2019年5月30日木曜日

【経済成長に工事で貢献】ゼネコン各社、18年度下期も東南アジアで大型案件受注

三井住友建設らが受注したミャンマー「バゴー橋」の完成イメージ(提供:JICA)
ゼネコン各社が東南アジア各国で堅調に実績を積み上げている。2018年度下半期(18年10月~19年3月)も三井住友建設がフィリピンで高架鉄道工事を受注するなど、政府開発援助(ODA)関連を中心に大型案件が目立った。国内建設市場は好調を維持しているが、人口減少などを背景に中長期的な環境変化が予想される。各社は海外により目を向け、東南アジアなどの成長が期待できる市場での受注活動を、より積極的に展開する。

 三井住友建設がフィリピンで受注したのは「南北通勤鉄道事業(マロロス-ツツバン)CP2工区」工事。首都マニラ市と周辺都市を結ぶ高架型鉄道「南北通勤鉄道計画」(総延長約38キロ)の一部で、マニラ市~マロロス市間(延長14キロ)と、北側の起点駅となるマロロス駅など高架駅舎3駅を施工する。工期は約42カ月。受注総額は約539億円。急激な人口集中や交通需要の増大が課題となっている中で、交通円滑化につなげる計画だ。

 鉄建建設、IHIインフラシステム、大林組、JFEエンジニアリングの4社は、インド初となる高速鉄道建設事業のうち「バドーダラ駅付近工区」のプレ・コンストラクションサービス業務を、国際協力機構(JICA)から受注した。鉄建建設とIHIインフラの2社が主担当となる。同事業では日本の新幹線方式が採用される。案件名は「インド国ムンバイ-アーメダバード間高速鉄道建設事業 バドーダラ駅付近工区におけるプレ・コンストラクションサービス(有償勘定技術支援)ステージI」。既存在来線と近接し難易度が高いため、施工性を考慮したレビューや助言を行う。

 ミャンマーでは複数のODA案件で受注があった。三井住友建設・横河ブリッジJVは、受注総額約280億円の「バゴー橋建設事業(CP1-CP2)」を手掛ける。発注者は同国の建設省橋梁局。ヤンゴン市のバゴー川に架かるバゴー橋を整備する事業で、全長約3・6キロのうち約2・7キロを担当する。PC箱桁橋・鋼箱桁橋・鋼斜張橋(11径間)や、鋼箱桁橋・PC箱桁橋(13径間)、アプローチ道路、料金所を建設する。工期は32カ月。

東洋建設らが手掛けるインドネシア「パティンバン港外周護岸工事」の完成イメージ
住友商事とフジタ、日本信号の3社は、ミャンマー国鉄から「ヤンゴン・マンダレー鉄道整備事業フェーズ1CP101工区」を受注した。老朽化している同国の主要鉄道路線・ヤンゴン・マンダレー線のうち、ヤンゴン近郊のパズンダン駅~バゴー駅区間(約71キロ)が対象で、軌道・土木・橋梁・構内・信号一式・通信一式の改修工事を行う。契約金額は約180億円。23年3月の完成予定だ。

 安藤ハザマ・ピーエス三菱JVは「東西経済回廊整備計画(パッケージ1、ジャイン・コーカレー橋建設事業)」に取り組む。同国建設省橋梁局が発注者で、380メートルのメイン橋梁などを建設する。受注総額は約68億円。工期は21年5月まで。

 港湾分野を見ると、インドネシアで東洋建設と若築建設、現地国営建設会社のアディ・カルヤによる3者JVが、大型港湾工事を受注した。工事名は「パティンバン新港開発事業フェーズ1のうち、『パッケージ2外周護岸/防波堤築造及び外港航路浚渫工事』」。同国運輸省海運総局の発注で受注金額は約130億円。防波堤や護岸などを整備する計画で24カ月の工期を見込む。

 東亜建設工業はシンガポールで同国に本社を置くPSAから、トゥアス港開発第1期建設工事の一部を受注。六つのコンテナバースと120ヘクタールのコンテナヤードを建設する。22年後半の完成を予定している。受注額は非公表。トゥアス港は今後20年をかけて段階的に整備される予定になっている。完成すれば世界最大の自動化コンテナ港となる見通しだ。

 カンボジアでは鉄建建設と愛亀(松山市、西山周社長)による2社JVが「国道5号線改修事業(スレアマアム-バッタンバン間)パッケージ3」、三井住友建設が「教員養成大学建設計画」を受注した。受注金額は鉄建建設JV約99億円、三井住友建設約22億円。

東亜建設工業が工事の一部を受注したシンガポール「トゥアス港」の将来イメージ
クボタの全額出資会社であるクボタ工建(大阪市浪速区、荒川範行社長)ら4社コンソーシアムは、同国北部のコンポントム州で進めている「コンポントム上水道拡張計画」事業を受注。取水施設や浄水場、導水管・配水管の設計・施工のほか、浄水場の運営・維持管理までを一括で担う。コンソーシアムには同社のほか、建設技研インターナショナルとジオクラフト、メタウォーターが参画している。

 フィリピンでは、東洋建設が、同国の公共事業道路省から「カガヤンデオロ洪水対策工事(パッケージ2)」を受注。受注額は約59億円。カガヤンデオロ川流域で河川堤防の整備などを行う。工期は36カ月。

 取水施設の処理能力は1日当たり8250立方メートル、浄水場は同7500立方メートルで、導水管・配水管の整備延長は152キロとなる。現時点の事業期間は設計・建設期間が約3年、運営・維持管理が5年。契約金額は30・2億円。

 民間開発での注目案件は、台湾で熊谷組の現地法人・華熊営造(稲豊彦董事長)と中華工程による2社JVが手掛ける「新店裕隆城開發案商業区新築工事」。現地の大手自動車メーカー・裕隆グループが進める大規模複合プロジェクトで、16年に死去した英国の建築家ザハ・ハディド氏が基本設計を手掛けた。同氏の遺作となるという。

0 コメント :

コメントを投稿