2019年10月31日木曜日

【回転窓】時にはおきゅうも

秋のイベントとして日本でもすっかり定着したハロウィーン。起源は古代ケルト人の収穫祭とされ、新年が始まる11月1日の前夜に現世と死後の世界がつながり、先祖の霊が戻ってくると信じられていた。悪魔や魔女もやってくることから、同じ格好で仲間を装い、身を守ったというのが仮装の由来のようだ▼日本では思い思いの仮装を楽しむ秋のイベントとして年々盛り上がり、特に東京の渋谷駅周辺は10月の後半になると、夜な夜なコスプレした多くの人が集まり、お祭り騒ぎになっている▼盛り上がりも度が過ぎると単なる迷惑行為になる。昨年は暴徒化した群衆が軽トラックを横転させる事件を起こすなど、モラルの欠如に対して厳しい目が向けられた▼取り締まりの強化も念頭に置き、渋谷区は安全で安心な環境確保のための条例を6月に施行した。ハロウィーンのシーズンや年末年始には路上飲酒など公共の場での迷惑行為を禁止する▼再開発ビルが次々と開業し、鉄道駅などの再整備も進む渋谷エリア。人を引きつける魅力はさらに高まるだろう。いたずら好きの魔物を少し懲らしめることも、時には必要かもしれない。

【完成引き渡しは11月30日】新国立競技場が完成間近、検査段階に移行

 2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる「新国立競技場」(東京都新宿区、渋谷区)が11月30日に完成・引き渡しを迎える。

 発注者の日本スポーツ振興センター(JSC)によると、スタジアム本体に加え、敷地内の外構や植栽なども「一通り完成した」(高橋武男新国立競技場設置本部総括役)という。現在は設備機器の試運転や調整、細かな手直しなど検査段階に移っている。

 整備工事の最終段階で行われた内外装仕上げ工事や設備据え付け工事、陸上トラックを含むフィールド工事などがほぼ完了した。地下にためた雨水を循環利用する「せせらぎ」と呼ぶ長さ140メートルの小川など外構部分も完成形となった。引き渡し後の稼働に向け、日本伝統の「ぼんぼり」や「ちょうちん」をイメージした夜間照明の点灯テストにも入っている。

 JSCは18日、設計・施工を担当する大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVと工事請負契約書のスライド条項の適用による事業費の増額変更契約を結んだ。物価や労賃の変動を踏まえ工事費を約1・4億円増額し、設計・管理費を合わせた整備費は約1567億円となった。

 今後も五輪以降の手直し工事で約2億円の増額を見込んでいるが、JSCの今泉柔剛理事・新国立競技場設置本部長は「整備計画段階で示された上限(1590億円)の範囲内でコントロールしている」と説明している。

 完成・引き渡し後は12月中旬に竣工式を予定。同21日には一般向けのお披露目となるオープニングイベントを開く。

【新たな玄関口が誕生】渋谷駅東口地下広場、11月1日にオープン

 東急と都市再生機構は東京・渋谷で進めている「渋谷駅街区土地区画整理事業」に関連し、渋谷駅の地下に設けた東口広場のオープニングセレモニーを30日開いた。

 広場は2015年8月に地下化が完了した渋谷川の下に位置し、地上と地下の鉄道やバスターミナルの交通結節点となる。施工は東急建設・清水建設・鹿島JVが担当している。11月1日にオープンする。

 広場は地下2層構造の約1600平方メートル(機械室含め約2500平方メートル)。渋谷駅東口の地下1~2階に位置する。整備にあたって、渋谷川の約170メートルを東側へ約35メートル移設した。

 地上にあるJR線、東京メトロ銀座線と、地下の東急東横線・田園都市線、東京メトロ副都心線・半蔵門線を結ぶ歩行者動線となり、乗り換え利便性の向上や滞留空間の確保に貢献する。広場の地下には水害対策として、雨水の貯留槽を整備しており、20年の完成を目指している。

 地下2階には、駅利用者の憩いの場となるカフェ「UPLIGHT CAFE」をオープンする。観光客やインバウンド(訪日外国人旅行者)を対象とした観光案内機能を持ち、渋谷の玄関口としての役割が期待されている。地下1階には「都営バス定期券発売所兼案内所」や多機能トイレを備える「渋谷区立渋谷駅東口公衆便所」などが入る。

【破堤前の強度確保】千曲川決壊箇所(長野市)で仮堤防の補強完了

 台風19号による大雨によって堤防が決壊した信濃川水系千曲川左岸58.0km地点(長野市穂保)で、仮堤防を補強する鋼矢板の打ち込み作業が30日に完了した。上流側を大成建設、鹿島が下流側を施工した。

 工事場所は国が管理する千曲川左岸58・0キロ地点。鋼矢板による仮締め切り部分は高さ約5・5メートル、延長約320メートル。長さ約16メートル、幅40センチの鋼矢板を1700枚打ち込んだ。

 同地点の堤防は豪雨によって約70メートルにわたって決壊。元の高さまで土砂を積んで仮堤防を設け、仮堤防を囲むように鋼矢板を地面に打ち込み補強した。

 緊急復旧工事は13日午前7時ごろに着手し、24時間態勢で実施してきた。17日に延長約70メートルの仮堤防が完成。上流側を北條組(長野市)、下流側をフクザワコーポレーション(長野県飯山市)が施工した。

 仮締め切り部分は仮堤防の築造と並行し、16日夕方に工事を開始。30日に作業が完了し、長野市は周辺の避難指示(緊急)を解除した。

【来春開業へ工事進む】日本代表の新練習拠点、名称は「高円宮記念JFA夢フィールド」

年内の完成に向け工事は終盤に入っている
(9月26日時点、提供JFA)
日本サッカー協会(JFA、田嶋幸三会長)が千葉県立幕張海浜公園(千葉市美浜区)に建設している日本代表チームの練習拠点の名称が「高円宮記念JFA夢フィールド」に決まった。

 JFAの初代名誉総裁だった故高円宮さまの遺志や功績を後世に伝えるためJFAが申し出て、現名誉総裁の高円宮妃久子さま、宮内庁から承認を得た。来年4月上旬の供用開始に向け工事が進んでおり、12月に竣工する予定だ。
施設の完成イメージ(提供JFA)
施設の建設地は美浜1の1。天然芝ピッチ2面、人工芝ピッチ1面、フットサルアリーナ、クラブハウスなどを配置する。三菱地所設計・戸田建設JVの設計監理、戸田建設らの施工、山下PMC・オオバJVのCM(コンストラクションマネジメント)で2018年10月に着工した。
クラブハウスの完成イメージ(提供JFA)
開業後はサッカー日本代表の練習拠点になるほか、施設の開き具合に応じ一般利用も受け付ける。

2019年10月30日水曜日

【回転窓】マイ・ネーム・イズ…

幼稚園や小学校でも設けられるようになった英語と親しむ機会。昭和時代が幼少期だった方は、初めて英語を学んだのは中学1年生というケースも多かろう▼My name is john.にThis is a pen.「自分の名前はジョンじゃないし」と思いつつ例文を必死に暗記し、「ペンなんて見れば分かるよ」と悪態をつきながら筆記体を練習したのは遠い昔のこと▼政府は先週、国が作成する公文書で日本人名のローマ字表記を原則「姓-名」の順にすると申し合わせた。来年1月1日から実施するそうだ▼以前から「姓-名」順の表記を推奨する動きはあった。社会のグローバル化が進む中で、姓が先に来る日本の伝統を大切にしたいという考えを前面に押し出したのだろう。自治体や企業にも差し支えのない限り配慮を要請するという▼日本以外に「姓-名」の順を用いているのは中国や韓国、ベトナム、ハンガリーなど。異なる国の人々と交流する機会は増えつつある。「姓-名」の順で自己紹介した後に果たして会話が続けられるのか-。もっと真剣に英語と向き合えば良かったと思ってもあとの祭り。もはや時すでに遅しの感は否めない。

【春の町跨線橋上部工、施工は九鉄工業】3000トン級クレーンで鋼桁を一括架設

重量300t超の鋼桁の架設に与えられた作業時間は96分
九州地方整備局が整備を進める国道3号黒崎バイパス(BP)の「春の町跨線橋」の上部工一括架設作業が26日、北九州市八幡東区西本町で行われた。限られた作業時間の中、3000トン級の大型クローラクレーンを使用しJRの線路の直上で橋脚に重さ300トンを超える鋼桁を設置。未明に行われたにもかかわらず工事関係者のほか多くの地域住民らも作業の様子を見守った。施工は九鉄工業が担当。

 跨線橋は黒崎BPの未開通区間の構造物で上下線各2車線の4車線。JR鹿児島本線とJR貨物線の線路を跨ぐ部分はJR九州に工事を委託しており、JR九州から受注した九鉄工業が下部工工事と上部工架設工事を行っている。

 同日に一括架設を行ったのは支間長81メートル、架設重量約308トンの上り線の鋼桁。作業には国内に4台しかない3000トン級のクローラクレーンを使用。国道3号を全面規制し、JR架空線の送電停止時間を含め96分間という限られた作業時間で午前2時から行われた。

 多軸式台車で輸送した鋼桁を地上約20メートルの高さまでクレーンでつり上げた後、約1時間待機。最終の貨物列車通過後に送電停止を確認した上で鋼桁につないだロープをトラックで引っ張り、クレーンの動きに合わせて鋼桁をゆっくりと旋回させ、約10分かけて橋脚の上に移動し仮固定した。

 現場には親子連れなど多くの地域住民らも集まり、写真や動画を撮りながら上空で行われる滅多に見られない大掛かりな作業に興味深げに見入っていた。11月3日には下り線の鋼桁(支間長99メートル、架設重量約420トン)の一括架設を行う予定で2019年度末までにJR跨線部の工事を完了する。

 九州整備局北九州国道事務所の小椎尾優副所長は「できるだけ早く(黒崎BPの起点側を)国道3号に接続し渋滞箇所の交通を転換させ、北九州市副都心部の交通環境を改善したい」と話した。

 黒崎BPは北九州市八幡東区西本町から八幡西区陣原までの延長5・8キロの事業区間のうち八幡東区東田から終点までの5・2キロが暫定2車線と完成4車線で開通している。

【6000席増設、施工は清水建設JV】プロジェクト・アイ-横浜スタジアム増築・改修(横浜市中区)

3月に竣工した右翼側スタンド。プロ野球開幕後、多くの観客でにぎわった
◇6千席増設、来場者の安全最優先◇

 球場の増築・改修が進む「横浜スタジアム」(横浜市中区)。2020年東京五輪の野球・ソフトボール競技でメイン会場に決定したことをきっかけに、6000席の増設や回遊デッキの整備、老朽化した施設・設備の改修が行われることになった。球場の運営と改修を担う横浜スタジアム(横浜市中区、藤井謙宗社長)と、施工を担当する清水建設・馬淵建設・大洋建設JVの担当者に工事の現況と狙いを聞いた。

 横浜スタジアムは国内初の多目的スタジアムとして1978年に竣工した。プロ野球・横浜DeNAベイスターズが本拠地として使用している。来場客が増加する中で、完成から40年以上が経過した施設は設備などの老朽化対策が課題になっていた。運営会社の横浜スタジアムが増築と改修を決定したのは16年夏。同社球場整備プロジェクト室の葛西光春室長は「もとから球場整備をしたいという考えはあったので、五輪に間に合う形で整備を進めることにした」と当時の状況を説明。同年末に整備の設計・施工者などを決めた。

 設計を清水建設が手掛け、施工は清水建設JV、CM(コンストラクションマネジメント)業務を山下PMCが担当している。工期は17年11月25日~20年2月末。2年3カ月で右翼側と左翼側、バックネット裏に新しいスタンドを整備し、観客席を合計6000席増設する。工事は清水建設の提案で1期(右翼側・バックネット裏、3月竣工)、2期(左翼側、20年2月竣工予定)に分けた。一部施設の開業を早めたのは、より多くのベイスターズファンに新しいスタジアムを楽しんでもらいたかったためだ。

 球場には横浜公園の噴水や広場が隣接する。増築プロジェクトは限られた敷地でいかに座席を増設するかが課題だった。ホーム側(右翼)の席数を増やしながら、人通りの多い交差点側の左翼直下のスペースを広く確保するため、増席数の配分は、右翼側3500席、左翼側2500席に設定。横浜公園の周辺はオフィス街となっており、人通りは日常的に多い。増設部の荷重は鉄骨の柱が受け止め、歩行者動線への影響を最小限にとどめる設計とした。

 ◇仮設計画を複数用意、限られた作業時間とスペースに対応◇

 工事は来場者の安全に最大限配慮して進めている。球場整備プロジェクト室の杉田由起夫参事役によると「3万人の来場者が安全に球場に出入りできるように、仮設計画を数パターン用意してもらっている」という。工事ヤードはプロ野球のシーズン中はスペースを狭め、オフシーズンは広くするなど、試合やイベントに応じて仮囲いの配置や量をこまめに変えている。

 工事時間も特殊だ。当日の試合が午後6時に開始する場合、正午には来場者を迎える準備を整える必要がある。午前5時ごろに作業を開始し、午前11時ごろには片付けを完了するようにしている。

 「個室観覧席部分へのS・PC造の採用や、オフシーズン中にできるだけ工事を進めるようにした」と工期を守る工夫を語るのは、清水建設商業・複合施設設計部の平賀直樹グループ長。横浜公園は景観を保護するため、31メートルの高さ制限が設定されている。バックネット裏スタンドの設計について平賀グループ長は「高さ制限と既存の躯体の間の限られた範囲に2フロアの施設を設計するため、工夫を凝らした」と語る。

 バックネット裏スタンドはS造4階建てで、3・4階にバルコニー付きの個室観覧席を新設し、屋上がテラス席となっている。最大16人で利用できる部屋から、10人、8人用の部屋まで合計30室ある。「歓談する屋外空間とおもてなし用の内部空間に分け、一体感を持たせながらもメリハリを意識した」と平賀グループ長。屋上には6人掛けのベンチとテーブルを30席用意。テラスからは富士山や横浜の街並みが眺められ、杉田参事役は「横浜の新名所になる」と期待する。

 同スタンドの個室では天井が高く見えるように折り上げ天井を採用。「部屋を広く見せる方法」(重田克巳球場整備プロジェクト室部長)を受発注者で練った。バックネット裏スタンドは2階デッキを解体し、既存の構造部に荷重をかけないようオーバーハングして設置した。工程を綿密に調整し、限られた工事スペースを有効に活用。平賀グループ長は「施工で最も力を入れた部分だった」と振り返る。

 観客席からの見やすさには特にこだわった。それぞれの席で視線を丁寧にチェック。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)も駆使した。平賀グループ長は「視線チェック時に死角が即座に判明した。関係者間での共有も早まった」とBIMの効果を語る。

 球場の2階部分には、試合のない日でも散策やジョギングが可能な1周600メートルの回遊デッキが設置される。清水建設と協議し「都市景観にも配慮できた」と杉田参事役。壁面緑化なども計画しているという。

 県の高校野球大会やコンサートなど、球場はプロ野球の公式戦以外でも使用する機会が多い。重田部長は「大掛かりな工事の最中にイベントが入ることもあった。工程を綿密に調整していただき助かっている」と謝意を示す。

 右翼側スタンドとバックネット裏スタンドが完成して開幕した今季、ベイスターズはリーグ2位という好成績を収めた。スタジアムでの勝率は6割を超え、観客動員数は球団史上最速で200万人に到達した。葛西室長は「改修の成果の一つ。応援の迫力が増し、チームの後押しになったのではないか」と笑顔を見せる。スタジアムは来年3月、グランドオープンを迎える。右翼側から左翼側まで満員となった観客席からは今年以上の声援が聞こえるはずだ。

【M字形のアーチ屋根が特徴】銀座線渋谷駅(東京都渋谷区)、20年1月3日に供用開始

 東京メトロは、地下鉄銀座線の新しい渋谷駅の供用を2020年1月3日に始める。

 明治通りの上空に移設する工事を2009年から実施。12月27日夜からの線路切り替え・ホーム移設を終えて、新駅舎の供用を開始する。悪天候など作業に影響が出る場合は20年1月4日からに変更する。

 渋谷駅は1938年に開業した。1日の平均利用者数は18年度で22万人。周辺を再開発する渋谷駅街区基盤整備に合わせてホームを移設する。線路切り替え・ホーム移設は年末の作業で3回目となる。浅草方面行きの線路を北、渋谷方面行きの線路を南にそれぞれ移設することで生まれるスペースにホームを築造する。

 新駅舎は、地上から見上げた際に圧迫感が和らぐようデザインした。屋根はM形のアーチ形状で、ホームは柱のない空間になる。明るい空間となるよう内装は白が基調。ホームは約12メートル(現在約6メートル)に広がり、多機能トイレを含むバリアフリー設備が充実する。

 新駅舎の明治通り側の改札からは、商業施設の渋谷ヒカリエのエレベーターやエスカレーターで地下鉄副都心線、東急東横線に乗り換えられる。地下鉄半蔵門線、東急田園都市線、JR線、京王井の頭線は、渋谷スクランブルスクエア側の通路や降車ホームの経由で乗り換えが可能になる。

【実施設計・施工は清水建設】有明体操競技場(東京都江東区)が完成

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は29日、東京都江東区に建設した「有明体操競技場」を報道機関に公開した。

 世界最大級の木製アーチ梁による大屋根が特徴で、施設内の最高高さが約30メートルに達する開放的な競技空間に仕上がっている。基本設計・実施設計監修・工事監理は日建設計、実施設計・施工は清水建設が担当した。

 施設規模は3階建て延べ3万9194平方メートル。構造は下部がS造、屋根が木造(一部S造)となる。一般席換算で1万2000人を収容する。木質の大屋根にはカラマツ約1500立方メートル、外装と観客席にはスギ約800立方メートルを使用。外構にも木のチップによる舗装を施した。東京五輪組織委の福井孝一ベニューゼネラルマネージャーは内覧会で「木の香りやぬくもりを感じさせる。選手にも観客にも満足してもらえる施設に仕上がった」と出来栄えに太鼓判を押した。

 施工は23・5カ月の短工期で行われた。木質大屋根は長さ88・8メートルで、総面積は1万0442平方メートル。それを重量200トンのユニットに5分割し、地上で組み立ててから5回に分けてリフトアップした。清水建設によると、リフトアップの回数を重ねるごとに生産性が向上し、大幅な工期短縮を実現したという。

 木質大屋根のアーチ形態などは日建設計が提案し、梁の構造形式やリフトアップ工法は清水建設が斎藤公男氏(日本大学名誉教授)の指導を得て考案した。

2019年10月28日月曜日

【回転窓】チームワークを再認識

ラグビーワールドカップ(W杯)2019日本大会が約1カ月間の熱戦を経て11月2日に決勝戦を迎える。史上初となるベスト8進出を果たした日本代表。さまざまな国から来た選手が心を一つにし、「ワンチーム」として強豪国を破る姿に勇気をもらった人も多いはず▼W杯を最多の3度制しているのがニュージーランド代表のオールブラックス。そんな世界最強のチームが日本で建設現場の労働災害防止に一役買っているのをご存じだろうか▼AIG損害保険が業界のイメージアップにつながればと、AIGグループがスポンサーを務めるオールブラックスの選手を広告などに起用。建設現場の労働災害予防にも目を向け、オールブラックスの選手が「けんせつ体幹体操」を学び披露する動画を制作し、インターネットで公開している▼世界トップの選手たちがけがの予防や、常に最大のパフォーマンスが発揮できる体作りの大切さを伝える。なかなか説得力のある動画だ▼技術者、技能者が力を合わせる建設現場には「チームワーク」が不可欠。ラグビーはこの精神の重要性を再認識させてくれる。決勝戦を楽しみに待ちたい。

【設計は隈研吾氏、清水建設が施工】明治神宮、鎮座100周年記念で新ミュージアム開館

 明治神宮は東京都渋谷区に整備していた「明治神宮ミュージアム」を26日オープンした。2020年の鎮座100周年を記念し、明治天皇と昭憲皇太后にゆかりの品を展示している。施設の設計は建築家の隈研吾氏が担当。清水建設が施工した。

 同ミュージアムは、1920年に創建した明治神宮の「鎮座100年祭記念事業」の一環として整備。耐震補強工事が進む宝物殿の収蔵品を移設し完成させた。展示室には明治天皇が使われた馬車「六頭曳(ろくとうびき)儀装車」やイタリア人画家のエドアルド・キヨッソーネ(1833~98年)が描いた肖像画などを公開する。屋根に緩やかな勾配を持たせ、周辺との調和を狙った。

 所在地は神園町1の1。RC、S一部SRC造地下1階地上1階建て延べ約3200m2の規模。地下1階に「杜の展示室」、地上1階に宝物展示室などを配置した。開館時間は午前10時~午後4時30分。入館料(税込み)は一般が1000円、高校生以下900円。25日に内部が報道機関に公開された。

【凜】日本工営都市空間事業部・福田麻里子さん


 ◇顧客に寄り添う提案が肝要◇

 幼少から興味のあった建築設計で身を立てたい-。2012年の入社以来、国内プロジェクトが業務領域の「コンサルタント国内事業本部」に籍を置き、建築設計業務に携わった。仕事は建築設計業務がメイン。7月から国内外の再開発事業、歴史的建造物の改修案件を手掛ける「都市空間事業部」に異動した。都市計画の立案などを進める中で「顧客との距離をどう縮めるか」を肝に銘じ、仕事にまい進する。

 大学で建築を専攻。寝る間を惜しんで駅前広場の配置を思案したり、ランドスケープを考えたりして課題制作にのめり込んだ。建物コンセプトの確定などプロジェクトの上流段階で「自身の能力を試したい」と思い、建設コンサルタントに狙いを定めた。面接の際に「アットホームな雰囲気」に魅了。日本工営への入社を決心した。

 「エンドユーザーが何を必要としているのか」を仕事のモットーと捉える。地域の実情を念入りに調べ、顧客に最良な提案を図るのが腕の見せどころ。印象に残る仕事は防災教育を疑似体験できる施設の改修プロジェクト。内装メーカーなど異業種と連携し工事を成し遂げた。顧客から「成長したね」と声を掛けられ、改めてやりがいを感じた。

 現在も国内外で進行する複数のプロジェクトに携わる。将来は「世界から愛される建築をつくる」のが夢と語る。目標達成を目指し、たゆまぬ努力を続ける。

 (ふくだ・まりこ)

【サークル】鉄建建設「鉄建ランニングクラブ」


 ◇毎週水曜日は皇居ラン、秋の駅伝大会へ走り磨く◇

 毎週水曜日のノー残業デー、皇居に集結して皇居ランを楽しんでいるのが会社公認の「鉄建ランニングクラブ」だ。

 皇居周りの5kmをビルの夜景を眺めたり、街路樹の爽やかな空気に触れたりしながら走った後は近くの銭湯へ。湯船で体をほぐしてから、親睦会へと直行するのが毎回の楽しみの一つになっている。

 2010年にランニング好きの3人で立ち上げた同好会は、今年4月時点で32人の部員を抱える大所帯に。健康の維持・増進を目的に「各自のレベルで楽しむ」がモットーで、ウオーキングを楽しむ部員もいれば、全日本マラソンランキング1位に輝いた選手もいるなど、多彩なメンバーが在籍する。

 春と秋には1周13kmの山中湖で1泊2日の合宿を開催して練習に励む。今年の秋は台風19号の影響で中止になったが、11月16日に開かれる皇居駅伝大会で上位を目指す。春の駅伝大会では64チーム中6位の好成績を収めた。代表を務める福田孝昭建築本部建築営業部プロジェクト営業部長は「今後はそれぞれの目標に向かって切磋琢磨(せっさたくま)しながらチャレンジしていきたい」と力を込める。

【駆け出しのころ】大林道路代表取締役専務執行役員・斉藤克巳氏

 ◇コミュニケーションで好循環を◇

 年上のいとこたちが土木分野に進んでいたこともあり、自分も自然とその道を歩いていました。学生時代は建設会社で働いていたいとこに誘われ、夏休みに現場の仕事をアルバイトで手伝い、作業員宿舎で寝泊まりしたこともありました。

 大学の友人のお父さんが道路会社を経営しており友人宅へ遊びに行った時、「道路には夢があるぞ」と声を掛けられたのが、就職先として道路会社を意識したきっかけです。まだ道路ネットワークが未整備で交通インフラの基本となる道路整備があちこちで進められており、やりがいのある仕事だと思っていました。

 大林道路での初任地は北海道の留萌工事事務所でした。それまで北海道に行ったことはなく、未知の場所で働くことに不安よりも面白そうだという気持ちが勝っていました。事務所にはアスファルト合材工場が併設され、1年目は材料の試験関係や配合設計など、日々の出荷のための試験を主に担当しました。

 当時、北海道支店は毎日のように舗装工事が行われ、アスファルト合材の出荷量も相当なもので、仕事に明け暮れていました。羽幌港の沖合にある焼尻島内に観光道路を整備するため、朝早くから船を使って現地にアスファルト合材を運搬したことは懐かしい思い出の一つです。

 冬季は北海道での工事がほぼできなくなるため、東京や大阪の現場に出稼ぎのように来ていました。3年目の冬に大阪支店へ転勤となり、その後7年間、近畿圏の現場を中心に勤務しました。

 親会社である大林組が和歌山で製鉄会社の工場建設工事を受注した際には、当社は機械基礎の工事を任され、入社5年目の自分と2年目の後輩の2人で担当しました。プレッシャーはありましたが、大きな構造物の構築工事を経験し、技術者として大きな自信を得ることができました。

 その後に赴任した東京支店では、当社独自の推進工法「SH工法」などの推進工事を専門で扱う総合工事事務所長を務めました。役所や設計事務所、地元建設会社への売り込み、現場での導入支援などのため東京支店管内を駆け回っていました。

 私たちの仕事は顧客の要求内容をよく理解し、それ以上のものを提案して造り上げることが大切です。いい仕事をして次の仕事につなげる好循環をつくるには、顧客はもちろん、工事にかかわる関係者すべてとコミュニケーションをよく取り、つながることが不可欠です。1人でできることは限られていますが、みんなの力を借りて工事を進めていけば10倍、20倍もいいものができます。

 信念を持って目の前の現場、仕事に当たることが大切です。働いていれば大変なことはありますが、いいものを造ろうと現場にこだわり、自分の考えを施工方法に取り入れてそれが結果につながっていけば、自然とわくわく感が増して、仕事が楽しく感じられるようになると思います。
入社2年目ころ。北海道支店幹部、留萌工事事務所
の関係者らと(左から2人目が本人)
(さいとう・かつみ)1978年日本大学理工学部土木工学科卒、大林道路入社。中部支店長、関東支店長などを経て2019年4月から現職。埼玉県出身、65歳。

2019年10月25日金曜日

【善意の寄付、133万円に】柏市の旧手賀教会堂保存修理、クラウドファンディングで資金調達

 千葉県柏市が「旧手賀教会堂」(手賀666の2)の保存修理に向けて実施したクラウドファンディングで、目標額の100万円を上回る133万5000円が集まった。

 7月24日から3カ月で90人が資金提供した。2020年度に行う保存修理工事の総工費は4000万円程度を見込む。市は寄付金を一部に活用して文化財保護に役立てる。

 旧手賀教会堂は首都圏に現存する最古の教会堂で、1881年にかやぶき屋根の民家を現在地に移築した。前回の保存修理から43年が過ぎ、木部の腐朽や屋根の劣化が見られることから、構造補強や上下水道やトイレ、受付の整備などの工事を行う。

 2012年には千葉県指定文化財に指定されている。20年度に完了させる予定の保存修理後は、土日祝日だけでなく、平日も見学者を受け入れるようにする。観光拠点にして市の地域活性化に役立てる考えだ。

 工事の実施設計は、もば建築文化研究所(東京都台東区)が担当。来年6月にも着工する考えで、市は「重要文化財、指定文化財の保存修理の実績があることを条件に発注したい」(生涯学習部文化課)意向だ。クラウドファンディングの結果については「文化財保護の仕事をする立場から心強いものを感じた」(同)としている。

【高さ230mから東京を一望】渋谷スクランブルスクエア東棟、11月1日開業へ

渋谷スクランブルスクエア第1期(東棟)SHIBUYA SKYの屋上展望空間
「SKY STAGE」㊧と渋谷スクランブル交差点(渋谷スクランブルスクエア提供)
東急、JR東日本、東京メトロの3社は24日、11月1日開業予定の大型複合施設「渋谷スクランブルスクエア第i期(東棟)」の内覧会を開いた。渋谷最高峰の高さ約230メートル。展望施設(14、45、46階、屋上)、オフィス(17~45階)、産業交流施設(15階)、商業施設(地下2~地上14階)で構成。オフィスの総賃貸面積は渋谷最大級の約7・3万平方メートルに達し、商業施設(営業面積約3・2万平方メートル)には213店舗が入る。

 所在地は東京都渋谷区渋谷2の24の12。規模は地下7階地上47階建て約18・1万平方メートル。設計は渋谷駅周辺整備計画JV(日建設計、東急設計コンサルタント、JR東日本建築設計、メトロ開発)、デザインアーキテクトは日建設計、隈研吾建築都市設計事務所、SANAA事務所、施工は渋谷駅街区東棟新築工事JV(東急建設、大成建設)が担当。東急など3社が出資する渋谷スクランブルスクエア(渋谷区、高秀憲明社長)が運営する。

 内覧会の冒頭、高秀社長は「渋谷駅は330万人が乗降する世界有数のターミナル。来週に東棟、今年は『渋谷フクラス』『渋谷パルコ』も開業となり、(2012年から竣工が続く)渋谷周辺開発は大きな節目の年になる」とあいさつした。

 渋谷スクランブルスクエアは第ii期の中央棟・西棟が27年度に開業する。駅を含む都市再生のモデル事業として計画が進められ、渋谷駅街区土地区画整理事業、鉄道改良事業、交通結節点の機能強化が一体的に行われている。

東棟の展望施設は「渋谷スカイ」という名称。渋谷駅前のスクランブル交差点、東京タワー、富士山など360度の視界が広がり、渋谷の新しい観光スポットとしてアピールする。屋内エリアもあり、年間100万人の来場を目指す。

 オフィスは基準階が渋谷最大級の約2900平方メートルとなる。産業交流施設は「渋谷キューズ」と呼び、使い方を工夫しやすいフレキシブルな空間となっており、イベントなどを行う。商業施設は日本初上陸の7店舗、都内初の4店舗がある。「世界最旬」がテーマで、国内外から人が集う空間を提供する。

2019年10月24日木曜日

【記者手帖】スポーツ観戦の未来

ラグビーワールドカップやプロ野球の日本シリーズなど、目を離せないスポーツの試合が続いている。テレビなどの自宅観戦は快適だが、現地観戦ならではの臨場感を味わいたくなることもある◆米カリフォルニア州にある「リーバイス・スタジアム」ではスタジアムにいながらも、自宅のような快適さを実現できるよう工夫されている。観客全員が使用できる公衆無線LANを設置。専用アプリを使用することで進行中の試合のデータやリプレーの確認、さらには食事を注文し自席まで運んでもらうことも可能という◆自宅にいながらスタジアムやアリーナにいるような臨場感で観戦できる日も遠くないのかもしれない。先日、VR(仮想現実)を活用した試合観戦のニュースを見た。試合会場に設置したカメラの映像を高速で処理し、まるで現地にいるかのように試合を楽しむことができるという◆技術の進歩に合わせて、スポーツ観戦の方法も日進月歩で変わってきている。いずれは「臨場感」と「快適さ」の両立も可能になるのだろうか。スポーツファンとしては観戦スタイルがどのように変化していくのかも楽しみだ。(暉)

【設置から150年、測量発展に貢献】日本水準原点(東京都千代田区)が国指定重文に

 全国の高さ(標高)の基準となる「日本水準原点」(東京都千代田区)が、国の重要文化財(重文)に18日付で指定された。

 水準原点と、それを保護するための日本水準原点標庫、監視用の付属水準点標石3点で構成。指定部門は「産業・交通・土木」部門で、名称は設置時の「水準原点」となる。歴史的、建築的な価値が認められた。測量分野の建造物では初めての重文指定となる。

 明治政府が1869(明治2)年に近代測量を行う機関として「民部官庶務司戸籍地図掛」(現国土地理院)を設置してから今年で150年。水準原点は1891(明治24)年、参謀本部陸地測量部によって設置されてから、標高を決めるための測量の統一的な基準として重要な役割を果たしてきた。

 石造りの水準原点標庫は工部大学校造家学科(現東京大学建築学科)1期生の佐立七次郎が設計。ドーリス式ローマ神殿形式で現存する都内最古の近代洋風建築となる。

【2024年完成めざす】セティア・インターナショナル、大阪府泉佐野市にMICE施設整備へ

 マレーシアの不動産開発会社であるSP Setiaの子会社、セティア・インターナショナル・ジャパン(東京都港区)は、大阪府泉佐野市のりんくうタウンで計画しているホテルやMICE(国際的なイベント)などから成る複合施設の建設に2020年夏ごろ着手する。

 25年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催をめどに、24年に施設を完成させたい考えだ。

 建設予定地はりんくう中央公園グラウンドとして使用されていた敷地約2ヘクタール(りんくう往来南6)。大型商業施設「りんくう・プレミアム・アウトレット」に近接し、インバウンド(訪日外国人旅行者)が多く来訪するエリアに位置している。18年に泉佐野市が土地を購入した上で開発する事業者を公募、提案売却価格15億5500万円で同社を選定していた。

 同社の提案によると、四つ星ホテルやコンベンションホール、物販・飲食店舗、サービスアパートメント(住宅)などを含む複合型施設を整備する。

 複合施設の名称は「SICC(セティア泉佐野シティセンター」。施設概要は建築面積が約1万1000平方メートル、施設の総延べ面積が約13万2000平方メートル。住戸棟(38階建て)とホテル棟(32階建て、315室)の高層棟2棟を中低層のMICE棟(5階建て)で接続する。MICE棟にはコンベンションホールや商業施設などの入居を予定している。

【東京の『今』を後世に】国土地理院、御即位記念地図「東京中心部」を刊行

 天皇陛下が国内外に向けて即位を宣言された「即位礼正殿の儀」を記念し、国土地理院(黒川純一良院長)は22日、特別な刻印を入れた御即位記念地図「東京中心部(日本語版、英語版)」を刊行した。

 御即位記念地図は陛下が即位された時の首都東京の姿を地図として後世に残すとともに、令和元年の東京の様子を国内外に分かりやすく伝えることを目的に作成した。これまで大正、昭和、平成と刊行しており、今回が4回目となる。

 令和の記念地図はこれまで同様に縮尺1万分の1で、範囲は皇居(東京都千代田区)付近を中心に東西約10km、南北約7km。高層化した都市の概観を表すために、建物を階調と影を用いて立体的に表現。樹高に応じて緑の濃淡も変えている。余白には鳳凰の絵と「御即位記念」の文字を刻印している。

 四六判のケース付き。価格は1380円(税込み)。「即位礼正殿の儀」の参列者に配布されたほか、全国の書店でも販売する。

【青海地区へIR誘致を】東京ベイエリアビジョン、官民連携組織が最終提案

MICE、IR施設の整備イメージ(官民連携チーム提案書より)
東京臨海地域の新たな将来像「東京ベイエリアビジョン」を検討する組織として都が設置した官民連携チームが、江東区の青海地区へのIR(統合型リゾート)誘致を含む最終提案をまとめた。臨海地域は建物の高層化が難しく、容積率緩和が民間開発のインセンティブになりにくいと提案書で指摘。IRのスキームの活用で民間投資を呼び込むとともに、大胆な公共空間や収益性の低い文化交流施設の整備を後押しできるとした。

 提案書は21日に都が受理した。11の提案項目の一つとしてMICE(国際的イベント)やIR施設の整備を明記。候補地に東京国際クルーズターミナルが近接し、商業施設も集積している青海地区を挙げた。IR導入で水辺や公園などの公共空間を生かしながら、劇場やホール、野外コンサート会場といった都心部では整備が難しい文化交流施設を配置。日本の強みである食文化や先端技術を発信するなど魅力的なコンテンツを集積させるとした。

 都心部や羽田空港へのアクセス性向上も提案し、▽羽田空港アクセス線▽地下鉄8号線延伸▽都心部・臨海地域地下鉄構想▽都心部・品川地下鉄構想-の四つの鉄道整備プロジェクトを実現するとした。中央防波堤外側などの無人エリアを自動運転や建設ロボットなど先端技術の実験場としてオープン化し、周辺海域では海上太陽光発電や海洋エネルギー発電の実現に取り組むといった斬新な提案もあった。

 官民連携チームは外部有識者と都庁の若手職員による▽魅力ある街づくり▽活力と躍動感のある街▽最先端技術の街-の三つのワーキンググループ(WG)で構成。都市デザインの観点で提案内容を詰めた「魅力ある街づくりWG」には中島直人東大大学院准教授を座長に、建築家の田根剛氏や大手デベロッパー(三井不動産、三菱地所、住友不動産、森ビル)の若手社員が参加した。

 都は官民連携チームの提案を今後の庁内検討に向けた「参考材料」と位置付ける。都港湾局の担当者は「自由な発想で提案してもらった。提案の趣旨は生かすが、すべて反映させるわけではない。今後は(関係局が参加する)庁内検討委員会に検討の場は移る」と話す。当初は年内のビジョン策定を目指していたが、都の長期戦略の検討内容と調整し2020年東京五輪・パラリンピック後の策定を目指す方針に改めている。

 観光庁が主要自治体を対象に実施したIR誘致の意向調査で、都は「認定申請を予定・検討している」と回答した。同月の都議会ではIR誘致に対する都の姿勢を問う質問が相次いだが、小池百合子都知事は「メリット、デメリットの両面があることから総合的に検討していく」と話すにとどめ、IR誘致に乗りだすかどうか明言を避けている。

2019年10月21日月曜日

【回転窓】成果の発信をもっと

防災科学技術研究所(防災科研)が提供するウェブコンテンツ「クライシスレスポンスサイト」。防災科研と関係機関が発信する災害関連の情報や解析結果を分かりやすくまとめており、台風19号の甚大な被害を把握するツールとして注目を集めていると聞いた▼氾濫・浸水、停電、鉄道などの現状が地図に表示される。台風19号のコンテンツでは、衛星・空撮写真や現地情報に基づいた国管理の河川の氾濫箇所などが分かり、被害が台風の経路に集中したことが浮き彫りになっている▼サイトが提供する情報には、社会的に不可欠な課題を克服するため創設された政府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の成果が生かされている。防災・減災関連の研究には防災科研も参画している▼あるラジオ番組が、千葉県を中心に被害が相次いだ台風15号の後からサイトの存在と有用性をアピールしていた。19号の襲来前には別のメディアも利用を呼び掛けていた▼新しい教訓をもたらす災害は今後も避けられそうにない。過去を教訓にした対策の着実な前進と、成果の積極的な情報発信が今こそ求められていると思う。

【52点の作品展示、働き手の誇りや情熱伝える】山崎エリナさんのインフラメンテ写真展、28日まで都内で

 写真家の山崎エリナさんによる写真展「インフラメンテナンス~日本列島365日、安全・安心の守り人~」が、東京都新宿区のリコーイメージングスクエア新宿ギャラリーで開催されている。

 52点の作品を展示しており、老朽化が進むインフラの実態とともに、現場で働く人たちの誇りや情熱を伝えている。入場は無料。会期は28日まで。

 道路維持などを手掛ける寿建設(福島市、森崎英五朗社長)の呼び掛けをきっかけに、山崎さんがメンテナンス作業現場で活躍する人々を撮影。今春に写真集を出版していた。ネクスコ・メンテナンス東北(仙台市青葉区、山崎幹夫社長)と小野工業所(福島市、小野晃良社長)も協力した。寿建設は今回の取り組みが評価され、第3回インフラメンテナンス大賞の優秀賞に選ばれている。

 山崎さんは「日常では意識することのない道路や橋が、絶え間なく守られている。貴重な時間をいただき記録できた。私も一員としてインフラメンテナンスの世界を伝えたい」と話している。

【競技会場周辺で路上工事抑制】東京都、五輪期間中の工事調整で発注方法など取りまとめ

 東京都は2020年東京五輪・パラリンピック開催期間中の都発注工事で、発注時期の前倒し・後ろ倒しや工事の一時休止、夜間への振り替えといった調整手法を実行に移す場合の条件を「基本的な考え方」としてまとめた。これに沿って関係各局が来年度の発注方法など詳細な検討に入る。

 交通混雑緩和に向けた新たな取り組みとして、競技会場周辺で路上工事を抑制するエリアを明確に定め、臨海地域の建設発生土受け入れ施設の稼働を昼間に休止する方針も打ち出した。

続きはHP

【凜】日本建設業連合会総務部長・高橋治子さん

◇後輩の育成で恩返ししたい◇

 建設業界とは畑違いの職種から転職し、初めは広報部に配属された。建設に関する知識がゼロの状態で、取材に行っても理解できない言葉ばかり。毎日指示された仕事をこなすだけで精いっぱいだった。その後は経理部に6年間。伝票も帳簿も手書きの時代を過ごした。

 経理部から総務部に異動した直後、総務部長が退職し頼れる先輩がいなくなった。当時の専務理事は部下に素早い対応と簡潔かつ丁寧な説明を求める人。入念に資料を準備し、説明を重ねた。「当時のことを思い出すと冷や汗が出るくらいの駄目っぷり。でもこの経験があったおかげで成長できた」と振り返る。

 3年前、総務部長に就任した。女性の管理職は日本建設業連合会(日建連)で2人目。小間使いの役割を自身に課し、言われた仕事は何でも請け負うのがモットーだ。「いつも周りの人に育ててもらった。恩返しのためにも、後に続く若い職員を育てていきたい」と力を込める。

 「日建連は会員の協力があって成り立っている。会員の皆さまには社業が忙しい中、さまざまな施策に協力してもらっている」と感謝を忘れない。

 仕事の息抜きは読書とフィギュアスケート観戦。「待ちに待ったシーズンが間もなく始まる。でもチケットが取れない」と残念がる。今年はテレビの前で観戦の予定だ。

 (たかはし・はるこ)

【中堅世代】それぞれの建設業・238

将来を担う若手を育成するには仕事のやりがいを伝えていくことも大事
◇後輩に仕事の魅力を伝えたい◇

 「自分のやった仕事がこれからもずっと残っていく。そのやりがいは何物にも代え難い」。中央省庁の出先事務所で管理職として働く佐藤一雄さん(仮名)はこれまでの仕事をこう振り返る。

 もともとものづくりに関心があり土木系の高校を卒業後、国家公務員になることを選択した。主に港湾関係の施設整備を担当し勤続年数は30年を超える。今は事務所全体の技術的なサポートをする立場で、これまで培ってきた経験やノウハウを後輩に伝えている。

 「もう現場に立たないのかと思うと、寂しいと感じることもある」と佐藤さん。働き始めたばかりのころ、国内はバブル期の真っただ中で、大規模なハード整備が集中的に行われていた。国際空港や大規模な港湾の整備に携わってきたことは印象深く、「あの施設はわれわれが造ったんだ」と誇りを持っている。

 若手の頃は、先輩の背中を見て多くのことを学んできた。右も左も分からなかった当時の自分。さまざまなプロジェクトに関わり先輩に怒られながら、仕事との向き合い方や事業の進め方、タッグを組む建設会社とのやりとりなどを学んでいった。

 時には仕事が嫌になったこともあった。けれども関係者が一丸になってプロジェクトと向き合い、徐々に形になっていくことにやりがいと喜びを感じるようになった。「自分たちの携わったインフラが人のためになるのかと思うとうれしかった」。

 数十年たった今でも仕事の魅力は色あせない。現在関わっている大規模な道路工事も、多くの関係者が完成に向けて気持ちを一つにしている。

 ベテランの域に入り、周りには多くの部下や後輩がいる。そんな環境に身を置くと、仕事に対してこれまでとは違った魅力も感じるようになってきた。

 工事の施工会社から工法などについて説明を受けていると、精度や安全性などが以前に比べ飛躍的に高まったと感じる。過去にはなかった新技術に出会う機会も増えた。一人の技術者として「こんなやり方もあるのか」と感心し、「この年になってもまだ新しい発見があるとは幸せだ」と思う。

 佐藤さんはそう遠くない将来、定年退職の日を迎える。情熱を注いで造った道路や港湾施設は人々の暮らしや経済活動に役立っている。現場に出ていた時に比べて時間に余裕が持てるようになった今、後輩たちに自分の思いや仕事のやりがいを伝えていきたいと考えている。

 「自分の手掛けてきた仕事が人のためになることを実感できるのは素晴らしい」。この思いを伝えていくことが、自分の使命と感じている。

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】エイト日本技術開発「気分に合わせ選べる2タイプ」

 作業服を10年ぶりに刷新したエイト日本技術開発。地質・調査や生物調査などでも安全で快適に作業できるよう、動きやすさを追求した。

 全社員から意見を聞き、希望が多かった黒とシルバーの2色を基調にブルゾンとズボンを用意した。上着の胸部分にコーポレートカラーである青色のロゴマークをあしらっている。

 作業着はブルゾンとズボン、長袖シャツの3点セット。ブルゾンとズボンは「スタンダードタイプ」と、関節部分に伸縮性のある生地を使用した「エクスパンションタイプ」を用意。地質・測量調査など昼夜を問わず快適に作業できるのが大きな特徴だ。

 カラーは黒とシルバーの2色を展開。作業内容や気分に応じて上着とズボンを選びやすくした。作業服の刷新を契機に「現場力の一層の強化に努める」としている。

 従来の作業服は、2009年6月に前身の旧エイトコンサルタントと旧日本技術開発が合併した際に作った。多くの社員に親しまれてきたが、熱中症対策やフルハーネス対応など安全意識の高まりを受けリニューアルした。

【駆け出しのころ】東鉄工業執行役員建築本部副本部長兼建築営業部長・安田博昭氏

 ◇多彩な経験重ね人生を豊かに◇

 学生時代に工事のアルバイトをしたことがあります。建設業をやりがいのあるセクターだと思っていましたが、事務系なので建設会社への就職に当たって高い志を特段持っていたわけではありません。

 入社後は東京支店に配属され、自分の机はいきなり土木現場の事務所に置かれました。契約や労務管理など総務・経理関係の業務のほか、測量なども行い、新人の現場監督としてやるべきことは一通り経験しました。当時は土曜も普通に仕事でしたし、夜間作業もありました。現場勤務に最初は多少の戸惑いもありましたが、つらいとはまったく思いませんでした。

 現場勤務に続いて民間建築の営業部門に配属され、工場や事務所のほか、土地の有効利用などの案件を中心に担当しました。顧客先の信頼を得るため、親戚以上に深くつきあい、ある地主の方からはお孫さんの結婚式に呼ばれたこともあります。若いころに開拓し、今も継続的に仕事がもらえている顧客先もあり、営業マン冥利(みょうり)に尽きます。

 中堅世代になると、社内のシステム・仕組みの見直しや経営ビジョンづくりなどに取り組みました。広報・IR(投資家向け情報提供)にも長年携わり、自社の認知度向上に力を注ぎました。地道な活動が評価され、2015年度の「IR優良企業賞」の受賞はとてもうれしかった思い出の一つです。

 仕事に一生懸命まい進できたのも、子どものころから続けているサッカーがいい効果、影響を与えていると思います。選手として頑張ったのは高校時代まででしたが、コーチなど社会人になっても地域のサッカーチームと関わり続けています。

 これまでのサッカー人生では多くの出会いに恵まれました。その出会いの中には女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」に選ばれた選手もおり、12年ロンドン五輪では応援に行きました。14年に韓国で開かれたサッカーのアジア大会では、アンダー11の日本代表チームの責任者として子どもたちと参加しました。社内サッカー部の創設にも関わり、現在はフットサル部へと形を変えましたが、同部の会長として活動をサポートしています。そうしたオン・オフが人生をより豊かにしてくれていると思います。

 サッカーの指導を通じて子どもたちに語り掛けてきた言葉「楽しむ心、諦めない気持ち」を常に大切にしています。社内で作成に関わった中期経営計画でも「粘り強さによって不可能は可能となり、可能は有望となり、有望は確実となる」というメッセージを入れました。何事も諦めず、チャレンジを続けることが大切です。

 若い人たちには同じ場所にとどまらず、いろんな経験をしてもらいたい。それによって仕事も生活も含め、人生をより豊かにすることができると思います。
2014年に韓国で開かれたアジアユース・サッカー・フェスティバル
に参加した日本代表チームの選手たちと(後列中央が本人)
(やすだ・ひろあき)1982年東鉄工業入社。経営企画本部広報・IR部長、執行役員管理本部総務部長などを経て2019年6月から現職。東京都出身、59歳。

2019年10月18日金曜日

【回転窓】中小企業と「国運の分岐点」

「先進国の中で唯一、経済成長していない」「デフレからいつまでたっても脱却できない」-。今の日本経済が抱える課題ははっきりしている。直面する明確な課題に対し、その根本要因を深く追求する視点はどうやら不足していたようだ▼小西美術工芸社の社長でアナリストのデービッド・アトキンソン氏が近著『国運の分岐点』(講談社+α新書)で挙げた、その根本要因とは「中小企業の多さ」。これまでにない視点だが、分析を重ねた上での結論には説得力がある▼「この20年間、先進国の給料は約1・8倍となっているのに対して、日本は9%の減少」に甘んじているのも生産性が低いからに他ならない。生産性は1990年の世界9位から28位まで低下しているのが現実の姿だ▼人口減少と少子高齢化の加速度的な進行という避けられない課題への対応策が「生産性の向上」であることは明確だ。ところが日本企業の99・7%を占める「中小企業」の多さが生産性向上の阻害要因という▼日本経済に対する著者の指摘を建設業に照らし合わせてみると符合する点が数多い。「新しいグランドデザイン」が求められている。

【新しい価値を世界に発信】三井物産・三井不の大手町複合開発、街区名称は「Otemachi One」

 三井物産と三井不動産は、東京・大手町で進める複合開発「(仮称)OH-1計画」の街区名称を「Otemachi One」に決めた。

 建設地の「大手町1丁目」を、世界に向けて新しい価値を発信し続ける「オンリーワン」の街としていくという思いを込めた。施設の竣工は2020年2月を予定する。

 建設地は千代田区大手町1の2(敷地面積2万0900平方メートル)。三井物産、三井不の両者が所有していたビルを一体的に建て替えている。複合施設は「三井物産ビル」(地下5階地上31階建て)、「Otemachi Oneタワー」(地下5階地上39階建て)の2棟構成。総延べ床面積は35万8700平方メートルに上る。

 三井物産ビルに三井物産の新本社や多目的ホールが入る。Otemachi Oneタワーの低層に商業施設「Otemachi One Avenue」、中層にオフィス、ラグジュアリーホテル「フォーシーズンズホテル東京大手町」(193室)を高層に設ける。

 事業は内閣府から国家戦略特別区域の特定事業認定を受けている。施設の設計・監理は日建設計・鹿島JV、施工は鹿島が担当。

【国土強靱化、オールジャパンで対応】安倍首相、「緊急対策後も必要な予算確保」の考え表明

 安倍晋三首相は16日の参院予算委員会で、集中的に取り組んでいる「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(2018~20年度)について、「緊急対策を講じた後も国土強靱化基本計画に基づき必要な予算を確保した上で、オールジャパンで国土強靱化を強力に進め、国家百年の大計として災害に屈しない、強さとしなやかさを備えた国土を造り上げる」と語った。自民党の松山政司参院政審会長への答弁。

 頻発する大規模自然災害を踏まえ、安倍首相は「異次元の災害が相次いでいる。もはやこれまでの経験や備えだけでは通用せず、命にかかわる事態を想定外と片付けるわけにはいかない」と強調。ハード、ソフトのあらゆる対策を尽くし、3か年緊急対策に取り組む方針を示した。

 台風19号の被害拡大を食い止めたとされる「八ツ場ダム」(群馬県長野原町)を引き合いに、「大変な財政的負担もあったが、後世の人たちの命を救うことにもなる。緊張感の中で正しい判断をしていくことが大切だ」との見解を示した。

 公共投資について「ワイズスペンディング(賢い支出)の考え方を重視しつつ、生産性の向上や民間投資の誘発、雇用の増加などストック効果が最大限発揮されるよう必要な社会資本整備を進めていく」と述べた。

【東建、都中建の会員会社ら最前線に】台風19号ー都内の復旧対応本格化

都道の崩落現場(奥多摩町、東京都提供)
台風19号で被災した東京都内で、建設関係団体や建設会社の対応が進んでいる。東京建設業協会(東建、飯塚恒生会長)は都からの要請を受けて、会員会社が17日から奥多摩町で仮設トイレの設置を始めた。全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)の傘下の東京都中小建設業協会(都中建、山口巌会長)は、会員会社が16日から浸水被害や崩壊した道路の緊急対応を行っている。

 東建は野瀬達昭専務理事を本部長とする台風15号19号災害対策協力本部を15日に立ち上げている。都の要請で、佐久間建設(奥多摩町、佐久間一三社長)が記録的な豪雨で被害が相次いだ同町の町立古里小学校に仮設トイレを20基設置する。

 17日から作業を始めた。成友興業(あきる野市、細沼順人社長)は、同市の東京金属事業健康保険組合秋川球場に仮設トイレを2基設置する。奥多摩町、あきる野市をはじめ東京西部は、土砂崩れや倒木で通行止めとなっている道路や、豪雨で損壊した道路などがあり、地域建設会社が緊急対策を行っている。

 都中建は会員各社の対応状況を継続して確認している。青梅市の会員企業は16日から多摩川河川敷で浸水した球技場や、斜面の崩落、土砂流出があった都道の復旧を急いでいる。檜原村の会員企業は同日に地下水や湧水の影響で土砂が流出した道路の斜面や、崩壊した道路の緊急対応を実施した。神奈川県中小建設業協会によると、川崎市内では道路に堆積した土砂の除去や清掃、浸水した宅地の排水などを地域建設会社が担ってきたという。

【IR事業者らから提案募る】横浜市、IR誘致で民間事業者からコンセプト募集

山下ふ頭の全景(提供:横浜市港湾局)
 カジノを含むIR(統合型リゾート)施設の誘致を8月に正式表明した横浜市は、民間事業者から施設計画などの提案を募る。「(仮称)横浜・山下ふ頭における特定複合観光施設設置運営事業」の実現を目指し、事業全体の方針や施設コンセプトなどで提案を求める。

 参加できるのは▽IR施設の開発・運営実績がある事業者▽複合施設の開発実績を持つ事業者▽施設の開発・運営に導入可能な技術、ノウハウを保有する事業者-の3者。各事業者からの提案を参考にして、市はIR整備法に基づく実施方針を取りまとめる方針だ。

 コンセプト提案への参加要件はIR開発運営事業者、複合施設開発事業者、新技術・ノウハウ保有事業者で個別に設定されている。IR開発運営事業者の場合、MICE(国際的なイベント)、ホテル、エンターテインメント、商業、カジノの全施設を含むIRを開発・運営した実績が必要になる。新技術・ノウハウの提案例にはスマートエネルギーや次世代交通システム、ギャンブル依存症対策、マネーロンダリング(資金洗浄)対策などを挙げている。

 提案を求める主な項目は▽事業全体の方針・計画(事業コンセプト、土地利用、配置など)▽施設計画(施設コンセプト、機能、規模など)▽運営計画等(施設運営計画、事業期間、スケジュールなど)▽懸念事項対策(依存症対策、治安対策、交通対策など)。提案内容の詳細は募集要項に記載している。

 IR開発運営、複合施設開発の両事業者は30日までに参加登録を済ませ、12月23日を期限に提案書を提出する。2020年1月~3月中旬に市と提案者による対話を実施する予定だ。新技術・ノウハウ保有事業者は11月15日が提案書の提出期限。必要に応じて12月中旬に対話を行う。市の担当窓口は政策局政策課。

 募集要項で市が示した事業スケジュールによると、20年をめどにIR整備法に基づく実施方針を策定・公表し、民間事業者の公募・選定手続きに入る。設置運営事業予定者の決定時期は20~21年ころ。IR開業は20年代後半、事業期間は40年と想定している。

 IR予定地域である山下ふ頭の所在地は中区山下町277の1ほか。敷地面積は約47ヘクタール。用途地域は商業地域で、建ぺい率80%、容積率400%が上限。

2019年10月17日木曜日

【北陸整備局、本復旧へ調査実施】台風19号-魚野川堤防欠損箇所の応急復旧完了

応急復旧が完了した魚野川の堤防欠損箇所(北陸整備局提供)
国土交通省北陸地方整備局の信濃川河川事務所は16日、台風19号による大雨で被災した信濃川支流の魚野川の堤防欠損箇所(新潟県南魚沼市今町地先)の応急復旧工事が完了したと発表した。

 応急復旧は14日夕に開始。24時間体制で欠損箇所とその前後合わせて延長約180メートルに重量4トンの異形コンクリートブロックを約295個投入する作業を実施。16日午前5時55分に完了した。本復旧は、詳細な調査の後に行う。

 同事務所は引き続き、管内の河川管理施設に異常がないか巡視を続ける。復旧工事は井口建設工業、村山土建が担当した。

【随契、指名競争入札を活用】台風19号-国交省、復旧工事の早期執行へ取り組み加速

群馬県嬬恋村田代の土石流被災箇所(提供:国交省)
国土交通省は台風19号による災害復旧事業の早期執行と円滑実施に省を挙げて取り組む。6月14日施行の改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)を踏まえ、緊急性の高い直轄工事などには随意契約、指名競争入札を適用し、最適な契約相手を選定。積極的に見積もりを活用して施工地域の実態に即した適正な予定価格を設定し不調・不落を防ぐ。契約済みの工事・業務を一時中止しても災害復旧対策を優先する。

HPに詳しく

2019年10月11日金曜日

【回転窓】社外取締役の役割

世界で活躍したレーサーの井原慶子さんは、自動車産業やモータースポーツ界で女性が尊重され、活躍が歓迎される環境づくりに取り組んでいる。関連する複数企業の社外取締役という顔も持つ。日産自動車も井原さんが社外取締役を務める1社だ▼建設業を含む女性活躍の所見を伺おうと井原さんを取材したのは昨年末。当時日産は元会長の報酬虚偽記載問題に揺れていたが、快く対応してもらった▼取材の本筋ではなかったものの話題が日産問題に及んでもためらうことなく、自身の役割を認識して会社の建て直しに全力を注ぐ姿勢が印象に残った▼上場企業で社外取締役の比率が3割を超えたそうだ。うち女性は監査役や執行役を含めると1000人を上回る。外国人の存在も大きい。旧態依然とした経営から脱する上で社外取締役に期待される役割は小さくない。対応に当たった問題で井原さんら社外取締役の活動も注目された▼独特の「ムラ社会」的経営は外からの厳しい目に弱い面がある。本来の意味で社外取締役の役割を機能させ企業を発展させていく上で、受け入れる側の意識改革が必要なことは論をまたない。

【高さ492m、上海浦東新区のランドマーク】森ビルの上海環球金融中心、「50年間で最も影響力のある高層ビル50棟」に

 森ビルは10日、同社グループが開発・運営を手掛ける中国・上海の超高層ビル「上海環球金融中心」が、米国「高層ビル・都市居住協議会」の「過去50年間で最も影響力のある高層ビル50棟」に選出されたと発表した。

 同協議会が設立50周年を記念し、50年間に建設されたビルで周辺の景観との調和性、地球環境への配慮、構造の革新性などの観点から優れたビルを選んだ。選出物件にはアラブ首長国連邦(UAE)の「ブルジュ・ハリファ」、上海の「金茂タワー」などが名を連ねた。

 上海環球金融中心の所在地は経済発展が進む浦東新区(敷地面積約3ヘクタール)。建物規模は地下1階地上101階建て延べ38万1600平方メートル。高さは492メートル。オフィスやホテル、商業などが入る複合施設で、2008年8月に完成した。

【開業は来夏、ヴィラと「水庭」が特徴】タカラレーベンら、栃木県那須町にリゾート施設建設

ヴィラの完成イメージ(提供:タカラレーベン)
 タカラレーベンとリゾート運営を手掛けるニキシモ(東京都千代田区、北山実優代表取締役)は、栃木県那須町に建設しているリゾート施設「ボタニカルガーデン アートビオトープ」を9日、報道陣に公開した。敷地内にレストランやガラス・陶芸工房、宿泊棟を配置し、隣接地に160の池と樹木がモザイクのように並ぶ「水庭」を造ったのが特徴。環境問題や生物多様性にも考慮した未来型リゾートとして展開する。

 プロジェクトには建築家の坂茂氏や石上純也氏が参画している。完成は2020年夏を予定。タカラレーベンがリゾート施設運営を手掛けるのは今回が初めて。22年に迎える創業50周年を見据えた事業領域拡大の取り組みだ。

 建設地は栃木県那須町高久乙道上。敷地面積は1万6500平方メートル。15棟(1棟当たり60平方メートル)のヴィラを緩やかな傾斜がある土地の形状を生かして配置。アウトドアリビングをテーマに、建物から張り出した屋根の下に奥行き3メートルのテラスを設け、自然との一体感が味わえる。ヴィラの設計は坂氏が手掛けた。

樹木と池を組み合わせた「水庭」(提供:ニキシモ)
 レストランの床面積は370平方メートル。レセプション棟はエントランスに陶芸家・近藤高弘氏の作品を展示している。水庭は318本の樹木と160の小さな池を組み合わせた。散策しながら空気や風の動き、鳥のさえずりなど那須の自然が五感で味わえる。石上氏が設計を手掛けている。

 施設の施工は八光建設(福島県郡山市、宗像剛代表取締役)が担当。現在はレストランやヴィラを建設している。タカラレーベンの島田和一社長は「今までにこんなのあったのかと思えるような素晴らしいリゾート施設にしたい」と話している。

【実際に触ってるみたい】大林組ら、建機の遠隔操縦に力触覚再現技術導入

 大林組と慶応大学が「リアルハプティクス」と呼ばれる力触覚再現技術を建設機械の操作に活用する技術開発に取り組んでいる。物体に触った時に感じる硬さや軟らかさをオペレーターの手元で再現。建機を感覚的に操作するシステムの実用化を目指している。

 リアルハプティクス技術は、同大の大西公平特任教授が発明した。現実の物体や周辺環境との接触情報を双方向で伝送することで、物体に触った時に感じる硬さや柔らかさなどを、遠隔操作しているオペレーターの手元で再現する。力加減の倍率などを任意に設定することも可能。

 レバー型操作装置には、オペレーターが最適な力加減で建設資材を握って、その力加減を維持できる機能を搭載している。グローブ型操作装置では、手の動きと実機のグラップルの動きを同期させており、重機操縦に慣れてない場合でも感覚的に操作ができる。

 今回の実験では、油圧シャベル側の力を2000倍に、距離を16倍に設定してグラップルを稼働させ、試験体を把持した。厚さ0・5ミリの薄肉鋼管やH形鋼、木材など10種類の建設資材に適用したところ、いずれもオペレーターの手元で力触覚を再現でき、変形しやすい薄肉鋼管も、つぶすことなく運ぶことができた。

 力触覚を感じながら把持する方が、無い場合よりも作業効率が向上するという。既存の油圧駆動の重機に後付けシステムを搭載できるため、導入費用や期間は過大にならないとしている。

 大林組は、熟練オペレーターによる操作のデータ化を進め、重機の自動運転化や若年技能労働者のトレーニングへの活用にも生かしていく。

2019年10月10日木曜日

【回転窓】ハラスメントのまん延

働き方改革と言うのであれば突貫工事をやめてほしい-。専門工事業の経営者がそう訴えていた。現場で突発的な変更が生じて作業が中断し、工程が遅れるケースがあるという。その後は下請企業にしわ寄せが行く▼「明日までに何とかやってもらえないか」。かくいう自分も、建設業界に身を置いていた時、外注先にそう強いたことがある。発注者の顔色が頭に浮かび、語気を強めたことも。「やらなければ次は使わない」とまでは言わないが、相手は無言の圧力を感じていたはずだ▼フリーランスで働く人を支援する「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」らのアンケートによると、回答者の約62%がパワーハラスメントを受けた経験があるという▼精神的な攻撃が約6割と最も多く、過大な要求や経済的嫌がらせが約4割で続く。濃淡さまざまだろうが、似たような境遇は多くにまん延しているように思う▼労働人口が減る日本では、働く人から選んでもらえるかどうかで、産業の持続可能性が左右される。理不尽な立ち振る舞いには必ず手痛いしっぺ返しがある。そうした意識を心に留めておきたい。

【自動化施工を本格導入、施工は鹿島JV】小石原川ダム(福岡県朝倉市・東峰町)、主要構造部のコンクリ打設完了

 水資源機構が福岡県朝倉市と東峰村で進めている小石原川ダム建設事業の堤体盛り立てと主要構造部のコンクリート打設が完了し8日、本体工事を施工している鹿島・竹中土木・三井住友建設JV主催の「盛立完了・打設完了式」が建設地で開かれた。

 JVや協力会社、機構から約460人が参加。最終コンクリート打設を行い、度重なる豪雨被害などを乗り越えて迎えた節目の日を祝った=写真。

 施工者あいさつで山脇健治JV所長は豪雨災害によりバッチャープラントが水没するなどの困難な局面があったと振り返りつつ「月1万8000立方メートルのコンクリート打設という記録もつくり、無事今日の日を迎えられた。盛り立てでは基礎掘削35万立方メートル、盛り立て42万立方メートルの増加に対応し完了できた。今後も作業は進むがここまでやってこれたことを一つの区切りとし、明日からも安全にやっていこう」と呼び掛けた。

 同機構の染谷健司朝倉総合事業所長は「さまざまな工夫により、これまでに例のない早いスピードで盛り立てと打設を行ってもらった。設計変更や施工計画の見直しを行いながらここまでこれたことに感謝している。建設中には出水と渇水を経験し、地域から早期の完成が期待されている」と話した。

 引き続き大型クレーンでつり上げたバケットから取水塔付近に最終コンクリートを投下。コンクリートを締め固めた後、一同で万歳三唱を行った。

 同機構によるとダム本体工事の盛り立て量は約780万立方メートル、洪水吐きなど主要部のコンクリート打設量は約20万立方メートル。工事では複数の建設機械が連動しながら自動運転を行うシステム「クワッドアクセル」を本格導入した。今後、本体の天端の舗装や基礎処理、付け替え道路の工事などを進め、2019年度中の試験湛水開始を目指す。

 同ダムは洪水調節や流水の正常な機能の維持、都市用水の確保などを目的とした多目的ダム。形式はロックフィルダムで堤高139メートル、堤頂長約550メートル、堤体積約830万立方メートル、総貯水容量約4000万立方メートル。完成すれば九州では最も堤体が高いダムとなる。延長約5キロの導水施設も整備している。総事業費は約1960億円。