2021年1月29日金曜日

【回転窓】21年春闘が幕開け

 2021年の春闘が幕開けした。経団連(中西宏明会長)は新型コロナウイルスで企業収益が悪化しており、基本給の水準を引き上げるベースアップ(ベア)は困難との認識を示している。企業の存続と雇用の維持を最重要視する姿勢だ▼27日には東京都内で経団連と連合のトップが会談。入院先の病院からオンラインで参加した中西会長は「働きがいを実感できる職場環境づくりが春闘の大きなテーマになる」と述べた▼経団連の調査によると、20年の春季労使交渉で6割強の企業がコロナ禍の影響があったと回答。影響内容は「交渉・協議の方法」「賞与・一時金のマイナス」の順に多かった。昨春よりも深刻な状況下で、今年の春闘はどう着地するか▼建設業はコロナ禍でもエッセンシャルワークとして工事を遂行してきた。民間投資に先行き不透明感はあるものの、国土強靱化など不可欠な事業は多い▼賃金動向で明るさを見せることは人を呼び寄せる大きな武器になる。働き方改革を含めて業界の魅力向上は労使に共通する。これから業界を目指す若者たちの姿も思い浮かべながら、より良い選択をしていくべきだろう。

【コロナ禍で民間投資弱含み】セメント国内販売、54年ぶりの4000万t割れ

  セメント協会(小野直樹会長)が28日に発表した2020年(1~12月)のセメント需給実績によると、販売量は5021・4万トン(前年比2・9%減)、3年連続でマイナスとなった。

 国内は3923・6万トン(5・2%減)で、高度経済成長期の1966年以来54年ぶりに4000万トンを割り込んだ。地区別は9地区が減少。プラスは微増となった北海道と関東二の2地区だけだった。

 平野和人流通委員長は「コロナ禍もあって、間接的に影響を受けて弱含みに推移した」と指摘。「そろそろ下げ止まってもらいたい。公共工事はしっかりと予算がついている」と今後に期待した。

 輸出は3年ぶりにプラスへ転じ、1097・9万トン(6・4%増)だった。コロナ禍後、公共事業に力を入れている中国が前年比284・4%増と大きく伸び増加に寄与した。

【2棟総延べ3.2万㎡、5月着工】府中市新庁舎建設、128億円で大成建設JVに

  東京都府中市は「府中市新庁舎建設工事」の落札者を128億円で大成建設・三浦組JVに決めた。3月市議会に契約議案を提出し承認後契約する。

 竣工から50年以上が経過し老朽化している市庁舎を現地で改築する。建築本体と関連設備、既存庁舎の解体を一括で任せる。新庁舎は2棟総延べ約3万2000平方メートルの規模。5月に着工し2026年11月30日の完成を目指す。

 一般競争入札(総合評価方式)を13日に開札した。応札額が調査基準価格を下回ったため決定を保留。低入札価格調査に入っていた。低入札調査価格は145億0770万0800円。予定価格は157億6924万円だった。入札には4者が参加した。基本・実施設計は千葉学建築計画事務所・久米設計JV。設計マネジメントなどのCMr(コンストラクションマネジャー)は山下PMCが務めた。

 建設地は現庁舎(宮西町2の24)の敷地と取得した民有地を合わせた1万1906平方メートル。新庁舎はRC一部S造地下1階地上6階建て延べ約1万8000平方メートルと、RC一部S造地下1階地上4階建て延べ約1万4300平方メートルの2棟で構成する。2棟を地下1階で接続し広場も整備する。

【最新技術も活用し次世代へ継承】文化庁、国宝・重文建造物の保存・修理対策を強化

  文化財の確実な継承に向けた保存、活用へ-。文化庁は国宝や重要文化財(重文)に指定された建造物の価値を損なうことなく、次世代へ継承するため適切な周期で保存・修理を支援。石垣の耐震診断指針の策定や、人工知能(AI)を利用した文化財建造物の見守りシステム構築などに取り組む。世界遺産や国宝などを対象にした防火対策5か年計画(2020~24年度)に基づき防火対策や耐震対策も強化、促進していく。

 ◇価値を守りながら保存・修理◇

 文化庁は21年度予算案で1075億円(前年度比0・7%増)を計上。このうち「文化財の確実な継承に向けた保存・活用の推進」に関する経費に460億円(0・6%減)を充てる。20年度第3次補正予算の80億円を合わせて、540億円を確保する。

 国宝や重文、史跡などを積極的に活用しながら、次世代へ確実に継承するため、適切な修理・整備や防災・防犯対策などを支援。主な施策として▽建造物の保存修理など(21年度予算案130億61百万円)▽美術工芸品の保存修理など(12億87百万円)▽伝統的建造物群基盤強化(18億13百万円)▽史跡などの保存整備・活用など(206億20百万円)-などに取り組む。

地震で石垣が崩壊した熊本城(熊本市中央区)

 国宝や重文に指定された建造物の価値を損なわないよう保存・修理を進める。木造の文化財建造物は定期的な保存・修理で健全性を回復するだけでなく、構造補強など抜本的な強化を実施。大工など技能者の確保・育成や修理技術の伝承、修理に必要な資材の安定的な確保にもつなげていきたい考えだ。

 明治以降に建造された近現代建造物(土木、建築)には従来の木造のほか、れんが造りや鉄骨造、鉄筋コンクリート造の建築物、土木構造物が含まれる。1993年度に重文指定を開始し、これまでに366件が指定されているが、修理方法や修理周期は確立されていない。このため3D計測など先端技術を活用し、適切な修理時期の把握や迅速な修理によって、公開活用を促進していく。

 2016年4月に起きた熊本地震によって熊本城の石垣が大きな被害を受けた。現在、城郭石垣を持つ国指定の史跡は88件。地震時に崩壊する恐れがあるが、耐震性を判断する具体的な指針がない。このため文化庁は「石垣の耐震診断指針策定事業」を21~22年度の2カ年で実施する。熊本城の災害復旧などで得られた知見を活用し、全国の城郭石垣の調査分析結果を踏まえ指針をまとめる。調査方法や診断方法、対処方針を盛り込む方向で城郭石垣の耐震対策推進に役立てていく。

 ◇AIで破損状況分析、点検効率化◇

 AIを利用し文化財建造物の破損状況の分析などを効率的に実施できる点検手法を確立するため、共有システムを構築する。20年度に文化財点検でAI導入の可能性調査を実施。21年度は瓦やカヤ、柱などの破損データベース(DB)を蓄積し、AIで破損の傾向や分析を行う文化財建造物の「見守りシステム」を構築する。鳥獣害の早期発見や修理費の抑制、見落とし・誤認の防止などの効果を期待している。

 19年4月にパリのノートルダム大聖堂が大規模火災によって破損。同10月には首里城跡で火災が発生した。こうした惨事がほかの国宝や重文、史跡などで生じないよう緊急状況調査結果などを踏まえ、文部科学省は「世界遺産・国宝等における防火対策5か年計画」を同12月に決定。期間中(20~24年度)に重点的、計画的に防火対策を進めていく。

半解体修理が進む重文・本隆寺本堂(京都市上京区)

 5か年計画の2年目となる21年度も文化財を守るための対策を推進。文化財の保全と見学者の安全を確保する観点から、防火対策や耐震対策に関する施設設備(自動火災報知施設、消火栓施設、ドレンチャー設備など)の整備費・更新費を補助する。20年度第3次補正予算と21年度予算案を合わせて、72億20百万円を確保する。

 全国の博物館や美術館などの所蔵品や国指定の文化財に関する情報をデジタルアーカイブ化し、情報を検索できるポータルサイト「文化遺産オンライン」の構築を進めている。この一環で消失した文化財の復元資料として活用するため、国指定などの文化財の設計図や写真など詳細記録のデジタルアーカイブ化にも取り組んでいく。

2021年1月28日木曜日

【モデルに山之内すずさん起用】建災防、年度末労災防止強調月間でポスター制作

  建設業労働災害防止協会(建災防、今井雅則会長)は、3月に迎える「建設業年度末労働災害防止強調月間」の普及啓発に向けたポスターを制作し販売を始めた。工事が完成する繁忙期に労働災害の多発が懸念されるため、安全衛生意識をさらに喚起する。

 ポスターのモデルにはタレントでモデルの山之内すずさんを起用。イラストレーターの田中寛崇さんが描いた「建機に囲まれた和装の女性」バージョンも用意した。価格は200円(税込み)。

 東京の注文は建災防本部教材管理課(電話03・3453・3391)、東京以外は道府県支部で受け付ける。

【日本橋区間地下化へ準備進む】首都高呉服橋・江戸橋出入り口、5月10日午前0時に廃止

 首都高速道路会社は、都心環状線の呉服橋、江戸橋両出入り口を5月10日午前0時で廃止すると26日発表した。

 日本橋区間の地下化事業に伴う措置。地下ルートの整備に当たって、日本橋川の水位を下げる必要があり、両出入り口を廃止し橋脚などを撤去する。

 都心環状線の一部区間は日本橋川の直上に位置する。1963年の開通から半世紀以上が経過し、損傷が目立つ構造物がある。周辺では複数の再開発事業が進行中。街づくりと一体に地下ルートを含む約1・8キロの区間を整備し、景観性を高める。高速道路の地下化は2035年、日本橋川上空の高架撤去は40年を予定している。

【体育館と植村冒険館を複合化】植村直己スポーツセンター(東京都板橋区)、12月にオープン

 東京・板橋区が整備している複合施設「(仮称)植村直己スポーツセンター」が12月にオープンする。

 既存の東板橋体育館を改修し、冒険家・植村直己氏を紹介する「植村冒険館」と複合化。体育館機能と展示機能を備えた施設になる。改修工事の設計は大誠建築設計事務所、施工は松村組・瀧島建設JVが担当。展示室部分の設計と施工は丹青社が手掛けている。

 東板橋体育館の所在地は加賀1の10の5(敷地面積6243平方メートル)。建築から30年以上が経過し設備が老朽化していた。区内の蓮根にある植村冒険館(延べ519平方メートル)も展示スペース不足という課題を抱えていた。区は両施設を複合化しリニューアルオープンするため、改修工事に昨年着手した。

 複合施設はRC・S造地下1階地上3階建て延べ7560平方メートルの規模となる。地下1階と地上1~2階が体育館。3階が植村冒険館になる。

 展示室には1984年2月のデナリ(マッキンリー)登頂後に消息を絶った植村氏の生涯を振り返る年表や映像シアターなどを設置。愛用品や手紙なども展示する。展示スペースは施設全体で約280平方メートルになる見通しだ。

 体育館は9月に先行オープンする予定。12月中旬にも展示室を開設しグランドオープンとなる。区は2021年度予算案に関連経費19億4717万円を計上している。

2021年1月27日水曜日

【回転窓】水屋の富

 18世紀初頭に100万人都市だった江戸。当時、英国・ロンドンの人口が50万人というから、いかに江戸が大都市だったのかが分かる▼そこで暮らす人々の生活を支えていたのが上水道。有名なのは玉川上水と神田上水で、この2大上水からおけに水を入れて担いで売る「水屋」が長屋などを回って供給した。落語の「水屋の富」は、ある水屋が富くじで大金を手にしたことから始まる▼水屋は薄利できつい仕事を辞めたかったが、水がないと客が困るので後任が決まるまでと思い、働き続ける。だが、仕事中も床下に隠したお金が心配で気が気でない。結局お金は盗まれてしまうが、水屋は「これで苦労がなくなった」と▼人々が生きていく上で水の供給(利水)は欠かせない。洪水から身を守る対策(治水)も不可欠だ。水を治める者が国を治めるではないが、利水・治水対策は政治の重要な役目と言える▼政府は今国会に「流域治水関連法案」を提出する。行政単位の枠を越え、河川の流域単位で利水・治水対策を行う。落語の中で水屋は責任感だけで水を配り続ける。そんな気持ちを流域全体で持って施策を進めてほしい。

【延べ7.7万㎡、鹿島で今夏着工】ヨドバシHD、仙台駅東口で大規模開発

  ヨドバシホールディングス(HD)は26日、仙台市宮城野区のJR仙台駅東口で進めている「ヨドバシ仙台第1ビル開発計画」の建設に着手すると発表した。

 現在は平面駐車場として暫定利用されている約1・5ヘクタールの土地を活用し、新たに百貨店やオフィスなどが入る延べ約7・7万平方メートルの複合ビルを建設する。今夏にも着工し、2023年春の竣工を目指す。事業費は非公表。

 建設地は宮城野区榴岡1。敷地面積は1万5430平方メートル。仙台駅東口前に広がっており、道路を挟んだ向かい側には12年3月に竣工した「ヨドバシ仙台第2ビル」がある。周辺一帯は昨年9月、大胆な規制緩和や従前より手厚い金融・税制支援などで大規模都市開発を後押しする国の特定都市再生緊急整備地域に指定されている。

 新たに建設する複合ビルの構造と規模はS造地下1階地上12階建て延べ約7万6500平方メートル。百貨店やオフィスが入るほか、駐車場も整備する。設計と施工は鹿島が担当している。

 ヨドバシHDは、現在のヨドバシ仙台第2ビルを仙台駅東口での1期工事と位置付けている。今回の開発計画は2期計画として進めている。

2021年1月26日火曜日

【回転窓】憂いを拭い将来に希望を

  1月も終わりに近づき、進学する学校が決まる入学試験も本番の時期を迎えている。受験生を抱える家庭は期待よりも不安が大きくなり、落ち着かない日々を過ごしているだろう▼国公立大学では25日に2次試験の願書受け付けが始まった。国立大82校と公立大90校で計約9万8000人を募集。共通テストの結果を踏まえて、どこの大学、学部を選択するのか多くの受験生が選択を迫られている▼コロナ禍に踊らされる今年の受験。共通テストの成績などで合否を判定する大学もある。横浜国立大学は昨年7月時点で2次試験の中止を公表していたが、緊急事態宣言の再発令を受け宇都宮大学が2次試験を中止すると発表。他の大学も一部の学部などで中止や試験時間の変更、短縮といった措置を講じるそうだ▼学歴だけで将来が決まるわけではないが、それでもコロナ禍という難事の渦に巻き込まれてしまう多くの若い人たち。ことあるたびに「仮定の事は私からは控える」と答えてしまう方もいるようだが、今こそ将来の憂いを拭う策が必要ではないか▼困難を乗り越えて希望が抱ける春を迎えてほしい。頑張れ受験生。

【看板警告で逆走防止】JFE建材、高速道路向け逆走防止表示板を発売

 JFE建材が高速道路向けに開発した逆走防止表示板「プレッシャーウォール」の販売が堅調だ。赤色を基調としたパネル8枚が1セットで、道路の逆走を防止したい場所の両側に4枚ずつ設置する。

 逆走車のドライバーはパネルが立ちはだかる壁のように見える。順行方向は目立たないようパネルの設置角度を工夫している。

 2019年11月の徳島自動車道・松茂スマートICを皮切りに、これまでに全国の高速道路のSA・PAを中心に12カ所で設置が完了している。年度内に24カ所で設置される予定。「設置後の存在感は圧倒的で、逆走車ゼロに向けた有効な対策と現場から大変好評を得ている」(同社)という。

 高速道路で過去に逆走が発生した場所などをターゲットに設置を提案していく。道の駅など逆走が発生しそうな場所もターゲット。プレッシャーウォールなどの販売で道路の安全方向に貢献していく。

【防災性の向上など視野に】東京・新宿区、ゴールデン街地区の街づくりを検討

 東京・新宿区は「新宿ゴールデン街地区まちづくり支援業務」の委託先を決める公募型プロポーザルを25日に公告した。参加申請を2月5日、企画提案書は同16日まで受け付ける。

 担当は新宿駅周辺整備担当部新宿駅周辺まちづくり担当課。プレゼンテーションを経て3月23日に結果を通知する。

 参加資格は2010年度以降に、類似業務の受託実績があることなど。契約の上限額(税込み)は496万1000円。

 新宿ゴールデン街は歌舞伎町1丁目にある約0・8ヘクタールのエリア。西武新宿駅の東側に位置する。昭和の歴史や雰囲気を残す飲食店が多く、観光地として注目されている。ただ地区内には木造建築物や狭い道路が多く防災性に課題を抱える。

 区は17年1月に「新宿ゴールデン街まちづくり協議会」を設立し、地元と協働の街づくりに取り組んでいる。18年7月には協議会が「新宿ゴールデン街まちの将来像」を策定。街の風情を守りつつ、防災性の向上に向けた街づくりを進める方針を示した。

 業務では地区の現状把握や、地区計画をはじめとする街づくりルールの策定支援などを任せる。履行期間は22年3月16日まで。履行状況に応じて最長で23年度まで、2回の随意契約を結ぶ。

【開館時期は2028年度末ごろ】新国立公文書館整備(東京都永田町)、埋蔵文化財調査で開館時期延期

 内閣府は、東京・永田町にある国会議事堂の前庭で整備を計画する新国立公文書館の開館を延期する。

 実施設計を進める中で、改築する憲政記念館の地下を試掘したところ、大規模な埋蔵文化財調査が必要なことが判明した。2026年度としていた開館を28年度末ごろに変更する。当初建設工事は21年度の着手を予定していたが、調査を待って発注手続きを開始することになるという。実施設計は日建設計が行っている。

 新国立公文書館の計画地は東京都千代田区永田町1の1の1。約5・5ヘクタールの憲政記念館の敷地に、憲政記念館との合築施設を整備する。建物は地下4階地上3階建て延べ約4・2万平方メートル。新国立公文書館は約3万平方メートルで、そのうち書庫が8000平方メートル。憲政記念館は約6000~7000平方メートルで、地下の一部に駐車場を設ける。工事費は約490億円。設計・施工を約8年と見込み、21年度の着工を目指していた。

 井上信治公文書管理担当相が22日の記者会見で「(開館が)最大で2年程度後ろ倒しになる」と表明した。これまで憲政記念館周辺の地盤調査は行っていたが、既存施設の直下を調査したところ深い部分の詳細な調査が必要と判断した。

 現在の国立公文書館は東京・北の丸公園に本館、分館が茨城県つくば市にある。本館は1971年の開館で老朽化に伴い、建て替えることになった。新国立公文書館の整備に伴い、工事期間中の代替施設を設ける。

【記者手帖】変化を前向きに

  昨年9月、長年勤めた大阪支社から東京本社に異動となり、初めてゼネコンの取材を担当することになった。訪れた大きな変化を前向きに捉えいろいろな挑戦をしたい。紙面掲載が続いている新春社長インタビューは、経営トップの生の声が聞ける絶好の機会だ◆真っ先に挙がる話題はやはり新型コロナウイルス。異口同音に「建設業への影響は軽微」と話す一方で、受注競争の激化を懸念する声が多かった。「技術を磨き競争力を高めて難局を乗り切る」。現状を悲観せず変化に挑む姿勢が印象に残った◆キーワードの一つがDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。ICT(情報通信技術)を駆使した生産性向上や働き方改革を柱に掲げる。ロボット化や自動化などで建設現場の働き方改革を加速しようとしている。それが若者を引き付ける鍵にもなる。担い手不足の中で、トップからは「建設業を魅力的な産業にしたい」という思いが伝わってきた◆巣ごもりの年末休暇。たまったインタビューの原稿執筆に追われた。パソコンの画面に並ぶ「働き方改革」という文字。心のどこかで人工知能(AI)記者の開発を望む自分がいた。(大)

2021年1月25日月曜日

【回転窓】できた?より良い復興

  2015年3月に仙台市で開かれた国連防災世界会議で採択された仙台防災枠組にある「Build Back Better」。東日本大震災を教訓に、より良い復興を目指す考え方の一つとして取り入れられた▼「BBB」と略されるこの言葉は今、世界各地で飛び交う。国連のグテレス事務総長は、新型コロナウイルス感染症の世界的な危機からの復興への呼び掛けに引用。米国のバイデン新大統領は「よりよき再建」を掲げた新政権移行チームのウェブサイトのURLに用いた▼この枠組みはBBBとともに、被害を少なくする事前防災や社会全体の協力などを求めている。内容を巡っては会議の開催以前から国際協力機構(JICA)や外務省の関係者が調整に奔走した▼関係機関との事前交渉と粘り強い説得、全員参加で文章を練り上げる仕組みが奏功。BBBをはじめ防災・減災に関する日本の常識は、国連採択として世界の常識になった▼未曽有の被害が出た震災から10年を迎えようとしている。原発事故など正解の模索が続く問題はまだまだある中でも、成し遂げられたより良い復興は何か。しっかり見つめ直したい。

【溶接にどハマリ!】溶接協会、AKB48浜友菜さんの溶接挑戦に協力

 日本溶接協会(粟飯原周二会長)は、アイドルグループ・AKB48の浜友菜さんが溶接に挑戦した番組企画「はまちゃんの溶接道」の動画配信が始まったと発表した。

 浜さんは趣味で溶接を始め、アーク溶接等特別教育を受講・修了。動画ではさまざまな溶接にチャレンジする様子や、協力した同協会の活動を紹介している。

 昨年11月にCSテレ朝チャンネル1の「AKB48チーム8のあんた、ロケロケ! ターボ」で放送されたコーナーのリメーク版。同協会ホームページに放送の取材リポートを掲載したところ閲覧希望が寄せられ、番組制作会社らの協力を得て特別編動画の配信が実現。AKB48公式ユーチューブチャンネルで配信中だ。

 同協会マイスター認定者であるコベルコ溶接テクノの金子和之さんが指導。バスケットボールのケース製作などに挑戦して見事成功した。「センスと溶接の好きさがわれわれに突き刺さってきた」と金子さん。浜さんは「きれいな溶接ができるよう頑張りたい」と笑顔で語った。

【東京都、暫定施設の設計着手】晴海客船ターミナル跡地暫定施設基本設計(中央区)、梓設計に

 東京都は、解体が決まっている「晴海客船ターミナル」(中央区)の跡地に整備する暫定施設の基本設計に入る。都財務局が「令和2年度晴海客船ターミナル暫定施設新築基本設計」の希望制指名競争入札を21日に開札し、委託先を梓設計に決めた。

 落札額は170万円(予定価格2705万3000円)。暫定施設の規模はS造2階建て延べ3800平方メートル程度、基礎形式は直接基礎を想定している。基本設計の履行期間は10月1日まで。

 東京港の客船ターミナル機能は、昨年9月に開業した「東京国際クルーズターミナル」(江東区)に移っている。ただ同ターミナルに2バース目が増設されるまで、晴海客船ターミナルでも客船の受け入れを続ける必要がある。既存施設は老朽化が激しいため早期に解体し、暫定的な受け入れ施設を設けることにした。

 既存施設の解体に当たって、都港湾局は「令和2年度晴海客船ターミナル解体その他実施設計」をイナバ建築設計事務所に委託している。委託額は750万円。履行期間は6月9日まで。解体工事は今夏の東京五輪・パラリンピック後に着手し、2022年度に終える。2バース目の供用開始以降は晴海ふ頭の客船受け入れ機能を廃止し、跡地を緑地とする予定。

【凜】千葉県県土整備部道路整備課・来栖敬真さん

  ◇大事故を経験し成長の糧に◇

 千葉県庁に入庁したのは2009年。土木系の女性職員が増え始めた最初の世代だった。初めて配属されたのは銚子整備事務所。周りは40~50代の男性ばかりで土木系女性職員は1人、新人が配属になったのは約10年ぶりという状況だった。2年目から銚子大橋の架け替え工事に携わった。

 未経験の中で大きな事業に携われたが、今でも苦い記憶として心に残っているのは、11年9月に起こった工事中の事故だ。撤去中だった古い橋桁が突如、川に落下した。3年目にして担当工事で事故が発生。労働基準監督署への状況説明に追われる中、「これからどうなってしまうのか」と不安が渦巻いた。原因は受注者の施工手順ミスだった。

 インフラ整備は社会に大きな影響を与える仕事。一瞬でも気を抜けないと心に刻むきっかけになった。事故で学んだのは「受注者が年上ばかりで指示が出しづらくても、言うべきことはしっかりと言う」こと。道路環境課で県道の維持管理を担当していた時、維持管理の重要性を予算折衝で訴え除草予算の増額という成果も出した。

 同僚の誰もが認める職場のムードメーカー。「子どもができてもインフラ整備に携わる一人の女性として一生懸命働きたい」と土木職一筋を志す。趣味はバスケットBリーグの観戦。休日にはブースターとして夫とアリーナに通い、お気に入りチームを応援する。

 (県道班副主査、くるす・よしみ)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】YDKテクノロジーズ「社名変更で一新、安全面を重視」

 昨年10月に社名を「横河電子機器」からYDKテクノロジーズに変更したタイミングでユニホームも一新した。ブルゾンと帽子、背中の3カ所に入る新しい社名ロゴの刺しゅうが特徴。電子機器メーカーのため、静電気抑制加工された生地を採用した。

 安全面を最重要視し、全てのボタンとチャックが表に出ないデザインにすることで製品を傷付けないよう配慮した。

 スポーティーでスリムなデザインをベースに、タックを背中に入れ、裾をゴム仕様にすることで動きやすくスタイルが良く見えるように工夫した。ブルゾンはコーポレートカラーの緑と相性が良く清潔感のある紺色とシルバーグレーのバイカラー。スラックスは紺色にして汚れが目立ちにくくなった。

 ポケットは従来の作業着から数を増やし、携帯電話や手帳などを入れられるようにして機能性を高めた。中身が落ちにくく、異物が混入しにくい工夫も施している。

 「取引先から『すてきな作業服ですね』と声を掛けられる機会も多い」(開発担当者)という。現場の社員は「社名とともに作業服が新しくなり、新鮮な気持ちになった」と話している。

【駆け出しのころ】八千代エンジニヤリング取締役専務執行役員・水野高志氏

  ◇自分の色を仕事に残す◇

 大きなものを造ることに興味を持ち、土木の世界を志しました。いろいろな立ち位置で事業に携われる建設コンサルタントは自分に合っていると感じ、八千代エンジニヤリングへの入社を決めました。入社当時は鹿島の石川六郎社長が当社の会長を務めており、「君たちも会社を代表する一人なのだから、バッジ(社章)を付けて責任ある行動を取りなさい」と訓示を受けたのを覚えています。

 1年目は構造関係の部署で軟弱地盤対策に携わりました。会社から霞ケ浦の現場まで車で片道3時間の道のりを、傾斜計など大型の精密機械を抱えながらの移動は正直つらかったです。

 当時の上司の指導方針は「つまらない仕事は俺がやるから、それ以外の(難しく、面白い)仕事を担当してくれ」。個性的な方で周りには煙たがる人もいましたが、自分が成長する上では大変ありがたかったです。

 2年目の終わりごろから1年半ほど鹿島の土木設計本部に出向しました。若いうちに自社とは異なる会社の内情を間近で見られたのはいい経験となり、特に同期の競争意識の高さには刺激を受けました。

 当社に戻ってから4年間は、首都高速湾岸線の鶴見つばさ橋(下部構造)の設計・解析業務を担当。道路橋示方書の適用外のため、エンジニア側で検証しながら個別に仕様を固めていくスペックレスの業務を、専念して取り組めたのは大きな経験となりました。

 入社10年目ごろから河川管理に関する業務に関わりました。河川内での工作物の設置許可基準を明文化する業務では、現地調査を行いながら欧米の考え方なども整理した上で、日本の基準の在り方を検討。続いて河川管理施設等構造令の改正に向けた検討にも関わりました。政令・省令関係の仕事は大変でしたが、限られた人しか担当できない仕事であり、やりきった時の達成感は格別でした。

 2000年ごろから希望して担当したPFI関連の仕事は、最適な事業スキームを自ら組み立てる面白さがあります。橋梁やダム分野のPFI案件の具体化にも取り組みましたが、日本では土木構造物の新規案件への導入は難しいと判断。アセットマネジメント業務を行いながらメンテナンス分野でPFI事業参入を模索しました。最初のころは社内でも旧来の慣習ややり方を変えるPFIに批判的な声もありましたが、今では主要の事業領域として認知されています。

 自分なりの色が仕事に残ることにやりがいを感じます。他の人と同じことを自分がやらなくてもいいのではと考えることもあり、やはり任された仕事には自分の足跡を残したい。若い人たちも自分の意見や考えを大切にし、仕事にプライドを持って感動を味わってほしいです。

入社6年目、出勤前の自宅玄関で

 (みずの・たかし)1981年信州大学工学部土木工学科卒、八千代エンジニヤリング入社。技術推進本部長や八千代グリーンエナジー取締役(現任)を経て2018年から現職(取締役専務執行役員技術管理本部長)。北海道出身、61歳。

2021年1月21日木曜日

【回転窓】脱プラのいま

 全国の小売店で有料化が義務付けられたプラスチック製レジ袋。最近はエコバッグを持参する人や商品を手で持ち帰る人の姿をよく目にする。建設現場で働く職人のコンビニ利用率が高いことから、あるゼネコンの協力会では環境対策の一環でエコバッグを配布したという▼環境省のウェブ調査によると、レジ袋の受け取りを辞退する人の割合が昨年3月時点の約3割から11月には7割超に増加。年末までに辞退率6割を目指した同省の予想以上に、消費者の意識変革が進んでいるようだ▼一昨年の20カ国・地域(G20)首脳会議で2050年までに、海洋プラごみの新たな汚染をゼロにする目標を掲げたビジョンを明示。廃プラ削減に向けた取り組みが多方面で活発化している▼建設6団体副産物対策協議会らは、海洋プラごみの問題や廃プラのリサイクル意識向上を図るためのポスターを作製。地球規模で深刻化する環境汚染に対し、業界全体で取り組みを後押しする▼「カメは万年 プラは何年?」と書かれたポスターでは、海中でプラごみを見つめるウミガメが印象的。海に囲まれたわが国が果たすべき役割は小さくない。

【事業費3000億円、JR東が着工準備へ】羽田空港アクセス線整備、国交省が事業認可

 JR東日本は整備を計画する「(仮称)羽田空港アクセス線」の詳細設計に着手する。

 同線のうち新線として整備する東京貨物ターミナル(東京都品川区)~羽田空港(大田区)間の「アクセス新線」が、20日付で国土交通省から鉄道事業法に基づく第一種鉄道事業として許可された。着工準備を進める。

 現在東京都の環境影響評価(環境アセス)条例に基づく手続きを実施中。環境アセスは2022年度に完了する見通し。同年度ごろの着工を目指す。

 羽田空港アクセス線は東京都心部と羽田空港を結ぶ新路線。東山手ルートとして、JR田町駅付近(港区)から東京貨物ターミナルまでを既存線路の改良区間とし、東京貨物ターミナルから羽田空港までを新線として整備する。延長は東山手ルート約7・4キロ、アクセス新線約5・0キロ。既存路線の移設、大汐線改修、開削・シールド工事などを行う。

 東海道新幹線をくぐりアクセス新線はほぼ全線がシールドトンネルになるなど「難度の高い工事になる」(建設工事部幹部)という。車両を除く事業費は3000億円。開業は29年度を予定している。

 着工には環境アセス手続きに加えて、施設変更や施工などの許認可が必要となる。これまで概略設計を進めていた。

 JR東日本は東山手ルート以外に、JR大崎駅(品川区)方面の「西山手ルート」、りんかい線・東京テレポート駅(江東区)方面の「臨海部ルート」も計画している。

2021年1月20日水曜日

【回転窓】太宰の自宅を再現

 『人間失格』や『走れメロス』などを書いた無頼派の代表作家、太宰治は食べ物に貪欲だったという。大食漢ぶりは親族や友人たちが数多く書き残している▼三宅島へ一緒に旅行した作家の浅見淵は「食事の時に人目をかすめてみそ汁を6杯も飲んでいた」(昭和文壇側面史)。妻の津島美知子は「客が持参したサケ1匹を全部1人で食べてしまった」(回想の太宰治)▼友人の檀一雄は「飲んだ後、毛ガニを夜店で買って歩きながら手でむしって、むしゃむしゃ食べていた」。いずれも嵐山光三郎氏の『文人悪食』(新潮文庫)から引いた▼身長175センチ。当時としては大柄だった太宰がむさぼるように食べ、浴びるように酒を飲む。その姿は豪快だったに違いない。旺盛な食欲と自殺未遂を繰り返す行動は相反すようにも見えるが、生きることの証として食のこだわりがあったのかもしれない▼JR三鷹駅前の市美術ギャラリー内に太宰の自宅の一部を再現した展示室「三鷹の此の小さな家」が設置された。直筆の原稿や絵画、家族写真などが展示されている。太宰とはどんな人だったのか。一度のぞいて人柄に触れてはどうか。

【横浜を空中散歩】泉陽興業のMM21地区ロープウエー、ゴンドラがお目見え

 遊園地の建設や運営などを手掛ける泉陽興業(大阪市浪速区、山田勇作社長)が横浜市の西区と中区にまたがるみなとみらい(MM)21地区に建設しているロープウエー「YOKOHAMA AIR CABIN」のゴンドラが18日、格納庫から発進し横浜の上空にお目見えした。2月中旬までに循環運転ができる体制を整える。3月下旬に国の完成検査を受け、合格すれば人を乗せた試運転を実施。開業は4月22日を予定している。

 ゴンドラは2020年12月中旬に現地へ搬入した。36台あり、現在は格納庫で空調装置や照明を調整している。18日は格納庫内の作業スペースを確保するため、作業が完了したゴンドラを外に出した。近くにある北仲通北第一公園(中区北仲通6の127)では、ゴンドラにスマートフォンを向け写真を撮る人もいた。ゴンドラはスイスのCWA製。設備は日本ケーブルが手掛けている。

 ロープウエーはJR桜木町駅と運河パーク(同新港2の1の2)の約630メートルを約5分で結ぶ。料金は大人1000円、子供500円。

【建設地は東北大青葉山新キャンパス】次世代放射光施設(仙台市青葉区)の愛称募集

次世代放射光施設の完成イメージ
(提供:光科学イノベーションセンター)

  量子科学技術研究開発機構と光科学イノベーションセンター(高田昌樹理事長)は、仙台市青葉区の東北大学青葉山新キャンパス内で昨年4月に着工した「次世代放射光施設」の愛称を募集する。施設はあらゆる物質を原子レベルで観察できる巨大な顕微鏡のような世界最先端の研究拠点となり、幅広い産業や学術の分野で活用が見込まれている。

 親しみやすい愛称を付けることにより、国内外の多くの人たちに同施設を知ってもらう狙いがある。応募は、機構のホームページに設けている専用フォームで3月31日午後5時まで受け付ける。

 施設は青葉山新キャンパスの南側約5万4600平方メートルを造成し、基本建屋として1周約350メートルのリング状の高輝度加速器を備えた蓄積リングやビームラインを収容する蓄積リング棟と、線型加速器を設置する長さ約150メートルのライナック棟の2棟を整備する。規模はS一部RC造地下1階一部2階建て総延べ2万5262平方メートル。加速器を格納するトンネルや床部がRC構造となる。設計は日建設計、施工は鹿島・橋本店JVが担当している。工事費は約110億円。

【天守修理など最優先に】香川県丸亀市、丸亀城の丸亀城跡保存活用計画案を策定

保存活用策を検討する丸亀城(提供:丸亀市)

  香川県丸亀市は19日に「史跡丸亀城跡保存活用計画案」(2021~30年度)を公表した。標高約66メートルの亀山に築かれた丸山城跡(一番丁)は平山城で、本丸と二の丸、三の丸、帯曲輪、山下曲輪などがある。東西約540メートル、南北約460メートルのうち内堀内の20万4756平方メートルが史跡範囲。現在、耐震診断を進めている天守(3層)の修理や、災害で崩落した箇所の復旧、三上曲輪(くるわ)の傷んだ石垣の保全、雨水排水施設整備などを最優先で取り組む。史跡の整備計画は21~23年度にかけてまとめる。

 保存活用計画案は城跡を適切に保存し、次世代に継承・活用するために策定した。史跡を継続的に調査し、発見された新しい価値を顕在化・活用する整備を段階的、計画的に進める方針。天守修理などのほか、史跡整備や遺構復元、遺構表示などは着手できるものから順次行う。

 天守修理に向けた耐震診断は文化財建造物保存技術協会(東京都荒川区)が本年度に着手。21年度中に完了する予定。今後、修理に向け文部科学省との協議に入る。

 石垣は27年度まで詳細に調査し24~30年度に修理を順次行う計画。文化財建造物の耐震対策も27年度まで実施。城全体の排水体系調査は24年度まで進め、石垣・遺構保存用雨水排水施設整備は21~25年度に行う予定だ。石垣の保全に必要な地盤の防水対策については24~30年度に進めていく。

【PFIで全天候型施設に】JSC、新秩父宮ラグビー場整備基本計画策定等支援業務を発注

  ◇関係者会議、全天候型を了承◇

 「ラグビーの聖地」の建て替え事業が本格化する。東京都港区にある「秩父宮ラグビー場」を巡り、スポーツ庁長官が主宰の関係者会議が、屋根などを備えた全天候型の施設に建て替える方向性を15日了承した。新施設整備に当たってはBT(建設・移管)+コンセッション(公共施設等運営権)方式のPFIを採用する方針だ。

 「ラグビーの振興に関する関係者会議」が、15日の会合で了承した内容によると、ラグビーにとどまらず他の競技やイベントでも使用できるよう、全天候型施設の整備を掲げた。民間事業者のノウハウを最大限活用した整備・運営のため、PFI方式を導入するとした。

 同日、日本スポーツ振興センター(JSC)は「新秩父宮ラグビー場整備事業基本計画策定等支援業務」の委託先を決める企画競争手続きを開始した。参加確認申請を持参か郵送、企画提案書は持参で2月12日まで財務部調達管財課で受け付ける。3月上旬に審査結果を通知する予定。履行期間は5月31日まで。

 秩父宮ラグビー場(北青山2の8の35)は、1947年に完成。ラグビーの国際試合や日本選手権の会場として、ファンに親しまれている。延べ2万1361平方メートルの規模で、約2万5000人収容する。秩父宮ラグビー場を含む「神宮外苑地区」(約28ヘクタール)では、三井不動産、明治神宮、JSC、伊藤忠商事の4者が再開発事業を計画している。

 昨年1月時点の計画によると、区域北側の明治神宮第二球場を解体した跡地に、23~26年初めにかけて新ラグビー場のフィールドや3面スタンドを建設。現ラグビー場跡地に新野球場を建設した後、現明治神宮野球場を解体し、32~33年半ばに新ラグビー場の南側スタンドを整備する。事業全体で、総延べ約55万平方メートルの施設群を建設する方針だ。

2021年1月19日火曜日

【回転窓】「全く指摘には当たらない」はご勘弁を

 第204通常国会が18日に召集された。2020年度第3次補正予算案や21年度予算案が審議され、同時に長期化する新型コロナウイルスへの対応と経済対策などで論戦が展開される▼10月に衆議院議員の任期満了が控え、解散・総選挙をにらんだ与野党の攻防が予想される。就任後初めての通常国会に臨む菅義偉首相だが、ここに来ての新聞各社などが行う調査で支持率は急落。これまで記者会見や国会答弁で多用してきた質問に正面から答えず、論点をずらす手法をとり続けるのだろうか▼政府が同日国会に提出した21年度予算案の一般会計総額は106兆6097億円。総額15兆4271億円の3次補正予算案と合わせて景気の下支えを狙う▼勢いが止まらない新型コロナの感染拡大。11都府県で緊急事態宣言を再発令し、政府は封じ込めに力を注ぐが先行きを見通すのは難しい。それでも事態を打開するかじを取り続けるのが国会と政府の使命▼国会の会期は6月16日までの150日間。開会を前に菅首相は政策実現に向け「国民のご理解をいただきたい」と話した。理解を得るためには何が必要なのか…。多くは語るまい。

【みんなのサッカー場をつくりたい】鎌倉インターナショナルFC、サッカー場整備へクラウドファンディング

  神奈川県鎌倉市のサッカークラブ「鎌倉インターナショナルFC」が、鎌倉市深沢地区で人工芝のサッカー場整備を計画している。

 建設費の一部をまかなうためのクラウドファンディングを2月23日まで実施。100×64メートルのピッチや観戦スタンドを設ける。少年サッカーの試合開催などを通じ、多世代・国際間交流を後押しする。

 プロジェクト名は「鎌倉みんなのスタジアム #(ハッシュタグ)鎌倉みんスタ」。市内には整備された芝生のサッカー場がなく、笛田公園(鎌倉市笛田3の30の1)にある土のグラウンドを練習や試合に使っている。同FCは深沢地区にサッカー場を整備すれば、3年間で約15・6万人の利用が見込め、約10億円の経済効果が期待できると試算している。

 2019年に市や建設会社、人工芝メーカーらと協議を開始した。コストは約1億円。スポンサーなどから出資を受けて約7000万円を確保した。残る3000万円をクラウドファンディングで集める。月内にも着工し今春のオープンを目指す。

 整備予定地は深沢地区土地区画整理事業の予定区域内。湘南モノレール湘南深沢駅に近接する。鉄道の車両基地や薬品工場があった場所。市は跡地に市庁舎や商業施設などの整備を計画している。21年度内に都市計画決定を終え、23年度には土地区画整理事業に着手したい考え。

 サッカー場は同事業が本格化するまでの暫定的な土地活用になる。鎌倉インターナショナルFCは四方健太郎氏らが18年に立ち上げた。神奈川県社会人リーグに所属している。

【暮らしを守る地下貯留施設や技術紹介】大豊建設、コンセプト動画と特設サイト公開

 大豊建設は、都市型水害から命と暮らしを守る地下貯留施設「アンダー・リバー」を紹介する特設サイトとコンセプト動画を公開した。水害対策の必要性とともに、泥土加圧シールド工法など東京の複雑な地下を掘り進める独自技術を紹介している。

 タイトルは「UNDER RIVER STORY~東京地下30mに現れる幻の川~」。特設サイトは普段見ることができない地下貯留施設の写真を背景に、直径6mの巨大な地下空間を体験するような構成とした。

 気候変動に伴う集中豪雨が増加傾向にある中、大都市の地下に構築する雨水貯留施設が果たす役割などを紹介。技術コーナーでは同社が得意とするニューマチックケーソン技術やシールド推進技術などを解説している。サイト内のコンセプト動画は、都市を守る地下貯留施設とそれを支える技術を1分間で分かりやすくまとめた。

【記者手帖】歴史を紡ぐ街・横浜

  みなとみらい21地区や中華街など多彩な魅力であふれる横浜は、大学時代によく遊んだ街。記者の仕事に就き昨年から神奈川県の担当になってから、頻繁に足を運ぶようになった。建設専門紙の記者という視点で改めて見ると、過去には気付かなかった街づくりの特徴が浮かび上がる◆何度も歩いた遊歩道「山下臨港プロムナード」が臨港鉄道の高架を再利用したと最近知った。JR横浜駅から北東に延びる「東横フラワー緑道」も廃線跡。緑道内にある高島山トンネルは大正時代に掘られ、実は長い歴史を持っている◆商業施設「横浜赤レンガ倉庫」は明治、大正時代に建設された港湾倉庫の再利用。大学時代、当時付き合っていた女性と一緒に訪れ、アクセサリー店でおそろいの指輪を買った。指輪は複数回の引っ越しの中で失われ、今はどこにあるか分からない◆街のルーツを見つめ直し、先人の遺産を積極的に生かす街づくりが、唯一無二の魅力に満ちた港町・横浜につながったと感じる。次はどんな歴史を紡いでいくだろうか。旧市庁舎の再開発計画からも目が離せない。期待を胸にきょうも電車を降り、思い出の街に繰り出す。(紀)

2021年1月18日月曜日

【回転窓】使われてこそ価値をつなげる

  今からおよそ1世紀前の1908年、北海道函館市に建てられた「旧ロシア領事館」。函館の異国情緒あふれるレトロな街並みの中でも代表的な建造物の一つで、国内に唯一残る旧ロシア帝国時代の貴重な建築でもある▼赤いれんがと白いしっくいのモダンな外観に目を引かれた観光客も多かろう。64年に市の所有となり、宿泊研修施設「道南青年の家」として開放された。89年には市の景観形成指定建築物にも指定されている▼市民に惜しまれつつ96年に閉鎖。これ以降、活用方法を見いだそうと検討されてきたが、厳しい財政状況から結論に至らなかった。この間も老朽化は進み、補修や改修の費用が膨らんだ結果、市は街の大切な資産を民間に売却する道を選んだ▼市民や建築界からは価値喪失を危ぶむ声が上がり、保存活用に向けた要望活動が起こったものの、財政面も含め現実的な活用策は提出されなかった。市は景観形成指定建築物の維持を条件にプロポーザル方式で提案を募り、2月に売却先を決める方針だ▼建築は使われてこそ価値を継承していける。歴史的建造物を活用できる理解ある買い手を探し出してほしい。

【施工は大成建設、2023年春開業目指す】阿蘇くまもと空港新ターミナルビル(熊本県益城町)が着工

  熊本国際空港(熊本県益城町、新原昇平社長)は15日、熊本県益城町にある阿蘇くまもと空港で、新旅客ターミナルビルの建設に着手し、同日起工式を開いたと発表した。

 同空港のコンセッション(公共施設等運営権)事業「熊本空港特定運営事業等」の関連プロジェクト。延べ約3・8万平方メートルの施設を建てる。設計は日建設計・梓設計JV。大成建設の施工で2023年春の開業を目指す。

 S造4階建て延べ3万7500平方メートル規模の新旅客ターミナルビルは、国内線と国際線フロアが一体となった構造となる。搭乗直前まで買い物や食事などを楽しめる商業施設を、既存から大幅に拡大する。電源や通信、給排水などのライフラインの強化をすることで、災害時も空港の機能を確保できるようにする。

 人工知能(AI)カメラによる動線の解析や搭乗プロセスを迅速化する最新技術の導入など、DX(デジタルトランスフォーメーション)に配慮した機能を備える。新旅客ターミナルビルの完成後には広場の整備も計画。交流人口の増加を促す、開かれた交通拠点の形成を目指す。

 空港のコンセッションを巡っては、国土交通省が三井不動産を代表とするコンソーシアムを事業者に選定。コンソーシアムが設立した熊本国際空港による空港運営が20年4月1日に始まった。

【凜】共同エンジニアリングプラント事業部・小倉名都子さん

 ◇海外でリーダーめざす◇

 初めての受注は足で稼いだ。梅雨時の蒸し暑い6月。汗を拭いながら神奈川県にある倉庫街をひたすら歩いた。最寄り駅から約30分後に営業先へ到着。歩いて来たと伝えると驚かれた。通常はバスで向かう場所だった。「ネットで調べたら最寄り駅から10~15分とあったので歩いたが、倍かかってしまった」。徒歩の時間だと思い込んでいた。

 建設業に特化した人材派遣会社に、営業職として2019年4月に新卒入社した。初受注を決めた商談は「すごく緊張したのは覚えている」。ただ、相手の話を丁寧に聞くことは忘れなかった。ニーズを把握し、施工管理者を現場に派遣した。

 入社当初は主に都心で飛び込み営業をしていたが、受け付けで断られ続けた。考えた末に作戦を変更。東京近郊にあるプラント工場の協力会社棟に営業をかけた。するとその場で本社や支店の人材管理担当者を紹介してくれるケースが多く、受注率も上がった。

 大学時代は英語の勉強に熱中し海外留学も経験。就職活動では当初貿易事務を目指したが、改めて自分の強みを自問自答すると「英語以外何も出てこなかった」という。「英語から一度離れてみるのも良いかも」と、留学で培ったコミュニケーション力を生かせる営業職への挑戦を決めた。

 どちらかと言えばインドア派。休日は語学学習も兼ね、家で海外ドラマや映画を楽しむ。将来は海外で「リーダーとして仕事をする」のが目標だ。

 (東京営業所営業、おぐら・なつこ)

【中堅世代】それぞれの建設業・275

自然の力を前に無力さを感じることもある。それでも…

 ◇1人でも多く津波から救えたら◇

  海に面した自治体で土木職として防潮堤のかさ上げに携わる眞嶋和さん(仮名)には忘れられない記憶がある。2011年に災害派遣で訪れた東北の光景だ。被災地で災害復旧に携わった経験は、仕事との向き合い方を根本から変えることになった。

 バンド活動に明け暮れていた高校時代。ある日、インターンシップ(就業体験)で自治体の土木事務所を訪問した。公用車で管内を回った時、職員が話していた「自分が担当した道路や橋を通るとやりがいを感じる」という言葉が心に残り、公務員を志すきっかけになった。

 猛勉強の末、試験に合格。高校卒業と同時に自治体へ就職した。最初の配属先は漁港整備を所管する事務所。土木用語はもちろん、書類のとじ方すら分からない状態でいきなり、漁港内の舗装工事を任された。夜遅くまで図面や設計書を相手に悪戦苦闘する日々。だが2~3年たつと仕事に余裕が生まれ、地元の人とも打ち解けて話せるようになった。

 海沿いの別の土木事務所で働いていた11年3月に東日本大震災が発生した。本庁は災害派遣を決定。眞嶋さんの県も津波の襲来が予想されており、「自分たちの番になった時のため、絶対に見ておきたい」という思いで志願した。

 6月に現地へ入ると、海水や油の匂いが充満していた。市街地は津波で流されて跡形も無く、がれきが散乱していた。海沿いに立って内陸を見ると、山の裾野まで見渡せた。「こんなことが現実に起こるのかとショックだった」と振り返る。

 眞嶋さんらはビジネスホテルから現地の自治体の庁舎に通い、被災した防波堤の災害査定に対応した。防波堤は付け根から無くなっていたため、原型復旧は全くの手探り状態。古い図面を参考に復旧費用を算定した。「日ごろの港湾台帳の整備や、こまめな写真撮影の重要さを痛感した」と話す。派遣は8月までの予定だったが、国の査定官が来る9月上旬まで滞在を延ばし、査定を受けてから現地を離れた。

 5年後の16年に出張で再訪する機会があった。共に働いた現地の職員らと再会。自分が担当した防波堤を見に行くと立派に出来上がっていた。「自分のやったことが今につながっている」。ぐっと熱い思いがこみ上げてきた。交流は今も続き周囲には現地の人と結婚した職員もいる。

 現在は高校時代にインターンシップで訪れた土木事務所に在籍し、防潮堤のかさ上げ事業を担当している。被災地を思い返し「何を作っても同じだと感じた。津波は物では防ぎ切れない」という無力感を覚えることもある眞嶋さん。だが波高が比較的低いとされる第1波を防ぎ、住民が逃げる時間を確保する効果はある。「県民を守るという意識を念頭に仕事をしている。常に頭にあるといえばうそになるけれど」と笑う。「自分が作った堤防や護岸で1人でも多く救えたら」。使命感を胸に秘め今日も仕事と誠実に向き合う。

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】国土交通省北海道開発局足寄道路事務所「そろいポロシャツで一体感」

  若手職員の「イベント時におそろいで着られるTシャツをつくりませんか」という提案から、令和元年の記念として昨年度に公務でも着用できるクールビズ用のポロシャツを製作。その姿を見た受注者から問い合わせが多かったため、本年度は事務所所管工事の受注者らで構成する「足寄道路事務所工事安全連絡協議会」も加わり着用している。

 足寄道路事務所の蛯澤秀則所長は「コロナ禍で何かと制約が多く、モチベーションの向上と、受発注者一丸となって前向きに取り組むという思いで製作した」と話す。左胸と背中に入る「チームAshido2020」のロゴマークは、外国人でも分かるように「足道」をローマ字で表記し、おしゃれ感も演出。足寄町名産のラワン蕗(ふき)のイラストを入れるなど、すべて職員がデザインした完全オリジナルだ。

 受発注者の打ち合わせはもちろん、協議会の活動や現場見学会などの地域貢献活動でも着用。「おそろいのポロシャツでワンチームとして各種活動を行うことで、単独ではできなかった規模の活動ができた」「職場の思い出にもなり、一体感が生まれ、気持ちも高まった」と職員や協議会メンバーにも好評だ。

【駆け出しのころ】佐藤工業取締役執行役員建築事業本部長・勝山正昭氏

 ◇萎縮せず何事にも挑戦を◇

 大学で建築を学ぶ中で自分には意匠・設計より構造・施工系の方が向いていると考え、コンクリート施工系の研究室に進みました。佐藤工業に入社して配属されたのは東京支店。当時の新卒の研修方針として、入社式の翌日に支店の入店式が行われ、式典が終わった当日の午前10時には作業服に着替えて現場に出ていました。

 最初の現場は東京・日本橋にある信用金庫本店の事務所ビル。現場で地下水対策(ディープウェル)の作業をしていた60代の協力業者の方が、右も左も分からない新人監督に敬語を使い、丁寧な口調で話されたことに驚きました。建設現場で働いている人たちはみんな気性が荒いと思い込んでいたため、逆の意味でカルチャーショックを受けたのを覚えています。

 1年目はひたすら現場に出て躯体・仕上げ墨出しの毎日。忙しくなると一人で作業することも多くなり、いかに効率良くできるかを自分なりに考えながら工夫しました。酒席で上司が話した「現場の作業を一通りやってみたら」の一言を真に受け、とびや左官などの仕事も職人さんと一緒にやらせてもらいました。

 実際にやってみないと分からない部分も多く、新たな気付きも多かったです。よく間違えたり、怒られたりしましたが、新人扱いされずにいろいろな仕事を任せてもらい非常に勉強になりました。

 最初の現場がとてもハードだったので、2年目に担当した短大の校舎の新築工事ではかなり苦労が減りました。現場作業が始まるまで余裕があったため、忙しくないことが逆にストレスになり軽い胃潰瘍になったのを覚えています。

 転機になった現場は、入社4年目ごろ躯体途中から配属された東京・八丁堀の事務所ビル。所長のほかは自分と土木系の契約社員一人という限られた人員の中、現場に入って2日後に所長がぎっくり腰で寝込んでしまいました。現場はうまく進んでおらず、協力業者の方々も困っており、何も分からない状況で自分が詳細工程表を作り、現場を進めなければなりませんでした。

 「このまま放っておいたら現場が大変なことになる」と感じた職長たちが話し合い、来たばかりの若い監督を何とか盛り立てて現場をうまく動かそうと一致団結。職人たちと早く打ち解けるようにと、私の歓迎会を開いてくれました。現場のすべてをコントロールして工程表を作成した経験はなく、これまで以上に真剣に取り組み、動けない所長に電話であれこれ確認しながら、時には職人の方々にもアドバイスを仰ぎ、所長が復帰するまでの約1カ月、何とか現場を回すことができました。

 技術者として目の前のことに真摯(しんし)に対応し、相手の話をきちんと聞くことを大切にしてきました。さまざまな壁にぶつかりましたが、若い人たちには萎縮せず何事にも挑戦し、思い切って仕事をしてもらいたいです。

入社6年目、東京都内のマンション建設現場の現場事務所で

 (かつやま・まさあき)1985年東京都立大学工学部建築工学科卒、佐藤工業入社。執行役員九州支店長、同建築事業本部長(現任)などを経て2020年9月から現職。長野県出身、60歳。

2021年1月14日木曜日

【事業協力者に三井不】新橋駅東口地区再開発(東京都港区)、準備組合移行へ検討加速

事業区域に含まれる新橋駅前ビル1号館

  東京都港区の新橋駅東口地区再開発協議会(加藤功時会長)が、再開発プロジェクトの実現に向けた検討を深めている。関係権利者の協議会加入率8割を目指しながら、再開発準備組合に移行。およそ2年後に事業の都市計画決定を受けたい考え。都市計画提案に向けた体制を整えるため、事業協力者として三井不動産を昨年選定した。

 事業の計画地はJR新橋駅の東側に位置する約1・7ヘクタール。1966年に竣工した複合ビル「新橋駅前ビル」などが含まれる。協議会には約7割の関係権利者が加入している。

 協議会は既に再開発コンサルタントとしてアール・アイ・エーが参画している。業務支援協力者は大成建設が務める。20年10月に事業協力者協定を結んだ三井不を加えた3社で、協議会の活動を支援する。

 事業実施に当たっては都市再生特別地区の適用を視野に入れている。新橋駅を挟んで西側では、「ニュー新橋ビル」周辺一帯を対象とした「新橋駅西口地区市街地再開発準備組合」が活動している。

【デザインや価格を重視】大建工業、「音」切り口に内装建材の需要開拓

  新型コロナウイルスによるテレワークや自宅滞在時間の増加などを背景に、音環境への関心が高まっている。防音対応が、騒音対策など不満という側面からだけではなく、快適な暮らしにおける大切な要素の一つとして認識されつつあるという。防音建材などを手掛けてきた大建工業は、ニューノーマル(新常態)を見据え、意匠性やコストなどを含めて改良や開発を進めている。

 同社は、住宅向けとして、音の響きすぎを抑制する吸音効果で話し声などを聞き取りやすくする天井材「クリアトーン」や音響調整用壁材「オトカベ」、床衝撃音の改善が可能な薄型タイプの防音床下地材、防音ドアなどを展開。公共・商業施設用には、オフィス空間を想定したデザインを取り入れた吸音パネル「OFF TONE(オフトーン)」や、天井用吸音パネル「KIN TONE(キントーン)」など幅広い製品を投入し、拡充を図ってきた。コストアップがハードルとなり、防音性能が求められるケース以外の一般層まで浸透が難しかったが、コロナ禍で状況が変わった。

天井用吸音パネルを採用した鹿児島厚生連病院
(鹿児島市、写真提供:大建工業)

 防音・音響仕様の相談を受け付けるために同社が東京と大阪に設置しているサウンドセンターへの毎月の問い合わせは、昨年4月以降、従前の約1・5倍の450件程度に増加。同社アメニティ事業部音響製品部の井上直人サウンドセンター長は「今まではピアノ演奏など音を出す部屋の音性能が問題だったが、コロナ禍でテレワークなどが増えて、一般の部屋でのニーズが顕在化した。お金をかけてでも対応したいという層が増えたと感じている」と話す。騒音抑制という課題解決型の比率が高いが、旅行などが難しくなった中でホームシアターを設置するなど楽しみに起因したニーズも高まっているという。

 音響製品部の柴田隆弘部長は、吸音機能整備の一般化が進むとの見方で、「今までの住宅よりも少し防音室に近い程度が求められる。リビングで仕事をする場合でも快適にできるよう音響設計し、それに見合う材料を作っていきたい」との方向性を示す。開発に当たっては、性能・価格とともに意匠性を重視するという。天井材には、接ぎ手部分が目立たないよう疑似目地のようなデザインを取り入れた製品を投入済みだ。新築住宅の施主に工務店から提案することで販売が伸びてきており、「天井を成功事例に広く展開したい」(柴田部長)と意欲を見せる。

 壁材も、吸音するための穴の大きさを小さくすることで、1メートル程度離れたら穴が目立たなくなるタイプなどを用意。柴田部長は「リモート会議時の見栄えも考えつつ、意匠性をさらに高めていきたい」と話す。

 オフィスなど非住宅分野でも傾向は同じだ。感染リスク軽減の観点からサテライトオフィスなどで個室へのニーズが高まっており、隣への音漏れ防止が求められるようになっている。医療施設の診察室で、患者のプライバシーの観点から防音性能を高めたり、吸音性能を向上することで小さな声で話しやすくしたりするようなニーズもあり、さらなる掘り起こしを狙う。

 学校や保育園・幼稚園など教育施設での音対策も注目分野だ。子どもの聴覚や言語発達に音環境が与える影響への研究が進み、先行する海外に続く形で、国内でも音の響きの長さに対する推奨値が示されるなど動きが出ている。吸音性能を高めることで、ガヤガヤした状況が改善され、子どもや保育士のストレスの軽減にもつながる。少子化が進む中での学校施設の差別化戦略にも合致するとみており、積極的に提案していく方針だ。

天井に吸音パネルを導入した東京都目黒区の飲食店「FIVE TREE」
(写真提供:大建工業)

 2020年7月に、音響測定などを強みとする日本音響エンジニアリング(東京都墨田区、山梨忠志社長)と、武蔵野美術大学のソーシャルクリエイティブ研究所との3者で、共同研究を開始した。快適音空間の一般化や新規需要の創出などが狙いだ。動画による発信やリモート配信などを行う企業らが増えており、コストを抑えつつ使いやすく快適な音響空間を実現する「音響パッケージブース」の製品化を見据える。同大学にプロトタイプとなる初弾のブースを設置しており、残響時間の調査などを進めている段階だ。

 設計・建設段階から音環境がしっかりと整備されていれば、利用者によるクレームなどは起きず、追加対策によるコスト増を防ぐことが可能。柴田部長は「設計段階から本来あるべき姿を提案する形に持っていきたい。住宅とともに、今まで得意としてこなかった公共・商業建築で防音関係を提案していくことで新たな市場にチャレンジしていきたい」と話している。

2021年1月13日水曜日

【記者手帖】安心してライブ参加できる日は

 コンサートやライブが好きで、最低でも月1回の頻度で出掛けている。東京ドームなど数万人規模の会場から穴蔵のようなライブハウス、百貨店のイベントや野外フェスまで時間と予算が許す限り参戦する。地下アイドルからHR/HM(ハードロック・ヘヴィメタル)まで好みも無節操だ◆当然ながら新型コロナウイルスの影響ですべて自粛中。会場では絶叫するしシンガロングもある。立ち見席では観客が密集するモッシュやサークルも発生するし、最前列の圧縮は通勤電車の比ではない◆無観客での映像配信や座席指定で声援なしなど、主催者側もあの手この手で開催を試みる。映画と違いライブは一点もの。その時その瞬間を逃したら同じ景色は二度と見られない。アーティストにも旬があり、メンバーの脱退やグループの解散もある◆先週、緊急事態宣言が再発令された。心配なのは今月下旬から2月にかけて予定されているガールズ・メタル・ユニットの武道館公演。チケットは入手済み。果たして開催できるのか。安心して会場で大騒ぎできる日が待ち遠しい。(さ)

【こちら人事部】高松建設「積極性と熱意に期待」

 1917年に創業し、2017年10月に100周年を迎えた高松建設。景気に左右されず創業以来、黒字経営を続ける優良企業だ。

 単なる施設建設だけではなく、土地有効活用提案を主体にあらゆる建物の企画開発、設計、施工、管理一体型の事業を手掛ける。提案物件のすべてがオリジナルデザイン。自社の設計・施工比率は90%を超える。

 企業理念に「C&Cカンパニー」(consultant&construct company)を掲げる。100年以上の歴史の中で培ってきた技術力を駆使した施設建設に加え、土地活用を通じて顧客の悩みや課題を解決し、事業を成功に導くソリューション型企業を前面に打ち出す。企画商品がなく、営業、設計、工事と全部門が一体で作る顧客ニーズに合わせた建物が評価されている。

 同社の木内祥朗人事部長は「どの職種も人と接する機会が多く、特に対人能力が求められる」と話す。選考時は傾聴力や伝達力といったコミュニケーション能力に加え、自己主張でき、自ら進んで行動できる積極性を重視しているという。入社すれば取引額が億単位に及ぶ責任の重い仕事も任せられ、「早く自分の成長を実感したい」というマインドを持った人材も選考のポイントに挙げる。

 コロナ禍での採用活動を余儀なくされ、例年実施している対面のインターンシップ(就業体験)に加え、ウェブインターンシップも始めた。建設現場の映像をライブ配信しながら施工管理職の業務内容を説明し工程を体験してもらう。昨年8月から10月までに5回開催し、200人を超える学生の参加があった。木内部長は「ウェブインターンシップに対するニーズの高さが分かった。もっとウェブコンテンツを充実して応募人数を増やしたい」と初の試みに手応えを感じている。

 同社では入社3年目までに自立し業務に取り組めるよう研修制度を充実させている。新入社員は全職種共通で高松コンストラクショングループの研修を受けた後、高松建設単体の研修で社会の礼儀やマナーを習得。配属後はOJTに加え、職種別に随時研修を行い、業務遂行に必要な知識やスキルを身に付けてもらう。働きやすい職場づくりや悩みを解決するため、入社3カ月、6カ月、1年6カ月時に個人面談も実施する。

 施工管理職は1級建築施工管理技士の資格を取得し所長になることが当面の目標になる。外部講師を招いた研修会を開き、資格取得をサポートしている。

 木内部長は「就職活動中に多くのアドバイスをもらうと思うが、就職するのは自分自身だ。将来の仕事として何がしたいかを自ら決めた方がいい」と助言。やりたい仕事ができる数多くの会社がある中で、「なぜその1社に入りたいのかを自分で考えて結論が出せるよう、業界業種にとらわれず多くのインターンシップや説明会に参加してほしい。われわれも応援したい」とエールを送る。

  《新卒採用概要》

 【新卒採用者数】 男性97人(うち技術系66人)、女性30人(同17人)(19年度実績)

 【3年以内離職率】16%(17年度新卒)

 【平均年齢】   38・7歳(20年4月1日時点)

【鉄道遺構や土木技術の伝承を】JR東日本、高輪築堤の保存策を検討

  JR東日本が東京都港区で計画する「品川開発プロジェクト」の区域内で見つかった「高輪築堤」。近代日本の鉄道の歴史や土木技術を伝える遺構として、現地保存や移築を検討している。

 8日に現地で取材に応じた伊藤喜彦事業創造本部品川まちづくり部門担当部長は、築堤の調査を継続しつつ「(従前の計画通り)2024年度末の完成を目指していく」方針を示した。

 保存や移築の在り方は、有識者らで組織する「高輪築堤調査保存等検討委員会」(委員長・谷川章雄早稲田大学教授)を立ち上げて議論している。伊藤担当部長は「(建築物の敷地に)一部重なってくる部分がある。築堤のどこを現地保存するのかが、これからの重要な検討事項になる」と説明した。

 移築について伊藤担当部長は「石積みや地層の一つ一つを記録し、移築先でそのまま再現する手法が基本的」との考えを示した。現地での保存や移築先で公開展示などを通じ、「地域の歴史の価値向上に貢献したい」考えだ。

 JR東によると高輪築堤は、1872(明治5)年に国内初の鉄道路線として開業した新橋~横浜(現桜木町)区間の一部として整備された。当時海上だった場所に線路を通すため、石などで構造物を造った。延長は現在のJR田町駅北側から八ツ山橋付近までの約2・7キロ。

 2019年4月に品川駅改良工事の現場から石積みの一部が見つかった。同11月の品川駅付近の線路切り替え工事完了後にレールを撤去したところ、20年7月にも高輪築堤の一部とみられる遺構が出土した。

 これまで出土した部分の総延長は約770メートル。橋梁が架けられていた場所や、橋梁の下に陸地と海を行き来できる空間も見つかった。当時の海底部分には、土砂を防ぐ杭があった。出土箇所は点在しており、今後さらに調査が進めば、新たな遺構が見つかる可能性もあるという。

2021年1月8日金曜日

【回転窓】ESG経営への対応が問われる時

  新型コロナウイルスの感染拡大で、首都圏が再度の緊急事態宣言発令に追い込まれた。新規感染者数の最多更新が連日報じられる中、新春の日本列島は緊張感に包まれている▼建設業界は繁忙期となる年度末が近づく。人々の暮らしや経済を支える基盤を遅滞なく完成させることが最大の使命。安全や品質、工期などすべての期待に応える必要があり、かじ取りが難しい局面が続く▼コロナ禍以降、多くの産業にかつてないブレーキが掛かった。だが建設業は現場を動かすことで、裾野分野を含めて商流を維持している。結果的に雇用を守り、経済を下支えしている▼多くの苦悩が渦巻く状況下で声高に叫ぶことではないが、静かなる誇りを胸に刻んでおいても良いのではないだろうか。だからこそ、建設業界から感染拡大を招くような事態は防がなければならない▼現場の安全確保はESG(環境・社会・企業統治)経営の「S」の根幹をなす大事な点とアナリストが指摘していた。社会はもちろんのこと、企業活動を後押しする投資家も動向を注視している。現場は非常に苦しい。何とか乗り越えてほしいと願ってやまない。

【回転窓】暮らしを守る建設業

  今冬1番の寒波が襲来し、7日から9日にかけて北日本から西日本の日本海側を中心に、列島各地は大荒れの天気になる見通しという▼西高東低の気圧配置の影響で大雪になる可能性が高く気象庁などは厳重な警戒を呼び掛ける。昨年末に襲来した寒波は暴風や雪、高波などをもたらし列車の運休や飛行機の欠航が相次いだ。高速道路では雪の影響で車が立ち往生し自衛隊も出動して救援活動に当たった▼降雪地では建設会社が地域の守り手として除雪作業を担当するケースが多い。ただ極寒の中での作業は過酷で危険も伴う。人手不足は解消されておらずコスト的にも厳しい面がある▼国土交通省北海道開発局が除雪車の操作を自動化する実験を行っているそうだ。作業員の高齢化に加え後継者の確保も難しい状況を踏まえ、除雪のうち積もった雪を道路外に飛ばす投雪作業を自動化するため近く自動制御の実証実験に入るという▼人工知能(AI)やICT(情報通信技術)の高度化をどう活用するか、さまざまな産業が研究に力を注ぐ。建設産業も例外ではない。作業の自動化で暮らしを守る。一日も早い実用化を期待したい。

【維持改修や用途転換、解体決断も】岐路に立つ大規模建築物、東京都が老朽化対策に苦慮

  日本経済がバブル景気に沸いた1980年代末から90年代初め、東京都内に相次ぎ建設された大規模都有建築物の扱いが難しい局面を迎えている。老朽化が進む中、従来の用途を維持したまま改修するか、当初の役割を終えて別の道を選ぶか、判断が分かれている。用途転換などで将来的な利活用を模索することも増えているが、晴海客船ターミナル(中央区、91年竣工)のように施設解体を決断する事例も出てきた。

東京港のシンボル・晴海客船ターミナル(設計:竹山実氏)

 大規模都有建築物の建設時期はバブル期前後に集中している。この時期に都は「設計候補者選定委員会」による設計者選定方式を採用し、委員による推薦などで名だたる建築家を積極的に起用。独創性に富み、時には賛否両論を巻き起こす建築物を多く生み出した。バブル崩壊以降は都の財政悪化で建物の新築が原則凍結になり、2000年代に同委員会の選定実績は激減。「現在も制度は残っている」(都財務局関係者)ものの事実上、停止状態にある。

1993年竣工の江戸東京博物館(設計:菊竹清訓氏)

 建築家の菊竹清訓氏が設計を手掛けた江戸東京博物館(墨田区、1993年竣工)はその時期を象徴する建築物の一つだ。築30年が迫り、竣工以来初めての全面改修に乗り出す。基本設計を本年度に終え、2021、22年度に実施設計、改修工事を22~24年度に予定している。

 工事内容の詳細は未定だが、設備機器の更新や耐震改修も含まれる見通し。展示物を別の場所に原則移設する大掛かりな作業を想定している。所管部署の都生活文化局によると、改修後の維持管理を見据え「施設の行政ニーズに対する満足度、建築物の長寿命化、環境負荷の低減などを総合的に考慮し、最も適切な維持更新手法を検討している」という。

 葛西臨海水族園(江戸川区、1989年竣工)など従来の機能維持が困難と判断された建築物も少なくない。同水族園では隣接地に建設する新施設に機能をすべて移設する計画を進めている。既存施設はガラスドームと広場が特徴的で、意匠や景観も兼ね備えた建築作品として評価が高い。新施設の建設計画が明るみに出ると、建築界などから解体を危ぶむ声が挙がった。

 都が既存建物の利活用の検討を前倒しで行う方針に軌道修正したことで、谷口吉生氏が設計した名建築が保存される公算はより大きくなった。とはいえ、当初の役割を終えた建築物をどう生まれ変わらせるか、難問は残ったままだ。

 昨年9月に亡くなった竹山実氏の代表作として知られる晴海客船ターミナルも、新施設の「東京国際クルーズターミナル」に東京港の客船受け入れ機能が移ることから当初の役割を終える。用途転換などを検討することなく、今夏の東京五輪・パラリンピック後の解体が決まった。都港湾局の担当者は「埠頭(ふとう)用地に立地している。ホールなどがありイベント利用もされてきたが、埠頭として利用することが基本」と背景を説明する。

 東京国際クルーズターミナルに2バース目が増設されるまで、当面は客船の受け入れを続ける必要もあるが、老朽化の激しさから早期の解体に踏み切る。特にボーディングブリッジは何度もトラブルに見舞われ、早急な交換が必要とされる。このまま施設の修繕を続けるより、いったん解体して暫定的な受け入れ施設を設ける方がコスト面のメリットが大きいとの判断があった。

 東京五輪の選手村が隣接していることも決断を急がせた。五輪後に選手村が集合住宅に改修され、大勢の住民を迎えた後だと「工事の騒音や振動が問題になる」(担当者)と懸念。選手村の改修期間中に解体工事を済ませたいという事情がある。

東京辰巳国際水泳場は通年アイスリンクに生まれ変わる(設計:仙田満氏)

 既に用途転換が決まっている施設もある。仙田満氏(環境デザイン研究所)が設計した東京辰巳国際水泳場(江東区、93年竣工)は五輪後に都立施設で初めての通年アイスリンクに改修される。五輪会場の施設要件を満たす「東京アクアティクスセンター」の建設が決まった当初から、従来と異なる機能を持つスポーツ施設としての活用を検討。プールやアリーナとして運用する場合よりも都民ニーズやライフサイクルコストで優位性があると結論付けた。

 環境デザイン研究所に委託し、施設改修の基本設計が進行中。既存の建築物の良さを生かし、持続可能な形で新たな施設に生まれ変わることができれば貴重な先行事例となる。大規模都有建築物に一斉に訪れた更新時期の到来は、都内に残された大いなる財産の価値を再考する契機にもなりそうだ。

2021年1月5日火曜日

【回転窓】変容する福袋

  新年の風物詩である百貨店などの初売り。人気の福袋で客を呼び込み、冬のセールと合わせた大型商戦となるが、今年は福袋のインターネット販売や発売時期の前倒しで、店側も「密」の回避に力を注いでいる▼福袋は本来、いろいろな商品を混ぜ入れ、中身を分からないようにして買い物客自身に選び取らせる。ネット販売では何が入っているかを事前に見せたり、教えたりするなど、ネタバレのものも多い。これでは運試しや開封するまでのワクワク感といった楽しみは薄れる▼福袋の争奪でごった返す店内の熱気といったリアルな空間も、消費意欲の喚起に一役買っていた。新型コロナウイルスの感染防止で様変わりする商慣習が、ポストコロナ時代に定着するかは分からない▼新年は福を招き入れる習わしが多い。神社やお寺への初詣は、足を運んでお参りするから御利益があると思っていたが、コロナ下でインターネットや郵送で祈願を受け付ける寺社もあるという▼旧来の慣習や価値観が大きく変わろうとする中、新たな日常にはまだ違和感が残る。経済だけでなく、文化や風習との両立もコロナ対応では肝要だろう。

【東京臨海部、新たな開発進む】有明南地区(江東区)2区画、事業予定者にコナミHDとテレビ朝日

有明南GI区画の開発イメージ

 
 東京都は、江東区にある有明南地区内の2区画の進出事業予定者を決めた。有明南GI区画にはコナミホールディングスらが9階建て延べ5万2000平方メートル規模の複合ビル、有明南H区画にはテレビ朝日が12階建て延べ4万4190平方メートル規模の複合ビルを計画。いずれも都が土地を売却する。

 進出事業者の公募手続きを昨年1月に開始し、有明南GI区画には1者、有明南H区画には2者の応募があった。外部有識者が参加する選定委員会(委員長・倉田直道工学院大学名誉教授)で応募者の提案を審査した。

 有明南G1区画の所在地は有明3の1の17(敷地面積1万1156平方メートル)。進出事業予定者はコナミホールディングスのほか、グループ会社のコナミリアルエステートとコナミビジネスエキスパート。同社グループの研究開発拠点となる複合ビルを建設する。就業者は2700人を見込む。生放送・動画配信可能なスタジオや店舗も入れる。土地取得の提案価格は118億6700万円。初期投資額は用地費を含めて約382億円。事業開始は2025年1月を予定している。

有明南H区画の開発イメージ

 有明南H区画の所在地は有明3の1の9(1万2920平方メートル)。進出事業予定者のテレビ朝日の提案によると、複合ビルには▽国際会議や展示会場として活用可能な多目的ホール▽アトラクションやデジタルアートミュージアムが体験できるイベント・エンターテインメントスペース▽ドラマや番組の制作スタジオとオフィス-などを設ける。土地取得の提案価格は105億1000万円。初期投資額は用地費を含めて約320億円。24年12月の事業開始を見込む。

【新時代見据え飛躍の年に】21年に節目迎える企業、戸田建設は140周年、日本国土開発が70周年

  新型コロナウイルス感染症の影響が依然として見通せない2021年。ウィズコロナ、アフターコロナの新たな時代を見据えた変革が求められる中、創業や設立から節目の年を迎える建設関連企業も多い。上場企業を見ると戸田建設が140周年、名工建設は80周年、日本国土開発が70周年を迎える。

 民間信用調査会社・帝国データバンクの調査によると、21年に10年刻みで節目を迎える企業は全国で13万9296社。このうち建設業は▽10周年4628社▽30周年7509社▽50周年7932社▽100周年485社-だった。30周年は全業種の32・0%、50周年は36・1%を建設業が占める。

 5日に創業140周年を迎えるのは戸田建設。東京・赤坂で戸田利兵衛が戸田方として請負業を始め、1908年に戸田組、63年に現社名へ改称した。建築事業を主体とし、医療・福祉関連施設など幅広い分野で実績を残してきた。

 150周年の鴻池組は、1871年に鴻池忠治郎が北伝法村(現大阪市此花区伝法)で個人創業し、土木・建築事業に進出した。1918年に関西建設業界で初となる株式会社に移行。00年代に入り積水ハウスと15年に業務提携した。

 地元密着型の経営を貫いてきた岸本組(佐賀県唐津市)は110周年。株木建設や木内建設(静岡市駿河区)、プラント建設などを手掛ける田辺工業(新潟県上越市)、荒木組(岡山市北区)は100年企業に仲間入りする。90周年の國場組(那覇市)は戦後初めて米軍と工事請負契約を締結。米軍工事を主体に民間・公共工事を手掛け、戦後の新しい街づくりに貢献した。

 80周年の名工建設は名古屋市中区に創業した鉄道専門工事会社「名鉄工業」が前身。鉄道線路の新設・保守工事からスタートし、現在は土木、建築を含む総合建設会社に発展している。JR西日本グループの広成建設(広島市東区)、西武グループの西武建設(埼玉県所沢市)も80周年の節目を迎える。

 70周年の日本国土開発は、土木工事の機械施工を開拓・普及することを目的に設立。建設機械の賃貸から土木工事請負、総合建設業へと変革してきた。