地域づくりへの活用も期待されている。

【渋滞解消の切り札、東京五輪の移動ルートにも】臨港道路南北線の沈埋函設置、7月上旬に完了見通し

関東地方整備局東京港湾事務所は27日、東京港に建設中の臨港道路南北線について、最後の沈埋函設置が7月上旬に完了する見通しになったと発表した。

 沈埋トンネル工法を採用し、七つの沈埋函を海中に沈め海底トンネルを構築する。23日に六つ目の沈埋函の設置が完了した。

 一つの沈埋函の延長は134メートル。造船所のドッグなどで製作されており、国内製作の沈埋函としては最長になるという。製作した沈埋函は現地にえい航し、関連作業を行った後に海底へ沈めていく。

 東京港はコンテナ車両が集中し、渋滞が慢性化している。臨港道路南北線は中央防波堤地区と有明地区を結ぶルート。2020年東京五輪では関係者の移動ルートとしての活用が想定されている。

【五輪対応工事を実施】東京スタジアム改修(調布市)、松鶴建設に

 東京都財務局は、23日に一般競争入札を開札した「東京スタジアム(31)改修工事」の落札者を6億9700万円で松鶴建設に決めた。

 2020年東京五輪でサッカーと7人制ラグビー、近代五種の競技会場となる調布市の東京スタジアム(味の素スタジアム)を改修する。

 同スタジアムの延べ床面積は8万4773平方メートル。現在は今年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会に備えた改修工事を実施している。今回発注する改修工事では、ラグビーW杯の終了後に行う五輪対応の追加工事として、▽車いす席増設工事▽水回り改修工事▽サイン改修工事▽水回り改修工事に伴う電気設備工事-などを行う。工期は2020年5月15日まで。

【KK線、地下別線整備で最短ルート確保可能】国交省、東京高速道路の機能強化策検討

国土交通省は、大型車両を対象にした東京都心部の環状機能確保策で検討状況を明らかにした。

 首都高速道路の都心環状線と八重洲線を結ぶ「東京高速道路」(KK線)の別線を地下に新設する案とKK線の構造強化案を比較。別線は都心環状線と八重洲線を最短ルートで接続するために必要な地下空間が確保可能とした。

 KK線の既存橋梁を強化・拡幅する場合、路線の構造や長い工事期間によって沿線地区の商業機能やにぎわいに悪影響を及ぼす可能性があると指摘した。

 地下に別線を新設する場合のルート案は、既設の八重洲線を最大限活用し、外堀通りやKK線の下を通りながら西進。新富橋と三吉橋(いずれも中央区)の間付近で地上に出る。地下鉄との干渉を回避するため、最深部は地下20メートル強となる。国交省は、地下埋設物や都心環状線(築地川区間)の大規模更新事業などの計画に考慮しながら引き続き検討する必要があるとした。

 KK線は構造上大型車交通を規制している。既存橋梁を活用する場合、耐荷重を現行の20トンから25トンへと補強する必要があり、補強工事費に加え維持補修費用の増加や、工事中のKK線下の商業施設テナント(約360店舗)からの収入減などが課題とされる。

 拡幅については、拡幅部を支える新たな橋脚を商業施設前面の歩道に整備するため、歩道の有効幅員が減少する。歩道上への橋脚整備を回避するには、KK線と一体構造の商業施設などを含めた全面的な造り替えが必要となる。事業期間が長期化する見通しで、周辺のにぎわいや商業機能に悪影響を及ぼす懸念がある。

 大型車交通の機能確保について、検討の契機となったのは都心環状線の日本橋区間(中央区)の地下化プロジェクトだ。同プロジェクトが始動すると、日本橋区間から都心環状線を通って汐留(港区)方面に向かう場合、江戸橋ジャンクション(JCT、中央区)を経由するルートが使用できなくなり、八重洲線やKK線を通行することになる。

 KK線は八重洲線を介して1日当たり約8000台(うち大型車は約2000台)程度交通量が増加する見込み。その場合、舗装やジョイントなどの補修頻度が増加し、維持補修費用の増幅が予想される。そのため、KK線の構造強化と別線の新設の両面で機能確保策を検討することにした。

【長さ37m、49tの橋桁を一括架設】西船場JCT改築信濃橋入路、本町通上に桁架設

 阪神高速道路会社は25日未明、阪神高速16号大阪港線東行きと1号環状線北行きを結ぶ「西船場ジャンクション(JCT)改築(信濃橋渡り線)事業」で、同JCT信濃橋入路が本町通をまたぐための鋼単純合成鈑桁を架設した。

 橋桁は長さ約37メートル、幅5・75メートル、重量49トンで、550トンつりの大型クレーンで慎重に設置=写真。本町通のように昼夜問わず交通量が多い道路を通行止めにした大規模桁架設はこの事業では最後になる。

 橋桁は架設前に、本町通の北側にある作業ヤードで組み立て、7輪多軸特殊台車に乗せ環状線西側の狭い側道を南側へ進み本町通との交差部で停止、本町通りで待機していた大型クレーンが桁を玉掛けした。施工関係者が入路構造物と西側のビルに接触しないよう情報交換しながら、橋桁をつり上げ桁を据え付けた。工事は横河ブリッジ・横河工事JVが担当。

 今回架設した橋桁には、RC床版と比べ約半分の重量になるワッフル型超高強度繊維補強コンクリート(UFC)道路橋床版(阪神高速道路会社と鹿島が共同開発)を国内で初適用することも決まっている。

 同事業では、大阪港線東行きと環状線北行き連結する渡り線(1車線、約180メートル)の新設に加え、大阪港線の阿波座付近約800メートル(2018年5月先行供用)と、環状線の信濃橋付近約710メートルで1車線分を拡幅し、渋滞緩和を図る。渡り線を環状線北行きにつなぐスペースを確保するため、渡り線の西側に環状線信濃橋入路(1車線、約260メートル)も再整備中だ。

 現在、大阪港線から環状線北行に進入するには、約5分かけて環状線南半分(約5・5キロ)を迂回(うかい)することが必要だが、渡り線が開通すると迂回が解消する。桁工事は入路入り口付近のPC桁と、環状線拡幅区間土佐堀出口付近の桁の2カ所が残る。JCT改築事業は年度内の完成を予定している。

2019年5月27日月曜日

【回転窓】多様な働き方も五輪遺産

28日に申し込みが締め切られる2020年東京五輪の観戦チケット販売。日本選手の活躍が期待される種目などが人気のようだが、抽選なので購入できるかどうかは運次第。今夏にはパラリンピックのチケット販売も始まる▼五輪は20年7月24日~8月9日の間に33競技・339種目、パラリンピックは8月25日~9月6日に22競技・539種目を実施。全55競技の熱戦は待ち遠しいが、期間中の交通渋滞や鉄道の混雑を危惧する声は多い▼五輪・パラリンピックは選手をはじめ関係者や観戦客などの円滑な輸送が成功を左右するポイントの一つ。混雑緩和に向け、政府は開催1年前に当たる7月22日~9月6日の約1カ月間、本番を想定しテレワークや時差出勤、休暇取得を試行する▼「テレワーク・デイズ2019」と銘打ち、官公庁を含むさまざまな業種・規模・地域の団体にテレワークの一斉実施を呼び掛けている。3000団体、延べ60万人に参加してもらい効果を検証。具体的な対策をまとめる▼円滑な輸送と企業の経済活動を両立するには柔軟で多様な働き方の実践と定着が不可欠。これもレガシーの一つになるはずだ。

【大水深コンテナターミナルを整備】新本牧ふ頭地区埋め立て(横浜市中区)、10月にも事業着手へ

関東地方整備局と横浜市は早ければ10月に、本牧ふ頭(中区)先の公有水面(約140ヘクタール)を埋め立て国内最大級の国際物流拠点を整備する事業に着手する。

 両者は4月18日に横浜市へ公有水面埋立法に基づく埋め立て免許取得を申請した。手続きが順調に進めば10月にも承認される見通し。免許取得後、市は速やかに、整備局も年度内に事業着手を目指す。全体の工事期間は20年を想定。供用開始は2032年度を予定している。

 コンテナ船の大型化や貨物量増加、北米・欧州航路の再編などに対応するため大水深のコンテナターミナルを整備する。横浜港の国際競争力を高める狙い。埋め立て地の地盤高は基本水準面から4・0メートル程度を予定。埋め立ては第1~4ブロックに分けて進める。外周構造は施工性や経済性、利用目的、周辺航路への影響を考慮し、ケーソン構造や鋼板セル構造を想定している。

 約140ヘクタールに達する埋め立て面積のうち本牧ふ頭からつながるI期地区(約40ヘクタール)は横浜市が施行する。市の港湾計画で「大深水高規格コンテナターミナルと高度な流通加工機能を有するロジスティクス施設からなる新たな物流拠点」と位置付けている。埋め立てには市内の公共事業などで発生する土砂を使用する。

 JR東海の要請を受けリニア中央新幹線首都圏区間のトンネル工事掘削土砂(約600万立方メートル)も受け入れる。

 JR東海は護岸整備費を負担する。概算事業費は合計約900億円と見積もっている。
 国直轄のII期地区(約100ヘクタール)はコンテナターミナル用地。水深18メートルの耐震岸壁を整備し、延長500メートルのバースが二つつながる国内最大級のコンテナターミナルにする。荷さばき地や護岸(防波)などを整備する。総事業費は2295億円と試算している。

【凜】若築建設名古屋支店土木部・越智ひとみさん

 ◇妊婦も現場で活躍できる◇

 高速道路の橋梁下部工事で現場代理人を務めていた昨年6月、体調不良が気になり病院へ行った。妊娠7週と告げられ、突然のことで戸惑いはあったが産みたい気持ち、そして現場で働き続けたいという意思を会社に伝えた。

 初のケースながら、会社は本人の意思を尊重。妊婦でも現場管理ができる工夫をし安全確保に全面協力すると言ってくれた。

 定期検診の時は職場を離れ、安全帯が装着できないので足場に入れなくなる。会社は現場代理人の補助業務を担う職員を追加で配置。足場の最上階にウェブカメラを取り付け、現場事務所からクレーン作業の進展や安全管理ができるようにした。敷鉄板でつまずいて転倒しないよう、段差解消のシートも付けた。
 昨年12月、工事完了検査の翌日から産休に入り年明けに男の子を出産した。女性技術者が増えていく中、「妊娠、出産が女性の活躍を阻まないようにする理解と支援が必要だ」と強く感じる。「本社と支店、現場、作業員の皆さんのおかげで続けられた」と感謝も忘れない。

 活動が評価され、作業所が日本建設業連合会の第4回「けんせつ小町活躍推進表彰」の特別賞を受けた。「息子が大きくなったらお腹の中にいた時、ぎりぎりまで現場で働いていたと教えてあげたい」と笑顔で話す。育休が明け、仕事に戻ったらもちろん現場に復帰するつもりだ。

 (おち・ひとみ)

【建設業の心温まる物語】日立国際電気(東京都)・横山良隆さん

◇有名スポーツ選手になった気分◇

 私が防災無線のスピーカー設置工事を行ったときの話です。防災無線工事では、まず穴を掘り、コンクリート基礎を造って鉄製の柱をクレーンで建て、最後に無線機を設置してスピーカーを取り付けます。

 スピーカーを設置する公園の道路を挟んだ向かい側に、公営の保育所がありました。事前ごあいさつと作業の説明でお伺いした際、責任者の方からお昼寝の時間は大きな音を出さないでほしいと要望されました。

 作業は順調に進み、柱を建てる作業を行う日となりました。、子どもたちのお昼寝が終わるまでは、音が出ない作業を行っていました。そして昼寝の時間が終わったころを見計らい、クレーンのブームを天高く伸ばし、柱をつり上げる準備を始めました。するとお昼寝を終えた子どもたちが保育所の園庭へと遊びに出てきたのです。園庭が公園より少し高台となっていて、作業が子どもたちから丸見えです。

 すると、一人の男の子が「おじさん何やってるの?」と聞いてきました。私が「クレーンを使って長い棒を立てるんだよ」と答えると、その子は「じゃあ僕、応援するね」と言ってクレーン車に向かい大きな声で「がんばれー」と声を掛けたのです。すると、周りの子たちも口々に「がんばれー」と言い始めました。

 私は、子どもたちに「今から行くよ」と声を掛けました。そして柱をつり上げ、所定の位置へと移動させました。子どもたちからは「やったー」という歓声や拍手がわき起こったのです。

 日ごろ、工事中に周りの人から応援されることはありません。しかし、この時ばかりは有名スポーツ選手にでもなった気がしましたし、子どもたちが工事に興味を持ってくれたことをとてもうれしく思いました。

【建設業の心温まる物語】沼田土建(群馬)・中澤孝至さん

◇いつも笑顔のおじさん◇

 前橋市で道路の新設工事を行った時のことです。道路の隣に体の不自由なおじさんが一人で住んでいました。あいさつに伺うと、心臓を手術しており半身にまひがあるため、つえをついて歩いていることが分かりました。「工事はしようがないよね。俺は平気だから気を付けてね」と笑顔で話してくれました。

 工事が最盛期を迎えた冬に記録的な大雪が降りました。普段は雪の積もらない地域なので、街中がパニック状態。数日後、現場が再開した時におじさんの家を見ると雪で人がやっと通れる道しかなく、積もった雪はほぼ手つかずの状態でした。なんとかおじさんの車を出せるようにしてあげたいと思いましたが、雪の多さに私一人では無理で、現場の職員2人に事情を説明し、3人で雪かきを始めました。すると、家にいたおじさんが気づき「中澤さん、わが家の雪かきなどしてもらっていいんですか?」と尋ねてきました。

 私が「放っておけないですよ」と返すと、「すみません。本当に感謝します」と、おじさんは申し訳なさそうにしていました。なんとか車が出せるまで雪かきをして、雪の下で固まった氷も溶けるように塩化カルシウムをまいて作業を終了しました。おじさんから何度もお礼がしたいと言われましたが、「困った時はお互いさまですから」と言いながら私たちは撤収しました。

 その数日後、現場入り口に、ドーナツの箱をたくさん持ったおじさんがニコニコして立っていました。受け取らないとおじさんがもっと困りそうなので、ありがたくいただきました。

 私が「もうしばらく工事が続きますが、よろしくお願いします」と言うと、「はい、もちろん。気を付けてくださいね」と。やっぱりおじさんは笑顔でした。

【建設業の心温まる物語】あおみ建設名古屋支店(愛知県)・渡邉浩信さん

◇地元と一体となったトンネル工事◇

 高知県と愛媛県との県境でトンネル施工を行っていた時の話です。その道路は、車のすれ違いが難しい狭い道で、片側は山、もう片側は谷という地形で危険度が高く、地元の人が待望しているトンネル工事でした。とはいえ、工事が始まると土砂搬出のためダンプカーの往来が増え、騒音や粉じん被害が生じるため、苦情が来ないか心配しながら準備を進めていました。

 ところが工事が始まると、地元の村の人が現場を通るたび、「今日はどれだけ掘ったの?」と聞いてきました。疑問に答えるため、入り口に大きく進捗(しんちょく)を掲示板として表示し、工事ニュースとして現場の話題を張り出すことにしました。

 しばらくすると、多くの地元の方々がそこに集まり憩いの場所となったのです。そのためベンチを整備すると、現場と地元の人が交流できる場へと発展しました。

 現場見学会を何回も開き、トンネル工事に用いるさまざまな機械の説明や、小学生による防水シートへの落書き大会を行いました。また、台風で近くの道や水路が埋まった時には、現場を止めて復旧に努めました。そのため、地元と一体となって施工を進めることができました。

 ついにトンネルが無事貫通しました。その時は、地元の人が何よりも喜んでくれました。式典には村の主だった方々を招待してお祝いをし、多くの方から「良いトンネルを造ってくれてありがとうございます」と言われました。建設業として地元に役立つことができて本当に良かったと実感できた工事でした。

【マイ・ユニホーム】中設エンジ「設立50周年迎えリニューアル」

 上着がシルバーグレー、ズボンはネイビーの落ち着いた配色。会社の設立50周年を機に、25年間使われてきた従来の作業服を一新し4月1日から導入した。

 約200人の全職員にアンケートを行い、デザインや色について意見を聞いたが、個人の好みがバラバラで決めるまで苦労したという。最終的には全部署から職員を集めた「作業服検討委員会」で意見をまとめた。

 コンセプトは「機能性」「安全性」「女性の視点」の三つ。伸縮性の高い生地をベースに、立体裁断や股部分のマチにより、どのような姿勢でも楽に作業できる。防火のため表面は帯電防止効果の高い素材を採用。ボタンは製品の傷を防ぐため露出しないようにしている。女性職員の要望に応え、細身のデザインにした女性専用モデルも採用した。

 これまでのユニホームは男女とも同じデザインで色もグリーン一色。職員から「デザインが古い」「色が今の業務形態と合わない」などの声があった。新ユニホームは既製品がベースなものの、高機能性とスタイリッシュなデザインで、社員からの評判も上々という。

【駆け出しのころ】東洋建設執行役員土木事業本部土木技術部長・小倉勝利氏

  ◇謙虚に同じ目標へまい進◇

 建築関係の仕事をしていた父親に連れられ、子供のころに現場を何回か見に行ったことが、建設の仕事に興味を持ったきっかけだと思います。志望大学を決める時、橋や道路、鉄道といった土木構造物への関心が強まり、土木の学科を選びました。

 縁あって入社が決まり、最初に赴任した福島県の小名浜事務所でケーソンの現場を担当しました。方言と専門用語が混じった作業員の方々の話は理解するのが難しく、無線を使い早口で話されると何を言っているのかさっぱり分かりません。事業量の多い事務所で毎年1人は新人が入っていたため、歳の近い先輩たちが周りにいました。休みは十分取れず忙しかったですが、夜は先輩たちと港町によく飲みに行き、英気を養いました。

 入社3年目のころ、当時の所長に喫茶店へ連れて行かれ、しかられたことがあります。現場で働いている人たちに対して横柄な態度があったのか、自分ではよく分かりませんでしたが、「さっきのお前の態度は何だ」と静かな口調で諭されました。非常に厳しい方だったので、怒鳴らず静かに話されたのがよけいにこたえたのを覚えています。

 その後、外部のコンサルタント会社に出向し、設計や技術検討などの面白さを知りました。出向した当初は「現場に出たい」との思いもありましたが、基準関係や標準積算など現場の基礎的な部分を勉強するいい機会になりました。

 羽田空港に4本目の滑走路(D滑走路)を造ったプロジェクトは忘れられない仕事の一つです。受注前の事前検討から受注後の実施設計など関連業務を担当しました。3年半という厳しい工期の中で、24時間・365日、現場は稼働しており、毎年の初日の出は現場事務所から眺めました。発注者や15社JV、協力会社など、関係者全員が同じ目標に向かって協力できたから、これほどの大規模プロジェクトを短期間で成し遂げられたと思います。

 羽田の現場を終えて東北支店に移った直後に東日本大震災が発生しました。地震よりも津波に対する考え方が従来と異なり、技術者としても目の前の事態を受け止めきれないほどの災害でした。支店内では多い時に約30カ所の現場が同時並行で動いており、工事を円滑に進めるための事前検討の会議を頻繁にやっていました。若いころの思い出の地でもある小名浜港の現場には思い入れもあり、何度も足を運びました。

 いろんな立場の人たちが同じ目標に向かって働く現場では、おごることなく謙虚な姿勢が大切です。若い人たちには、将来の大規模プロジェクトに携われるよう、経験と実力を積み重ねてほしいと思っています。
入社4年目ごろ、最初に赴任した小名浜港の現場での一枚(後列左端が本人)
(おぐら・かつとし)1985年横浜国立大学工学部土木工学科卒、東洋建設入社。東京支店土木技術部課長、東北支店土木技術部長、土木事業本部土木技術部長などを経て、2019年4月から現職。岐阜県出身、56歳。

2019年5月24日金曜日

【回転窓】働き方改革へ新・担い手3法

「担い手確保3法成立」。本紙がそのニュースを報じたのは今から5年前の2014年5月30日。建設業法、公共工事入札契約適正化法、公共工事品質確保促進法の改正が前日の衆院本会議で可決、成立し「担い手3法」が誕生した▼公共工事の品質を単体だけでなく、中長期的な視点に立って確保する。そのためには建設産業の将来を担う人材を確保しなければならない。喫緊の課題に法律から切り込んだ趣旨が受け入れられ、全会一致での成立となった▼担い手確保へ受注者が「適正な利潤」を確保できるようにすることを発注者の責務とした画期的な内容は、その後の発注行政の基本方針になった。低入札価格調査基準や公共工事設計労務単価の引き上げなどの施策は十分とはいえずとも、大きな効果をもたらしたといえよう▼担い手3法を進化させた「新・担い手3法」の国会審議が始まった。24日に衆院国土交通委員会で採決の見込みという。前回改正から社会的関心も高まった「働き方改革」。週休2日の実現を制度面から支える適正な工期設定に向けた施策などを盛った。法案の早期成立とその後の適切な運用を願う。

【羽田空港への新線乗り入れで動き】JR東、羽田空港アクセス線・東山手ルートなどの環境アセス手続き開始

JR東日本は、東京都心部と羽田空港(東京都大田区)を結ぶ新線「(仮称)羽田空港アクセス線」のうち、JR田町駅付近(港区)と東京貨物ターミナル(品川区)を結ぶ「東山手ルート」と、東京貨物ターミナルから羽田空港に至る「アクセス新線」の整備に向け、東京都の環境影響評価(環境アセス)条例に基づく手続きに着手した。

 15日付で環境アセス調査計画書を都に提出。30日~6月10日に東京都環境局総務部環境政策課などで縦覧できる。

 延長は東山手ルートが約7・4キロ、アクセス新線が約5・0キロ。東山手ルートは改良区間、アクセス新線は建設区間となる。羽田空港に新駅を設ける。構造はトンネル(シールド、開削)、高架、地平、擁壁(掘割)。アクセス新線には、山手ルートとは別に整備を検討している臨海部ルート、西山手ルートも乗り入れる計画となっている。

【役員会議室の重厚さ演出に一役】アイカ工業の化粧合板、福山雅治さん主演のTBSドラマセットに採用

 アイカ工業の化粧合板がTBSのドラマ「集団左遷」(毎週日曜午後9時~)の銀行内を再現したセットなどに採用された。さまざまな人間模様が繰り広げられる空間の演出に貢献している。

 銀行本店内の役員会議室のテーブルや俳優・福山雅治さんが演じる主人公が勤務する支店ロビーの壁面、カウンター側面などに同社の化粧合板「ラビアンポリ」と「マーレスボード」が使われている。

 ラビアンポリは化粧紙と合板などを貼り合わせ、ポリエステル樹脂を塗布。コストパフォーマンスに優れ、家具の垂直面や棚板、建具などに使われている。マーレスボードは、摩擦や汚染、テープ剥離などに耐性を持ちながらも低価格を実現。壁面や家具の垂直面に使われている。

 ドラマは大手銀行が舞台。廃止予定の支店に支店長として赴任した主人公が、巨大組織の理不尽に仲間とともに闘う姿を描いている。

【建設の方向性や建設費を検証】アスルクラロ沼津ホームスタジアム、沼津市があり方調査業務を発注

静岡県沼津市は「アスルクラロ沼津ホームスタジアムのあり方調査業務委託」の契約候補者を選定するためプロポーザル参加要領を公表した。

 参加申込書は6月3日まで、企画提案書は同17日まで受け付ける。同20日に選定結果を通知する予定。契約上限額は500万円(税込み)。

 市をホームタウンとするサッカーJ3リーグのアスルクラロ沼津は、J2への昇格を目指しているが、ホームスタジアム要件などの問題がありJ2ライセンス取得のめどが立っていない。2017年度に県東部地域の関係団体で発足したサッカースタジアム構想連絡会が新スタジアム構想の検討を進めているが、具体化にはさらなる検討が必要。

 このため、将来のスタジアム像や実現までのスキーム、経営を含めたスタジアムの在り方などを調査する。具体的には、地域社会や関係団体が参画したスタジアム建設に向けたスキームモデルを先進事例を踏まえて調査。また、J1施設基準に対応しながらも地域の身の丈にあったスタジアムの建設費を試算する。そのほか、スタジアム経営に関する事例を複数調査する。履行期間は20年3月31日。

2019年5月23日木曜日

【回転窓】サイバーテロに備えを

世界でサイバーテロが頻発している。先日、ウイルス対策ソフトの提供会社が不正アクセスを受けたと報じられた。不安をかき立てられるニュースだった▼専門家によると、サイバーテロの目的には大きく三つがあるという。まずは経済的な理由。設備への攻撃などを武器に、身代金を要求したり巨額の損失を与えたりするケースだ。そのほかに政治的な理由や思想的な主張を伴う事案も多いそうだ▼注意すべきなのは安全管理といった人命にかかる設備への攻撃が増えている点。消火システムが乗っ取られた中で火災が起きる、猛暑の時期、建物内に閉じこめられて空調を止められる…。システム高度化とともに、リスクも高まっている▼建設現場も同様だ。建設現場の生産性向上策i-Constructionの進展により、重機の自動運転などが本格化しつつある。効率化や安全性向上への期待は大きい。だが何十台もの重機が暴走を始めたら、考えただけでもゾッとする▼第5世代移動通信規格(5G)の実用化が間近に控える。最先端技術をどう使いこなしていくか。防御の面からも取り組みを強化する必要がある。

【本紙後援、男女52ペアが熱戦】19年度春季建設業テニス大会、優勝は永井・川畑ペアと秋本・今ペア

男子ダブルス総合優勝の永井・川畑ペア(前田道路)
建設業硬式庭球連盟主催の2019年度「春季建設業硬式庭球大会」(後援・日刊建設工業新聞社、協賛・ブリヂストンスポーツセールスジャパン)が18日、東京都昭島市の昭和の森テニスセンターで開かれた。個人戦ダブルスで競った大会には男女合わせて52ペアが出場。男子総合は永井太陽・川畑洋輔ペア(前田道路)、女子は秋本早紀・今優馨ペア(鹿島)が優勝の栄冠に輝いた。
女子ダブルス優勝の秋本・今ペア(鹿島)
今大会では男子44ペア、女子8ペアが熱戦を繰り広げた。男子ダブルスは予選リーグを行い、その後に1~3位の順位別決勝トーナメントを実施。女子ダブルスは8ペアによるトーナメント方式と、敗者によるコンソレーション(コンソレ)戦も行われた。

 男子ダブルスで1位トーナメントを勝ち抜いた永井・川畑ペアは前回大会に続き2連覇を達成。決勝は前田道路ペア同士の対決で、同社としては個人戦7連覇を果たし、チーム力の高さを示した。女子ダブルス優勝は、秋本・今ペア(鹿島)が粘り強く接戦を制し、総合優勝に輝いた。建設業硬式庭球連盟では今後も大会を盛り上げていくため、加盟会社を募集している。

 各種目の入賞者は次の通り。

 【男子ダブルス】 

 ▽総合優勝(1位トーナメント)=永井太陽・川畑洋輔ペア(前田道路)

 ▽総合準優勝(同)=村井純平・山崎宏昭ペア(前田道路)

 ▽2位トーナメント優勝=佐藤未来・吉田悠人ペア(竹中工務店)

 ▽3位トーナメント優勝=鮎川龍也・尾山準ペア(京王建設)

 【女子ダブルス】

 ▽優勝=秋本早紀・今優馨ペア(鹿島)

 ▽準優勝=五味雅子・田中千恵子ペア(大林組)

 ▽コンソレ優勝=黒川詩歩子・菅坂苑佳ペア(清水建設)

【工事延期や勤務時間変更など試行】首都高速会社、東京五輪見据え今夏からTDM実施

首都高速道路会社は、2020年東京五輪中の交通需要の抑制に備え、今夏から全社的な交通需要マネジメント(TDM)の取り組みを始める。

 7月22~26日に長時間の規制を伴う工事を中止し、湾岸線で予定していた鋼繊維補強コンクリート(SFRC)を用いた床版補強工事も延期する。全社員の3割以上が勤務時間を変えたり、休暇を取得したりする期間を設ける。五輪中の工事、業務の在り方も検討する。

 TDMの実施は宮田年耕社長が21日の記者会見で明らかにした。来年の大会を見据え、取り組みは7月22日~8月2日と同19~30日を対象に実施。業務車両とレジャーに伴う利用者の車両が混在し、交通重要が高いと予測する7月26日は「重点取組日」として、職員に率先した対応を促す。

 TDMの対象日は全社員の3割、重点取組日は5割が▽勤務時間を変えたスライド勤務▽休暇取得▽テレワーク-のいずれかを行い、スライド勤務は全社員が実施する。会議の開催、社用車の利用を控え、イベントや研修は対象日の前後にずらす。人やモノの移動の抑制につながるよう、水筒と弁当の持参を推奨し、広報物の納入時期も調整する。宮田社長は「五輪に向け、交通を担う機関として、交通量を減らしたい」とTDMに意欲を見せた。

工事を巡っては、東京都が大会中の路上工事を回避し、会場周辺や大会関連の輸送ルートのある地域で計画する工事の時期の調整、一時休止、夜間工事への振り替えなどを実施する方針をまとめている。

 都内全域で工事車両を削減したい意向も示している。首都高速会社は五輪に備えた修繕工事や、清掃、標識の交換といった美化対応を急ピッチで実施中。大会中に予定する工事、業務でも一部は前倒しで着手するとともに、実施を五輪後にする検討も行っている。

 点検をはじめ日常的な業務の実施を大会中に避けた場合、グループ企業や協力会社の事業量に2カ月ほど影響が生じることになる。そこで「場所、時間を慎重に検討」(宮田社長)しつつ、大会中の事業・業務の計画を練っており、大会への影響が小さい区間の洗い出しなどを進める方針だ。

2019年5月22日水曜日

【回転窓】ものづくりをどう伝える

「ものづくりの楽しさを知る前に辞めていく」。先日、あるゼネコンの現場所長が昨年入社したばかりの新人技術者が退職したことを、こう嘆いていた▼やりがいや達成感は自分にしか感じ取れないものだ。つらくても諦めず、最後まで頑張った人でなければ喜びは味わえない。業界で働く人は建設業の仕事はやりがいがあると異口同音に話す。ただ外部の人にはなかなか伝わらない▼建設技能者を育成する富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)で昨年行われた実務施工体験研修に、千葉県内の小学校教員2人が初めて参加した。躯体実習や東京スカイツリーなどの建設状況をまとめた映像講習などを2泊3日で受講した▼1人の先生が研修後に感想を寄せた。「スカイツリーのような大きなものではなくても、ものづくりの素晴らしさを私たち教師もしっかり伝えなくてはいけない。子供たちにたくさんの可能性を感じさせなくてはいけない。未来を担う子供たちに、価値のあるものを伝えていくのは私たちなのだ」▼この講習は教員免許更新講習(10年に1回)に対応した講座だそう。ぜひ多くの先生方に受講してほしい。

【こちら人事部】佐藤渡辺「粘り強さあれば出身学科は不問」

 佐藤渡辺は95年の歴史を持つ老舗の道路舗装会社。道路建設のパイオニアとして一般道はもちろん、輸送の大動脈として機能する高速道路や空港などの大規模プロジェクトも数多く手掛けてきた。

 長年積み重ねてきた実績と信頼で、官公庁をはじめとする発注者から選ばれ続けるポジションを確立。東京ガスの協力会社でもあり、衛生設備工事やガス工事も手掛けている。

 同社が求める人物像は▽コミュニケーション力がある人▽協調性がある人▽主体的に行動できる人▽粘り強く取り組める人▽ものづくりに興味がある人▽責任感がある人▽やる気がある人-の7点。石原子之吉総務部長は「『誠実』という社是の通り、特に粘り強く責任感がある人に来てほしい」と力を込める。

 技術系職員は主に土木系学科の出身者から採用するケースが多いが、幅広い学科から採用している点が特長。農学系学科の出身者のほか、現在は文系学科出身で施工管理を担当する社員もいる。石原総務部長は「文系の施工管理はとても少ないが、やる気と粘り強さがあれば出身学科は問わない」と強調する。

 多くの学生に会社を知ってもらうため、合同就職説明会やインターンシップ(就業体験)を通じてPRに力を入れている。インターンシップは合材工場や技術研究所で実施しているが、「工事の現場を見てみたい」という学生の要望を受け、新人研修を行っている現場で有志のインターンシップ参加学生向けに見学会を実施する試みも始まっている。

 ここ数年の採用活動は少子高齢化の影響もあり、家族の意向を受けて遠方への転勤を敬遠する学生が多く見受けられるという。石原総務部長は「全国に拠点がある会社なので、転勤を避けることは難しい」とした上で、「入社後は面談などを通じて本人の意向を聞きながら配属を決める。本人の事情も踏まえある程度は考慮していきたい」と話す。

 会社のアピールポイントは「風通しの良さ」。入社後1年間の研修期間はもちろん2年目、3年目や、3年目以降の研修では同期同士の交流の場や、上司との面談の機会を多く設けた。「社員同士のコミュニケーションを大事にし、社員の考えを会社に反映しやすい環境づくりを心掛けている」(石原総務部長)という。こうした風土づくりは、入社後3年以内離職率が10・9%という数字にも表れている。

 企業の情報はインターネットから簡単に手に入れられるが、石原総務部長とともに社員の採用・育成に携わる堀口正義総務部人事課長は「生の雰囲気に触れること」の大切さを強調する。「就活中の学生には、ぜひ説明会などに積極的に参加して企業、職場の雰囲気を比較してほしい。当社は社長方針として『安全、安心の確保』『いきいきと働ける職場づくり』を掲げる。実際に説明会などに足を運んで雰囲気を見て、当社の方針を理解してほしい」と呼び掛ける。

 《新卒採用概要》

 【新卒採用者数】 男性20人(うち技術系16人)、女性0人(18年度実績)

 【3年以内離職率】10・9%(16~18年度新卒)

 【平均勤続年数】 男性21・8年、女性15・7年(19年2月時点)

 【平均年齢】   44・7歳(同)

【新エリア22年度開業、大型ホテルも建設】TDS拡張が着工、隣接地10万㎡を開発

ファンタジースプリングスの全景イメージ(ⓒ Disney)
東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)を運営するオリエンタルランドは21日、東京ディズニーシー(TDS)を拡張し2022年度の開業を目指す新エリアの起工式を開き、工事に着手した。隣接する駐車場など約10万平方メートルを開発。追加投資としては過去最高の2500億円を投じ、ディズニー映画の世界を表現する「ファンタジースプリングス」を整備する。475室の大型ホテルも設ける。

 拡張は01年にTDSが開業してから最大規模の大型事業となる。新エリアのテーマは「魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界」。「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」「ピーター・パン」を題材にしたエリアで構成。四つのアトラクションや三つのレストラン、店舗を設ける。大型ホテルはディズニーリゾートで6棟目となり、最上級の部屋を設置する。
起工式で記念撮影する加賀見会長兼CEO(右から3番目)
(21日午前、千葉県浦安市、オリエンタルランド提供)
起工式には、加賀見俊夫会長兼最高経営責任者(CEO)ら関係者が参加した。加賀見会長兼CEOは「(祖父母から孫まで)3世代が一緒に楽しめる場所にしたい」と語った。

2019年5月21日火曜日

【回転窓】愚痴をこぼすその前に

2019年春の褒章と叙勲の受章者が決まり、政府から発表された。例年は5月初旬に親授式や伝達式が行われるが、今年は天皇陛下の退位と即位に伴い、日程が1カ月余り繰り下げられた▼さまざまな分野の第一線で活躍されてきた方、地域の安全や安心、社会奉仕などの活動に尽力された方などが受章された。長年の努力と功績に敬意を表したい▼褒章受章者の顔ぶれを見ると、建築家の隈研吾氏が紫綬褒章、小島組の小島徳明社長が藍綬褒章を受章。各界に目を向けると、歌手の石川さゆりさんや囲碁の趙治勲名誉名人らが受章者に名を連ねる▼若手の台頭が著しい囲碁界にあって、趙名誉名人は受章を契機に「もう一回頂上を目指す気持ちになれれば」と話したそうだ。史上1位の74タイトルを獲得するなど、半世紀にわたって輝かしい戦績を残してきた。頂点を極めた人がさらに上を目指そうとする。精神力を少しでも見習わなければと思う▼仕事が忙しくなると「なぜ自分だけが」と愚痴の一つもこぼしたくなる。ただ仕事が山積みになった理由はほぼ自分にある。ぶつくさと不満をこぼす前にまずは責任を果たさねば。

【都立公園拡張に民間資金・ノウハウ活用】明治公園・代々木公園拡張エリア整備、20年度にも民間事業者公募へ

明治公園「にぎわいと交流のゾーン」のイメージ
東京都は都立明治公園と都立代々木公園の拡張エリアについて、整備事業を担う民間事業者を2020年度にも公募する。都公園審議会が20日に提出した両公園の整備計画に関する答申を踏まえ、本年度は公募実施の前提となる事業スキームを固める。事業スキームの検討に向けた調査や民間事業者へのヒアリングなどを含む調査業務を近く発注する予定だ。

 明治公園は都営霞ケ丘アパート跡地を中心とした1・6ヘクタール(新宿区霞ケ丘町)を公園区域に追加。代々木公園は解体が予定されている岸記念体育会館や、都水道局が改修を検討しているポンプ所がある1・2ヘクタール(渋谷区神南1)を新たな公園区域とする。

 都公園審議会で20日に了承された答申によると、明治公園の追加区域のうち「豊かなみどりのゾーン」では、新国立競技場や神宮外苑など周辺施設の緑と連続した樹林や憩いの場を創出する。「にぎわいと交流のゾーン」では民間ならではの新しい発想を取り入れた施設を整備する。

 代々木公園の追加区域のうち、岸記念体育会館がある北側は「みどりと集いのゾーン」として先行的に整備する。民間活力を導入し、JR渋谷~原宿駅間のにぎわいを結びつけ、多様な人々が集い交流する施設を設ける。ポンプ所の改修時に合わせた整備を予定している南側の「雑木林とヒーリングガーデンのゾーン」は、小庭園を思わせる癒やしの空間とする。敷地の高低差に配慮したエントランスを整備し、渋谷駅からの利用動線を確保する。
代々木公園「みどりと集いのゾーン」のイメージ
民間事業者の公募目標時期を20年度とする方針は、今年1月に都の「2020年に向けた実行プラン」に盛り込まれた。都建設局は、事業スキームの検討に向けた調査業務を両公園で早期に発注する予定だ。民間事業者への個別ヒアリングを通じて事業性なども検証する。調査業務の過程で対象範囲など公募内容の詳細を詰め、公募要領に盛り込む。

 民間活力を導入した公園整備の例には、代々木公園に近接する渋谷区立宮下公園などがある。立体都市公園制度を活用し3階建ての商業施設の屋上部に公園を配置する計画。明治公園と代々木公園でも、公募要領の内容次第では同制度の活用など、民間事業者の創意工夫を生かすプロジェクトの実施が期待できそうだ。

【アリーナや住宅・商業施設など提案】アジア競技大会選手村後利用、対話型調査の結果公表

 愛知県と名古屋市でつくるアジア競技大会愛知・名古屋合同準備会は20日、昨年度に実施した選手村後利用の方策を探る民間事業者との対話結果を公表した。

 2026年に開かれる第20回アジア競技大会の選手村は名古屋市港区の名古屋競馬場跡地に整備される。大会後、民間活力を導入して地域の核施設などを整備する予定。対話結果は、本年度以降に実施する事業者公募に反映させる。対話したのは11事業者。

 名古屋市内では希少性の高い20ヘクタールのまとまった土地と期待する声があった一方で、事業開始までの期間が長く事業イメージが予測しづらいなどの意見もあった。核施設としては、アリーナ、大学、病院、個別施設として複合商業施設、都市型物流施設、200~300戸程度の集合住宅、サービス付き高齢者住宅などの提案が寄せられた。

 同準備会では、事業者意見を参考に、統一コンセプトやスケジュールなどを整理し、公募条件の作成を進める。また、敷地内に雨水貯留施設や防災公園を設けることも検討する。

 対話事業者の提案施設は次の通り。

 ▽東邦学園=サッカー場▽矢作建設グループ=複合型スパリゾート▽イオンタウン=複合商業施設▽竹中工務店=住環境整備、先導施設▽大和ハウス工業=住宅、生活便利施設、教育・医療施設等▽三菱地所=住居、商業、産業、ビジネス施設(企業ミュージアム・ショールームなど)▽学研ココファン=サービス付き高齢者向け住宅を中心とした地域包括ケア拠点▽清水建設=住居、生活便利施設、展示場施設、物流倉庫▽長谷工コーポレーション=分譲・賃貸マンション▽ユニホーグループ=選手村施設を利用した生活便利施設、インキュベーション施設等▽日本アスコン=住居、生活便利施設、スポーツ・アウトドア施設、温浴施設等。

【記者手帳】絶海の孤島を支える建設業

伊豆諸島の最南端にある青ケ島。東京都に属する島民170人足らずの日本一人口の少ない村だ。この島の美しい夜空と青い海を見ることが、以前からの念願だった。昨年夏、願いがかなって絶海の孤島を訪れることができた◆島内唯一の海の玄関口である三宝港に船が近付くと、圧巻の絶壁が目の前に迫ってくる。火山噴火でできあがった生い立ちにふさわしく、島の周囲は全て海に浸食された断崖絶壁。砂浜など一切ない◆火山性地盤のため地面は崩れやすく、島のあちこちで崖が崩壊。港に面する断崖はこれでもかというほど治山工事が行われ、たくさんの重機で斜面が埋め尽くされていた。港自体も防波堤が無く荒波が直接岸壁を打つ厳しい環境。定期船も波の高い日は接岸できず就航率は半分程度という◆漁業や農業もままならないような厳しい自然環境で、建設業が住民の生活を支えている。島民に聞くと、生活物資を運んでくる港や険しい地形に造られた道路を維持する建設業への感謝の言葉が返ってきた。地域に不可欠な建設業。憧れていた島で暮らしを守る産業の大切さを知った。(全)

【臨場感あふれる作品、現場の姿に焦点】写真家・山崎エリナさん、インフラメンテの現場を写真集に

 社会基盤の維持管理に焦点を当てた写真家・山崎エリナさんの作品集『インフラメンテナンス~日本列島365日、道路はこうして守られている~』(グッドブックス)が発刊された。

 インフラを愚直に守る人の姿や、仕事の合間に見せる作業員の笑顔などを切り取った。安全・安心や暮らしを真摯(しんし)に支える姿勢が、作品を通じて伝わり、一般市民からも共感を呼んでいる。

 きっかけは、福島県で道路維持などを手掛ける寿建設(福島市)の森崎英五朗社長の提案だった。「メンテナンスをやる人がいなくなると国自体が危うくなる。そうした認識を多くの人に広げることが難しい」。森崎社長が危機感を募らせている時に、山崎さんの存在を知った。

 山崎さんは神戸市出身。国内外で写真展を開いている。熊本の風景などを撮影した写真集『「ただいま」「おかえり」』や、ショートストーリー写真集『アンブラッセ~恋人たちのパリ~』などを出版してきた。ポーランドの映画監督で巨匠として知られるアンジェイ・ワイダ氏が山崎さんの写真に感銘を受けた経緯から、同国の美術館にも作品が収蔵されている。

 「すごいカメラマンに撮ってもらったらどうなるんだろうという好奇心からお願いした」と森崎社長。山崎さんもぜひとも工事現場を見てみたいと快諾し、2017年秋に撮影が始まった。
写真集に収められた作品の一つ(ⓒ elina yamasaki)
最初に訪れたのは除草の現場だった。「夏は草がすごい生い茂っているのに、道路がきれいになっている。ここまでがインフラメンテナンスだったのだと気付かされた」と山崎さん。それは、故郷が被災した阪神・淡路大震災で感じたこととつながっていた。

 倒壊した高速道路や陥没した道路。それらがいつの間にか元通りになっていた。「直してくれる人がいるというのが、頭の隅にあった」(山崎さん)。東日本大震災で大きな被害を受けた福島県で、何か貢献したいという思いもあったという。

 ◇仕事への誇りがあふれている◇

 撮影当初は、作業の邪魔にならないように遠くから撮っていたが、のめり込むにつれて近付くようになり、1~2メートルの距離から撮影するようになったという。除草から始まり、トンネルや橋梁、舗装、除雪、高速道路などの数多くのメンテナンス現場を回った。現場の一員になったような気持ちで撮影しており、写真集には臨場感あふれる作品が多数収録されている。

 「道具を渡す瞬間も無駄がなく、ベストなタイミングで手から手に渡っていく。その素晴らしい連係プレーにも感動した。皆さんは下を向いて作業することが多いが、ふと顔を上げてコミュニケーションをとる時に笑顔が出る。人間性がにじみ出てくる瞬間で、私にとってはご褒美。そうした全ての瞬間を逃したくないと思って撮影した」(山崎さん)

 撮影には寿建設のほか、ネクスコ・メンテナンス東北(仙台市青葉区、山崎幹夫社長)と小野工業所(福島市、小野晃良社長)が協力した。撮影で感じたのは、真摯に仕事と向き合う姿の本質的な魅力だという。山崎さんは「何度も何度も繰り返しながら、道路の亀裂などをきれいにしていく。そうした作業の一つ一つが、私たちの道路を支えてくれている。仕事への誇りが、後ろ姿からもあふれている」との受け止めを話す。

 インフラメンテナンスを支える姿を多くの人に見てもらおうと、18年夏に福島市内で写真展を開いた。父親の仕事姿を見た子どもが「お父さん、この写真格好いい!」と飛び跳ねるように喜んでくれたという。一般女性が涙を流しながら「これからは(工事の)看板を見たら、『ありがとうございます』って思うようにします」と話し掛けてきたこともあったそうだ。

 ◇安全な暮らし支える姿に反響◇

 その場に居合わせた森崎社長は「現場の写真で泣かせるなど考えたこともなかった。山崎さんの写真には圧倒的な力がある」と感じたという。

 写真集の出版を手掛けたグッドブックス(東京都中央区)の良本光明代表取締役は「当初は商業出版として成り立つのか不安があったが、インフラメンテナンスの実情や社会的意義を知り、まとめようと思った。社会的な意味合いで取り組んだ」と語る。東京都中央区にある大型書店・八重洲ブックセンターでは、3月31日~4月6日の総合部門ランキングで首位を獲得した。
(左から)森崎社長、山崎さん、良本代表取締役
山崎さんは今秋、フランスのルーブル美術館で、日本の家族やふるさとなどをテーマに写真展を開く。来年以降に、フランスで日本の土木やインフラメンテナンスの写真展を実現しようと企画も練っている。山崎さんは「インフラに向き合う真剣さや仕事ぶりが格好いい。これからも撮っていきたい」と話す。

2019年5月20日月曜日

【回転窓】インフラツーリズムに続く一手は?

5月も半ばを過ぎ、東京は日中、天気が良ければ汗ばむような陽気になってきた。気象庁は先週、奄美地方と沖縄地方が「梅雨入りしたと見られる」と発表。列島各地は春から夏へ季節の変わり目を迎えつつある▼大型連休明けから梅雨入りまでは気候が良く、出掛けるには絶好の行楽シーズン。自治体や民間企業は自慢の観光地により多く人を呼び込むため、PRに余念がない。「インフラツーリズム」と命名し、国土交通省は数年前からダムや地下構造物を目玉にした観光に力を注ぐ▼国交省が運営するインフラツーリズムポータルサイトには、公共機関が予定する施設見学会や旅行会社などが主催するツアー情報が400件以上紹介されている▼今秋のラグビーワールドカップ、来年開催する五輪・パラリンピック。その後もワールドマスターズゲーム、国際博覧会と大規模イベントはめじろ押しだ▼2020年に4000万人の訪日客を目指している政府。インバウンド(訪日外国人旅行者)に各地を巡ってもらい、食事や買い物も楽しんでもらう。耳目を集め、あっと驚く観光のアイデアが建設業界からも出てきてほしい。

【けんせつ小町が舞台で活躍】舞台「響け、」、21日から池袋のシアターグリーンで

現場の職人の魅力発信など建設関係の広報ビジネスを手掛ける「建設マン.com」(代表・YUICHI)がプロデュースするけんせつ小町の舞台「響け、」が21日、東京・池袋のシアターグリーンで初日を迎える。

 全11公演。建設マン.comによる5回目の舞台作品となる。日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)が特別協賛する。公演は26日まで。

 東京の片隅で長年愛されてきた劇場が老朽化のため大規模リニューアルされることになり、音響にこだわりながら工事を完成させていくストーリー。ICT(情報通信技術)など最新技術を得意とするけんせつ小町と昔かたぎの現場監督がぶつかりながらも互いに認め合い、プロジェクトを成功に導いていく。

 けんせつ小町役の女優・黒木千春さんはICTチームを率いる難しい役柄。「女性進出を先導するけんせつ小町へのエールにしたい」と意気込む。座長で現場監督役を務める石尾吉達さんは建設現場でアルバイトした経験を生かし、「ものづくりの最前線を担う人の熱い思いをリアルに表現したい」と話した。

 上演日時は21日が午後7時から、22~24日は午後2時と7時から、25~26日は午後1時と5時から。料金(税込み)は前売り5000円、当日5500円。今回は新たに学割2500円を用意した。

 YUICHI代表は「普段は見られない仮囲いの中を表現した。建設業を志す人や一般の人に広く見に来てほしい」と話している。

【19年に都市計画決定へ】新宿駅周辺再整備(東京都新宿区)、都施行の区整事業で実施

再編完了後の新宿駅西口広場のイメージ(提供:東京都)
日本を代表するターミナル駅「新宿駅」の周辺地区(東京都新宿区)で利便性を高める大規模改造事業が動きだす。東京都は「新宿グランドターミナル」構想として、駅前広場再編整備と線路上空での東西連絡デッキ新設を柱とする計画を、都施行の土地区画整理事業として行うと17日に発表した。鉄道会社4社など多くの地権者が混在する中、都がプロジェクトを主導することで計画を円滑に進める狙いがある。

 小池百合子知事が同日の記者会見で発表した。小池知事は、今夏にも都市計画決定権者である東京・新宿区と土地区画整理事業の都市計画手続きに入り、年内の都市計画決定を目指すと表明。具体的な時期は未定だが、2020年以降できるだけ早い段階で事業計画を決定し、国から認可取得を目指すとした。

 土地区画整理事業の施行想定区域は新宿駅と、東西に1カ所ずつある駅前広場など周辺地区を含めた計約10ヘクタール。鉄道会社が検討している駅施設の改良や駅ビルの機能更新に合わせ、都が土地区画整理事業の一環として東西駅前広場の再編整備や線路上空での東西連絡デッキ新設を進める計画だ。

 都によると、東西駅前広場の再整備は現在不足している「利用者の滞留空間確保」が最優先課題。道路再配置などの関連工事を進める。施行面積は東口広場約1・4ヘクタール、西口広場約2・5ヘクタールを見込む。土地区画整理事業全体の工事の着手や完成目標時期、事業費などは今後詰める。現時点で全体事業期間は最低10年以上とみている。

【凜】ナカノフドー建設名古屋支社営業部長・奥野祐子さん

 ◇営業職でも女性活躍を◇

 生まれも育ちも名古屋。もともとは小学校の先生になりたくて大学で教職課程を取り、教員免許も取得した。教育実習は感動したが、父親から「こんな会社もあるよ」と勧められたのが営業譲渡前の不動建設だった。

 会社訪問をしてみると「とても活気があり雰囲気が良く感じられた」。外資系など大手企業の内定をもらっていたが、会社訪問での印象が決め手になり建設会社への就職を選んだ。

 配属は営業事務だったが30歳の時、一念発起して民間営業の仕事に挑戦。食品メーカーを中心に飛び込み営業を続けた。業種を「食品」に絞ったのは、生活に欠かせない“衣食住”の一つで、商品が身近で興味もあったから。

 図書館に通って関連する資料を調べ営業の参考にした。「泣いたりつらかったり…。いろいろなことがあったけれども、応援してくれたお客さま、背中を押してくれた上司や同僚のおかげでいまの自分がある」と話す。

 「飛び込み営業は大変。でも自分で開拓した顧客は思い入れも強くなる」。組織をマネジメントする立場になったが、安定した業績確保には「継続顧客と紹介」だけでなく「新規開拓」が不可欠と力を込める。女性が活躍できる場が広がりつつある建設業界。技術職は増えているが、営業職はまだ少数派。さらなる飛躍を願っている。

 (おくの・ゆうこ)

【中堅世代】それぞれの建設業・227

娘と過ごす時間をなによりも大切にしている
 ◇働く母を見て育った自分だからこそ◇

 地方の建設関連団体に勤務する青島優子さん(仮称)は、小学3年生の娘を持つシングルマザーだ。団体が企画するセミナーやイベントの運営を任されている。出産するまでは時間を気にせず仕事に打ち込んでいたが、今は違う。娘との時間を大切にするため、仕事を効率的に進めることを最優先している。目の前にある壁は仕事の内容よりも時間制限。毎日が時間との戦いだ。

 高校を卒業後、地元の大学に進んだ。大学を受験するまでまったく興味がなかったという土木を専攻。河川の研究室に所属していた。指導教授が川を見にいろいろな場所へ連れて行ってくれたのがきっかけとなり、景観やデザインに興味を持つようになった。就職活動ではゼネコンやコンサルを志望したものの、当時は就職氷河期と言われる時代。思うように選考が進まず、内定をもらった広告会社に入社した。

 その会社では媒体のレイアウトを手掛ける日々。建設業と同じものづくりだと自分に言い聞かせて激務に励んだ。ただ、3年たったころ体調を崩した。やりたいこととできることは違う。頭の中では分かっていたが体が言うことを聞いてくれなくなった。そんな時、今の職場から声を掛けてもらった。実務とは離れているが、それでも建設分野に関われることがうれしく、二つ返事で入職を決めた。

 娘が保育園に通っているころは、職場の時短制度を利用していた。小学校に上がると制度を使えなくなるため、授業が終わった後は娘を学童保育に預けている。夕方に会議が入ることも少なくない。帰りが遅くなると、自分で迎えに行けない。そんな時は近くに住む母親に代わりをお願いしている。「母がいなければ成り立たないくらい、助けてもらっている」と感謝する。

 結婚して仕事を辞めようとは思わなかった。ただ出産は違った。価値観が激変し、娘が中心の生活になった。産休・育休を経て、職場に復帰する時は後ろ髪を引かれる思いだった。保育園に預けて職場に向かう時、娘に大泣きされたことが何度かあり、今でも忘れられないという。

 母もばりばり働いていた。そんな働く母を見て、出産後も仕事を続けたいと思った。「今は育休や時短など、働く女性の支援制度が充実している。でも母の時代はそういうのがなくて大変だったと思う」。仕事終わりに娘を迎えに行けないことがある分、朝は必ず送り出してから出勤するように決めている。

 職場には同世代の女性が数人いる。子どもの年齢も近く、互いに仕事を融通し合いながら、それぞれが育児と仕事を両立している。とても働きやすい職場だと気に入っている。

 働き方改革により、女性にとっても働きやすい環境整備が進んでいる。「母のような働く女性が頑張ってきたから、今の制度ができ、女性が働きやすくなっている。私も頑張って働いて、娘が働くころにはもっともっと働きやすくなっていてほしい」。母が自分にしてくれたことを娘に返していく。確実にバトンをつなげたいと考えている。

【サークル】ライト工業Raito.RC(ライト.ランニングクラブ)

 ◇楽しく走って絆深める◇

 社員間のコミュニケーションや団結力を深めるために、ランニング好きの社員が中心となって2016年に発足した。

 有志による同好会として活動し、関越統括支店管理部の圓山春華さんが代表を務め、技術営業部や施工技術部、管理部から20人が参加している。

 「自分のペースで楽しく走ろう」をモットーに、各自が日々練習を重ねている。励まし合いながら、新潟シティマラソンや新潟ハーフマラソンなど地域のマラソン大会にも挑戦している。

 毎年、2、3チームに分かれてリレーマラソンの大会に参加し、親交を深めている。今年も、9月に新潟県スポーツ公園(新潟市)で開かれるリレーマラソン大会「スポーツ公園エンジョイラン」にエントリーする予定だ。このほかにも地域のマラソン大会への参加を見据えている。

 休日、一緒に汗を流すことで、仕事しか接点がなかった人の意外な一面を知ることも多い。マラソン大会への参加という共通の思い出ができることで、社員間の絆も強まっている。楽しく走るという活動を、これからも続けていく。

【駆け出しのころ】鉄建建設取締役常務執行役員土木本部長・高橋昭宏氏

 ◇やり抜く意志が成長を促す◇

 学生時代、将来の仕事について明確な考えは正直持っていませんでしたが、自然に携わる土木の世界に関心を持っていました。縁あって試験を受けた鉄建建設の面接では「トンネルをやってみたい」と伝え、入社後はトンネル現場を中心に土木技術者として経験を積み重ねてきました。

 最初の赴任地は青森の青函トンネルでした。電車と車を乗り継いで竜飛崎にたどり着いた時に抱いた、最果ての地に来たような感覚は今でも覚えています。国家的プロジェクトの大現場で1年半ほど勤務した後、上越新幹線の中山トンネルの工事に移りました。この現場も大量の湧水や変状する地山などを克服する難工事でした。入社間もない頃、こうした大変な現場での経験が今の糧になっています。

 最初の3年ぐらいまでは厳しい現場で休みも十分に取れず、仕事を続けるかどうか迷いがありました。しかし、苦労しながら一つ一つ取り組んできた成果が連なり、仕事の達成感や面白さを感じられるようになりました。大現場で人脈が広がったことも将来につながりました。

 休みは確かに多くありませんでしたが、その分、充実感がありました。休日の前日、早めに仕事を切り上げ先輩たちに連れられて青森の町に車で移動し、しこたま飲んで泊まる。何をしたわけでもありませんが、その時の開放感がオンとオフの切り替えになっていたと思います。

 トンネル屋にとって貫通の達成感は他に代え難いものがあります。至福の時間であり、それまでの苦労がリセットされます。本坑の貫通式は発注者や地元の関係者も出席し、法被を着てみこしを担ぎ、たる酒を酌み交わしながら苦労をねぎらい、喜びを分かち合う。導坑が貫通した時も一升瓶を担いで乾き物などを用意し、現場関係者だけで貫通式を行います。

 これまで8本のトンネル現場を担当し、最後の北陸新幹線の松ノ  木トンネルで作業所長を務めました。社員や協力会社の人たちを従え、自分の意志で現場を動かすことはこれまでにない経験でした。やはり若い技術者には、所長を目指すという気概を持って働いてもらいたいと思います。

 若い世代にある程度の責任を持たせながら、失敗する前に助言を与えるのが理想的。自分で仮説を立て、先々を読みながら業務を進めることで現場を見る力を養っていく。目の前の仕事をやり抜く意志を持ち、まずは10年頑張ってほしいです。新入社員には、業務に向かう自らの姿勢と人とのコミュニケーションが、人を成長させるのだと伝えています。

 先輩たちも下に苦労な面ばかり見せたり、愚痴を言ったりしてはだめです。上を目指そうとやる気を引き出し、若い世代を導くこともわれわれの使命です。
入社3年目。上越新幹線中山トンネルの貫通式で
(左端が本人)
(たかはし・あきひろ)1979年埼玉大学理工学部建設基礎工学科卒、鉄建建設入社。執行役員土木本部副本部長、東北支店長、東京鉄道支店副支店長などを経て、2018年から現職。代表取締役執行役員副社長に6月27日付で就任予定。新潟県出身、63歳。

2019年5月16日木曜日

【回転窓】エスカレーターで異文化体験

東京から新幹線で大阪に着き、改札口に向かうエスカレーターで自分だけが左側に立っている-。この瞬間、関西圏に来たんだなと実感する方も多いのでは▼立ち位置の違いは諸説あるようだが、東京は武士、大阪は商人中心の文化の違いが影響していると聞いたことがある。刀を左側の腰に差す武士が右側に立つと、脇を通る際に左側の刀に触れてしまう。無用ないさかいを起こさないため、左側に立つ意識が今も残っているというのが理由のようだ▼真偽は定かではないが、エスカレーターは本来、立ち止まって利用するものであり、安全基準もこれが前提。歩行する人のために片側を空け、順番待ちの利用者が長蛇の列をなすのは円滑な移動の妨げにもなっている▼エスカレーターでの歩行は、衝突や転倒などの事故につながる。鉄道事業者らは「歩行禁止」や「両立ち」を呼び掛けているが、従来の慣行を変えるのはなかなか難しい▼9月にラグビーワールドカップ、来年は五輪・パラリンピックの開催が控える。数多く訪れる海外からの人たちはエスカレーターの習慣をどう思うか。ぜひ当たり前を見直すきっかけに。