2020年3月30日月曜日

【駆け出しのころ】アジア航測取締役営業統括部長・大場明氏

 ◇自身の魅力と人間力を問う◇

 学生時代は明確な夢や目標がなく、父親が教員だったので何となく教育学部を選びました。「東京の大学に行けば有名人に会えるかも…」といった不純な動機で上京。当時何を考えていたか覚えていませんが、企業への就職活動はせずに大学を卒業しました。

 教員資格は持っていたので、地元で教員試験を受けましたが不合格。中学校などで常勤講師を2年間務めました。2年目の勤務先で校長先生と意見が食い違い衝突したこともあり、将来を見据えて別の道に進もうと考えました。

 アジア航測に入社したのは知人の紹介でした。営業マンとして働き出しましたが、思っていた営業職のイメージとは違っていました。定価がある商品販売とは異なり、取り扱う技術が文系の私には複雑怪奇で、興味もあまり持てません。それでも先輩たちから頼まれた業務をこなし、自分なりに一生懸命やっていたつもりでした。けれども半年が過ぎたころ、外回りの少なさをやる気のなさと見られ、会社から転職を勧められます。

 そんな時、「環境アセスメント」関連の業務に関心を持ち、文系の私でもなじめたので営業してみたところ、これがはまります。大きな金額の案件が受注でき会社人生の転機になりました。当時近寄り難かったカリスマ的な営業課長が一緒に営業先を回った際に私を高く評価してくれ、「十分できるから会社に残れ」と勇気づけてくれたのも大きかったです。

 駆け出しのころ、先輩に「営業マンは役者」と言われたのも強く覚えています。顧客の前で辛そうな顔をして嫌な雰囲気をつくらない。会社が提供する技術やサービスの良さは仕事を取る上で不可欠な要素です。けれども他社と圧倒的な差別化が図れないならば、最後は営業マンが好かれるかどうかで決まる。自分が「会社の商品」なのです。人と会って話をすること、人との巡り合わせが仕事を引き寄せてくれるのだと感じます。

 仕事が取れた時は安心感からホッとします。それ以上に、業務完了後の発注元からの「いい仕事をしてくれてありがとう」との言葉がうれしい。これがやりがいです。相手に喜んでもらえれば次の仕事につながる。トラブルが起きても乗り越えることで、相手との関係がより深まるケースも少なくありません。

 仕事では嫌なこともあります。自分も家族や会社、時にはライバル会社の営業マンなど周りの助けを借りながら、悩みや迷いを吹っ切ることができました。

 営業マンは人に会わなければ始まらない世界。いろいろな人と出会い、親交が深まっていく過程が面白い。興味を引きつける雑学も必要でしょう。優劣を決めるのは自身の魅力であり、人間力なのです。

入社2年目ころ、社員旅行の懇親会で
(おおば・あきら)1985年早稲田大学教育学部英語英文科卒、地元の中学校の常勤講師に。87年アジア航測入社。広島支店長や大阪支店長、首都圏営業部長、執行役員営業統括部長(現任)を経て2017年から現職。島根県出身、58歳。

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