2020年3月19日木曜日

【阪神高速大和川線、3月29日に全線開通】損傷制御型鋼製セグメントで巨大地震のエネルギー吸収

 阪神高速道路会社は29日に開通する「阪神高速6号大和川線(鉄砲~三宅西出入口)」の報道関係者向け内覧会を17日に開いた。延長7・7キロの大半が地下構造。シールド区間では巨大な地震エネルギーを吸収する「損傷制御型鋼製セグメント」や、すべり台を使った西日本初の避難形式を採用するなど、先進の技術を駆使している。

 大和川線は、堺市と大阪府松原市を東西に結ぶ延長9・7キロ。西側は4号湾岸線、東側は14号松原線と接続する。片側2車線の4車線で、約7割がトンネル(開削約2・9キロ、シールド約3・9キロ)になる。松原線につながる三宅西出入り口付近0・6キロは2013年3月、湾岸線に接続する三宝JCT~鉄砲出入口間1・4キロは17年1月に先行開通した。

 今回の開通区間は残る鉄砲(堺市堺区鉄砲町)と三宅西(松原市三宅西)を結ぶ7・7キロ。府道大阪高石線に接続する常磐出入り口と府道大阪狭山線に接続する天美出入り口を設ける。

 本線シールド区間では関西最大級(外径12・47メートル)のシールドマシンを採用。約2キロに及ぶ長距離を併設離隔(約1メートル)で構築した。一部区間が上町断層系と交差するため、トンネル軸方向のひずみ集中箇所(東行き3断面、西行き3断面)には新開発の「損傷制御型鋼製セグメント」を採用した。地震発生時にトンネル全体が壊れないよう、部分的に損傷を制御する仕組みで、巨大な地震エネルギーを吸収する。

 開削区間では常磐出口ランプの一部に矩形シールドを使用。本線部を含めて開削工法を予定していたが、生活道路が使えなくなるなど周辺への影響を考慮し、シールド工法に変更した。矩形シールドマシン単体で道路トンネルを構築する事例は国内初となる。

 大部分がトンネル構造になるため、拡声放送装置やジェットファン、水噴霧設備といった防災設備を充実させている。万が一の場合は開削とシールド区間で避難経路が異なる。シールド区間には道路下部空間に避難通路が設けられ、すべり台を使って通路に移動できる西日本初の形式を採用。開削区間では非常口からトンネル外側に避難できる。

 全線開通により、西名阪自動車道などから神戸方面へ環状線を通らずに湾岸線に行くことができるなど、渋滞を避けたルート選択が可能になる。堺市の堺浜~松原JCT間の所要時間は一般道経由で約45分かかるが、大和川線を使うと約16分に短縮。周辺幹線道路の渋滞緩和にも役立つと期待されている。

0 コメント :

コメントを投稿