2020年2月27日木曜日

【回転窓】建設産業のリブランディング

提供する自社の製品やサービスを顧客に想起させるブランド。特定の名称やロゴ、キャッチコピー、デザインといったものがブランドイメージを形作る▼社会の認知度を上げ、魅力や付加価値を高める活動全般がブランディングとなる。消費者と直接的なビジネス関係にあるBtoC型の企業の多くが、ブランド戦略を経営課題の柱に位置付ける▼請負業でBtoBが基本の建設会社でもブランド力の強化を掲げるトップが目立ってきた。国土交通省の有識者委員会では建設産業の魅力を再構築する「リブランディング」の重要性を指摘。情報発信の在り方などを提言している▼建設産業の魅力発信の取り組みとして、アニメに登場する構造物を実際に建設できるかを検証する「前田建設ファンタジー営業部」が注目を集める。2004年にウェブ連載の書籍化、13年の舞台化に続いて実写映画が先月末から上映されている▼異業種や同業他社を巻き込みながら骨太な企画を実現していきたい-。十数年前、中心人物である前田建設の岩坂照之さんに伺った思いは、さまざまな形で魅力アップに貢献。さらなる広がりに期待したい。

【新卒から育てる動きも】ゼネコン各社、IT人材を積極採用

 ゼネコン各社がIT系人材を積極的に獲得している。日刊建設工業新聞社が実施したアンケートに回答した34社のうち、2020年度新卒採用で6社、19年度の中途採用では11社がIT系人材を採用していた。

 生産性向上が求められる中でICT(情報通信技術)や人工知能(AI)などを活用する場面が増えてきている。即戦力に対するニーズが高い一方、新卒で採用し育成する動きも出ている。

続きはHP

【常盤橋プロジェクトの現場に採用へ】全建協連仮囲いデザインコンテスト、最優秀賞に専門学校東洋美術学校の「ピクニック」

 全国建設業協同組合連合会(全建協連、青柳剛会長)は、工事現場の仮囲いのデザインアイデアを学生から募る「仮囲いデザインコンテスト」の公開最終選考会を東京都千代田区の東海大学校友会館で25日開き、最優秀賞に専門学校東洋美術学校のグループ「ピクニック」を選定した。

 優秀賞は武蔵野美術大学のグループ「Studio Horizontal II」。入選は5グループ、特別賞に10グループを選んだ。

 2回目となる今回のコンテストは、「『工事中と人々を結ぶインターフェイス』を実現する」をテーマに設定し、東京都千代田区で施工中の「東京駅前常盤橋プロジェクトA棟新築工事」の仮囲いに採用することを前提にデザインを募集した。工事の建築主は三菱地所。三菱地所設計が設計を手掛け、戸田建設が施工している。仮囲いは3月上旬に着工し、5月12日の除幕式を予定している。

 最優秀賞に選ばれたピクニックは女性4人のグループ。仮囲いの表面を使い、建築物を食べ物に見立てて、弁当の形で紹介するアイデアを披露した。審査委員長の古谷誠章早稲田大学教授は「巨大な建築物という一般の人にとって縁の薄いものを、大変身近な弁当という題材で紹介しようという点が非常にユーモラスかつユニークだ」と講評した。

 昨年10月から応募登録の受け付けを開始。大学院生や大学生、高等専門学校生、専門学校生、高校生で結成する106グループのエントリーがあり、1次選考を通過した16グループ(1グループ欠席)が最終選考に臨んだ。

 開会式には小池百合子東京都知事が駆け付け、「仮囲いも東京の風景の一つだ。その風景が若い世代に彩りを添えてもらうなら、こんなにうれしいことはない」と期待を込めた。除幕式を「楽しみにしている」と参加する意向も表明した。

 審査後に会見した青柳会長は、「審査員と学生のやりとりの中で建設業はまだまだ工夫すれば、いろいろなことができると実感した」と振り返った。最優秀賞のアイデアを取り入れた仮囲いの施工に向け、「学生の設計を尊重しながら、しっかりやっていく」と強調。「建設業で働く人の誇りや魅力、やりがいにつながるような渦を業界の中で巻き起こしている。今後もこうした取り組みを続けていきたい」と意欲を見せた。

 受賞者は次の通り。グループ名(学校名)。

 【最優秀賞】ピクニック(専門学校東洋美術学校)

 【優秀賞】Studio Horizontal II(武蔵野美術大学)

 【入選】4U(早稲田大学)▽北川丸(和歌山大学)▽KEAN(長野県池田工業高等学校)▽SAU(東京大学大学院)▽チームK(群馬日建工科専門学校)

 【戸田建設賞】Hikagn(東京芸術大学大学院)

 【三菱地所賞】ATELIER(和歌山大学大学院)

 【滋賀県建設事業協同組合賞】屏風-BYOBU-(長岡工業高等専門学校)

 【群馬県建設事業協同組合賞】石川高専内田研究室(石川工業高等専門学校)

 【宮城県建設業協同組合賞】Kawai Lab(京都府立大学)

 【福島県建設業協同組合賞】62158.1132(芝浦工業大学)

 【長野県建設事業協同組合連合会賞】タカイヤマノウエ(芝浦工業大学)

 【山口県建設業協同組合連合会賞】(E)(東京大学大学院)

 【鹿児島県建設業協同組合連合会賞】青山製図専門学校住宅設計デザイン科Eグループ(青山製図専門学校)

 【全国建設業協会賞】KEAN(長野県池田工業高等学校)。

【ヒルトンブランドのリゾートホテルに】三菱地所と鹿島、沖縄・宮古島にホテル開発

 三菱地所と鹿島は、沖縄・宮古島でホテルを共同開発する。米ヒルトンが運営するリゾートホテル「ヒルトン沖縄宮古島リゾート」として、2023年に開業する。

 施設の設計・施工は鹿島が担当。今秋にも着工する。三菱地所が沖縄県のホテル開発を手掛けるのは初めて。ヒルトンによる沖縄離島地域での初弾物件にもなる。

 建設地は宮古島市平良久貝アゲタ550の7(敷地面積5万4769平方メートル)。宮古島西側の海に面する「トゥリバー地区」に位置する。三菱地所らが開発・運営する旅客ターミナルビルがある下地島空港にアクセスでき、宮古島の中心市街地にも近い。

 建物は8階建て延べ2万7983平方メートルの規模。329室を設ける。プールや宴会場、レストラン、スパ、フィットネスジム、チャペル、ミーティングルームなども備える。

 三菱地所の藤岡雄二執行役常務は「下地島空港へのさらなるエアライン誘致にとって追い風となる。新たな観光客の創出で、宮古島、沖縄県の発展に一層寄与できるよう計画を推進する」とコメントした。

【女子工高生や女性職人の思い紹介】土佐工業、フリーペーパー『けんせつ姫』の第3号発刊

 土佐工業(千葉県船橋市、柴田久恵社長)は、建設業で働く女性に焦点を当てたフリーペーパー『けんせつ姫』の第3号を発刊した。工業高校で学ぶ女子生徒や現場で活躍している職人、建設業界の女性団体など合わせて13校・団体37人を紹介。昨年4月に開催した第2回座談会の様子も収録した。

 発刊部数は当初予定の1万部を1・5倍に増やし、関東だけでなく全国の工高や大学などに配布する。

 けんせつ姫は2018年2月に創刊した。当初の発行部数は2000部だったが、好評だったため昨年2月発刊の第2号で1万部に増やした。第2号は日本地域情報振興協会(古川一郎代表理事)の「日本タウン誌・フリーペーパー大賞2018」企業誌部門で最優秀賞を受賞。多くの新聞に取り上げられるなど注目を集めた。柴田社長はこれまでの活動が評価され、今年1月に19年度「千葉県男女共同参画推進事業所表彰」を受けた。

 今後も『けんせつ姫』第4号の発刊や座談会を通じ、建設業を身近に感じてもらい、若い担い手確保に役立てたいとしている。

2020年2月26日水曜日

【回転窓】人を残すのが一流

 専門工事業が開催する技能大会。職人たちが懸命に競技に挑む姿はいつみても頼もしい▼23日に富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)で開かれた全国建築板金競技大会も多くの若い職人が匠(たくみ)の技を競った。競技は1枚の板金から工作物を作る「技能の部」と、与えられた課題に対する納まり図を製作する「建築技術の部」の2部門で行われた▼印象に残ったのは技能の部の工具とハンダ接合。曲刃やかげ打金、駒の爪、田楽木づちなど特殊な工具を選手たちは手際よく使い板金を加工。ハンダ接合では事務局が会場の外でおこした炭で銅こてを熱し、水漏れがしないよう丁寧に作業した▼建築板金業界は屋根工事や雨漏り対応など住環境整備で重要な役割を担う。ただ施工の効率化などで、手作業で行う伝統的な技法の採用は減りつつある。こうした技能大会を通じ、これまで築き上げたプロの技を後生にぜひ伝承してもらいたい▼先日亡くなった元プロ野球選手の野村克也氏がプロの世界についてこう言っていた。「金を残すのは三流 名を残すのは二流 人を残すのは一流」。専門工事業は一流を目指してほしい。

【全9路線で構造物をより多角的に調査】東京メトロ、トンネル検査にドローン導入

 東京メトロは、トンネル構造物の検査にドローン(小型無人機)を使用する体制を9路線全線で整える。

 6日から半蔵門線で開始しており2020年度に丸ノ内線にも導入、他の路線も順次適用する。操縦者の育成も進め、検査用のドローンを3台程度確保する。「高い場所の対象物を多角的に確認できる」(今泉直也工務部土木課課長補佐)として積極的に運用する。

 東京メトロは9路線を保有する。路線延長195キロのうち85%に相当する約165キロがトンネルとなっている。トンネルは2年周期、20年周期で状態を把握する通常全般検査、特別全般検査を実施中。ドローンは遠方目視の対象としてきたトンネルの上部、開口部、立坑の検査に使う。換気用の通風孔、シールドマシンの発着箇所、シールドトンネルの上部などが主な対象となる。

 これまでトンネルの高い場所などは、軌道からの遠方目視に加えて、高所作業車や足場を組んだ上で検査してきた。ドローンを使うことで、対象に接近した検査を実施でき、高所作業の回数が減らせるため、効率性と安全性が高まると見ている。

 ドローンは、プラスチック素材のフレームを用いた球状。小型、軽量の高性能カメラを搭載している。対角寸法は機体が220ミリ、球殻が400ミリ、重さ1・15キロ。最高時速60キロ、最高到達高度50メートル、電波到達距離1000メートル。風速毎秒5メートル以下で飛行できる。

 利用の検討を18年12月から開始し、実用化への課題を抽出しながら実証実験を行ってきた。高さ5メートル以上で使用できるよう衛星利用測位システム(GPS)のない環境でマニュアル操作する際の性能を検証し、鉄道設備を損傷させずに撮影できるよう、フレームを用いた球状にした。撮影に伴う光の反射を抑えるために、フレームを黒色にするなど撮影の精度を高める改良を続けた。

 撮影から取得したデータを蓄積し、構造物のさまざまな性状確認に生かすという。現在外部から認定を受けた5人の社員が操縦している。全路線への適用を見据え、操縦者をさらに増やす。ドローンの運用にはベイシスコンサルティング(東京都文京区、泊三夫代表取締役)、東京大学大学院情報学環ユビキタス情報社会基盤研究センターが協力する。トンネル検査以外にも使用する自律飛行型ドローンの開発に本郷飛行機(同、金田貴哉代表取締役)と着手している。

【国交省が全整備局に周知】新型コロナウイルス、建設現場での感染拡大防止へ対応徹底を

国土交通省は工事現場などで新型コロナウイルス感染症の患者が発生した場合の対応を地方整備局などに周知した。

 作業員などに感染事案が判明したら速やかに発注者に報告する体制構築を指示。感染者の報告があった場合、受注者に対し感染した作業員と濃厚接触者に自宅待機を依頼するとともに、保健所などの指導に従うよう指示するなど適切な対応を徹底する。

 熊本県と千葉県で建設現場に従事する者が感染する事態が発生した。国交省官房技術調査課は、工事現場などの感染症患者に伴う対応に関する文書を、北海道開発局と内閣府沖縄総合事務局を含む全地方整備局に24日付で通知した。

 直轄の工事・業務の現場などで引き続き感染症の拡大防止対策の徹底を要請。担当職員だけでなく受注者を通じてすべての作業員の健康管理に留意し、発熱など風邪の症状が見られる時は休暇を取得させるなど適切な対応を求めた。

 感染事案の判明時の対応を含め、こうした措置を講じるに当たり、必要に応じ、工期などの一時中止を指示するほか、工期の見直しを含め施工期間などの適正化に努めるよう要請した。

 政府は25日に新型コロナウイルス感染症対策の基本方針をまとめた。今後の健康被害を最小限に抑える上で、今が極めて重要な時期と指摘。企業に対し風邪の症状が見られる者への休暇取得の勧奨、テレワークや時差出勤の推進などを強力に呼び掛けるとした。

 □納品遅れなど影響表面化、長期化の懸念も□


 中国全土での新型コロナウイルスの感染拡大が、日本国内で住宅設備などの供給に影響を与え始めた。

 LIXILとTOTOは、商品の一部の生産と供給に遅れなどの影響が出る可能性があると発表。永大産業も一部製品の受注を停止している。各社とも現時点で大きな影響が生じている状況ではないものの、長期化への懸念が高まっている。

 協力会社からの一部の中国製部品が滞ることで、製品が完成できない状況に陥り、納期が遅れる懸念が生じている。LIXILは21日時点で▽トイレ▽洗面化粧台▽システムキッチン▽ユニットバス▽水栓金具▽電気温水器▽タイル▽石材-の8製品、TOTOは19日時点でトイレとシステムキッチン、洗面化粧台を対象に挙げている。システムキッチンと洗面化粧台は両社とも全シリーズが対象となっている。永大産業は室内ドアやIHクッキングヒーターなどの一部で受注を停止した。

 このほかの住宅設備・建設資材メーカーは「ドアに使う金物などが調達しづらくなる可能性がある」「調達品で一部中国製品があるが、直接影響が出るレベルではない」「現状では大きな影響になっていない」などの声が上がっている。

 国内の在庫や流通業者が保有している建材があることや、中国国内の各種工場が順次稼働を再開している状況もあるため、住宅設備などの供給が止まる懸念には至っていない。だが大手メーカーからは「標準状態に戻す努力をしていくが、今後については何とも言えない」との声も聞こえている。

2020年2月25日火曜日

【回転窓】命名の教訓を生かす

大きな被害をもたらした昨年の台風15号と19号に名前が付いた。気象庁は2018年に改定した命名基準を踏まえ、15号を「令和元年房総半島台風」、19号は「令和元年東日本台風」と名付けた▼命名の原則は「元号年+顕著な被害が起きた地域・河川名+台風」。損壊家屋1000棟程度以上、浸水家屋1万棟程度以上などの被害が出た台風が対象となる。命名は1977年の「沖永良部台風」以来、43年ぶりという▼昨秋の台風災害を教訓にするため、政府は対応の検証作業に取り組んだ。記録的な風が無数の送電設備をなぎ倒し大規模な停電を発生させた台風15号の被害検証チームは、完全復旧よりも早期の停電解消を最優先とする対策などを盛り込んだ中間まとめを策定した▼被災地の緊急対応に奔走した緊急災害対策派遣隊(テックフォース)の活動報告会を開いた国土交通省関東地方整備局のように、次の災害への備えを強化している関係機関は多い。20年度の国土強靱化計画には15号、19号で明らかになった課題の解決策が加わる方向だ▼台風の命名は「後世への伝承」が目的の一つ。教訓を生かした対策に期待したい。

【展望テラスやカフェを併設】JR上野駅、公園口の新駅舎が来月供用開始

 JR東日本東京支社は上野駅(東京都台東区)の新しい公園口駅舎の供用を3月20日から始める。改札の100メートル北側への移設工事を2017年から行っていた。

 上野恩賜公園を見渡せる展望テラス、カフェなどの店舗は4月21日に開業させる。新しい公園口駅舎は、東京都と台東区の道路整備事業によってロータリー、歩行者空間が設けられる。改札内はトイレを拡張するとともにベビー休憩室を設置する。

【暮らしを支える土木】清水建設、八ツ場ダム建設工事の動画公開

 清水建設は、国土交通省関東地方整備局から受注して施工を手掛けた「八ツ場ダム本体建設工事」(群馬県長野原町)のPR動画を制作し、ホームページで公開した。

 効率的にコンクリートを打設する「巡航RCD工法」や積極的なプレキャスト(PCa)部材の活用などで生産性向上を図った経緯を振り返りつつ、人と技術が融合して短工期での完成を導いた姿を紹介。昨秋の試験湛水開始直後に台風が来襲し、大量の水を貯留した際の映像も盛り込んだ。

 リクルート活動などに活用するが、「当社だけではなく広く一般の方にも土木をアピールしたい」(同社)としている。

 同ダムは、利根川水系吾妻川中流に位置する。堤高約116m、堤頂長約290・8mの重力式コンクリートダムで、総貯水容量は1億0750万m3。本体建設工事の施工を清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステム異工種JVが手掛け、2019年6月にコンクリート打設が完了していた。

【 記者手帖】前厄を迎えて

外出した先で神社やお寺をよく目にする。必ずと言ってもいいほどで、高層ビルが立ち並ぶ街中で出くわすことも少なくない。神社仏閣に詳しいサイトによると、国内の神社とお寺を合わせると約15万8000社あり、コンビニの3倍近い数に上るという◆もともと信仰心が深いわけでもないので、見掛けても立ち寄らない。そんな自分が今年の初め、栃木県佐野市にある佐野厄よけ大師を訪れた。理由は前厄に当たるためだ。正式名は惣宗寺。祈祷(きとう)料を奮発し、長蛇の列に並んで祈祷を受けた◆男性の大厄は41歳。その前後も含め、昔からこの年齢に近づくと、身体の変化が表れ、生活のリズムや体調を崩しやすいと言い伝えられてきた。だから気を付けなさいという戒めだ◆体調面で特に変化はないが、最近飲み過ぎると記憶が飛ぶようになった。おいから「おじさん」と呼ばれることをすっかり受け入れられるようにも。来年は本厄、再来年は後厄と試練が続く。取材活動の基本は体力。体力作りとともに、何があっても厄年を言い訳にしない3年間にしたい。(田)

2020年2月21日金曜日

【回転窓】評価軸はどこか

3月からテレビ視聴率の調査方法が刷新される▼調査方法を全国で統一し、一部地域にとどまっていた録画による視聴率測定も拡大するそう。全国単位での視聴率データも提供される。フジテレビの遠藤龍之介社長が「視聴率の指標が変貌していく」とコメントしていた▼「(同業他社である)民放の外と競わないといけない」とも。かつてはお茶の間に家族がそろいテレビを見ていた。そうした時代は他局との争いがメインだった。サブスクリプション方式の動画配信サービスなどが普及し状況は一変。狭い世界での争いだけでは済まなくなっている▼東海テレビが製作したドキュメンタリー映画「さよならテレビ」が話題だ。視聴率に一喜一憂し、働き方改革が叫ばれる中で労働環境の改善などにもがく最前線の姿を赤裸裸に描いた。「華やかだと思っていたテレビ局だけど、私の会社と変わらないことを知りました」。同局にはそうした感想が寄せられているという▼外部からどう見られているか、本当の意味で戦うべきフィールドはどこか。それは多くに共通する本質。評価軸の多様化が進むからこそ、突き詰める必要がある。

【日本固有の照明文化、国内外に発信】照明デザイナー・石井幹子氏に聞く「照明デザインの魅力は」

 国内外で多数の照明デザインを手掛ける石井幹子氏(石井幹子デザイン事務所主宰)が昨年10月、文化功労者に選ばれた。東京都内のランドマークである東京タワーやレインボーブリッジなど数々のビッグプロジェクトに携わってきた。人間の英知を結集したものが建築物と力を込め、これからも新素材や革新技術を駆使し、さまざまな建造物に光を照らし続けると話す。石井氏に照明デザインの魅力を聞いた。

 --照明デザイナーを志したきっかけは。

 「大学卒業後、プロダクトデザイナーの渡辺力氏(1912~2013年)の個人事務所に入社した。照明を天井からつるすペンダントや壁に付けるブラケットといった器具のデザインに携わった。仕事に従事する中で、光自体に魅了され照明デザイナーとして身を立てようと決心し渡欧した。当時は渡航費用が非常に高額だったので、フィンランドの照明メーカー『ストックマン・オルノ社』にアシスタントとして雇ってもらえるよう直談判した。オルノ社やドイツの照明デザイン会社での仕事を通じ、照明デザインを学んだ」

 「日本に帰国した1968年に建築家・菊竹請訓(1928~2011年)、黒川紀章(1934~2007年)の両氏と出会った。両氏のプロジェクトで照明デザインを手掛ける中、70年開催の日本国際博覧会(大阪万博)では、電力館や万博美術館といったパビリオンのライトアップにも携わった。当時、日本ではあまり認知されていなかった景観照明に着目し、京都や仙台などで『ライトアップキャラバン』という活動を展開した。活動費用は自己負担であったが、そのかいもあって仕事をもらえるようになった」

 --照明の魅力は。

 「建設業に従事する人々にとって、日が暮れた後の工事現場を見ることは少ないはず。昼と夜では都市の見え方も大きく異なる。見せたい場所だけを照らすのが照明の役割という認識が少なからずあり、インバウンド(訪日外国人旅行者)からすると、『日本で夜を過ごすには物足りない』といった声も寄せられる」

 「技術の進歩により、近年はLED照明が多く採用されている。従来の白熱球などと比べ、電気消費量の大幅な削減につながっていることが、社会に広まりつつある。旅行者や生活する人が楽しめる空間を生み出していけるよう、新技術や素材をうまく生かしながら、日本固有の照明デザインを国内外に発信していく」

石井氏の代表作の一つ・東京タワーの照明デザイン
(石井幹子デザイン事務所提供)

 --昨年、文化功労者に選ばれた。

 「文化の発展や振興に顕著な功績を残してきた方々の中に、名を連ねられたことは大変喜ばしい。照明デザインという分野が社会から期待されているものと感じる。日本国内には人を引きつける建築物や土木構造物が多数ある。照明はこうした構造物の魅力をさらに高める効果があると自負している」

 --建設業をどう見る。

 「建設業は戦後の日本や大規模災害からの復興には欠かせない存在であり、われわれの目を楽しませてくれる。建設現場は人間の創造力が結集されている。一方、建設業界では人材不足も喫緊の課題だ。特に女性が働きやすい環境を整備する必要がある。例えば重量物を持ち上げるためのアシストスーツが開発されたり、パウダールームを完備したりと、さまざまな取り組みを展開している現場もあるが、改善すべき点は多い」

 「夏場でも快適に仕事をするには機能的な作業着も求められる。稼働する時間帯をシフトすることも有効だ。海外では夕方から夜にかけて建設工事を実施する国もある。作業着や労働時間を抜本的に変えなければ、人材確保は難しい」

 --将来の担い手にメッセージを。

 「れんがを積んだりタイルを貼ったりしてさまざまな建造物が生み出されている。若者にものづくりの楽しさを感じてもらうには、建築家や技術者が手掛けたものを正当に評価する仕組みが求められる。われわれが先頭に立ち、ものづくりの楽しさや魅力を発信していきたい」。

 (いしい・もとこ)1962年東京芸術大学卒。68年石井幹子デザイン事務所設立。89年に東京タワーのイルミネーションで頭角を現した。海外作品も数多く手掛け、豪州の「メルボルンセントラル」(91年完成)の照明デザインに関わった。仏パリで行われた「日仏交流150周年記念プロジェクト」(2008年開催)や「日本・スイス国交樹立150周年記念」(14年)のイベントなどにも携わった。00年に紫綬褒章を受章。

【東日本大震災から9年】環境省、福島県内の中間貯蔵施設を公開

 環境省は「福島再生。」を掲げ、福島県内で取り組んでいる環境再生事業の現場を報道機関に20日公開した。

 福島第1原発事故で飛散した除染廃棄物を保管する「中間貯蔵施設」(福島県双葉、大熊両町)への搬入状況や、原発周辺の地域で進められる復興街づくりの現場を公開。環境省の担当者らが各事業の進展状況を説明した。

 環境省によると、除去土壌の仮置き場から中間貯蔵施設への輸送は、1日当たり約2万袋で保管容器ごとに全数を一元管理。20年度は前年度と同じ400万m3程度を搬入する。原発周辺の帰還困難区域を除き、県内で発生した推定総量1400万m3分の除去土壌などを21年度までにおおむね完了させる。

 同時に仮置き場の原状回復を推進。20年度当初までに総数約1300カ所のうち、最大4割程度の原状回復を目指すとしている。中間貯蔵施設区域内にある「技術実証フィールド」では、除去土壌などを用いて減容化や再生利用に関する技術開発が進んでいる。

【トンネル内を自由に歩行】鹿島ら、四足歩行型ロボットを土木現場に導入

 鹿島は20日、ロボットメーカーの米ボストンダイナミクスが開発した四足歩行型ロボット「Spot(スポット)」を土木現場に導入したと発表した。トンネル内の路盤などでも不自由なく歩行できるよう改良されているという。世界に先駆けて土木現場で活用することを目指している。

 今後、トンネル工事での坑内測量業務や安全管理のための巡視などを実証実験する予定。急傾斜地滑り地帯での調査・測量といった危険作業を含めて、適用先の拡大も検討していく。

 ソフトバンクと、サービスロボットの開発・販売を手掛けるソフトバンクロボティクス(冨澤文秀社長兼最高経営責任者〈CEO〉)と協力し取り組んでいる。2018年に神奈川県内のトンネル現場で実証実験を実施。360度カメラを搭載したスポットを制御室から遠隔操作し、切羽の写真撮影やポンプメーターなどの計器点検を行った。

 あらかじめ設定したルートに沿って自律歩行する機能を用いて、坑内巡視の面からも適用性を確認した。その後、ソフトバンクロボティクスとボストンダイナミクスが、悪路歩行性能の確認やインターフェースプログラムの改良を行い、土木現場への適用可能性を高めたという。

 鹿島は、各種ロボット技術を積極的に導入することで、生産性や安全性のさらなる向上につなげるとしている。

2020年2月20日木曜日

【東日本大震災から9年】田中和徳復興相に聞く「現場主義で丁寧に対応」

 田中和徳復興相は18日、3月11日で東日本大震災の発生から9年を迎えるのを前に、報道各社の取材に応じた。地震や津波の被災地、福島第1原発事故の影響で復興が遅れている被災地など地域の実情に応じた施策を着実に推進。「復興・創生期間」(2016~20年度)の最終年度となる重要な節目を控え「現場主義で丁寧に対応していく」と気を引き締める。

 --復興・創生期間の仕上げの年に入る

 「地震や津波で被災した地域では公共インフラの整備をおおむね完了させる。住まいを再建して仮設生活の解消を目指す。原発事故の被災地域では引き続き帰還環境の整備を進めるとともに、復興五輪を契機に風評を払拭(ふっしょく)したい。復興庁設置法などを改正し、復興・創生期間後の復興にも万全を期す」

 --帰還困難区域での避難指示の解除に向けた取り組みは。

 「長い年月を要してもすべての帰還困難区域で避難指示を解除するよう責任を持って取り組む。まずは(同区域で)再び住めるようにする『特定復興再生拠点区域』に認定された区域の整備を着実に進める。認定されていない区域では、各地域の実情や土地活用の意向などを分析する。地方自治体の要望なども踏まえ、避難指示の解除に向け政策の方向性を検討していく」

 --原発周辺の環境再生事業の進捗(しんちょく)は。

 「除去土壌の中間貯蔵施設への搬入を21年度までにおおむね完了させる。20年度も19年度と同程度の輸送量を確保する。中間貯蔵施設の保管期限となる30年という約束を重く受け止めている。県外での最終処分に向け、除去土壌の減容化や再生利用に関する知恵を絞らないといけない。今後も地元のご意見を聞きながら努力していく」

 --福島浜通り地域の国際教育研究拠点の周辺街づくりをどう進める。

 「昨年11月に有識者会議がまとめた中間報告によると、国内外の人材を集積するには街づくりが重要だと提言している。研究拠点の整備に向け大学や企業などにヒアリングを行っているが、必要な生活環境についても丁寧に伺いたい。コンパクトな研究タウンを整備していく考えだ」

 --昨年の台風19号では東日本大震災の被災地でも多くの被害が出た。災害の激甚化にどう対応する。

 「大規模な自然災害が頻発する中、『想定外』という言葉はもう使えない。災害が起きたら、予算確保を含め早く手当てしていく。緊張感を持って対応していかなければいけない」。

【周辺巻き込む地域共生型の街づくりめざす】野村不、KAMEIDO PROJECTの詳細公表

 野村不動産は19日、東京都江東区で進める複合開発「KAMEIDO PROJECT」の詳細を明らかにした。

 同社が掲げる多様なコミュニティー形成や価値創出を目指す取り組み「BE UNITED構想」を適用。建設地にあった商業施設のにぎわいをそのままに、周辺住民も巻き込んだ「地域共生型」の街づくりを推進する。

 KAMEIDO PROJECTの建設地はJR・東武鉄道亀戸駅に近接する亀戸6の31の1ほか(敷地面積2万2989平方メートル)。2016年3月に閉店した商業施設「サンストリート亀戸」の跡地。

 開発する施設は大型ショッピングモールと共同住宅。ショッピングモールの規模はS一部RC・SRC造地下1階地上6階建て延べ約5・8万平方メートル。スーパーマーケットやクリニックなど、約150店舗を配置する。共同住宅「プラウドタワー亀戸クロス」の規模は地下2階地上25階建て延べ約4・2万平方メートル。免震構造を採用する。ワンルームから4LDKの934戸を設ける。

 商業施設と共同住宅の間には、飲食を中心とした店舗が並ぶ「横丁エリア」となる。両棟を行き来できる道路を整備し、アクセス向上を図る。一部敷地(1834平方メートル)を隣接する第二亀戸小学校(亀戸6の36の1)の増築用地として区に提供した。

 BE UNITED構想の適用は、プラウドシティ日吉(横浜市港北区)に続く2件目。エリアマネジメントといった構想実現に向けた活動「ACTO」の拠点となり居住者以外も利用できる「まちのリビング」を、共同住宅の4階に配置する。

 19日に東京都内でプロジェクトの記者発表会が開かれ、野村不動産の宮嶋誠一社長は「コミュニティーを育みながら、商業施設に多くの人が訪れ、良い影響が地域に波及し地域の価値向上につなげる」と話した。

 共同住宅の設計・施工は前田建設。商業施設の基本設計・監修を東急設計コンサルタントが手掛け、前田建設が設計監理・施工を担当している。いずれも22年1月ころに竣工予定。商業施設の開業は同夏ころを見込む。

【災害の教訓、後世に伝承】気象庁、台風15号を「房総半島台風」と命名

気象庁は19日、昨秋に襲来し大きな被害をもたらした台風15号を「令和元年房総半島台風」、19号を「令和元年東日本台風」と命名した。

 気象庁は顕著な被害をもたらした気象現象や自然災害に名前を定めている。災害の教訓を後世に伝承するといった狙いがある。台風への命名は1977年の「沖永良部台風」以来43年ぶり。

 昨年9月と10月に上陸した両台風は千葉県や関東・甲信越地方、東北地方を中心に浸水、停電などの甚大な被害をもらたした。

【4本のシールドトンネルを近接施工】首都高横浜北線、馬場出入り口が開通へ

 首都高速道路会社は、横浜市鶴見区で進めてきた首都高神奈川7号「横浜北線馬場出入口工事」の現場を報道各社に18日公開した。

 馬場換気所周辺の限られた敷地に計4カ所の出入り口を整備。高い技術力と管理能力が必要なシールド工法を駆使し、難工事を施工した。首都高速会社の鶴田和久神奈川建設局長は「(工事の完成によって)湾岸線方面と結ばれ、将来的には東名高速道路とも接続可能になる。馬場周辺のアクセス性は格段に向上する」と説明した。

 馬場出入り口は、横浜北線の新横浜出入り口と岸谷生麦出入り口の間に位置する。着工は2011年。約9年の歳月と約310億円の事業費をかけ、▽横浜港北JCT方面への入り口となるAランプ(外径10・1メートル、延長約450メートル)▽生麦JCT方面からの出口となるBランプ(10・8メートル、約450メートル)▽生麦JCT方面の入り口となるCランプ(11・1メートル、約360メートル)▽横浜港北JCT方面の出口となるDランプ(10・1メートル、約700メートル)-を築造した。

 馬場換気所周辺の約205メートル×約175メートルという限られた敷地にフル規格のICを整備。急勾配、急曲線という条件を克服しながら近接する4本のトンネルをシールド工法で築造した。トンネル同士の距離は最接近部で約4・4メートル。本線取り付け部も既存構造物との間隔が35センチしかなかったという。

 さらにトンネルの土かぶりは、Bランプでわずか1・3メートルしかなかった場所があったといい、地盤の浮き上がりを防止するためあらかじめ地表面にコンクリートを打設するなど、緻密な施工管理と高度な技術力が必要だった。

シールドトンネルの掘削では、急曲線部分に高強度な鋼製セグメントを採用。4本掘削したトンネルのうち2本でシールドマシンの部品を一部転用し、掘削カッターや推進装置、セグメント組み立て装置、排土装置などを再利用することでコスト削減を図った。

 馬場出入り口は27日正午に開通する。入り口部分は自動料金収受システム(ETC)専用、出口部分はETC、現金の両方が利用できる。出入り口周辺の幹線道路から首都高横羽線、第3京浜、東名高速道路などへのアクセス向上が期待されている。

2020年2月19日水曜日

【回転窓】緑のダムの限界

言葉の組み合わせでがらりとイメージが変わることがある。例えば「緑のダム」。環境保全の代名詞のように使われる緑(森林)が、従来のダム機能を代替できるのであれば、こんな良い話はない▼熊本県の川辺川ダム建設の賛否を巡って起きた「緑のダム論争」。ダム反対派は森林が雨水を浸透させ河川のピーク流量を低減するため、人工林の間伐など森林を手入れすればダムによる洪水緩和機能は不要と主張した▼一方、推進派は手入れをしても洪水緩和機能は得られないとした。県は2004年から2年間をかけて森林の持つ保水機能を検証。その結果、手入れをしても保水力に大きな変化がないと確認した▼そもそも森林の保水力は地面の表層だけ。ただ土砂流出の抑止や清浄な水の確保などの機能があり、治水と利水には欠かせない存在でもある。要は森林とダムは競合関係ではなく、相互補完関係にあるということだ▼なぜこんな論争が起きたのか。本日付の本紙最終面で紹介している『ダムと緑のダム』(日経BP刊)が詳しい。背景には後手に回った国内の森林政策にも一因があったのかもしれない。ぜひご一読を。

【3地区の準備組合、20年度にも都市計画提案】東京・飯田橋駅周辺で再開発が活発化

 JRや東京メトロなどが乗り入れる飯田橋駅周辺(東京都千代田区)で、再開発事業の胎動が鮮明になっている。

 事業が計画されている4地区のうち、3地区の再開発準備組合が来年度にも都市計画提案する見通し。周辺で進む駅改良工事といった基盤整備事業と連動して、利便性の高い街づくりが進みそうだ。

 再開発が検討されているのは▽飯田橋駅東地区(飯田橋3の6ほか、区域面積約0・7ヘクタール)▽富士見二丁目3番街区(富士見2の3、約1・3ヘクタール)▽飯田橋駅中央地区(飯田橋4の8ほか、約1・1ヘクタール)▽飯田橋3-9周辺地区(同3の9ほか、約0・8ヘクタール)-の4地区。

 先行する飯田橋駅東地区の事業は、20年度にも都市計画決定を受ける見通し。21年度の本組合設立認可を経て、23年度の着工、26年度の竣工を目指す。事業協力者は清水建設。

 富士見二丁目3番街区では、施設計画や概算の権利変換計画などの検討が進む。20年度上期にも都市計画がまとまる見込み。前田建設と住友不動産が参画している。

 20年度後期にも都市計画提案するのは、野村不動産と大成建設が参画する飯田橋駅中央地区。飯田橋駅東地区との「共通整備方針」の下、滞留空間の確保などによる駅東口周辺のアクセス向上に取り組む。

 飯田橋3-9周辺地区では、再開発協議会が事業を検討。区域内にある区の清掃車庫の開発時の在り方などを議論している。

 飯田橋駅周辺では、JR東日本がホーム整備などの駅改良工事を進めている。東京メトロも東西線の同駅~九段下駅間で、線路の新設などに取り組んでいる。

【最先端の省エネ・創エネ技術導入】清水建設、北陸支店新社屋をZEB化

新社屋の完成イメージ
清水建設は18日、金沢市内にある北陸支店を建て替え、北陸地域で最高水準の省エネルギー性能を備えた新社屋にすると発表した。国内最大級の水素利用蓄電設備など最先端省エネ・創エネ技術を導入。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)などの認証を取得する予定だ。街並みとの調和も図り、技術と意匠の両面から広くPRできるショールームと位置付ける。

続きはHP

【こちら人事部】大成ロテック「説明会の積極開催で入社後のミスマッチ防止」

 大成建設からの分離・独立による1961年の設立以来、道路舗装のリーディングカンパニーとして舗装を中心とする土木工事やスポーツ・レジャー施設の建設などを手掛けてきた。

 製造・販売部門での建設資材の製造販売やリサイクル事業のほか、海外や建築、中小水力発電などの新規事業にも力を入れている。

 人材採用に携わる人事部人事計画室の會礼輔課長代理は、同社が求める人物像として「向上意欲が旺盛で、幅広い視野に立って何事にもチャレンジする人材」を挙げる。幅広い事業フィールドを持つ同社では、社員はさまざまな立場・観点から事業に携わることになる。そのため「技術革新と創意工夫にチャレンジし続け、お客さまに感動してもらえる価値の創出を追求してもらいたい」という考えがある。

 同社は自社説明会への参加を採用試験に応募する上での条件にしており、全国の学生が採用に応募できるよう、自社説明会を全国で年間60回以上開催している。エントリー前に会社をよく知ってもらうことで、入社後のミスマッチを防ぐためだ。「その人がやりたいことと当社の事業内容が本当にマッチしているのか、説明会参加を通じて見極めてほしい」と會課長代理は狙いを説明する。

 インターンシップ(就業体験)は文系、理系ともに同じ内容を実施。道路舗装業界を知らない学生に対し、活躍できるフィールドがたくさんあることを知ってもらう。専攻分野にとらわれて仕事の選択肢を狭めるのではなく、その体験を通じて興味を持った分野へのチャレンジを後押しする。

 入社後、1年目は自社の研修施設で集合研修を行い、一般教養や測量・試験業務などを学ぶ。その後に工事事務所や合材工場で実務を学ぶため、体験配属として全国に配属される。2年目以降は職種に応じて専門研修を受け、3年目からは担当現場を持つ社員も出てくる。

 同社は入社後の定着を目的に働き方改革を推進している。2020年度は入社1年目の社員が土日・祝日を必ず休めるようにする取り組みを開始する。配属先の繁忙度や状況にかかわらず週末2日間の休日が確保できるようにするもので、入社2年目の社員は休日取得日を土日に限定しないものの、振り替え休日や代休制度を活用し、4週8休を必達とする。

 會課長代理は「就職は人生の大きな転換点。企業のことを理解し、納得がいくまで頑張ってもらいたい。説明会などではささいなことでも構わないので、積極的に質問してほしい。これからさまざまな企業に出会うと思うが、意欲的に行動し、納得のいくまで頑張ってほしい」とエールを送る。

 〈新卒採用概要〉

 【新卒採用者数】 男性43人(うち技術系39人)、女性17人(うち技術系13人、2019年度実績)

 【3年以内離職率】22・22%(16年度新卒)

 【平均勤続年数】 男性16・8年、女性12・7年(19年3月末時点)

 【平均年齢】   42・4歳(19年3月末時点)

2020年2月18日火曜日

【回転窓】人間力の鍛錬が必要か

先日、高校と大学、そしてアルバイトも一緒だった後輩と久々に会った。用件はその後輩に任せている自動車保険の更新手続きだったのだが、互いの近況も伝え合った▼保険会社でバリバリ働き、母親として子育ても熱心だった後輩。中学生になった子どもがどうしているのか聞いたところ「学校に通う意味が分からないという理由で家にいることが多い」とこぼしていた▼どうして学校に通うのか。多感な時期の子どもにどう伝えればいいのか。頭ごなしに叱っても駄目だろうし、なだめすかしても良い方向に行くとは限らない…。改めて対応の難しさを感じた▼宮崎県延岡市は教育や子育てで関係の深い家庭と学校、地域に加えて、もう一つの学校として「延岡こども未来創造機構(仮称)」の設立を目指しているそうだ。より高度な勉強ができる環境を整えたり、学校でつまずいた時の受け皿になったり。読谷洋司市長は「第4の存在であるもう一つの学校によって、勉強だけでなく心や人間力を育てる仕組みを具体的に作っていく」と狙いを話す▼困っていた後輩に的確なアドバイスができたのか-。今も自問自答している。

【延べ8.7万㎡、200店舗以上が入居】有明ガーデン(東京都江東区)の商業施設、4月24日開業

 住友不動産が東京都江東区で進める複合開発「有明ガーデン」のうち、商業施設「住友不動産ショッピングシティ有明ガーデン」の開業日が4月24日に決まった。幅広いニーズに応える200以上の店舗が入る。設計と施工は竹中工務店と前田建設と担当している。

 ショッピングシティ有明ガーデンは地下1階地上5階建て延べ8万7655平方メートルの規模。大型スーパーマーケットを配置するほかファッションやスポーツ、アウトドア、レストラン、クリニックなどの機能をそろえる。

 有明ガーデンの所在地は有明2の1(敷地面積約10・7ヘクタール)。2011年に都と都市再生機構から取得した敷地などで構成する。16年に国家戦略特区事業の認定を受けた。

 ショッピングシティ有明ガーデンに加え、劇場型ホールを備える「住友不動産東京ガーデンシアター」(開業予定5月)、計749室のホテル「同ホテルヴィラフォンテーヌグランド東京有明」(6月)、約6800平方メートルの広場「有明ガーデンパーク」(7月)などで構成する。

【自由自在に加工が可能】東芝ホクト電子(北海道)、透明フィルムLED開発

 東芝のグループ会社で電子部品メーカーの東芝ホクト電子(北海道旭川市、村川典男社長)が、透明なフィルム状のLEDモジュールを開発した。

 薄いフィルム状の素材にLEDチップを挟み込んだ構造で、誘導灯や表示灯としてサインが表示できる。LEDを消せば存在感がなくなるため、ガラスなどに設置しても後ろ側の空間や街の風景などを邪魔しない。イルミネーションや店舗装飾などでより自由度の高い演出が可能となる。

 開発した「透明フィルムLED」は、透明なプラスチックフィルムに微細配線電極とLEDを配置して挟んだサンドイッチ構造のモジュール。プリント基板に固定していた従来型のLEDモジュールと異なり、はんだなどを用いずに透明の素材だけで構成している。全方位に光が届き視認性を確保し、80%超という高い透過率を実現した。LED消灯時に電極の配線とLEDチップが目立たず背景がそのまま見える。

 □プログラミングで模様も 多彩な演出が可能□


 省エネ性にもこだわり、消費電力はパッケージLEDの15~30%程度で済むという。厚さ0・36ミリのフィルムを用いることで、薄くて柔軟性の高い製品を実現した。自由に曲がるフィルムの性質を生かし、立体的な光が演出できるのも特長だ。窓ガラスや壁などの平面の電飾以外にも曲面へ展開できる。「透明」にこだわることで、明るさと柔軟性、視認性をバランス良く兼ね備えることができたという。光量や耐久性の面も含めて、他社製品との差別化を図っている。

 東芝ホクト電子は、1945年に東芝の旭川工場として創業したのがルーツ。創業当初は一般照明用電球を製造していた。近年、市場では透過型有機ELディスプレーや透過型液晶ディスプレー(LCD)など透明なデバイスの人気が高まっている。そうした中で同社は保有技術を生かしたオリジナリティーのある光デバイスを作ろうと、透明フィルムLEDの開発に乗り出した。

 「量産性を考えた上で品質を保つ設計に苦労した」と話すのは、開発を主導した透明フィルムLED事業推進部の曽我部寿氏。シンプルな構造だが、柔らかいフィルムに電極を固定したり配線を見えにくくしたりするため、高度な技術が要求された。同社は現在、バーコードラベルの印刷や医療用印刷装置に使われる「サーマルプリントヘッド」、直流電力をマイクロ波に変換する装置「マグネトロン」、車載機器や医療装置などに使われる薄くて柔軟性がある「フレキシブルプリント配線板」などの製造が主力事業。各製品に導入されている高度な実装技術やノウハウを駆使して透明フィルムLEDの開発に当たった。

 一般的なフィルムは屋外環境に長期間置くと黄色く変色してしまう。製品の開発ではフィルムの変色をどう抑えるかも課題だった。試作を何度も繰り返し、素材や接続技術などを吟味。高度な実装技術を駆使することで、品質を確保しつつ量産できる体制も構築できた。透明フィルムLED事業推進部の松下孝一氏は「他にない光デバイス」と製品の出来栄えに胸を張る。

 柔軟で自由自在に曲がるという特徴を最大限に生かせば、さまざまな分野での応用が期待できる。表示するサインなどは、LEDチップを任意に配置して光らせる方法と、マス状に配置させプログラミングで模様の内容を決める方法があり表現の自由度は非常に高い。誘導灯や案内板、ショーウインドーなど幅広い展開が見込めると同社は見る。

 ショーウインドーの場合、集客時にLEDを光らせて商品を目立たせ、中の商品を見せたい時はLEDを消して透明フィルムに戻す。こうした目的に合わせた演出も可能になる。タンブラーなどに実装すればムードを盛り上げるグッズにもなる。全方位に光が広がるため、煙の中でも認識しやすく、非常用誘導サインにも適しているとしている。

 □形状、大きさ自由自在□


 フィルムは最大で400~500ミリ角まで拡大できる。複数のフィルムをつなぎ合わせれば大きなディスプレーとして使用することも可能だ。フィルム状で軽く、天井につるす際の施工も容易。万が一落下した場合もけがなどの心配が少ない。

 時代とともに街や建物が新しくなっていく中で、景観とより調和し風景に溶け込むような新しいサインの在り方が求められている。曽我部氏(写真㊧)は個人的な見解としつつ、「景観がきれいだと心も落ち着く。街中にこの製品があふれればきれいな見栄えになるはず」と話す。「パフォーマンスが最大限生かせる使い方をユーザーと共に考え、世の中にないものを創っていきたい」とも。

 「サンプルを試してもらっている。ユーザーの生の声を聞きながら、市場への広げ方や売り上げ目標など固めていく」と松下氏。透明フィルムLEDを街中で見掛ける日が来るのも、そう遠くないかもしれない。

【1都4県の200現場対象】関東整備局、五輪期間中の工事調整で方針

 国土交通省関東地方整備局は17日、東京五輪・パラリンピック開催期間中の交通混雑緩和に向けて実施する工事調整の方針を発表した。

 その年に必要な工事を着実に実施することを前提に発注の後ろ倒しや一時休止、車両出入り調整などに取り組む。経費や工期変更は受発注者の協議で適切に対処する。1都4県の大会関連施設周辺など約200現場が対象。今後は関係機関に協力を呼び掛ける。

HPに詳しく

2020年2月17日月曜日

【回転窓】人のため、社会のために

建築家とは人のため、社会のためにプロフェッショナルなサービスを提供する職能だ-。1月31日に亡くなった建築家の大江匡氏(前プランテックアソシエイツ代表取締役会長兼社長)の言葉だ▼1985年にプランテック総合計画事務所を設立。設計監理の枠を超え川上や川下の分野に活動領域を広げた。クライアントのニーズに一つ一つ応える流れの中で業容を拡大。2005年には設計事務所では珍しい持ち株会社体制を敷いた▼設計した建築を「作品」でなく「プロジェクト」、「デザイン」でなく「ソリューション」と呼ぶと宣言。自らはできるだけスケッチなどをせず、社員みんなで考える組織作りに常日頃から心を砕いた▼環境が変化する中、10年先、20年先を見据え経営のかじを取るのは極めて難しい。毎年恒例になっていた年始のトップインタビューで、グループが発展していく道筋と展望を明確に語る姿が、とても印象に残っている▼創立当時から「プランテック」というブランドを作りたかった大江氏。創業者の遺志を継ぎどう会社を発展させていくのか-。後進に空から温かいまなざしを向けているはずだ。

【実施設計・施工は大林組、京町家の風情残す】NTT都市開発、京都市内でホテル「京都役行者開発」竣工

京町家の風情を残した建物が特徴的(ⓒ Forward Stroke)
NTT都市開発が京都市中京区で進めていた京町家の魅力を生かした開発プロジェクト「京都役行者開発」が竣工した。

 ホテルとレストランで構成する新施設は既存建物の一部を保存。町家の部材を生かしながら空間と機能を再構築した。京町家の本質的価値を継承し、京都の新たな魅力発信拠点として3月18日に開業する。

 所在地は室町通三条上る役行者町361。建物規模は5階建て延べ4000m2。ひらまつ(東京都渋谷区、陣内孝也社長)が運営するホテル(客室数29室)と二つのレストラン(日本料理・イタリアン)が入る。基本設計は日建設計、実施設計と施工は大林組が担当。数寄屋建築の工房として内外に知られる中村外二工務店(中村義明代表)が内装デザインを監修した。

 京町家の価値を引き継ぎ、京都の魅力的な街づくりに貢献することを開発コンセプトに設定。街路に面した南側建物の表家を保存し、蔵や庭など京町家が持つ構成を踏まえ、付加価値の高い施設に再整備された。

【環境先進企業アピール】鹿島、自社開発ビルでグリーンボンド発行

 鹿島は、高い環境性能を備える自社開発ビルの建設資金のリファイナンス(借り換え)を目的に、グリーンボンドを月内にも発行する。

 発行予定総額100億円(発行年限5年)のうち、横浜市西区で建設中の「横濱ゲートタワー」(完成イメージ)へ60億円、2016年に竣工した東京・元赤坂の「KTビル」に40億円を充てる。

 グリーンボンドの発行は初めて。格付投資情報センターが第三者評価を行い、環境問題の解決につながる事業への投資として最上位評価「GA1」の予備評価を取得した。

 環境分野での先進的な取り組みを社会に幅広くアピールするのが狙い。今後もグリーンビルディングの開発資金調達で、グリーンボンドの発行を検討していく方針だ。

 KTビル(S一部RC造地下1階地上12階建て延べ約1.2万m2)はオフィスビルで国内初の「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル) Ready」を実現。横濱ゲートタワー(S造地下1階地上21階建て延べ約8.4万m2)は21年秋ごろに竣工予定だ。

【凜】東芝エレベータプロジェクトエンジニアリング統括部・下川原恵子さん

◇地元に貢献できる仕事を◇

 約600人の聴衆を前に話す機会があった。昨年11月に都内で開かれたビジネスイベントで東芝エレベータのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の取り組みを紹介した。これだけの大人数を前に話すのは初。講演を聞いてくれた男性から「うちの会社でもやってみたい」と声を掛けられた。自分の話が営業につながった気がしてうれしかった。

 宮城県名取市出身。子どものころは物件の折り込みチラシを見るのが好きだった。高等専門学校に進学し建築を学んだ。「CADを勉強するのが好きだった」と当時を振り返る。就職活動の時、頭に浮かんだのが姉だった。生まれつき障害があり、車いすを使っていた。「何か貢献できることはないか」。考えた末に選んだのは、車いすでの移動に欠かせないエレベーターのメーカーだった。

 2015年に入社し設計業務に2年半関わった後、現在の部署に異動した。東芝エレベータのBIMの宣伝と、実際に導入した顧客の窓口を担っている。異動前と比べ、前面に立って顧客と話す機会がぐんと増えた。「顧客とのじかのやりとりが新鮮」と笑顔で話す。

 客先に行くときはさまざまなパターンの資料を用意。分かりやすく説明し、顧客の質問に的確に答えることを心掛けている。将来の目標は地元に貢献する仕事をすること。「地元でも有名な大きな建物に関われたら」と前を向く。

 (エンジニアリングセンターBIM設計担当、しもかわら・けいこ)

【サークル】共同カイテックランニングクラブ「旅ランにも意欲!、メンバー募集中!!」

 2009年ころからランニング好きの社員がマラソン大会に出場するようになった。「共同カイテックランニングクラブ(KYRC)」が会社公認の部活動になったのは19年。「楽しく走っておいしいビールと焼き肉を!」がモットーで、駅伝やシティーマラソンに参加するなど幅広く活動している。

 広報企画課の入沢充明課長が代表を務め、神奈川技術センター、本社の各事業部、大阪や仙台の営業所などに所属する社員22人(19年12月時点)で構成。毎年、クリスマスラン駒沢6時間耐久駅伝(主催・東京都スポーツ文化事業団)や上尾シティマラソン(主催・埼玉県上尾市ほか)での好成績を目標に活動している。

 現在は個人練習を中心に活動中だが、入沢課長は「定期的に集まって走りたい」とチームでのランニングにも意欲的だ。走りながらグルメや観光を楽しむ「旅ラン」にも興味があり、「水戸で行われるメロン食べ放題の大会に前乗り参加したい」と話す。

 メンバーは随時募集中。「各自の目標で走っている緩いクラブなので、どなたでも気軽に来てほしい」(入沢課長)と呼び掛ける。

【駆け出しのころ】竹中工務店常務執行役員・佐藤恭輔氏


 ◇難題乗り越えやりがいを◇

 実家は建材店、親戚も製材業と建設会社を営んでおり、幼い頃から建設の世界が生活の中にありました。周りにある木っ端やおがくず、セメントなどは格好の遊びの材料です。いろいろな道具を使い、車や飛行機などの模型も作りました。

 誰かに言われるまでもなく、将来は「建設の仕事をやるんだろうな」と自然に思っていました。地元に残る気持ちはなく、大手ゼネコンで難度の高い仕事に携わり、納得できるものを造りたいという思いが強かったです。

 竹中工務店の新入社員は研修期間の1年間を、3ローテーションで4カ月ごとに部署を異動します。最初は見積もりの部署で積算を、次に病院の建設現場で付帯工事を、最後は設計部で簡単な構造設計の業務に携わりました。とにかく目の前の仕事に無我夢中で取り組みました。田舎育ちの自分にとって、多様な価値観の同期たちとの交流もいい刺激になりました。

 最初の7年間は現場勤務でがむしゃらに働きました。さまざまな作業・業務を担当し、現場で行う一通りのことを学びました。その後、社内制度で研修生として技術研究所に移り、主に基礎関係を中心に知識を蓄えることができました。

 技研での2年間は技術面だけでなく、人脈づくりの面でも現場勤務と同じくらい貴重な経験となりました。次に移った技術部での約3年を含め、技術者としての成長を促すいいローテーションだったと思います。

 自分にとって「怠慢」が一番嫌いなことであり、怠慢を理由に怒られることがないよう、ひたすら仕事に没頭しました。褒められることが目的ではありませんが、普段の努力を認めてくれるのはやはりうれしく、励みにもなります。

 大規模現場は工期・コスト面で厳しさも増しますが、難題を乗り越えた先に、やりがいや面白みを得られます。都心部の再開発プロジェクトでは地下の古井戸から水が湧き、薬液注入などでもうまく止まらず、対策に悩みました。小さな鉄球を穴に入れて止水効果を高めるというアイデアが功を奏し、一連の対策で特許も取りました。苦労した分、現場への思い入れも深まります。

 技術者には、リスクを見通す先見力と、課題を解決してものごとを進める現場力を合わせた総合力が求められます。何ごとも一朝一夕にはいきませんが、若手には多様性のある人間に育ってもらいたい。

 遊びも大切です。私は山や川など自然豊かな田舎で育ったこともあり、休日は魚釣りや旅行などのアウトドア派。昔から料理もやります。多趣味が過ぎて、家族からは趣味を減らせと言われるほど。趣味の段取りが上手な人は、仕事の段取りも上手だと思います。

入社1年目、研修期間中に配属された病院建設の現場で
(さとう・きょうすけ)1980年東京工業大学工学部建築学科卒、竹中工務店入社。執行役員生産本部長などを経て2018年3月から現職。岐阜県出身、62歳。

2020年2月13日木曜日

【回転窓】おもてなしのピクトグラム

文字や言語ではなく対象物や概念・状態などの情報を図形で表すピクトグラム。必要な情報が分かりやすく伝えられる手段として鉄道駅や空港のターミナル、公共・観光施設に掲示されている▼今や世界中に広まるピクトグラムは、1964年に開かれた前回の東京五輪で初めて全面導入されたという。施設と競技で2種類のピクトグラムを作成。イラストのような図形は感覚的に意味が理解でき、大会の円滑運営に役立ったそうだ▼国内では2000年施行の交通バリアフリー法を受け、交通・移動に関する標識のイラストを統一化。障害者向けバリアフリールートも一目で分かるようになった▼増加しているインバウンド(訪日外国人旅行者)を踏まえ、16年には国土地理院が外国人の利用頻度が高い施設の地図記号を決定。グローバル化がピクトグラムの普及を後押しする▼今夏の東京五輪・パラリンピック期間中の交通対策の一環で、選手や大会関係者を運ぶ車両が通る「五輪ルートネットワーク(ORN)」を知らせる看板の設置が首都高速道路で始まった。おもてなしのピクトグラム。協力の輪が広がりますように。

【応募総数4719作品】土砂災害防止絵画・作文コンテスト、国交大臣賞に4点

植山あおいさんの作品「おかしいと思ったら早めのひなん」
 国土交通省は全国の小・中学生を対象に募集した2019年度「土砂災害防止に関する絵画・作文」の入賞作品を決めた。4719点の応募作品から最優秀賞に当たる国土交通大臣賞を4点、優秀賞の国土交通事務次官賞を60点選んだ。入賞作品はイベントでの展示や広報誌への掲載など幅広く活用していく。

 国土交通大臣賞の受賞作品は次の通り。▽受賞者(所属)=作品名。

 【絵画】

 ▽植山あおいさん(岐阜県揖斐川町立谷汲小学校3年)=「おかしいと思ったら早めのひなん」

 ▽瀬戸昴大さん(静岡県御殿場市立高根中学校2年)=「事前の準備が命綱」

 【作文】

 ▽永谷心絆さん(広島県東広島市立板城小学校6年)=「被災した私が思うこと」

 ▽幸渕美嘉さん(愛媛県宇和島市立吉田中学校2年)=「土砂災害から身を守るために」。

【中国での事業展開、予断許さず】建設各社、新型コロナウイルス対応で渡航禁止や施工休止

中国での新型コロナウイルスによる肺炎(COVID-19)の拡大を受け、建設各社が情報収集や中国への渡航禁止措置などの対応を進めている。

 中国国内に現場があるゼネコンらは、同国政府の指示を踏まえて20日まで現場での施工を休止。21日以降の再開へ調整している。ただ感染拡大とともに混乱も広がっており、対応は予断を許さない状況にある。

 フジタは武漢市での2現場を含めて複数の現場が中国国内で稼働している。日本人スタッフは原則帰国するよう指示。現地情報を引き続き収集しているが、現場再開への対応は現時点で不明としている。

 鹿島は中国に駐在していた日本人社員をいったん帰国させた後、幹部を上海などの拠点に再度派遣して10日から業務を再開した。武漢での稼働現場はなく、他の地域で21日からの現場再開へ調整している状況という。

 大成建設は中国に常駐していた日本人社員を全員帰国させている。湖北省への渡航は全面禁止で、中国への不要不急の渡航も禁止しており、やむを得ない場合は社内で是非を検討するという。大林組も中国への渡航を当面禁止する指示を出すなど各社は、社員らの安全管理に動いている。

 建設技術研究所は、武漢市に現地法人「武漢長建創維環境科技」があり、14日まで事務所を閉鎖している。現法の社員が新型コロナウイルスに罹患(りかん)したとの情報は入っておらず、引き続き動向を注視するとしている。

 外務省は12日、中国全土の在留邦人らに対しホームページなどで、日本への早期の一時帰国などを至急検討するよう呼び掛けた。国内でも感染が広がる恐れがある中で、「現場で求められる対応などを早急に検討する」(大手ゼネコン)といった動きも出ている。

【ホールや商業施設を一体化、施工は竹中工務店】ウィズ原宿(東京都渋谷区)、原宿駅前に4月25日開業

 NTT都市開発は、東京都渋谷区に建設している複合施設「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」を4月25日に開業する。

 商業施設やイベントホールが一体となった新たなランドマークが原宿に誕生する。設計は竹中工務店と伊東豊雄建築設計事務所。竹中工務店が施工している。

 建設地は神宮前1の14の30(敷地面積5068平方メートル)。JR原宿駅に近接する。建物規模はSRC・RC・S一部CFT造地下3階地上10階建て延べ約2万6600平方メートル。地下2階~地上3階と地上8階部分に商業施設やレストランなど14店舗が入居。4階から上層階は賃貸住宅(53戸)となる。

 3階には多目的イベントホール「WITH HARAJUKU HALL」や、多用途に使用可能なシェアスペース「LIFORK原宿」を設ける。

 開発事業の基本計画はアール・アイ・エー、竹中工務店、伊東豊雄建築設計事務所の3社が手掛ける。コンサルタントはアール・アイ・エーが務める。

【パリで個展も開催予定】写真家・山崎エリナさんのインフラメンテ写真集、4月に第2弾

 写真家・山崎エリナさんの作品を収めた写真集『インフラメンテナンス~日本列島365日、道路はこうして守られている~』(グッドブックス)の販売が好調だ。

 昨年4月の出版以降、インフラメンテナンス大賞で優秀賞を獲得するなど話題を呼び、3000部が完売、重版となった。写真集の続編も決定。第2弾を4月、5月に第3弾が発刊されるという。フランス・パリで個展も予定している。

 道路維持などを手掛ける寿建設(福島市、森崎英五朗社長)の呼び掛けで、山崎さんが同社らの施工するトンネル工事や道路整備などの現場に入り、最前線で働く人たちを撮影した。山崎さんは「インフラの世界を捉えた写真にこれほど関心を寄せていただけたことに感謝している。4月の本は北陸の会社に協力していただいた。5月の本は寿建設が工事したトンネル現場を着工から竣工まで紹介する」と話している。

 パリでの写真展は4月21日から日本文化会館で開かれる予定。森崎社長も福島市などで写真展やトークショーを企画中だ。

2020年2月12日水曜日

【回転窓】足元を巡る戦いの結果やいかに

4年に一度開催される五輪は出場を目指す選手はもちろん、競技に欠かせないシューズやウエアのメーカーにとっても威信を賭けた戦いになる▼陸上長距離界を席巻し、最近話題になっているのが米スポーツ用品大手のナイキが世に送り出した厚底シューズ。軽くて柔らかい特殊な素材とカーボンプレートを組み合わせたシューズは高い反発力とクッション性を生み出し、同社と契約する世界のトップ選手はもちろん、学生ランナーや市民ランナーにもあっという間に広まった▼好記録の連発に、陸上の国際統括団体、ワールドアスレチック(世界陸連)が厚底シューズを規制するかどうか議論していたのは記憶に新しい▼陸上で言えば、かつては日本メーカーが世界で隆盛を極めていた。トップアスリートを足元からサポート。1991年、東京世界陸上の男子100メートル決勝で世界記録を樹立したカール・ルイス選手が履いていたのは日本のメーカーがつくり上げたスペシャルシューズだった▼日本メーカーの輸入代理店からスタートしたナイキは時を経て世界でも有数の巨大企業に成長した。さてこれから先はどうなっていくのか。

【首里城正殿復元へ一歩】沖縄事務局開発建設部、復元設計(那覇市)のWTOプロポ公告

焼失前の首里城
沖縄総合事務局開発建設部は、火災により焼失した首里城正殿の復元に向けた設計者を選定する「首里城正殿復元設計業務」の公募型プロポーザル(WTO対象)を10日に公告した。参加表明書を20日まで受け付ける。技術提案書の提出期限は4月14日。

 参加資格は同局で建築関係建設コンサルタント業務の参加資格認定を受けた1級建築士事務所の単体かJVなど。

 業務内容は那覇市首里当蔵町(国営沖縄記念公園首里城地区)に計画している首里城正殿の復元整備に関する建築と建築設備の基本設計・実施設計。履行期限は2021年3月26日。担当は管理課契約第1係。

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/2019年建設業の成長率9・1%

 ファム・ホン・ハー建設大臣は年頭の記者会見で、2019年の建設行政の総括と20年の政策などを説明した。昨年は都市部・地方ともに建設業の動きは活発だったとし、多くの目標を達成し、いくつかの重要な成果を上げたと報告。建設業の成長率は9・1%で、国内経済成長率に1%以上貢献したという。

 ハー建設大臣によると、昨年の建設業許可の発行状況を示す指数は190カ国中25位で、東南アジア諸国連合(ASEAN)では3位だった。都市地域は835に増え、都市化率は39・2%に増加。第12回共産党大会で決議された目標を達成した。

 不動産市場は、土地価格の高騰が一部で見られるものの、4年連続で安定と成長を示している。建設資材市場は国内需要と輸出需要に合わせた増産を行った。住宅整備では計画の95%を達成した。

 ハー建設大臣は「19年は全体として重要政策や長期計画を達成できた。ビジネス環境は大きく改善したと言えるだろう」と述べた。20年の目標として、建設業生産高は前年比9~10%の成長、都市化率40%、都市人口に占める水道普及率90%、1人当たり住宅面積24m2を掲げる。その上で「20年は5カ年計画の最終年となる。すべての部局、全職員が次の5年に向けて全力を傾けられるよう人材育成にも努める」と語った。

セイ・ズン、2月3日)

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/鉄道網整備計画を決定

 グエン・スアン・フック首相は、2021~30年の鉄道整備計画と50年に向けたビジョンを承認する決定「NO.82/QD-TTg」を公布した。

 50年までの全国の鉄道ネットワーク整備を調査し、交通需要に応じた適切な投資ロードマップを策定することが目的。産業の連結性や安全保障、環境保護の視点なども取り入れる。

 鉄道整備計画では、異なる輸送方法間、国内・国際鉄道物流の接続、都市部と農村部の連携などを列挙。防災や観光振興への取り組みも定めた。

セイ・ズン、1月31日)

2020年2月10日月曜日

【回転窓】沈静化を願う

 近所の少年サッカーチームが新型コロナウイルスの広がりを巡って揺れている。数十チームが参加する大きな大会を控えているものの、その会場でサッカーJリーグのチームが予定していたサポーターとの交流イベントを中止し、さてどうするかとなったようだ▼「プロは中止したのに子供は試合をするのですか」「シーズン開幕前のプロと同じ議論はできないでしょ」。指導者や保護者からさまざまな意見が出ているという▼新型肺炎の拡大に伴って観光産業は影響がじわじわと広がっている。保健所からの情報発信を装った詐欺メールの横行、医療従事者の子息がいじめられたなど、残念でならない報道が相次いでいる▼悪意に隠れがちではあるけれど、世の中の善意が目立つようにもなってきた。マスクを無料配布したり、中国に医療機器や対策資金を寄付したりする企業がある。近所のドラッグストアで一人2箱までのマスクを買えなかった人に、1箱譲った女性がいた▼「コロナすごく怖いんだよね」。大会を楽しみにしている6歳のサッカー選手も不安にさせる新型肺炎の猛威。早期の沈静化を願わずにはいられない。

【延べ2.9万㎡、落札額は195億円】サンライズパークアリーナ新築(佐賀市)、戸田建設JVに

メインアリーナの完成イメージ(提供:佐賀県)
佐賀県は「SAGAサンライズパークアリーナ新築工事」の一般競争入札(WTO対象)を6日に開札し、195億円で戸田建設・松尾建設・中野建設・上滝建設JVを落札者に決めた。

 規模はS造4階建て延べ約2万9800平方メートル。建設場所は佐賀市日の出。予定工期は930日。設計担当は梓設計・石橋建築事務所・三原建築設計事務所JV。