2021年3月31日水曜日

【回転窓】指名停止措置

  二十数年前のある役人の話。「自分が家を建てる時、変なうわさがある建設会社に見積もりは依頼しないでしょう。指名停止はそこに通じるところがある」▼法律違反や瑕疵(かし)などが発覚した会社に公共工事の発注者は一定期間入札参加を制限する指名停止を行う。期間は措置要領に基づいて決めるが、それが過剰に長い場合もある▼仮に停止期間が不当に長いと建設会社が思っても、請負業の体質としてなかなか発注者に文句は言えない。結局泣き寝入りというケースも多い▼12日に前橋地裁が出した判決は画期的だった。工事引き渡し後に擁壁が倒壊したことを巡り自治体が一方的に施工業者の瑕疵を発表、1年間の指名停止措置を講じた。業者側は名誉毀損(きそん)に当たるとして損害賠償を求め、民事訴訟を起こした。判決で裁判所は業者側の主張を一部認め、指名停止期間のうち6カ月を超える部分に裁量権の逸脱があるとした▼建設業界には建設業法で不正行為などを行った会社に営業停止などの処分規定がある。その屋上屋となる指名停止のペナルティーは時代に合っているのか。今後の議論に期待したい。

【防げ介護離職】建設各社、仕事と介護の両立で支援体制整備急ぐ

  戦後の第1次ベビーブームで生まれた「団塊の世代」が後期高齢者となり、介護ニーズの急増などが懸念される「2025年問題」が目前に迫っている。全国転勤や長時間労働といった働き方の特徴を持つ建設業では、介護と仕事との両立に不安を抱える人は少なくない。深刻化する人手不足などを背景に企業側も介護離職のリスクを懸念。社員が介護をしながら働ける体制整備が急務といえる。


 将来家族に介護が必要になったときに仕事と両立できるか、漠然とした不安を抱えている人は多い。日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、鈴木誠一議長)が加盟組合を対象に実施した「生活実態・意識調査」(18年度)によると、自身が家族を介護する際に介護休業を「取得できる・取得した(経験がある)」と回答した人の割合は10・9%にとどまり、33・9%が「取得できない」、55・2%が「分からない」と回答した=グラフ参照。

 回答者を職種別で見ると、特に施工管理などといった外勤の社員の不安が大きいことが分かる。「取得できない」の割合は外勤建築43・7%、外勤土木44・8%と、いずれも全体の平均を上回った。

 「取得できない」と回答した人の自由回答をみると、「とても理解を得られるような部署ではない」(40代男性)と上司や職場の理解度の低さを指摘する声や、「転勤が多く、要介護者を連れての移動は困難」(50代男性)など、建設業の働き方を問題視する意見が寄せられた。「介護休業を取得できずに退職した同僚がいたため、自身も取得できないと考える」(40代男性)との意見もあった。

 日建協の加盟組合の企業のうち、多くが介護休業に関する制度を導入している。しかし、「(制度があっても)実際に運用されているかどうかは別問題」(中野裕副議長兼政策企画局長)というのが実態のようだ。

 人手不足に悩む建設業では、人事担当者も社員の介護離職に危機感を募らせる。あるゼネコンの人事担当者は「介護はある日突然必要になるケースもある。問題に直面してから情報を集めていては遅い」と指摘する。できるだけ早い段階で両立するための制度を知ってもらおうと、建設業各社はセミナーなどを通じて情報発信に力を入れている。

 大成建設が10年から開催している社員向けの介護セミナーは、昨年時点で累計参加者が2000人を突破した。セミナーでは家族に介護が必要になった場合に使える制度、手続きなどについて解説している。本社や支店などのセミナー会場に行く時間が取れない現場の社員も参加できるよう、現場事務所でも開催している点が特長だ。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて昨年からオンラインでも開催し、参加者数は以前よりも増加しているという。

 「介護離職を防止するには、職場の上司とケアマネジャーがキーマンになる」と指摘するのは管理本部の塩入徹弥人事部部長。介護と仕事の両立にはケアマネジャーの支援、そして職場の上司の理解が不可欠と考える。同社は昨年、両者と社員のコミュニケーションを円滑にするツールとして「仕事と介護の両立相談シート」を導入した。

 シートは社員の現在の働き方や、介護への関わり方の希望などについて詳細に記入する欄がある。「何をしてほしいか」「何に困っているか」をケアマネジャーに的確に伝えることで、ケアプランの作成に役立ててもらうことが狙いだ。上司と人事担当者にもシートを活用して社員の状況を情報共有してもらい、介護との両立を支える体制構築につなげていく考えだ。

日本国土開発は多様な働き方の実現に向け
全国でダイバーシティーのセミナーを開催している

 日本国土開発はダイバーシティー(多様性)を実現する一環で介護と仕事の両立支援を強化している。19年には介護相談窓口を設置し、民間の介護サービスを行う会社に業務委託した。

 委託先の選定に当たっては「ケアマネジャーと利用者のマッチングサービスがあること」「介護保険の申請調整・手配の代行をしていること」の二つが決め手となった。ダイバーシティーの陣頭指揮を執る笹尾佳子常務執行役員は、介護事業会社の経営に携わっていた経歴を持つ。前職での経験から「働きながらサービスを利用することを想定して委託先を選定した」(笹尾常務執行役員)という。

 同社で介護を理由とする退職は年に1人程度。理由について笹尾常務執行役員は「テレワークの導入など、働き方の多様性を高めてきたことが奏功しているのでは」と分析する。

 一方で「統計は取っていないが、家族が介護を必要とすることになっても、社員が両立しているのではなく、介護を含むケア労働の大半を配偶者が引き受けている可能性が高いと感じる」とも推測する。20~30代の社員には共働き世帯が増加している。そのため「若い世代の家族が介護を必要とする頃、長時間労働が恒常化している現在の建設業の働き方では、介護との両立は厳しくなる可能性がある」と建設業に長く定着した働き方に警鐘を鳴らす。

 同社が目指すダイバーシティーでは、介護に携わる社員だけでなく子育て中の社員や、自身が病気などを抱える社員など、フルタイムで働くことが難しい社員も活躍する。笹尾常務執行役員は「かつて『モーレツ社員』と呼ばれたフルタイムで働く社員以外も活躍できるようにしていきたい」と力を込める。

【気球に乗って古墳群を一望】堺市古墳群観覧ガス気球整備・運行事業、優先交渉権者にアドバンスら2者グループ

  堺市は「堺市ガス気球整備及び運営事業」の公募型プロポーザルで、スキー場などを運営するクロスプロジェクトグループ(長野県白馬村)の子会社・アドバンス(兵庫県豊岡市)と栗生総合計画事務所(東京都文京区)のグループを優先交渉権者に決めた。

 事業コンセプトは「屋根のないミュージアムをめざして」。観光客らが仁徳天皇陵などの世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」を上空から観覧できるガス気球用施設を大仙公園(堺区百舌鳥夕雲町2)に整備し、9月から運行する予定。

 同グループの提案によると、気球の高さを調節する機械の動きを外から見学できる気球施設の一つ「ウインチハウス」や離着陸場などを設ける計画。

 事業者は大仙公園にある堺市博物館の西側一帯に気球施設を整備するため、埋蔵文化財試掘調査なども行う。ゴンドラに乗った利用者は約120メートルの高さから同天皇陵の全容を見学できるという。テスト飛行は運行開始1カ月前に行う予定。

【土木の”偏愛”テーマに情報発信】土木学会、ウェブ土木情報誌『from DOBOKU』を発刊へ

  土木学会(家田仁会長)は4月から、ウェブ版の土木情報誌『from DOBOKU(フロムドボク)』を発刊する。専用ホームページを開設し、土木好きが土木を語る土木好きのための情報を発信していく。

 土木工学分野の博士で、リアルインフラツーリズムの先駆者として土木の魅力や役割を伝えるために結成した「噂(うわさ)の土木応援チームデミーとマツ」コンビが編集長を務める。

 ダムマニアや橋好き、地下水路好き、坂好き、ジャンクションマニアといった土木の「偏愛」を毎月テーマに設定。文章や写真、イラスト、動画などを掲載していく。土木工学の専門家やインフラ管理支援のボランティア、土木工学を志す学生が編集委員として加わる。

 編集長に就任したデミマツコンビの一人、松永昭吾氏が30日の記者会見にリモートで参加した。松永氏は「土木界は一般市民とのコミュニケーションが不足している」と問題提起した。

 自然災害が多発する中、「復旧・復興を支える土木従事者の活動を十分に伝え切れていない」と指摘。上下水道整備など衛生工学分野の活動を挙げ「疫病対策でも重要な役割を担っている」とした。「多くの皆さんに関心を持ってもらい、愛してもらい、互いに情報共有していきたい」と話した。

2021年3月30日火曜日

【回転窓】総額表示にご注意あれ

  新型コロナウイルスの緊急事態宣言が全面解除されて初の週末になった27、28の両日は多くの地域で桜が満開を迎えたこともあり、観光地などで人出が多くなったという▼通信大手ソフトバンクの子会社が主要駅や桜の名所を対象にスマートフォンの位置情報を分析したところ、27日の人出は1週前と比較し東京都内の主要駅で5~7%増。京都の嵐山や鎌倉の鶴岡八幡宮は20~30%も増えたそうだ▼宣言が解除されたとはいえ、感染者数が増加している地域はあり都内も横ばい状態。気を緩めず万全の対策を講じたいところだ▼まもなく年度末を迎え、4月1日に2021年度がスタートする。新規採用した社員や職員を迎える官公庁や企業も多かろう。新しい制度が導入されたり法律が施行されたりなど、節目の時期は何かと出来事が多い。そんな中で気を付けてほしいのは商品の総額表示が義務化され、店頭やチラシの価格が消費税込みに統一されること▼税込みなのか税抜きなのか表記に惑わされるケースが減る一方で、値上げになった印象を与え買い控えが起こるのではとの懸念もある。混乱回避をぜひお願いしたい。

【19年台風被害から1年半ぶり】JR水郡線が3月27日に全線開通

  2019年の台風19号で被害を受け、一部区間が不通になっていたJR水郡線が27日、約1年半ぶりに全線開通した。

 茨城県大子町にある常陸大子駅で記念式典が同日開かれ、赤羽一嘉国土交通相や梶山弘志経済産業相、大井川和彦茨城県知事、深澤祐二JR東日本社長、市川雅康東鉄工業執行役員水戸支店長らが出席。式典後には同駅ホームで到着列車を出迎えた。

 式典で赤羽国交相は「水郡線の復旧工事では、特に久慈川第6橋梁の架け替えが大変難しかったと聞いている。無事故で予定より大幅に前倒しで開通を迎えられ感謝したい」と述べた。大井川知事は「水郡線は台風被害の象徴。予定より前倒しができ、新学期前に開通を迎えられうれしく思う。今後もこの地域の産業、観光がさらに発展していくよう取り組んで行きたい」と語った。

 深澤社長は「安全に工事を進めてくれた施工関係者の努力に感謝したい。地域や観光の方々に利用してもらえるよう皆さんと一緒に汗をかくつもりだ」と語った。

 JR水郡線の復旧は、第6久慈川橋梁の架け替えが一番の難工事になった。JR東日本は19年12月までに流出した橋脚と橋桁の撤去を終え、20年2月から約1年で架け替え工事を実施。軌道や付属施設の整備を終え27日の開通を迎えた。新しい橋は、以前の桁橋から水郡線初の2連鋼製トラス橋に変更。河川の障害となる橋脚も1本に減らした。既存橋梁の撤去と新橋梁は東鉄工業が施工した。

【開業は4月18日】ロマンスカーミュージアム(神奈川県海老名市)が完成

 小田急電鉄が神奈川県海老名市に整備していた屋内常設型展示施設「ロマンスカーミュージアム」が4月18日に開業する。特急電車「ロマンスカー」の歴代車両を展示。沿線のジオラマや列車の運転が体験できるシミュレーターなどを導入し、路線の魅力を発信。「施設を通じて企業への愛着が醸成できれば」(同社)としている。

 施設は基本設計をUDS(東京都渋谷区、黒田哲二社長)、実施設計と施工をフジタが手掛けた。開業に先立ち、完成した施設を報道陣に26日公開。担当者は「コロナ禍での施工となり中断も危ぶまれたが、しっかり連携し予定通り竣工できた。厳しい環境の中、工事を進めていただき、ありがたく思う」と話した。

 小田急海老名駅に隣接する敷地(めぐみ町1の3、敷地面積約4000平方メートル)に建設した。建物はS造2階建て延べ4300平方メートルの規模。駅や周辺の商業施設をつなぐペデストリアンデッキに直結する。

 1階に5種類のロマンスカーや1927年の開業時に使用していた通勤電車「モハ1」を展示。一部は車両内に入ったり座席に座ったりできる。展示車両の一つで1957年に導入したロマンスカー「SE型」は、現在に続くオレンジ色の塗装を初めて採用した。

 2階には広さ約190平方メートルの巨大ジオラマを配置し沿線風景を再現した。プロジェクションマッピング技術で夜明けから日没までが再現できる。

 子供向けの工作室やアスレチックスペース、売店やカフェも備える。屋上からは海老名駅に発着する現役の電車が間近に眺められる。感染症対策のため来館は予約制。4月1日正午にホームページで受け付けを開始する。

【神戸新港に1万人収容アリーナ】新港突堤西地区(第2突堤)再開発、優先交渉権者にNTT都市開発グループ

  神戸市港湾局は、「新港突堤西地区(第2突堤)再開発事業」の文化集客・観光商業など複合施設の整備・運営を手掛ける事業者を決める公募で、NTT都市開発・スマートバリュー・NTTドコモグループを優先交渉権者に選定した。

 事業場所は第2突堤(中央区新港町130の2、約3・8ヘクタール)のうち内側全域の約1・9ヘクタール。2グループから提案があり、学識者らで構成する選考委員会が提案内容を審査。同グループの提案を新たなにぎわい拠点として交流人口の増加や地域経済の活性化につながると評価した。

 同グループが提案したのは「世界に誇れる、世界とつながるウオーターフロント“KOBE Smartest Arena”」。ウオーターフロント地区で初となる大規模多目的アリーナをメイン施設とする。規模はS・RC・SRC造5階建て延べ2万5301平方メートル(建築面積1万0228平方メートル)。アリーナはプロスポーツや音楽興行、MICE(国際的な会議)などに対応可能。関西圏で最大級の1万人超を収容でき、約8000席の固定・稼働席を備える世界水準の最先端アリーナとなる。

 審査講評ではアリーナを中心に歩行者専用のプラザやコリドーを設ける施設計画や、二酸化炭素(CO2)の排出規制などSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが評価された。

 事業者の土地利用形態は50年間の定期借地権設定を予定。21年度に事業提案内容の協議を進めた後、22年度に市と事業者で定期借地契約を結び、土地を引き渡す見通し。24年度の開業を予定している。

 隣接する第1突堤基部では現在、住友不動産らグループが大規模再開発の初弾として文化集客・住棟などの複合施設を整備中。市は両事業の相乗効果でウオーターフロント全体の魅力向上につなげたい考えだ。

2021年3月29日月曜日

【東北新幹線や御柱祭が登場】マンホールカード第14弾、4月25日に配布開始

 「マンホールカード」の第14弾が4月25日から配布される。初参画の18団体を含め41団体・41種のカードが加わる。今回の追加で全国575団体が758種類のカードを発行する。総発行枚数は700万枚を超えるという。

 カードはマンホールのふたを管理する地方自治体と、下水道の価値向上や情報共有に取り組む下水道広報プラットホーム(GKP、長岡裕会長)が共同作成する。地域の名物や人気キャラクターなどが描かれたマンホールのふたの写真、設置場所の座標軸やデザインの由来などを記載している。

 第14弾では宮城県利府町が東北新幹線、長野県下諏訪町は諏訪大社の「御柱祭」の見せ場を描いたカードを配布する。佐賀市はゲーム「ロマンシングサ・ガ」のキャラクターが登場する「ロマンシング佐賀」のデザインマンホールをカードにした。配布場所はGKPのホームページへ。

【凜】国土交通省住宅局建築指導課課長補佐・荒井優美さん

  ◇新業務も分かると興味深い◇

 公務員、民間企業の垣根なく就職活動を始めたが、国土交通省の説明会での出会いが進路を決めるきっかけになった。「説明に来た職員さんが楽しそうに仕事をしている。そんな風に見えた」。もともとインフラや交通などに関心を持っていたことも入省の後押しになった。生活に身近なさまざまな場面に携われると公務員の道に進んだ。

 7年目に配属された土地・建設産業局(現不動産・建設経済局)建設市場整備課で建設産業行政に初めて従事した。専門工事業の幅広さに驚くとともに、専門職種の協働により建造物が築かれていくことの素晴らしさや面白さを実感。事業者団体と直接向き合うのも初めてで「業界全体として何を目指すのか。その実現に向けて行政は何ができるのか」を自問自答する日々だったと振り返る。

 総務省出向を経て2019年7月から現職へ。法規担当として、建築基準法や建築士法といった建築関連法令の見直し作業などに携わっている。新たな部署や業務に就くと、一から学ぶことも多く大変だが「分かってくると興味深い。これをやりたい、あれをやりたいと決め付けずにいることで幅や深さを持つことができると思う」。

 英国に留学中、欧州の街並みを見て回った。「石造りの建築が並ぶ街はきれい。日本では丸の内や日本橋が好み」。国内外の移動制限が緩和されたら「旅行に出ていろいろな街を見たい」と思いをはせる。

 (あらい・ゆみ)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】YKKグループ「全従業員の思いを込め刷新」

  YKKグループは4月1日に社服を刷新する。28年ぶりのリニューアルで、紺色を基調としたツートンカラーを採用するとともに、機能性や快適性を高めた。社員からの意見を取り入れており、「全従業員の思いを込めて作った」(大谷裕明社長)。グループ全社でデザインを統一し、一体感を醸し出していく。

 ブルゾンは、だぼつきを無くすとともに、しゃがんだ時に背中が見えないようシルエットに工夫した。スリムな作りでフィット感があると同時に、素材の伸縮性も高めることで動きやすくしている。夏服は、長袖と半袖を用意。軽量化してストレッチ性を高めている。

 「モチベーションが上がり、会社の顔になるような普遍的な社服を目指した」とデザイナーの天津憂さん。同社グループの経営思想である「善の巡環」を、円がモチーフのデザインで表現した。

 最終的には回収して解体し、リサイクルに回す。社服を通じたサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実践に挑戦する。YKKAPの堀秀充社長は「社服に思いと誇りを込めて発展していければ」と期待を込める。

【駆け出しのころ】東芝プラントシステム取締役専務原子力事業部長・亀井孝一氏

 ◇信頼築きレベルアップを◇

 大学で機械工学を学び、工場実習などもありましたが、発電所など大きなプラント建設の現場はやりがいがありそうだと感じました。当社の社員だった同じ研究室の先輩の話を聞き、感心がより強まりました。

 入社後、3カ月ほどの研修中には電気工事でケーブルを敷く現場にも立ちました。新人ながらも協力業者や顧客と一体となり、信頼関係を築くことが工事を円滑に進める上で重要なのだと実感できました。

 同期入社の約130人のうち100人強が男性社員。入社当時は原子力発電所のプラント建設が複数箇所で同時に始まっており、私も含めて半分以上が原子力部門に配属となりました。

 建設業務を担う原子力技術部の中で、建設プラントの見積もりや予算の取りまとめを担当。現場や工事のことを何も知らず、見積もりを作って顧客とやりとりすることに戸惑いました。とにかく現場の人たちに工数や過去の実績などを聞きながら情報収集に奔走し、さまざまなデータを蓄積。実際の現場は見ていませんが、少しでも予算・見積もりの精度を上げるよう努力しました。

 現場の方々にデータ提供など余分な仕事を一方的にお願いするのではなく、現場がうまく進むよう、自分ができることでバックアップを心掛けました。先輩方とも良い関係を築け、受注できた時には一緒に喜んでくれました。

 良いことばかりではなく、赤字を出したり、仕様書を読み違いしたり、失敗もいろいろ。顧客とのやりとりを書き残すことの重要さも学びました。契約などでは一言一言が大事になるので、議事録を必死に手書きしたのを覚えています。

 7年目に新潟原子力建設部へ異動し、柏崎2、3号機の建設工事で機械・配管工事管理を担当。初の現場勤務でしたが、本社での頑張りが認められ、いきなり主任の立場となりました。

 現場経験が伴っていない分、コミュニケーションを積極的に取って周囲との信頼を深めていきました。人から聞くだけでなく、何事も自分の目で確認するよう、足で稼ぐことを心掛けました。約5年の現場勤務の後、本社に戻って見積もり・予算作成の業務に再び従事し、現場経験を生かしてレベルアップできました。

 原子力分野の事業環境は東日本大震災で一変。福島第1原子力発電所の事故対応では協力業者を含めて多くの人たちが懸命に取り組みました。新規建設が止まり、技術者は達成感を得られず、モチベーションのキープが難しい状況です。再稼働や長寿命化、廃炉など、やるべきことはあり、脱炭素を考えれば原子力にもまだまだ未来があります。安心・安全なプラントを造るのがわれわれの役目であり、若手には明けない夜はないと伝えています。

入社2年目、社員旅行で訪れた京都・太秦の映画村で(前列中央が本人)

 (かめい・こういち)1982年日本大学生産工学部機械工学科卒、東芝プラント建設(現東芝プラントシステム)入社。執行役員原子力事業部副事業部長、取締役上席常務原子力事業部長(現任)を経て2017年から現職。北海道出身、61歳。

2021年3月26日金曜日

【回転窓】ニューノーマルの住宅需要

  首都圏郊外の町で若い世代が増えたと聞いた。空き地に新築住宅が建つケースや、仕事ができるよう中古住宅を改修して入居するケースが目立つそうだ▼リクルート住まいカンパニー(東京都港区、淺野健社長)の2020年の調査によると、東京23区居住者がほかのエリアで一戸建て住宅を購入する割合が増加。東京23区以外の購入割合は88%で、14年に調査を開始してから最多という▼ゆとりのある居住空間のニーズが高まる傾向にある。一方で最寄り駅からの時間や通勤アクセスを重視する割合は過去最低に。リモートワークや在宅勤務の増加が影響しているのだろう▼ただ、東京23区で新築マンションを購入する割合は前年と同程度を維持している。利便性が重視される傾向に変わりはない。勤務形態やライフスタイルを踏まえ、自分に合った暮らし方をより能動的に選択する人が増えている▼世帯数はこれから減少局面に入っていくと予想されている。数だけで見れば需要は減るが、住空間に求められる要素はニューノーマル(新常態)で多様化していくはず。ピンチをチャンスに変える--。産業界の動きに期待したい。

【帝国ホテル、改築で2500億円投資】内幸町一丁目街区(東京都千代田区)、関係10社がまちづくり方針合意

  東京都千代田区の「内幸町一丁目街区」で、関係権利者が「まちづくり方針」を固めた。約6・5ヘクタールの敷地を北、中、南の3地区に分け、大規模複合エリアを形成する。全体完成は2037年度以降になる見通しだ。

 方針をまとめた関係権利者は▽NTT都市開発▽公共建物▽第一生命保険▽帝国ホテル▽東京センチュリー▽東京電力パワーグリッド▽NTT▽日本土地建物▽NTT東日本▽三井不動産-の10社。

 北地区(約2・4ヘクタール)では、帝国ホテル東京の「本館」と「タワー館」を建て替える。新本館は帝国ホテルが単独で新たなグランドホテルに建て替える見通し。工期は31~36年度を予定する。新タワー館の整備は、帝国ホテルが既存を解体後、土地の共有持ち分の一部を三井不に譲渡。2社共同で、オフィスや商業、サービスアパートメントが入る建物を整備する。24~30年度を工期に充てる。概算事業費は2000億~2500億円程度を見込む。

 中地区(約2・2ヘクタール)は現在、NTTグループのビルが点在する。オフィス、商業、ホテル、ホール、産業支援施設などの複合街区に再整備する。29年度に主要建物を完成させる。

 東京電力ホールディングス(HD)本社などがある南地区の敷地面積は約1・9ヘクタール。オフィス、商業、ホテル、ウェルネス促進施設など配置する。主要建物の完成予定は28年度。

 街区全体の方針として、隣接する日比谷公園とつながる上空公園などの整備で、歩行者ネットワークを確保。周辺に開かれたにぎわいあるエリアを創出する。最先端技術を活用した国際ビジネス交流拠点や、防災や環境に配慮した都市の構築なども進める。

 NTT都市開発と三井不は、19年12月の内閣府の東京圏国家戦略特別区域会議で、都市再生プロジェクトに同街区での事業を追加提案した。

【南館完成、全体竣工は2027年初頭に】世界貿易センタービル本館(東京都港区)、7月に解体着工へ

  東京都港区にある複合ビル「世界貿易センタービル本館」の解体が7月から始まる。1970年に竣工した本館は、高度経済成長期の東京を象徴するビルとして親しまれてきた。世界貿易センタービルディング(東京都港区、宮崎親男社長)らが進める「浜松町二丁目4地区A街区」の開発事業の一環で、新たなビルへ生まれ変わる。

 25日の「世界貿易センタービルディング南館」の竣工式で宮崎社長が明らかにした。解体には「1年8カ月かかる」見通し。本館の建て替えを含む地区全体の完成は「2027年初頭になる」とした。

 浜松町二丁目4地区A街区(浜松町2)を含む約3・2ヘクタールの区域は、13年3月に都市再生特別地区としての都市計画決定を受けた。国際性豊かな交流ゾーンの形成、東京モノレール浜松町駅やバスターミナルの再整備などで、浜松町駅周辺の交通結節機能の強化を目指すとした。

 国土交通省が民間都市再生事業計画に指定した17年9月時点の計画によると、本館跡地設ける「A-1棟」に事務所、「A-2棟」にバスターミナルなどの機能を入れる。A-1棟が地下3階地上37階塔屋2階建て延べ14万5073平方メートル、A-2棟は地下3階地上8階塔屋1階建て延べ3万5463平方メートルとなる。

 A街区の初弾の開発事業になった南館は、25日に竣工した。事業主は▽世界貿易センタービルディング▽東京モノレール▽鹿島▽JR東日本▽渡邊倉庫-の5社。基本設計を日建設計、実施設計・施工を鹿島が手掛けた。施設規模は地下3階地上39階塔屋2階建て延べ9万5239平方メートル。主用途のオフィスに加え、商業施設などを設けた。

 竣工式で宮崎社長は「立派な超高層ビルを完成できた」、鹿島の押味至一社長は「最先端の技術を結集させた」と施設完成の喜びを語った。武井雅昭港区長らも祝辞を寄せた。

【隈研吾氏がデザイン監修】桐朋学園、仙川キャンパス(東京都調布市)に新ホール完成

  桐朋学園が東京都調布市の桐朋学園大学仙川キャンパスに建設していた「宗次ホール」が完成した。4月1日に供用開始する。

 折り紙からヒントを得て新ホールは折板構造を採用。スギとヒノキを組み合わせたCLT(直交集成板)を多用し、世界最高レベルの音響を実現した。基本設計とデザイン監修は建築家の隈研吾氏。実施設計と施工を前田建設・住友林業JVが担った。22日に隈氏ら関係者が出席し竣工式を開いた。

 宗次ホールの建設地は若葉町1の41の1。同キャンパスの2期工事として2020年2月に着工した。実業家でカレーライス専門店「壱番屋」を創業した宗次徳二元社長の寄付を建設費に充てた。W一部RC造地下1階地上3階建て延べ2392平方メートルの規模。1、2階を貫く形で音楽ホールを配置し、各階に講義室やレッスン室を設けている。

 音楽ホールは高さ約10メートル、幅17メートル、奥行き約21・5メートルの規模で座席数は最大234席。約17メートルと大スパンのCLT折板構造を採用し、音響反射性能と耐火性を兼ね備えている。木のぬくもりが体感できる空間を生み出した。

 5層構造のCLTは表面2層にヒノキを使用した。耐火性が高い上、音をはね返す反射板の役割を果たしている。エントランスホールの壁には、ヒノキとスギを併用したCLT小端材をランダムに配置した。材外観に楽器の弦をモチーフにした木製ルーバーを施すなど、特徴的なデザインに仕上げた。

2021年3月25日木曜日

【運営開始は2025年春】新県立体育館整備・運営(名古屋市北区)、愛知県と前田建設らが基本協定書交換

  愛知県新体育館整備・運営等事業の基本協定調印式が24日に名古屋市内のホテルで開かれ、県と事業者の「Aichi Smart Arenaグループ」(代表企業・前田建設、NTTドコモ)が基本協定を結んだ。

 新体育館の建設地は北区名城1の名城公園北園内(約4・6ヘクタール)。中区二の丸にある現体育館を移転する。

 県は事業実施に当たり、「BT(建設・移管)方式のPFI+コンセッション(公共施設等運営権)方式」を採用。一般競争入札(総合評価方式)を20年8月に公告した。所定の手続きを経て今年2月に同グループを事業者に選定した。

 グループの構成員は▽Anschutz Sports Holdings▽三井住友ファイナンス&リース▽東急▽中部日本放送▽日本政策投資銀行▽クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド-の6社。隈研吾建築都市設計事務所とマニカ・アーキテクチャー、大建設計の3社が協力企業としてプロジェクトに参画する。

 同グループの提案によると、メインアリーナとサブアリーナ、多目的ホールを中心とする建物は、RC・S造5階建て延べ5万8400平方メートルの規模。メインアリーナの収容人数は最大1万7000人(立ち見含む)を計画している。

 設計・建設期間は21年6月~25年3月、維持管理・運営期間は25年4月~55年3月(30年間)。同グループの構成員が全額出資で設立する特別目的会社(SPC)が統括マネジメント、設計・建設、維持管理、運営の各業務を担う。

【回転窓】国境離島

  1カイリは何キロと聞かれ答えに窮した。以前調べた記憶はあるものの、普段使わないため、どの程度の距離か見当もつかなかった▼1カイリは1852メートル。地球の子午線上で角度1分に相当する長さと定義されている。領海は12カイリなので約22キロ。排他的経済水域(EEZ)は200カイリなので約370キロとなる▼日本は国土面積で世界61番目の広さだが、EEZ面積では6位になる。列島周辺に島々が多数あるためで、こうした多くの島を「国境離島」と言う。政府は領海などの保全を目的に国境離島で各種施策を展開中だ▼例えば名称がない国境離島に名前を付けたり、持ち主がいない無人国境離島を国有財産化したり。居住が可能でその維持が必要な地域は特定有人国境離島地域(15地域・71島)とし、航路運賃の低廉化や物資費用の負担軽減、雇用機会の拡充なども進めている。これにより長崎県五島市ではここ数年、移住者が増えているという▼政府は国境離島の土地売買規制も含んだ「安全保障上の重要施設周辺の土地売買規制法案」をまとめた。経済活動の制限などにも絡む難しい法案だ。国会でしっかりと議論を重ねてほしい。

【総延べ5.1万㎡、2029年開業目指す】国立劇場等再整備、技術支援業務は香山壽夫建築研究所JVに

 日本芸術文化振興会は「国立劇場再整備等事業に係る技術アドバイザリー業務」の契約候補者に香山壽夫建築研究所・山下PMCJVを選定した。

 公募型プロポーザル方式(WTO対象)で選定した。近く契約する見込み。プロポーザルは同社以外にパシフィックコンサルタンツ、日総建が参加した。

 東京都千代田区にある国立劇場など(総延べ約3・5万平方メートル)の再整備をPFI事業で実施する計画。国立劇場と付帯施設の業務要求水準書を作成し、事業者選定の一連の業務について技術的知見から支援するアドバイザリー業務を任せる。履行期間は2022年3月31日まで。

 国立劇場の所在地は千代田区隼町4の1(敷地面積3万1244平方メートル)。建ぺい率50%、容積率約500%が上限。振興会が20年3月にまとめた基本計画によると、新施設は大劇場・小劇場・演芸場などの機能を入れた総延べ5万1400平方メートル程度の規模を想定。施設規模は精査をした上で固める。

 低層部に劇場を配置してカフェなどの民間施設を合築するPFI事業で、PFIのスキームはサービス購入型のBTO(建設・譲渡・運営)方式を前提とする。事業期間は整備段階と建物の完成後20年間の維持管理期間を設ける方針。劇場部分以外の未利用容積を活用して民間収益施設を整備し、定期借地権契約で土地代の収入を得る予定。

 文化庁の「国立劇場の再整備に関するプロジェクトチーム」が20年7月に策定した整備計画では21年度に実施方針の公表と特定事業の選定・公表、22年度の契約締結、29年度の新施設完成と開業を予定している。

【建築家・遠藤新のデザインを継承】武庫川女子大、上甲子園キャンパス(兵庫県西宮市)で新校舎2棟竣工

  武庫川女子大学(兵庫県西宮市)が上甲子園キャンパスに整備していた建築学部と大学院建築学専攻の新校舎2棟が竣工した。2020年4月に開設した景観建築学科と大学院景観建築学専攻の学生が利用する。

 新校舎は国の登録有形文化財である甲子園会館(1930年竣工)のデザインを反映。設計は武庫川女子大建築・都市デザインスタジオが担当した。4月の開設を目指す。

 新校舎の名称は「景観建築スタジオ東館」と「同西館」。東館はRC一部S造2階建て延べ1087平方メートルの規模。大林組が施工した。西館の規模はRC造3階建て延べ2669平方メートルで、施工は竹中工務店が手掛けた。

 景観建築学科の1年生が使用する東館は、米建築家のフランク・ロイド・ライト(1867~1959年)に師事した遠藤新(1889~1951年)が設計した甲子園会館のデザインを継承。教員や学生が手作業で焼き上げた計6950枚の装飾タイルを柱や壁に貼り付けた。

 室内は甲子園会館の前身である「甲子園ホテル」や1965年改修時の照明器具やシャンデリアを復元して取り付けた。2~4年生と大学院生が利用する西館も装飾タイル450枚を貼り付けるなど、甲子園会館の雰囲気が体感できるデザイン。

 1~3階に実習室や作品展示室などを配置している。東館の工期は19年7月~20年11月、西館は19年12月~3月。供用開始は4月8日を予定する。

【京都市南区にデジタルミュージアム】京都駅東南部市有地活用、契約候補にチームラボら選定

 京都市は「京都駅東南部エリアにおける市有地の活用に係る契約候補事業者」を選定する公募型プロポーザルで、京都駅東南部エリアプロジェクト有限責任事業組合(代表・チームラボ)を契約候補事業者に選定した。6月ごろに基本協定を締結する予定だ。

 人口減少や高齢化の進展が課題となっている京都駅東南部エリアに、文化芸術の「新たな価値を生み出す創造・発信拠点」を誘致し、若者を中心とした新たな人の流れを生み出す。対象地は南区東九条東岩本町19の1ほかの5094平方メートル(市有地B)と、その北側隣接地の1487平方メートル(市有地A)。

 提案によると、同者は市有地A・Bを借り受け、敷地内にチームラボの作品を常設展示するデジタルアートミュージアムやアートギャラリー、市民ギャラリーなどで構成するアート複合施設を整備する考え=整備イメージ。規模は床面積7500~9000平方メートルを想定。貸付希望期間は60年間、貸付希望価格は年額4000万円。

 プロポーザルには2者が参加し、京都駅東南部エリアプロジェクト有限責任事業組合は最上位となる100点中92・3点の評価点を獲得。同者の提案については「エリアの魅力向上と活性化につなげようとする具体的な内容が伴っている」ことや「多様な文化芸術関係者と市民が交流する機会が創出されている」ことなどが評価された。

【開業予定は2023年春】Vリーグ・久光スプリングス、佐賀県鳥栖市に新練習施設

  女子バレーボールのVリーグ1部に所属する久光スプリングスの運営会社であるSAGA久光スプリングス(佐賀県鳥栖市)が、鳥栖市に建設する新たな練習施設の概要を公表した。メインアリーナやサブアリーナ、クラブハウスなどで構成し、規模はRC一部S造3階建て延べ約8600平方メートル。9月に着工し2023年春の開業を目指す。設計は安井建築設計事務所が担当している。

 新練習施設の建設地は市有地である鳥栖スタジアム第4駐車場(藤木町)。敷地は市から原則として無償で借り受ける。敷地面積は約1ヘクタール。

 建物は建築面積約6000平方メートル。メインアリーナはバレーボールコート3面規模で1440平方メートル。座席は固定744席、可動700席の1444席に加え、車いす席24席を設ける。床材には衝撃吸収に優れた国際基準のタラフレックスを採用する。

 バスケットボールコート1面、バレーボールコート2面規模のサブアリーナ、トレーニングルーム、クラブハウス、多目的室なども設ける。脱炭素の地球に優しいゼロエネルギービルを目指す。

 「世界へはばたく~SAGAから世界へ~」を基本コンセプトに世界レベルの女子プロスポーツの拠点としてだけでなく、ジュニアや中学生、高校生、九州各県のママさんバレーなどのスポーツ活動拠点とする。

 2月に基本設計を終え実施設計に着手しており、5月に実施設計を完了する。工事期間は9月から23年1月までを予定している。

【回転窓】サクラのつぼみがほころぶ頃

  週末の関東は雨が降り強い風も吹く天候。この時期は春の嵐と呼ばれる台風並みの暴風や猛吹雪が発生しやすい時期だ▼北から来る寒気と南から吹き込む暖気がぶつかり合い、低気圧が急速に発達しやすいのが理由。爽やかな晴天が多くなる春本番はもうすぐ。桜の開花も列島各地から寄せられており今週、修了式を迎える学校も多かろう▼緊急事態宣言は解除になったが、新型コロナウイルスが姿を消したわけでなく予断を許さない状況は続く。20日夜には今夏に開催を予定する東京五輪を巡り、政府と東京都、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の5者会談が行われ、海外からの一般客の受け入れを断念することで合意した▼新型コロナの感染収束が見通せず変異種の感染も拡大しているのが理由という。社会・経済活動が制約を受けるようになってはや1年。自粛や自制の必要性は分かっていても、この状況に不満が募ってしまうのは仕方がない▼春の嵐が沈滞ムードを吹き飛ばしてくれればいいのに…。窓越しに降りしきる雨を見ながら、そんな思いが頭をよぎった。

【設計は丹下健三氏、再開発事業本格化】旧電通本社ビル(東京都中央区)、大成建設で解体へ

 東京都中央区にある電通の旧本社ビル(電通築地ビル)の解体工事が始まる。建築家の丹下健三氏(1913~2005年)が設計を手掛けたビルの竣工は1967年。完成から半世紀以上が経過し老朽化しているため、所有者の住友不動産が解体を決めた。

 解体工事の施工者は大成建設。4月18日~2022年7月31日の工期を予定している。解体着手を機に、同ビル跡地を含む区域での再開発事業に伴う都市計画手続きが来年度にも本格化する見通しだ。

 電通築地ビルの所在地は築地1の11の10。国内の優良な建築物を表彰する「BCS賞」を1969年に受賞している。広告テスト室やカメラ室など一般のオフィスにない機能を整然と配置したレイアウト、影のあるボンタイル仕上げの外壁などが建物の特徴。電通が本社を東京都港区に移した後、2014年に同ビルを含む一帯の計4棟を住友不が電通グループから取得した。

 全棟一括で解体する。同ビルの規模はSRC造地下3階地上15階建て延べ2万8833平方メートル。4棟の総延べ床面積は5万4910平方メートルとなる。解体エリアを含む「築地一丁目地区」では、住友不が事業協力者を務める再開発準備組合が17年から活動している。

 再開発事業をはじめ、同ビルなどの敷地が指定を受けている都市計画法に基づく特定街区の変更や除外の都市計画も検討。地区西側に面する首都高速道路都心環状線築地川区間の大規模更新と連動したプロジェクトの実施が期待される。

2021年3月22日月曜日

【回転窓】来年に備えた戦いは続く

  ピンクから白へのグラデーションや濃い紫などさまざまな葉の色と形が楽しめるハボタン。冬の寒さに当たるから花茎が育つトウ立ちするのが特徴でもある▼黒系のボリュームのある葉の種なら、明るい草花を集めた鉢を冬に引き立たせてくれる。日差しや気温が春らしくなると、茎が伸び、葉の力強さが増す。季節の変化を伝えてくれるハボタン。冬から春の鉢植えやガーデニングの主役の一つになりつつあると聞いた▼近所の人にいただいたハボタンの花が咲いた。新型コロナウイルス感染症の2度目の緊急事態宣言が発令されたころに頂戴し、2月までは鉢の中で縮こまっていたのが急にすくすくと育った▼散歩の途中に声を掛けてくれた送り主が教えてくださった。「花に元気がなくなってきたら切るんだよ」。新芽を出すために花茎は切る必要があるという。来年も花を楽しむために▼緊急事態宣言が全面解除されてもされなくても、感染を防止するための行動と新しい生活様式が求められることに変わりはない。明日、来月、来年を見据えて。大勢の人が安心して春を楽しめる将来のためにウイルスとの戦いは続いていく。

【凜】新日本建設建設営業本部・勝箭名央さん

  ◇「格好良い仕事」にひたむきに◇

 まだ小さかった頃、「あんなに大きな建物がなぜ立っていられるのだろう」といつも考えていた。それが建築に興味を持ったきっかけ。中学生になっても幼かった時の疑問は心のどこかに残り続け、次第に建築の仕事をしてみたいと思うようになった。

 大学で建築を専攻。構造設計を学んだのは「本当に分かっている人でないとできない格好良い仕事」というイメージがあったからだ。就職活動の時期を迎え、建築設計会社ではなくゼネコンを進路に選択。今の会社を選んだのは、会社説明会で感じた「働きやすい」印象が心の琴線に触れたから。全設計部門が同じフロアにあり、他の部署の動きが分かるところも魅力だった。

 自身の性格を「負けず嫌いでストイック」と話す。一昨年には1級建築士試験を受験した。予備校に通わず独学を貫いた。勉強の友はネットオークションで買った1年落ちの参考書。時間を惜しんで試験対策に没頭した。「結構大変だった」と振り返るが、努力が実り1年で難関を突破した。

 入社から間もなく5年目を迎える。4月には初めて同じ部署の後輩ができる。「自分が新人の時、分からなかったことを思い出しながら丁寧に仕事を教えないと」と胸を膨らませる。先日入籍したばかり。5月に挙式が控えており、休日は準備が大変と笑顔で話す。

 (構造設備部構造設計課、かつや・なお)

【中堅世代】それぞれの建設業・282

都市公園には交流拠点としての機能が期待されている

 ◇都市公園の新たな可能性を開拓◇

  都市の緑化に貢献したい--。大学時代に里山保全など環境保護ボランティアを経験した石井文也さん(仮名)。卒業後は都市緑化に携わるため、「漠然と地元で公務員になろうと考えていた」という。

 ただ、公務員の業務は広範囲で望んだ仕事ができないかもしれないと悩んでいた時、都市公園の管理やビル緑化などを手掛ける造園業の世界を知り、思い切って一歩を踏み出した。

 入社後の配属は都市公園の管理を担う部署。地方自治体が民間企業に公園管理を委託する「指定管理業務」を主に担当した。現在は地域の防災拠点としても機能する都市公園の管理責任者を務めている。

 公園管理では利用客との関係で苦悩することも多い。公園はさまざまな考え方を持つ人が訪れる。「あちらを立てればこちらが立たずという状況にならないよう細心の注意が求められる」という。公園は公共財。「利用者と管理者の垣根を越えて守るため、自分が何をすべきかを考えることが指定管理業務の面白さ」と話す。

 公園管理で何よりもこだわるのは芝生の状態。「ベビーカーを芝生内に入れないで」など、具体的な注意事項も交えて「芝生を守りたいという思いを直接伝えるよう意識している」。利用者が使い方を変えてくれた時、うれしさと仕事のやりがいがこみ上げてくる。 

 カフェなど誘致した収益施設の利益を使い公園整備から維持管理、運営までを一体的に行うPark-PFI(公募設置管理制度)にも携わっている。公園管理の新手法として期待されるが、デメリットを感じることもある。収益を確保することと、公園利用者を増やすことは時に「相反する価値観に基づく行為」になると指摘する。

 収益確保にターゲットを絞りすぎれば、一般の来園者を迎える公園本来の目的が脇に置かれてしまう可能性もある。日々の仕事で「一般の来園者を迎えながら収益につながる消費者も受け入れる。バランスの取り方が難しい」と実感している。制度のデメリットをできるだけ少なくし、普及につなげることが重要な課題と思っている。

 社会人となってから間もなく10年。後輩も増えてきた。経験を伝え育てる立場を担う場面も多くなった。「自分にできることは自分でしない。自分にできないことを自分でやる」。昔から自身に投げ掛けてきた言葉だ。多分野で横断的に活躍するオールラウンダーを理想像に描く。

 「一つの領域で実績を残し、後の仕事は後輩に託したい」。公園管理だけでなく新たな領域に挑み続けたいと思っている。

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】梶川建設「『かっこかわいい』を演出」

 梶川建設(愛知県碧南市、梶川光宏代表取締役)が2019年11月から着用しているユニホームは、シックなネイビーの生地に映えるビビッドピンクのロゴワッペンがトレードマーク。袖口のパイピングが同色のビビッドピンクだったり、左腕の安全マークにパンチングした合皮素材を採用したりと、普通の作業着とは違う「かっこかわいい」を演出する仕掛けも施した。

 ユニホーム作りでは、有名なアーティストも所属するイベント企画会社のアソビシステム(東京都渋谷区、中川悠介代表取締役)に監修を依頼。両社が建設業のポジティブなイメージを発信するため企画した「3K(キレイ・カワイイ・キラキラ)プロジェクト」の一環で、SNS(インターネット交流サイト)アニメ「現場の女神」にも採用された。

 ユニホームの企画に当たっては社内プロジェクトを立ち上げ、できるだけ多くの声を集めた。梶川代表取締役は「思いの詰まった『かっこかわいい』ユニホームができた。今後もさらに良いユニホームを開発できるよう、本業にも励みたい」と語る。

【駆け出しのころ】ライト工業専務技術営業本部長・川村公平氏

  ◇約束は必ず守り信頼感へ◇

 大学で地質や土質を学びました。就職難の時代でゼネコンの試験も受けましたが思ったようにいかず、改めて就職先を探した時にライト工業が目に留まりました。調べてみると良い会社で大学の先輩もたくさんいました。学生時代に地滑りを勉強していて、斜面崩壊対策やのり面対策工事を施工している点も共通項があると感じました。良い導きだったと思います。

 入社後、盛岡支店に配属され、青森の地盤改良工事を担当しました。先輩社員の指導を受けながら推進工事の発進・到達立坑の坑口薬液注入工を施工しました。地下水が豊富な場所でしたが、径3メートルのシールドマシンが発進する時も到達する時もほぼ水が出なかったことに感動を覚えました。

 2年目は東北自動車道の青森と秋田の県境区間で地滑り対策のアンカー工事を担当しました。真冬の2カ月間と春先の1カ月間が作業期間。真冬はなかなかうまくいかず苦労しましたが、何とか工期に間に合いました。あまりの忙しさに頭がいっぱいになってしまったことを覚えています。

 春先にもう一度、同じメンバーで施工したのですが、前回の経験を踏まえて事前に対策を練り、準備をしっかり進めていました。すると予想以上に早く作業が終わり、元請のゼネコンが驚いていました。天候の違いもありましたが、段取りとチームワークが効果を発揮しました。両極端な状況に現場の面白さを実感しました。

 営業に移ってからは当社が手掛けるさまざまな工種をとにかく勉強しました。のり面対策工は現場で手伝った程度だったので、先輩に聞きながら覚えるほかありません。これまでほとんど取引がなかった建設会社に、担当交代をきっかけに営業をかけて、気に入ってもらったこともあります。会社のブランドを背負って仕事をしていますが、人と人とのつながりも大事だと強く感じました。

 東日本大震災が起きる直前、東北に赴任しました。災害後は全国から応援に来てもらいましたが、それでも技術者が足りません。人材を育てるしかないと腹をくくり、ベテランと共に現場を回りながら仕事をこなしていきました。技術者がしっかりと育ってくれて本当に頼もしかったです。

 心に秘めたライバルを見つけて、自分の中で切磋琢磨(せっさたくま)したことが、レベルアップにつながりました。若い人には公私どちらでも良いので目標を立て、そこに向かってほしいと思っています。

 どんなことがあっても逃げずにやり遂げることが大切。「約束は必ず守る」。それが私の信条です。トラブルがあっても知恵を絞り何とかする、という責任感が信頼につながります。現場に入ったら自分がやらなければ前に進みません。そうした意識を大事にしてほしいと思っています。

入社3年目の時に参加した社員旅行で(右端が本人)

 (かわむら・こうへい)1983年岩手大学工学部資源開発工学科卒、ライト工業入社。2013年執行役員東北統括支店長、16年常務執行役員、17年取締役、19年常務技術営業本部長、20年から現職。趣味はゴルフ。岩手県出身、60歳。

2021年3月19日金曜日

【回転窓】DXが生み出す連携

  デジタル変革は世代間をまたがって平和を作る--。台湾でデジタル政策担当の閣僚を務めるオードリー・タン氏がこう話していた▼名刺管理サービスを手掛けるSansan(東京都渋谷区、寺田親弘社長兼最高経営責任者〈CEO〉)がDX(デジタルトランスフォーメーション)をテーマに開いたウェブイベントでの一こま。DXを駆使して、多数による双方向のやりとりを活性化することが重要だと指摘した▼興味深いのは若者の巻き込み方だ。若者を起用して、政府のウェブサービスの改良を推進。高齢者でも使いやすいよう手を加えたことで、若者に対する好意的な見方が広がったそうだ▼自身の役割や貢献度が認識でき、周囲からも認められるようになれば参画意欲は増す。そうした良い循環が生まれていくことが理想的。「早くて公平で楽しければ民主化に興味を持つ」と同氏は強調する▼DXで世代や国境を越えた交流を活発化し、力強い多様な連携を生み出す。制約が多いコロナ禍の今だからこそ、加速化が期待できる面もある。隣国の好事例などを学びつつ、日本でも新たなうねりを創出してはどうだろうか。

【アンドロイドOSも利用可能に】土木学会、防災・減災カードゲームの携帯アプリ版拡充

アンドロイドOSでも利用できるようになった「ポケドボ」
(写真は土木学会提供)

  土木学会(家田仁会長)は、子どもたちに楽しみながら土木の役割を学んでもらう防災・減災をテーマとしたカードゲーム「ポケドボ」の携帯アプリ版を拡充した。米アップルのiPhone版に続き、Androidでの利用を可能にした。

 ポケドボは2018年7月に発売。遊び方はプレーヤーに「てつどう」や「くうこう」などカードを5枚ずつ配り「まち」をつくる。場に積んだ札から「じしん」や「こうずい」などインフラに被害を与える災害カードと「事前対策」や「応急復旧」といったインフラを守るカードを交互に取る。防御と復旧を繰り返しながら山札がなくなった時点で、より多くのインフラカードを持っている方が勝者となる。

 アプリ版はコンピューターと対戦する。インフラと災害の関連性、予防保全や事後復旧の必要性をルールに盛り込むなど、防災教育のツールとしても活用が期待されている。

【整備局長賞は西濃建設・宗宮郷さんに】国土をつくる人写真展、入賞9作品決まる

中部地方整備局長賞を受賞した宗宮郷さんの「一点に集中」

  中部建設青年会議(山浦正貴会長)は17日、第9回「国土をつくる人」写真展の表彰式を名古屋市中区の名古屋銀行協会会館で開いた。今年は「まちを『つくる』『まもる』人たち」がテーマ。中部5県から390作品の応募があり、中部地方整備局長賞など9点が受賞作に選ばれた。式典では堀田治中部整備局長や山浦会長、各支部長から表彰状が贈られた。

 この写真展は、社会資本整備に関わる地元建設企業や現場で働く人々の姿を広く知ってもらうとともに、魅力ある地域建設業の育成を目的に2012年度から毎年開催している。

 表彰式で山浦会長は「写真のレベルも上がっている。今回は一般から学生にも参加していただき、建設業の魅力発信にもつながる。写真展を通じ建設産業の発展につなげたい」とあいさつ。堀田局長も「写真は言葉がなくてもビジュアルで訴える力がある。道路のメンテナンスに注目してもらった作品もあり、維持管理に光が当たった」と述べ、写真展は建設業の真の姿をアピールするいい機会だと振り返った。

 中部地方整備局長賞は宗宮郷さん(西濃建設)の「一点に集中」、中部建設青年会議会長賞は服部恵治さん(加藤建設)の「今の時代に人力運搬」と岡部竜典さん(中村建設)の「縁の下ならぬ水面下の力持ち」、建設産業再生賞は八木梨菜さん(豊川高校)の「作業中」などが選ばれた。受賞作品と応募作品は31日から4月5日まで、地下鉄東山線星ケ丘駅で展示する。

【270アイテム用意、女性向け4割】ワークマン、女性向け都内1号店を開業

  作業服大手のワークマン(群馬県伊勢崎市、小浜英之社長)は、女性向け店舗の「#ワークマン女子」の東京都内1号店を墨田区の商業施設「東京ソラマチ」に19日オープンする。

 プロ向けの商品を扱わないのが特徴。建設業などの職人が訪れる既存の「ワークマン」、一般向けを中心にプロ向けの商品も扱う「ワークマンプラス」との三つの店舗形態で顧客を分け、「プロの顧客に寄り添う環境を充実する」(土屋哲雄専務)のが狙い。

 #ワークマン女子は、女性向けの衣料や、男性や子ども向けを含むアウトドア、スポーツ、シューズ、タウンウエアなど約270アイテムを扱う。紫外線(UV)加工のワンピース、はっ水ガウチョパンツや、国内最大級のファッションショー「東京ガールズコレクション」にも登場した商品など、女性用が76アイテムある。女性4割、男女兼用2割、男性4割の商品構成になっている。

 「お店を楽しんでいただき、SNS(インターネット交流サイト)で情報を発信してほしい」と営業企画部販売促進グループの牧野純子チーフ。コンセプトキャラクターのゆるキャラ「ワクコ!」をデザインした内装や、更衣室の鏡にロゴを入れるなど、商品をSNSでアピールしやすいエリアを設けてある。

 #ワークマン女子は、駅前の商業施設や路面に約130坪サイズで出店する。10年で400店を目指す。2020年10月に横浜市中区に初出店した。4月2日に大阪市中央区に関西1号店、同16日に川崎市川崎区に神奈川2号店、5月中旬に足立区に都内2号店を出す。6月には広い駐車場を設ける初の路面店を千葉県柏市に開業させる。

 プロ仕様の機能が優れるウエアが好評で、ワークマンには多くの一般客が訪れている。駐車場が満車状態の店舗があり、「育てていただいたプロのお客さまに敬遠されてしまう」(土屋専務)と危機感が強く、顧客のすみ分けを急ぐ考え。「お子さんや男性の商品も選んでいただきたい」(同)と、#ワークマン女子は女性目線の店舗運営を心掛ける。

2021年3月18日木曜日

【回転窓】ダイヤ改正にドラマあり

  鉄道のダイヤ改正は日常利用者だけでなく鉄道ファンも注目している。13日の改正で、通勤で使うJR東海道線の東京~小田原駅間は、朝・夕夜間に運転していた「湘南ライナー」が姿を消した▼今年に入り改正前に走る電車の姿をカメラに収めようと、駅ホームに鉄道ファンの「撮り鉄」の人数が増えた。シャッターチャンスを逃すまいと真剣な表情でファインダーをのぞく姿。通勤電車で窓越しに彼らの姿を眺めるのが楽しみの一つになった▼最終運行だった12日は、沿線の撮影スポットでも多くの人を見掛けた。集音マイクで駅構内のスピーカーから運行案内を録音する「録り鉄」の姿も。「乗り鉄」もいたのか、乗客がいつもより多いように感じた▼ファンたちの熱気を受け、自分も懐からスマートフォンを取り出し、普通列車と並走する湘南ライナーを記念に撮影。ピントや構図は甘かったが、セーラー帽をかぶったカモメの絵柄のヘッドマークが付いた後尾車両が撮れた▼後継にはホームライナーから格上げされた特急「湘南」が新車両でデビュー。沿線住民はもちろん、鉄道ファンにも愛される列車になるよう願いたい。

【現代書林が復刻、土木技術者20人を紹介】田村喜子さんの『土木のこころ』、大型書店でベストセラーに

  ノンフィクション作家で土木技術者に焦点を当てた作品でも知られる田村喜子さん(1932~2012年)の書籍『土木のこころ復刻版-夢追いびとたちの系譜』(現代書林)がベストセラーになっている。絶版状態になっていた書籍を寿建設(福島市)の森崎英五朗社長の発案で復刻。3月から書店の店頭に並んだ。東京都中央区の大型書店「八重洲ブックセンター本店」が先行発売し、7~13日の一般教養書ベストセラーで1位になった。総合ベストセラーでも2位という。

 田村さんは作品で琵琶湖疏水を手掛けた田辺朔郎(1861~1944年)ら、明治から昭和にかけて活躍した20人の土木技術者を紹介している。復刻版は注釈や年表を加え読みやすい構成。漫画家の福本伸行氏が東日本大震災後、土木関係者向けに描いたイラストが帯を飾っている。

 書籍復刻の反響は大きく、「世の中にこのような本の登場をどこかで待つ気持ちがあったのかと感じる。田村喜子さんが伝えたかった思いが20年近いの時を経て広がっていくことを期待している」と森崎社長。価格は1750円+税。書店やネット通販で購入できる。

【設計は佐藤総合計画JV、9月23日グランドオープン】あきた芸術劇場(秋田市)、愛称は「ミルハス」に

 秋田県と秋田市は、同市中心部の千秋公園にある秋田県民会館跡地に共同で建設している新文化施設「あきた芸術劇場」の愛称をミルハスに決めた。
 ミルハスはフランス語で「千」を意味する「ミル」と、千秋公園に咲いている「蓮(はす)」を組み合わせた造語。2020年8月11日~9月23日に一般公募したところ、県内外から応募があった1325点の中から選定した。

 あきた芸術劇場は22年6月5日にプレオープンし、9月23日にグランドオープンとなるこけら落とし公演を予定している。

 建物の構造と規模はSRC一部S造地下1階地上6階建て延べ2万2653平方メートル。建築面積は8581平方メートル。高い音響効果やステージ機能を持つ客席2007席(1階1380席、2階627席)の大ホールや、質の高い舞台芸術の実演に適した800席(同500席、同300席)の中ホールなどで構成する。両ホールのリハーサル室を兼ねた二つの小ホールも設けるほか、練習室や和室、創作室、研修室、レストランなども整備する。

 設計は佐藤総合計画・小畑設計JV、建築工事は竹中工務店・大森建設・シブヤ建設工業・加藤建設JVが担当している。

【40年の歴史に幕】成田空港会社、旧管制塔解体に着手

  成田国際空港会社は17日、成田国際空港(千葉県成田市)にある旧管制塔の解体工事に着手した。塔上部から順に解体。8月までに建物は完全に姿を消すことになる。外構を含めた解体の完了は2022年3月を予定する。施工は三井住友建設。1978年5月の開港から空港の安全を見守ってきた。

 旧管制塔の完成は1971年。RC造16階建て延べ約1400平方メートルの規模で高さが約64メートル。1993年に航空管制業務を新管制塔に移した後も、ランプコントロールタワーとして利用していた。

 成田空港会社は施設の再整備事業として、ランプコントロール機能を2020年9月にランプセントラルタワーへ移管。老朽化した旧管制塔を取り壊すため、同11月に付属棟などの解体が始まっていた。跡地の利用方法は未定。成田空港会社と国土交通省が協議する。

 成田国際空港は、第3滑走路新設や新ターミナル整備などの大規模な拡張事業が控える。開港目前の1978年3月に過激派が占拠事件を起こすなど、さまざまな出来事があった旧管制塔は役割を終え、40年を超える歴史の幕を閉じる。

【全面建替も視野、屋根設置は困難】横浜市、三ツ沢球技場(神奈川区)の大規模改修検討

現在のニッパツ三ツ沢球技場(横浜市提供)

  横浜市は2021年度、サッカーJ1横浜FCがホームスタジアムとして使用している「ニッパツ三ツ沢球技場」の大規模改修に向け検討を開始する。20年度の調査で既存メインスタンドへの屋根架設は困難との結果が出ている。メインスタンドやスタジアム全体の建て替えを視野に入れた検討になる見通し。21年度予算案に約1000万円を計上した。改修スケジュールは未定だが、早期の具体化を目指す方針だ。

 所在地は神奈川区三ツ沢西町3の1(三ツ沢公園内)。1955年に国体のラグビー会場として建設した。現在はサッカー、ラグビーなどで使用している。93年のJリーグ開幕に合わせた改修や、その後の耐震補強などは行っているが、メインスタンドに屋根がなく、Jリーグのクラブライセンス基準を満たしていない。市は大規模改修を検討していた。

 昨年度に▽既設メインスタンドに屋根の増設▽メインスタンドの建て替え▽球技場全体の建て替え-の3案を比較検討。施設が老朽化しているため、既設メインスタンドへの屋根架設は困難なことが明らかになった。

 既存施設のフィールドは30×74メートル。メインスタンドはRC造3階建てで、建築面積2478平方メートル、延べ床面積5049平方メートル。バックスタンドとサイドスタンドはRC造平屋、建築面積4639平方メートル、延べ床面積6629平方メートル。収容人数は1万5454人(メインスタンド5580人、バック・サイドスタンド9874人)。市によるとJリーグからも横浜FCを通じて屋根設置の要望が届いているという。

2021年3月16日火曜日

【名称は「OBAYASHI-SITE」】大林組、甲子園外周エリア広場の命名権取得

  阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)を運営する阪神電気鉄道は、レフトスタンド外周エリアに新設した広場のネーミングライツ(命名権)契約を大林組と締結することを決めた。名称は「OBAYASHI-SITE」。

 阪神電鉄が「365日のにぎわいのあるボールパークエリアの形成」を目指す取り組みの一環として広場を整備。設計と施工を大林組が担当した。

 広場にはスコアボード型モニュメントや球場の歴史を振り返るパネル、植栽、ベンチなどを設置。野球開催日以外でも憩いの場を提供できるよう敷地境界のフェンスを撤去し回遊性を高めた。甲子園球場の担当者は「球場誕生から共に歩んできた大林組と検討を重ねてきた。歴史を感じながら楽しめる広場として活用してほしい」と話している。

【木更津市に新本社建設】コストコホールセールジャパン、国内60店舗体制目指す

新社屋の完成イメージ

  コストコホールセールジャパン(川崎市川崎区)のケン・テリオ社長は15日に千葉県木更津市で記者会見し、国内60店舗体制を目標に掲げ施設開発に取り組む方針を明らかにした。業務拡大に伴い本社が手狭になるため、新社屋を同市のコストコホールセール木更津店の北東側隣接地に建設する。7月に着工する予定。2022年春の完成、同年6月の供用を目指す。設計・施工は大成建設が担当。テリオ社長によると、今後8~10年後を見据えた第2期整備構想も検討している。

 コストコホールセールは米ワシントン州に本社を置くメンバーシップ制の倉庫型小売り大手。日本進出は1999年で現在27店舗を展開している。今後10年間で60店舗体制の構築を目指す。年間2~3店舗を新規開業する計画だ。年内に熊本御船倉庫店(熊本県御船町)、石狩倉庫店(北海道石狩市)、守山倉庫店(名古屋市守山区)の3店舗がオープンし、30店舗体制になる。

 テリオ社長は具体的な候補地を明かさなかったが、千葉県内でさらに2~3カ所程度の新規開発を検討しているという。同社が設定している店舗開発の土地条件は▽半径10キロの人口が50万人以上▽敷地面積3・3万平方メートル以上▽建築面積約1・5万平方メートル▽駐車場収容台数800台以上-など。

 新社屋は、千葉県が施行している金田西特定土地区画整理事業区域の2街区2・3画地(瓜倉)に建設する。敷地面積は5万1882平方メートル。建物はRC造5階建てで延べ約2万4000平方メートルの規模を計画する。首都圏3カ所に分散している本社機能やコールセンターを集約し、将来的な増員も可能な広さを確保する。

 第2期整備は第1期で駐車場を設ける場所に社屋を設ける予定。22年6月の第1期供用開始時は300~400人の従業員が働く。第2期整備後は最大2000人が働く拠点になる。

 テリオ社長は木更津を選んだ理由について「千葉県内の既存3店舗や千葉県市原市にある物流倉庫とのアクセスが良く、都心や空港との利便性も高い。川崎の現本社は手狭で、分散している本社機能を集約できる土地を探していた」と説明した。本社移転で「従業員だけでなく国内外からベンダーなど、年間数百人が本社を訪れる」見通し。交流人口の増加と地域の発展に貢献できるとしている。

【記者手帖】神宮のスズメ

  スズメは日本人に最も身近な野鳥といって差し支えないだろう。都会では数が減っていると聞くが、新潟市内では田畑に集まって餌を探す姿をよく見掛ける◆通勤途中にある駐車場では時に数十羽が餌をついばんでいる光景に出くわす。定期的に餌をあげる人がいるのだろう。そんな餌付けされているようなスズメたちも決して人に近づこうとはしない。そばに寄ろうとすると一斉に飛び立ってしまう◆だが、都会には人を恐れないスズメもいるように感じる。たまに行く神宮球場では学生野球の開催中、スタンド内にスズメがかなりやってくる。神宮外苑には緑が多く、ねぐらと餌に事欠かないのか、条件さえ整えば都会でもスズメが増える素地はあると思える◆神宮のスズメだが餌をねだっているのか足のすぐ近くまで寄ってくる光景をよく見掛ける。さすがに体へ乗ることはないが、田舎のスズメでは考えられない行動だ。神宮球場ではまもなく東京六大学、東都大学のリーグ戦が始まる。神宮といえばヤクルト。マスコットはツバメなのだが、人懐こいスズメに会える場所でもある。(石)

【回転窓】父親のダミ声とカセットテープ

  その昔、歌手が新曲を発表する場はテレビの歌謡番組かラジオと相場が決まっていた。新聞のテレビ欄に「○○が新曲披露」と書いてあると、ラジカセをテレビの前に置きカセットテープに録音した▼ケーブルをつないで音を取り込む方法など思いつかずラジカセの内蔵マイクで音を拾う。余計な会話が入らないよう家族に話すなといっても事情を知らない父親は大声を出し、カセットテープの新曲はダミ声混じりになるのが常だった▼カセットテープは1963年、オランダの総合電機大手フィリップに在籍していた技術者・ルー・オッテンスさんのチームが開発したそう。レコードが主だった録音手段に革命をもたらし音楽鑑賞の幅を広げたカセットテープ。CDの開発にも携わったオッテンスさんが6日、94歳で死去したと時事通信が報じていた▼時代を席巻したカセットテープ。すっかり姿を消したと思っていたら、ここに来て人気が出始めているという。入手が難しくモノによってはプレミアム価格で取引されるケースもあるとか▼1本数千円したメタルテープを買った時のドキドキした気持ち。懐かしい思い出がよみがえる。

2021年3月15日月曜日

【回転窓】前を向くしかない

 「思い込み」とは実にやっかいで恐ろしい。時に企業の存続や人命にかかわる重大な事態を招くこともある。誰もが大なり小なり苦い経験をしたことがあろう▼最近仕事で思い込みによるミスが続いた。負の連鎖を断ち切ろうと自宅で強めの酒を飲んでみたものの効果があるはずもなく、ミスの暗い影が忍び寄ってくる。「人間は間違う生き物」と自覚し、微妙な変化や違和感を察知する。慌ただしい日々に流されてしまうのも事実だが、一歩立ち止まり足元を見つめ考える余裕を持たねば▼建設現場で起こる事故の多くはヒューマンエラーが原因という。「危険に対する感受性を磨く」。経営トップや安全担当がたびたび口する言葉を地道に実践するしかない▼日進月歩で進化を続け急速に利用が広まる人工知能(AI)。絶対にミスをしないと思いがちだが決してそうではない。「起こらないこと、見えない脅威に対処しない」のがAI。人との違いはここにあり、限界を突破するには時間がかかる▼経験を積む過程では手痛い失敗や苦い思いをすることもある。大切なのは教訓をしっかり次に生かすこと。前を向くしかない。

【初回は柳家小きん師匠】建コン協、土木×落語プロジェクト始動

  建設コンサルタンツ協会(建コン協、高野登会長)は、土木への関心を深めてもらう目的で「土木×落語プロジェクト」をスタートする。

 落語家の柳家小きん師匠に新作落語を依頼。4月23日に東京都豊島区の池袋演芸場で行われる独演会で披露した後、動画投稿サイトのユーチューブで公開する予定だ。

 土木と落語を組み合わせた異色のコラボレーションを通じ、生活を支えるインフラと土木技術者の役割をアピールする。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受け、建コン協は「笑顔を届ける落語で土木を伝え、さまざまな切り口で新作落語を創作する」としている。

 動画配信は、メイキングCMや土木×落語の制作秘話なども収録する。詳細は土木落語プロジェクトのユーチューブチャンネルへ。




【凜】日本下水道事業団関東・北陸総合事務所・田名網毬乃さん

  ◇感動を後輩に伝えたい◇

 浄化センターの増設や雨水幹線整備の施工管理を担当する新卒の1年目。現場で飛び交う専門用語に戸惑ったり、平面の図面を立体でイメージするのに苦労したりしながらも、「難しいことを1人で判断できるような技術者になりたい」と仕事と勉強に励んでいる。

 阪神大震災の被災地で育った。震災を身近に感じ、印象深いことが多くある。中学の卒業式の日に東日本大震災の地震と津波の被害に衝撃を受けた。土木系学科に進んだ大学では、カリキュラムに組み込まれていたこともあって防災士の資格を取得。避難訓練の誘導などで地域の人たちと防災や安全・安心に触れる時間を過ごした。地震や津波について学ぶ中で「防災の役に立つ仕事に携わりたい」と考え、水インフラの担い手を職場に決めた。

 コロナ禍の新人研修に苦労したが、「スケールの大きな土木構造物が、何もないところから出来上がる過程が見られて楽しい」と現場で感じている。施工管理だけでなく、水処理を巡る知識の習得も欠かせない。上司の運転で現場に向かう車中は仕事を学ぶ貴重な時間。土木技術者を志す後輩には「この仕事だから感動できることがある」とやりがいや魅力を伝えようと考えている。

 趣味は音楽鑑賞。ライブに行くのが難しい状況が続く。「形や色がもえる感じ」とお気に入りの有名な消波ブロックのある海を眺め、気分転換する。

 (施工管理課土木担当、たなあみ・まりの)