2019年5月27日月曜日

【建設業の心温まる物語】沼田土建(群馬)・中澤孝至さん

◇いつも笑顔のおじさん◇

 前橋市で道路の新設工事を行った時のことです。道路の隣に体の不自由なおじさんが一人で住んでいました。あいさつに伺うと、心臓を手術しており半身にまひがあるため、つえをついて歩いていることが分かりました。「工事はしようがないよね。俺は平気だから気を付けてね」と笑顔で話してくれました。

 工事が最盛期を迎えた冬に記録的な大雪が降りました。普段は雪の積もらない地域なので、街中がパニック状態。数日後、現場が再開した時におじさんの家を見ると雪で人がやっと通れる道しかなく、積もった雪はほぼ手つかずの状態でした。なんとかおじさんの車を出せるようにしてあげたいと思いましたが、雪の多さに私一人では無理で、現場の職員2人に事情を説明し、3人で雪かきを始めました。すると、家にいたおじさんが気づき「中澤さん、わが家の雪かきなどしてもらっていいんですか?」と尋ねてきました。

 私が「放っておけないですよ」と返すと、「すみません。本当に感謝します」と、おじさんは申し訳なさそうにしていました。なんとか車が出せるまで雪かきをして、雪の下で固まった氷も溶けるように塩化カルシウムをまいて作業を終了しました。おじさんから何度もお礼がしたいと言われましたが、「困った時はお互いさまですから」と言いながら私たちは撤収しました。

 その数日後、現場入り口に、ドーナツの箱をたくさん持ったおじさんがニコニコして立っていました。受け取らないとおじさんがもっと困りそうなので、ありがたくいただきました。

 私が「もうしばらく工事が続きますが、よろしくお願いします」と言うと、「はい、もちろん。気を付けてくださいね」と。やっぱりおじさんは笑顔でした。

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