2020年2月17日月曜日

【駆け出しのころ】竹中工務店常務執行役員・佐藤恭輔氏


 ◇難題乗り越えやりがいを◇

 実家は建材店、親戚も製材業と建設会社を営んでおり、幼い頃から建設の世界が生活の中にありました。周りにある木っ端やおがくず、セメントなどは格好の遊びの材料です。いろいろな道具を使い、車や飛行機などの模型も作りました。

 誰かに言われるまでもなく、将来は「建設の仕事をやるんだろうな」と自然に思っていました。地元に残る気持ちはなく、大手ゼネコンで難度の高い仕事に携わり、納得できるものを造りたいという思いが強かったです。

 竹中工務店の新入社員は研修期間の1年間を、3ローテーションで4カ月ごとに部署を異動します。最初は見積もりの部署で積算を、次に病院の建設現場で付帯工事を、最後は設計部で簡単な構造設計の業務に携わりました。とにかく目の前の仕事に無我夢中で取り組みました。田舎育ちの自分にとって、多様な価値観の同期たちとの交流もいい刺激になりました。

 最初の7年間は現場勤務でがむしゃらに働きました。さまざまな作業・業務を担当し、現場で行う一通りのことを学びました。その後、社内制度で研修生として技術研究所に移り、主に基礎関係を中心に知識を蓄えることができました。

 技研での2年間は技術面だけでなく、人脈づくりの面でも現場勤務と同じくらい貴重な経験となりました。次に移った技術部での約3年を含め、技術者としての成長を促すいいローテーションだったと思います。

 自分にとって「怠慢」が一番嫌いなことであり、怠慢を理由に怒られることがないよう、ひたすら仕事に没頭しました。褒められることが目的ではありませんが、普段の努力を認めてくれるのはやはりうれしく、励みにもなります。

 大規模現場は工期・コスト面で厳しさも増しますが、難題を乗り越えた先に、やりがいや面白みを得られます。都心部の再開発プロジェクトでは地下の古井戸から水が湧き、薬液注入などでもうまく止まらず、対策に悩みました。小さな鉄球を穴に入れて止水効果を高めるというアイデアが功を奏し、一連の対策で特許も取りました。苦労した分、現場への思い入れも深まります。

 技術者には、リスクを見通す先見力と、課題を解決してものごとを進める現場力を合わせた総合力が求められます。何ごとも一朝一夕にはいきませんが、若手には多様性のある人間に育ってもらいたい。

 遊びも大切です。私は山や川など自然豊かな田舎で育ったこともあり、休日は魚釣りや旅行などのアウトドア派。昔から料理もやります。多趣味が過ぎて、家族からは趣味を減らせと言われるほど。趣味の段取りが上手な人は、仕事の段取りも上手だと思います。

入社1年目、研修期間中に配属された病院建設の現場で
(さとう・きょうすけ)1980年東京工業大学工学部建築学科卒、竹中工務店入社。執行役員生産本部長などを経て2018年3月から現職。岐阜県出身、62歳。

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