2020年9月29日火曜日

【社会・経済発展に貢献】2020年度選奨土木遺産に黒部ダムなど26件

  土木学会(家田仁会長)は28日、2020年度「土木学会選奨土木遺産」として26件を選定したと発表した。戦後の電源体制を支えた水力発電所用の大規模貯水施設で、トンネルや軌道など関連施設を含め難工事を経て完成した黒部ダム(富山県立山町ほか)などを選んだ。

 選奨土木遺産は00年度に創設した。原則竣工後50年経過した交通や防災、農林水産業、エネルギー、衛生、産業、軍事などの用途に供された広義の土木関連施設を対象に、社会へのアピールや街づくりへの活用といった観点から選考委員会(天野光一委員長)が審査を行った。青銅製の銘板を授与する。

 2020年度「土木学会選奨土木遺産」は次の通り。▽件名=〈1〉所在地〈2〉完成年〈3〉選定理由。

 ▽金山ダム=〈1〉北海道南富良野町〈2〉1967年〈3〉中空重力式構造やフロート式取水塔など先駆的技術を採用

神居大橋(北海道旭川市)
 ▽神居大橋=〈1〉北海道旭川市〈2〉1938年(58年、72年、81年に木部材など改修)〈3〉景勝地の神居古潭に架かるつり橋で、当初の木製補剛トラスの形式を継承しつつ改修し、かつての木橋の姿を今に伝える

 ▽馬淵川放水路=〈1〉青森県八戸市〈2〉1950年〈3〉多くの洪水の原因となっていた河口部を改善し、八戸市の発展の礎となった

 ▽寺坂橋=〈1〉埼玉県本庄市〈2〉1889年〈3〉現在利用されている道路橋としては埼玉県内最古の石造アーチ橋

 ▽鷺石橋=〈1〉群馬県沼田市〈2〉1929年〈3〉群馬県に現存する鋼プラットトラス形式で唯一の橋

 ▽表参道ケヤキ並木道(赤坂杉並線)=〈1〉東京都渋谷区~港区〈2〉1921年〈3〉明治神宮の参道として整備され、ケヤキ並木を備えた広幅員街路のモデルとなった

日光いろは坂第1・第2(栃木県日光市)
 ▽日光いろは坂(第1・第2)=〈1〉栃木県日光市〈2〉第1は1954年、第2は65年〈3〉リゾート開発の萌芽(ほうが)期を支えた本邦初の県営事業であるとともに、先駆的観光道路の記念碑

 ▽佐伯橋=〈1〉山梨県都留市〈2〉1927年〈3〉山梨県内では数少ない戦前完成の上路式鋼ソリッドリブ・アーチ橋

 ▽栃ケ原地すべり第1号集水井=〈1〉新潟県柏崎市〈2〉1955年〈3〉日本初の集水井として建設され、当該工法が全国に普及する契機となった

 ▽横浜港新港埠頭関東大震災復興岸壁群=〈1〉横浜市中区〈2〉1925年〈3〉関東大震災による壊滅的な被害を短期間で復旧した日本初の近代港湾復旧事業

 ▽秦野・曽屋水道施設群=〈1〉神奈川県秦野市〈2〉ロ号水源開口部は1888年(90年改修)、ハ号水源開口部は14年(90年改修)〈3〉全国初の住民主体の簡易水道

 ▽常盤橋=〈1〉東京都千代田区~中央区〈2〉1926年〈3〉関東大震災以前に架設され、東京中小河川におけるデザイン思想に重要な役割を果たしている二連アーチの橋である

黒部ダム(富山県立山町ほか)
 ▽黒部ダム=〈1〉富山県立山町、黒部市、長野県大町市〈2〉1963年〈3〉戦後の電源体制を支えた水力発電所用の大規模貯水施設。トンネル、軌道など関連施設を含め、難工事を経て完成した

 ▽狩野川放水路=〈1〉静岡県伊豆の国市、沼津市〈2〉1965年〈3〉狩野川流域の水害防止のために整備した人工水路で、一部トンネル構造を有する

 ▽中川運河=〈1〉名古屋市港区~中川区〈2〉1932年〈3〉名古屋の工業地で港湾と鉄道を連絡する主要動線を確保

 ▽五六閘門=〈1〉岐阜県瑞穂市〈2〉1907年〈3〉牛牧輪中における下流からの逆水を防ぐ明治末に竣工した人造石構造の樋門

ビルと高架道路、地下鉄駅の一帯整備(大阪市中央区)
 ▽ビル・高架道路・地下鉄駅の一体整備=〈1〉大阪市中央区〈2〉1970年〈3〉小規模な専門卸売店が密集する船場地区で、店舗ビルと高架道路・地下鉄駅を一体整備するという卓抜したアイデアを実現した施設

 ▽大阪狭山市域の南海電鉄煉瓦造暗渠群=〈1〉大阪府大阪狭山市〈2〉1898年〈3〉南海電鉄高野線狭山~大阪狭山市駅間の開通時に整備されたれんが造りの地下水路群

 ▽阪急電鉄神戸市内線高架橋=〈1〉神戸市灘区~中央区〈2〉1936年〈3〉阿部美樹志が設計したRC高架橋で、優美な曲線をもつ洗練された造形と阪神・淡路大震災にも耐えた堅固さを備える

 ▽姫路市営モノレール遺構群=〈1〉兵庫県姫路市〈2〉1966年〈3〉博覧会会場の手柄山中央公園~姫路駅間1・6キロを結んだ全国初となる市営モノレールの遺構群

 ▽豊岡市水道の創設期施設=〈1〉兵庫県豊岡市〈2〉船浄水場は1920年、旧豊岡町水道施設は22年〈3〉旧城崎町と旧豊岡町の上水道創設期に建設された築100年を迎える施設で、当時の温泉産業、生活衛生に貢献した

 ▽笹生川ダム=〈1〉福井県大野市〈2〉1957年〈3〉三次元的応力解析法によるダム本体の構造設計により、安全性の確保とダム堤体積の最小化を実現させたわが国最初のダム

 ▽出合橋=〈1〉広島県安芸太田町〈2〉1935年〈3〉三段峡の玄関口に架橋された優美なデザインのRCタイドアーチ橋で、地域のランドマークとして住民にも親しまれている土木遺産

 ▽三架橋=〈1〉香川県観音寺市〈2〉1935年〈3〉琴弾八幡宮の門前町に架橋された3連のアーチが優美な弧を描くRCタイドアーチ橋

 ▽八代の石造干拓施設群=〈1〉熊本県八代市〈2〉1816~1938年〈3〉全国屈指の干拓事業である八代干拓で建設された樋門群や堤防によって構成される

宮内原用水の二穴式隧道群(鹿児島県霧島市)
 ▽宮内原用水の二穴式隧道群=〈1〉鹿児島県霧島市〈2〉1716年〈3〉二つのトンネルを併置する希少な構造を有する現役の施設で、江戸期の土木技術を現代に伝える。

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