2019年6月25日火曜日

【回転窓】大切なのはストーリー

高校3年生の冬休みに初めてアルバイトをした。勤め先は東京都内の物販店。年上の大学生が働いていて大人の世界に足を踏み入れたような気分になった▼新米の高校生にとてもよくしてくれた先輩大学生が休憩所で本を読んでいた姿がかっこよく、では自分もと思って同じ本を買った。その本は当時大流行していた村上春樹さんの『ノルウェイの森』だった▼数多くの作品を世に送り出し国内外で高い人気を誇る村上さんが資料を寄贈し、母校の早稲田大学に「国際文学館(村上春樹ライブラリー)」が作られるという▼大学在籍時に村上さんがよく利用していた演劇博物館の隣にある4号館の一部を改修。先週記者会見した早大の田中愛治総長によると、以前から村上さんと親しかった建築家の隈研吾さんに設計を依頼したところ、快諾を得られたそうだ▼田中総長が小説にとって大事なことはと聞いた時、村上さんは「それはストーリーです」と答えたそう。同館のオープン予定は2021年春。多くの人を魅了してきた村上文学がどのような形で建築に落とし込まれるのか。隈さんの手による設計の完成が今から楽しみだ。

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