2019年8月5日月曜日

【駆け出しのころ】JFEエンジ取締役専務執行役員社会インフラ本部長・四方淳夫氏

 ◇現場で自ら考えて行動を◇

 小学生のころに家族旅行で黒四ダムを見て、すごいと思ったのが土木に関心を持つきっかけでした。漠然と大きいものを造りたいと考えていましたが、大学時代に本州四国連絡橋(本四架橋)がまさに造られようとしていた段階を迎え、橋梁の研究室に入りました。

 本四架橋の建設に関わりたいとの思いから日本鋼管(現JFEスチール)に入社し、初任地は津製作所で橋梁の製作を担当。当時は新人に対して先輩も余分な口出しはしません。製作工程で自分なりの考えで指示を出すと、だいたい外れている。何が問題だったのかと昼間は場内を歩き回って情報を集め、夜に指示書を作成する日々が続きました。

 現場は動いているので、早く決めないといけない。間違えたらすぐやり直す。何かの本に書かれていたように「朝令暮改」ではなく、「朝令朝改」といったスピード感で対応しなければなりません。

 3年目から設計部門に移りましたが、8年ほど高速道路関係の案件などに携わりました。その後、再び津製作所に戻りましたが、そこでは設備の自動化が主な業務。専門外で2回目の新入社員のような状態でしたが、自動化のためのシステム開発や設備の導入・試運転などに取り組みました。設備関係の仕事が終わった時はグループマネジャーの立場となり、結局うまくタイミングが合わず、本四架橋のプロジェクトを直接的に手掛けることはかなわず、それは今でも少し心残りとなっています。

 津製作所の所長になった時、羽田空港のD滑走路のジャケット上部工を担当しました。その製作は難しかったですが、思い入れのある仕事の一つです。

 若いころ設計業務に携わった高架橋で、関連の延伸工事を当社で現在進めています。最近、その現場に赴くと当時のことが思い出され、感慨深かったです。インフラ構造物はそこに有り続け、そこに行けば見られる。昔は子どもも一緒に連れ回りながら、あちこちの鋼橋をよく見に行きました。

 近年、ものづくりの業界で品質偽装が相次いでいます。偽装に関わった人は追い詰められ、どこかの段階で一からやり直すか、ごまかすかといった岐路に立つ。そこで元に戻らざるを得ない仕組みを作らないと、社員も会社も守れない。ものづくりに携わる者として、戻る勇気があれば品質を偽装する必要もありません。

 若い人たちには言われた通りにやるだけでなく、自分で考えて行動することを大切にしてほしい。現場で実際に経験し、それを自分の力にしてもらう。人材育成の基本は、今も昔も同じです。

入社1年目。津製作所の同期と行った懇親旅行での一枚
(中央最後列が本人)
 (しかた・あつお)1981年大阪市立大学工学部土木工学科卒、日本鋼管入社。JFEエンジニアリング鋼構造事業部建設本部津製作所長、鋼構造本部副本部長、調達本部長などを経て2018年4月に現職。京都府出身、61歳。

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