2023年3月6日月曜日

東日本大震災から12年-福島第1原発の現在地・上/ALPS処理水放出へ準備進む

東日本大震災で重大事故が発生した福島第1原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)。廃炉作業に取り組む東京電力ホールディングス(HD)は放射性物質トリチウムを含むALPS(アルプス、多核種除去設備)処理水を海洋放出するため、海底放水路の掘削工事を進めている。1号機は燃料デブリ取り出しに向けたカバーの設置工事が進み、2号機は試験的なデブリ取り出しに着手する。廃炉は新たな局面を迎えつつある。(編集部・坂口恭大)
敷地内は1日当たり約130立方メートルの処理水が発生する。今のペースで増えると、処理水保管用に設けた構内の137万立方メートル分のタンクは、今年の夏から秋に満杯になる。1、2号機の燃料デブリ取り出しには広大なスペースが必要。タンクが所狭しと並ぶ敷地の現状を改めねばならない。
政府は1月に改定した行動計画で、海水で薄めた処理水の放出時期を春から夏と位置付けている。処理水を流すため、海底を沖合に向かって掘削し放水路を設ける。放水トンネルや、希釈用の水槽などの設備を大成建設が施工している。
希釈用水槽にためた処理水と海水の水面差により、沖合約1キロに設置する放水口から処理水を海に放出する仕組みだ。トンネル造成工事は、海底面から約14メートル下の岩盤層を泥水式のシールド工法で掘り抜く。鉄筋コンクリート製のセグメントに二重のシール材を貼り付けた構造で水の浸透を抑える。耐震性を確保し、台風や高潮などの影響を受けないようにする。
放水口の部分は海底にケーソンを設置し、周囲をコンクリートで埋め戻す。海上運搬したケーソンを大型起重機船で据え付ける。波高の低い時を狙って水中不分離コンクリートを6回に分けて流し込み、今春中にも工事を終える。
地上部は処理水の希釈放出設備や関連施設などの設置工事が進む。海水移送ポンプの設置や流量計の設置、配管ヘッダの取り付けなどを行っている。濃度の測定・確認用設備と移送設備の設置も実施。設置が完了した設備から使用前の検査を行い、海洋放出に備える。
希釈設備で1日当たり34トンの海水をくみ上げて処理水と混ぜ、放出水のトリチウム濃度を1リットル当たり1500ベクレル未満にする。ALPSの能力を落とさないよう、海水内のカルシウムやマグネシウムのイオンを前処理設備であらかじめ除去する。トリチウム量の測定などを経て、希釈用水槽に5号機の取水路からくみ上げた海水を流し込む。
処理水を保管しているタンクの跡地活用方法は課題のまま。東電HD廃炉コミュニケーションセンターの高原憲一リスクコミュニケーターは「長期スパンで考える必要がある」と話す。1、2号機から取り出したデブリの保管設備や設備メンテナンス用の建屋、デブリ除去設備を構築するヤードなどを整備する案が出ている。

構内に並ぶ処理水の保管タンク群。跡地利用の検討が急がれる(1月10日、代表撮影)

source https://www.decn.co.jp/

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