2019年9月19日木曜日

【回転窓】「無知の知」からの一歩

 自分が知らないことを知っている-。古代ギリシャの哲学者ソクラテスが示した「無知の知」は、己の無知を自覚することが真の認識に至るとする、真理探究の基本的な考え方として知られる▼知の巨人は「知らないこと」よりも「知らないことを自覚しないこと」の方が罪深いと説く。無知の知は人が物事を考える上での第一歩となることを指し示す▼進化を続ける情報化社会。現代は知らないことへの不寛容さが増しているように感じる。ちょっとした疑問や知りたいことはネットサーフィンで手軽に検索できる。頭を使わず、労力もかけず、知の欲求をITが満たしてくれる。知らないことは何もない、と錯覚してしまう▼先週の台風15号による被害。復旧が長期化している原因の一つに、自ら考える力の衰えがあるように思えてならない。考えなしに情報が入ってくるという認識が、被害状況の確認の遅さや被害想定の甘さにつながったのではなかろうか▼己の知を過信し、すべてを知っていると考えるのはおこがましい。無知を自覚し、自ら考える行為の大切さを胸に刻み、激甚化する災害への対応力を高める一歩にしたい。

0 コメント :

コメントを投稿