2019年4月24日水曜日

【回転窓】ヨモギと蓬

 和製ハーブと呼ばれるキク科の多年草ヨモギ。この時期は新芽を摘んで、おひたしや草餅などで食べるとおいしい▼ヨモギは繁殖力が強く、独特の香りと鮮やかな緑色が特徴だ。おきゅうで使うもぐさの原料で、止血効果もあることから、薬草としても知られる▼この万能の野草は建設工事にも使われている。土と他の野草の種などと一緒にのり面へ吹き付け緑化する。成長が早く、地上部が枯れても、株が土の中で生息し続けるので土壌の固定に適しているという。ただ、成長が早く除草が大変という声も▼ヨモギは漢字で書くと「蓬」となるが、植物学者の牧野富太郎氏は『植物一日一題』(ちくま文芸文庫)で「艾(がい)と書くのが本当」とし、蓬は別の品種と指摘。アカザ科のハハキギのことで、中国の砂漠地帯で育つ植物としている。日本の学者が間違って使い、それが今も続いていると、手厳しい▼きょう24日は牧野氏の生誕(1862年)を記念した「植物学の日」だそう。94歳で世を去るまで、生涯を植物研究に費やし「植物学の父」と呼ばれた。この大型連休は野草を探し、近くの多摩川でも散歩してみるか。

【民間事業化へ対話調査実施】新国立、球技専用スタジアム化へ意見聴取

日本スポーツ振興センター(JSC)は、2020年東京五輪・パラリンピック閉幕後にコンセッション(公共施設等運営権)方式の導入を含む民間事業化を検討している新国立競技場について、マーケットサウンディング(民間事業者の意向調査)を実施する。

 民間事業者からの申請書類(関心表明書と守秘義務順守誓約書)を5月27日まで受け付ける。

 JSCは23日、「国立競技場特定運営事業等実施方針(素案)」を公表した。マーケットサウンディングでは素案への質問や意見も募集する。実施方針では、運営事業のスキームや優先交渉権者の選定方法、応募者の要件などの基本的な考え方を示した。

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/不法滞在者の取り締まり強化

政府が不法滞在外国人の取り締まりを本格化させている。法務部は4月から国土交通部、雇用労働部など5省庁合同の取り締まりチームを設置し、不法滞在者と雇い主の取り締まりを強化。合同取り締まりを毎週2回実施し、法務部単独の取り締まりも行う。

 法務部は摘発された不法滞在者に対して、入国を最大10年禁止する計画。不法滞在者を雇用した事業主には3年以下の懲役または2000万ウォン以下の罰金が科せられる。同部関係者は「不法滞在の外国人を雇用しているという申告があった事業所から優先的に取り締まる。既にこうした申告が多数ある」と話している。

 建設産業で外国人労働者が合法的に働くには「就職教育」を受ける必要があり、人数も5.5万人に制限されている。企業側は低価格で受注した工事を進めるため、不法滞在の外国人労働者を雇用するケースが増えているという。建設業界からは取り締まりを強化する前に、賃金が安い外国人労働者を使わざるを得ない業界構造・環境を改善する必要性を訴える声も出ている。

CNEWS、4月5日)

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/女性の就業割合11%

韓国建設産業研究院が11日公表した統計庁資料の分析結果によると、建設業の全就業者(2018年6月時点)のうち女性は11・0%にとどまった。

 05年調査の8・8%から2.2ポイント上昇したが、国内全産業の平均値である42・9%、製造業の28・8%と比べても著しく低水準で推移していることが分かった。

 建設産業の職種ごとの女性比率の内訳は、総合建設業が9・07%、専門工事・電気が8・82%。一方で建築設計とエンジニアリング分野は18・84%と相対的に高かった。

 韓国建設技術者協会によると、17年末時点の登録技術者80万2117人のうち女性は10万4583人(13・04%)。職種別では建築士が1万5301人のうち1509人(9・86%)、技能士が12万0177人のうち1万2684人(10・55%)となり、それぞれ平均値を下回った。建設技術者の最上位資格である技術士は2万8894人のうち544人(1・88%)にとどまる。

CNEWS、4月12日)

【優秀作品に34点】関東整備局、河川工事フォトコンの結果発表

 関東地方整備局は、「河川工事(河川・ダム・砂防)“ナマ”現場写真コンテスト」で34点の優秀作品を選んだ。管内にある河川、ダム、砂防工事の事務所や管理所など、関係組織ごとに賞を設けた。

 優秀作品から厳選してカレンダーを作製する。管内での掲示や同局ホームページ(HP)などへの掲載も予定する。

 コンテストは河川工事関係者が撮影した現場写真が対象。人目に触れる機会の少ない工事現場などの様子を伝え、河川工事への理解を深めるのが狙い。303点の応募があった。日刊建設工業新聞社らが加盟する竹芝記者クラブも優秀作品1点を選定した。

 優秀作品は次の通り。▽受賞名=作品名。

 ▽利根川上流河川事務所事務所長賞=「未来を担う若手技術者の素顔」「利根川と水門工事」▽利根川下流河川事務所事務所長賞=「排水樋管を築造中」▽霞ケ浦河川事務所事務所長賞=「予備ゲート曳航中!」▽霞ケ浦導水工事事務所事務所長賞=「那珂川魚類迷入試験施設工事風景」▽江戸川河川事務所事務所長賞=「特殊高所作業車によるキャットウォーク点検作業」「川砂の採取」

 ▽渡良瀬川河川事務所事務所長賞=「子供たちへ!ママは現場で頑張ってるよ!」「未来の技術者」▽下館河川事務所事務所長賞=「無振動施工」▽荒川上流河川事務所事務所長賞=「女性職長が活躍しています!」「富士山にぶつけるな!」▽荒川下流河川事務所事務所長賞=「青空の下で護岸の詰石作業中」「ゼロメートル地域で堤防耐震化真っ盛り」▽京浜河川事務所事務所長賞=「夕暮れ時の帰宅路は渡河路」「富士山に向かって走向するローラー車」「技術者の卵による将来の夢」「根固めブロック据付(水上施工)」

 ▽利根川水系砂防事務所事務所長賞=「浅間山の門番」▽日光砂防事務所事務所長賞=「世界遺産を未来に残すために…」「振り向けば絶景」▽富士川砂防事務所事務所長賞=「下界を彼方に…」「崩壊地との戦い」▽八ツ場ダム工事事務所事務所長賞=「完成をめざし」「現場で働く女性社員」▽利根川ダム統合管理事務所事務所長賞=「ロータリー除雪」「失礼します」▽鬼怒川ダム統合管理事務所事務所長賞=「ジャングルジム・オブ・ダム」

 ▽相模川水系広域ダム管理事務所事務所長賞=「曳航自沈式アンカーの設置」▽品木ダム水質管理所管理所長賞=「見学?オペレーター?」▽常陸河川国道事務所事務所長賞=「見学所より現場を望む」▽高崎河川国道事務所事務所長賞=「穏やかな烏川」▽甲府河川国道事務所事務所長賞=「堤防のお手入れ」▽記者クラブ賞=「もう一息」。
カレンダー選定作品一覧(関東整備局報道資料より)

2019年4月23日火曜日

【回転窓】気後れせずに一歩前へ

新年度がスタートして20日余り、進学や就職、転勤などで新しい生活をスタートさせた方も多かろう▼地方から東京や大阪などの都市部、そして都市部から地方に。見知らぬ土地に赴き生活すると不慣れで心配なことはあるけれど、新しい発見があって浮き浮きした気分になれる。ただ、東京から地方に生活の場を移すと、思っていた以上に活気が失われてしまっているところが多いとも感じる▼地域活性化は多くの自治体にとって大きな課題。あの手この手を打ち出す中で、龍谷大学と京都市、伏見区にある市営住宅の自治会が自治会活動を盛り上げるため、協定を結んだという▼龍谷大に通う学生3人が今月から同区にある田中市営住宅に住み、自治会行事の企画に参加したり、災害時に高齢者を支援したりなどさまざまな活動に加わるそうだ。後継者不足が悩みの自治会、学生に社会経験を積ませたい大学にとって有益な取り組みだろうし、地域の方々とのコミュニケーションは学生にもきっと貴重な経験になるだろう▼周囲とどう関わっていくのか。気後れせず一歩前に出ると、思ったよりも簡単に世界は広がるはず。

【記者手帖】中小企業の後継者問題

 「○○く~ん」。先日、会社前の横断歩道を渡っていると、ふと誰かに呼ばれた気がした。足を止めて振り返ると、今度ははっきりと自分を呼ぶ声が聞こえる。目を凝らすと、向かってくる人たちの後ろで手を振っている男の人がいた◆前職でお世話になった取引先の社長だった。肌着の卸会社を経営している2代目。年齢は70を超えているはずだ。「いやー、会う気がしてたんだよ」。ひょうひょうとした感じは以前と全く変わらない。聞くと、近くの会計事務所へ打ち合わせに行くところだという◆繊維関連企業は厳しい経営環境が続いている。嗜好(しこう)の多様化やネット通販の台頭、百貨店の不振、供給過多など要因は複数ある。加えて中小企業で深刻なのが後継者問題だ。先行きが不透明な中、跡を継ぎたがる人は少ない◆社長には元プロフットサル選手の息子がいる。引退後は父親の会社に入社したが、繊維とは無関係の仕事をしている。不安定な本業とは別のことをした方がいいと判断したのだろう。悩みは尽きないはずだ。久しぶりに顔を見て、また連絡を取ってみようと思った。(W)

【建設過程を臨場感あるれる映像で】海ほたるPA、リニューアル工事完了!!

5階に開設した「うみめがね」
東日本高速道路会社と東京湾横断道路が進めてきた東京湾アクアラインの休憩施設「海ほたるPA(パーキングエリア)」(千葉県木更津市)のリニューアル工事が完了し、20日に施設がオープンした。1階のエントランスや5階の店舗の全面改装、1~3階のトイレ改修などを実施。5階の通路を屋内タイプに改め、東京湾アクアラインの整備過程や建設技術などを紹介するシアターを新設した。

 海ほたるは全国に870カ所以上ある高速道路の休憩施設のうち、海上に位置する唯一の施設。年間760万人以上が利用する。1997年12月の供用から20年以上が経過し、利便性や顧客満足の向上を目的に2018年2月から大規模なリニューアル工事を行っていた。総工費は45億円で、商業施設に15億円、トイレ改修に15億円、うみめがねの整備に5億円、既設構造物撤去に10億円を投じた。
屋内タイプに変更した5階通路
5階は強風対策として、屋根、ガラス窓を設置し、安全性と荒天時の快適性を高めた。千葉県産の食材も用いる洋食店、すし店、旬のテーマやキャラクターとコラボレーションするテーマ型カフェ「HOTARU CAFE(ホタルカフェ)」をオープン。ホタルカフェの第1弾は大人気アニメ「ONE PIECE」となっている。

 シアターの名称は「うみめがね(アクアラインシアター)」。厳しい施工条件をクリアするために、設計から施工まで当時の最先端技術・工法を結集し、「土木のアポロ計画」と呼ばれた東京湾アクアラインが整備された背景と建設過程を没入感のある映像で紹介する。1~3階のトイレには、女性用のパウダーコーナーや多機能トイレなどの設備を導入した。

 20日には小島治雄東京湾横断道路社長、小畠徹東日本高速会社社長、渡辺芳邦木更津市長、河南正幸千葉県県土整備部長、テナント関係者、ゲストで千葉県出身の女性タレントの吉木りささんらが参加したオープニングセレモニーを開いた。

 小島社長は「4回のリニューアルの経験を生かし、風の影響を受けることなく楽しめるようにした館内のサービスを満喫してほしい」とあいさつ。

 小畠社長は「建設過程を臨場感ある映像でご覧頂ける」とうみめがねに期待を寄せた。吉木さんは、海をイメージした青が差し色のワンピースで登場し、「『なんてきれいな海なんだ』と感じながら、海ほたるに何度も足を運んでほしい」とアピールした。

【総延べ85万㎡、20年着工へ】品川駅北周辺地区の都市計画が決定

 政府は、JR東日本グループが東京都港区で計画する「品川開発プロジェクト(第I期)」に関連し、品川駅北周辺地区の都市計画を決定(内閣総理大臣認定)した。

 同プロジェクトでは、JR品川駅北側の品川車両基地跡地などを1~4街区に分け、延べ約85万m2のオフィス、住宅、文化創造施設などを整備する。

 JR東日本は、開発に伴う全体のデザイン構想と4街区のデザインアーキテクトに米大手設計事務所のピカード・チルトンを起用した。

 都市計画は、政府の東京圏国家戦略特別区域会議(11日)、国家戦略特別区域諮問会議(17日)が決定した。JR東日本は20年ころの着工を目指し、関係機関との調整、手続きを進める。

 街開きは24年ころを予定している。全体デザイン構想と、隣接するJR山手、京浜東北両線の「高輪ゲートウェイ駅」のデザインアーキテクトは、隈研吾建築都市設計事務所が務めている。

【来年3月、五輪聖火リレー出発】Jヴィレッジが全面再開、福島復興のシンボルに

新宿泊棟(奥)と練習ピッチ
福島県楢葉、広野両町にある大型サッカー練習施設「Jヴィレッジ」が20日、2011年の東日本大震災から約8年ぶりに全面再開した。近隣には鉄道アクセスが可能になるJR常磐線の新駅「Jヴィレッジ駅」も開業。福島県や地元自治体にとって震災からの復興を目指すシンボルとなる。
全天候型屋内練習場の内部
Jヴィレッジは東京電力福島第1原発事故の後、事故対応の前線基地として使用された。ピッチに鉄板が敷かれ工事車両などを駐車。建物も工事関係者が使用し事故対応に当たった。17年3月までに前線基地としての役割を終え、施設の原状回復や新施設の整備などを進めてきた。
Jヴィレッジ駅はホームと駅舎の高低差が20mある
Jヴィレッジ駅は地元の強い要請を受けJR東日本が整備した。常磐線の広野駅と木戸駅の間に位置。イベント・試合時に列車が臨時停車する。大型連休中は毎日上下各5本の列車が停車するという。
地元の要請に応え、約11カ月という短工期で駅を完成させた
駅の営業中はサッカー日本代表の試合などで用いられているヴェルディ作曲の「アイーダ」がBGMとして流される。

2019年4月22日月曜日

【回転窓】バイアスに要注意

バイアスとは統計学の用語で「偏り」のこと。先入観にとらわれたり、色眼鏡で見たり、偏見があったりする場合に最近は「考え方にバイアスがかかっている」などとよく表現される▼2017年12月11日、博多発・東京行きの東海道・山陽新幹線のぞみ34号の台車枠に亀裂が見つかった問題で、国土交通省の運輸安全委員会は先月、異音・異臭に気付きながら運転を続けたJR西日本の対応を「正常性バイアスが働いたと考えられる」と指摘した▼正常性バイアスは「認知バイアス」の一種で、正常化の偏見とも訳される。本人に都合の悪い情報は無視したり、過小評価したりする傾向が人間にはあり、災害時の逃げ遅れの原因としても挙げられる▼地震が来ても「自分は大丈夫」と思う気持ちがどこかにあって、即座に避難行動をとろうとしない心の動きには、多くの人が身に覚えがあるのではないか。一方で、この「大丈夫」には何の根拠もないことも理解はしているはずだ▼人間には何か問題が発生しても「まだ正常の範囲にある」と都合よく処理しがちな面がある。そうしたバイアスが存在することは忘れないでおきたい。

【インフラメンテ写真集が話題】写真家・山崎エリナさんが出版、書店でパネル展示も

 写真家・山崎エリナさんが出版した写真集『インフラメンテナンス~日本列島365日、道路はこうして守られている~』(グッドブックス)が話題になっている。

 東京都中央区にある大型書店「八重洲ブックセンター」のランキング(総合部門、3月31日~4月6日)で首位となり、7~13日も3位と好調だ。

 トンネルや橋梁、高速道路などの維持管理に取り組む姿を撮影した。道路維持などを手掛ける寿建設(福島市)の森崎英五朗社長がインフラメンテナンスの仕事を広く知ってもらおうと、山崎さんに協力を呼び掛けたことが出版のきっかけという。ネクスコ・メンテナンス東北(仙台市青葉区、山崎幹夫社長)と小野工業所(福島市、小野晃良社長)も協力した。

 八重洲ブックセンターでは5月6日まで出版記念写真展を開催。ジュンク堂書店池袋本店(東京都豊島区)など全国31店舗でもパネル展示が行われている。山崎さんは「作業している人が格好良かった。たくさんに方に見てほしい」と話している。

【回転窓】予報士泣かせの大型連休

 予報が外れて喜ばれることもある専門家の一つに気象予報士がある。悪天候を承知で出掛けたのに目的地は予報と違った天候になり、得した気分になれた経験をお持ちの方もおられよう▼予報士がいるのは気象だけではない。前例のない10連休を前に、東日本高速道路会社の「渋滞予報士」が渋滞予測の取りまとめに苦慮したと聞いた。知識をフル活用した大型連休の予測。関東は交通量が分散されて30キロ以上の大渋滞は少なく、下りは5月3日、上りは5月5日の渋滞が目立つという▼高速道路には春の大型連休が年間売上高を左右する休憩施設がある。大型休憩施設のある担当者は「大勢に利用していただきたいが、売り上げが増えるということは渋滞の距離、時間が長いので…」と申し訳なさそうに語る▼渋滞は嫌だけれどせっかくの10連休、これまで足を運べなかった目的地を目指す人も多いはずだ。高速道路の管理者は連休中も快適に走ってもらおうと、緊急対応に万全を期しながら、「分散利用を」とアナウンスしている▼思惑が交錯する連休の高速道路。もし混雑予報が外れたら…。渋滞予報士にぜひ聞いてみたい。

【凛】首都高技術工事計画部・津田ひかるさん


 ◇構造物を長く大切に守りたい◇

 入社3年目で維持・修繕工事などの積算を担当している。

 「工種が複数あって使う材料も多い。工事ごとに条件が違って、地道に覚えるしかありません」

 既設構造物が対象の積算は新設工事と異なる特有の苦労がある。支承の取り換えを含む工区の長い耐震化工事の積算を仕上げた時、納品する分厚い設計図書を見て「少しは頑張れたかな」と自信になった。

 高校生の時に福島で東日本大震災を経験した。インフラの必要性を感じ、中でも物資の搬送に欠かせない高速道路の大切さを認識した。

 インターンシップ(就業体験)で訪れた工事事務所でコンクリート構造物の点検などに立ち会い、コンクリート構造物の多い道路に興味を持った。「今ある構造物を長く大切に守りたい」。研究室の先輩が就職していたこともあって入社を決めた。

 「地道な作業の積み重ね」が土木の仕事の魅力の一つだと思っている。身近に目標にしている技術者がいる。「あの人に任せたら安心。理想は社内外から頼りにされる技術者でしょうか」と笑顔を見せる。

 いずれは現場で点検の実務を担当したいと考えている。「まだまだ知識が足りない。今の仕事をしっかり行って力を養おう」。強い決意を胸に秘めている。

 (工事計画課、つだ・ひかる)

【サークル】丹青社「ユニバーサル研究会」


 ◇「人と人をつなぐ」デザイン追求◇

 結成のきっかけは、東京・八丈島でNPO法人と共催した「ユニバーサルキャンプ」。参加した社員がダイバーシティー(多様性)を実現する上で何が必要かを話し合う中で、2007年に研究会を立ち上げた。

 誰もが利用できるユニバーサルデザイン(UD)。この考え方を空間の設計に取り入れ施工と結び付けるため、総勢49人の社員が参加。「人と人をつなぐ」をモットーに楽しみながら活動する。

 初期は視察会や施設の改修提案をメインに活動。16年4月施行の障害者差別解消法や2020年東京五輪・パラリンピック開催決定を機に活動範囲を社外にも拡大した。

 美術館とタイアップした「美術と手話プロジェクト」を始動。さまざまな人が芸術に触れられる機会をつくっている。4月には東京都内で開催された「ユニバーサルキャンプ」のイベント運営に参加、社内外で絆を強めている。

 今後の目標を「新たな可能性を作り出していく」と語るのは研究会代表の西岡克浩さん(経営企画統括部経営企画部)。他社にない独創的なデザインを取り入れた空間づくりにこれからも挑戦する。

【駆け出しのころ】駒井ハルテック執行役員製造本部副本部長兼富津工場長・坂本孝司氏

 ◇いつもコミュニケーションを◇

 大学で鉄骨の研究室に在籍し、当時の駒井鉄工(現駒井ハルテック)の関連会社に就職しました。別のもう1社との共同出資で発足した鉄工会社(ファブリケーター)で、社員の大半は両社からの出向者やOBです。新入社員は私1人だけで、20代の若手社員もいませんでした。

 最初の配属先は技術課。先輩や上司が使う日常的な用語が分からず、まずは用語を覚えることに必死でした。検査課や製造課と部署を異動するのですが、どの部署でも日々勉強でした。先輩からは「こんなことも知らないのか」とよくしかられたのを覚えています。

 この会社には約7年間勤めました。小さな会社でしたので、鉄骨の検査やお客さまの立ち会い、製造管理など、ファブでの仕事を一通り担当させてもらいました。同時に溶接管理技術者や非破壊検査技術者など必要な資格も取得しました。振り返ると、ここでの経験が大いに役立っています。

 当社に入社したのは、当時あった東京工場(千葉県松戸市)を見学させてもらったのが縁でした。製作している鉄骨は自分が担当してきた規模とは桁違いで、「うちに来ないか」と声を掛けてもらった時は、こうした大規模な鉄骨を担当してみたいと思いました。

 入社後、すぐに工場に配属され、製造を担当していたのですが、4年目に工務課に異動。顧客との折衝の仕事に就きました。ある時、上司にこれを担当してくれと、図面を渡されました。それは東京湾アクアラインの換気塔「風の塔」の施工でした。風の塔は川崎人工島に大小二つの換気塔を建設するものです。そのうち当社は小塔の製作を担当。現場施工が困難で、工期も短縮できるため、鉄骨ブロックを上下に分けて陸上で地組みし、海上輸送し、現地に据え付けることにしました。

 小塔の鉄骨は上部900トン、下部1600トン。これを海上輸送するには国内最大級の起重機船を使用するしかありません。このため、まず起重機船の日程が先に決まり、それに合わせて鉄骨製作、地組みという日程が組まれました。東京工場で製作し、当社の富津工場(千葉県)に製品を搬入して地組みを行ったのですが、厳しい工期で、連日徹夜作業が続きました。

 その時に感じたのは、みんなの力が一つの方向に向かえば「たいがいのことはできる」という気持ちでした。風の塔が完成した時に味わった達成感はいまも忘れられません。この仕事に携わった社員、関係者はみんなそんな気持ちを持っていると思います。

 われわれの仕事はチームで一つのモノを作り上げていきます。自分一人でできることは限られています。チームでの仕事で大切なのはコミュニケーションです。お互い声を掛け合い、助け合う。そんな気持ちがなくては良い仕事はできません。若い技術者には人と人とのつながりを大切にし、何でも挑戦する気持ちで日々の仕事に励んでもらいたいと思います。
30歳のころ、旅行先で撮った同僚との一枚(左端が本人)。
仕事だけでなく休日も同僚と過ごしていた
(さかもと・たかし)1985年日本工業大工学部建築科卒。92年駒井鉄工(現駒井ハルテック)入社、2014年製造本部富津工場副工場長、17年4月理事・製造本部副本部長兼富津工場長を経て同6月に現職。神奈川県出身、56歳。

2019年4月18日木曜日

【回転窓】広がるスマホ社会

世界のIT市場を席巻する「GAFA」。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社はいずれも米国を代表する企業で、世界規模で大きな影響力を持つ▼その一角のアップルが業績予想を大幅に下方修正し、年初に世界各国で株価が急落する「アップル・ショック」を引き起こした。主力製品「iPhone」の販売が中国市場で予想を大幅に下回り、世界的な分業生産体制を敷いていることで影響が広がった▼情報通信機器の利用環境は急速に変化している。総務省の通信利用動向調査によると2017年のモバイル端末の世帯保有率は94・8%。この10年間ほぼ横ばいで推移しているが、スマートフォンは75・1%と上昇傾向が続き、パソコン(72・5%)を上回った▼今週、NTTドコモが従来よりも割安の新料金プランを6月から導入すると発表。最大4割の大幅値下げとなり、他社がどう対応するか動向が注目される▼ネット社会が進展する中、来年春ごろには高速・大容量通信を可能にする次世代通信規格「5G」の商用サービスが始まる。値下げやサービス拡充を巡る競争は利用者第一でお願いしたい。

【120億円投資、今夏以降に順次開業】ホテル三日月グループ、越ダナンに大規模リゾート

 ホテル三日月グループ(千葉県勝浦市、小高芳宗代表)は総額120億円を投資し、ベトナムに大規模リゾート施設を建設する。同国中部にある港町ダナンに、五つ星ホテルを含む複合施設を段階的に整備する。

 設計をレーモンド建築設計事務所の現地法人レーモンド・ベトナムが手掛け、同国の大手ゼネコン・ヴィナコネックスが施工する。館内の設備関連工事はシグマエンジニアリングが行う。

 プロジェクトはダナン湾エリアにあり、オークションで落札した総面積13ヘクタールの土地で実施する。2017年3月に日本貿易振興機構(ジェトロ)の「新輸出大国コンソーシアム事業」に登録し、支援を受けて進出を図った。

 まずは既存施設を改修して7月に「ラグジュアリーヴィラ&オーシャンZONE」をオープン。続いて第1期として1ヘクタールを超える広さのドーム型全天候型温泉テーマパーク「温泉&アクアドームZONE」、1周450メートルの流水プールをはじめとするアトラクションや高級志向のヴィラ12棟48室を配置する「ガーデンラグーンZONE」を20年6月にオープンする。

 第2期では複合型の五つ星ホテル294室、地上80メートルの最上階に露天風呂のようなプールゾーン、日本文化を体感しながら和洋中の食事が楽しめる「ホテル&レストランZONE」を21年4月にオープン。ホテル客室は最終的に500室とする計画だ。

 プロジェクトを進める同グループには、ベトナムから投資登録証明書(IRC)が発行されている。小高代表は「日本のおもてなしを届け、近い将来、ダナンの観光サービスの質の向上に寄与、貢献すると確信している」と話している。

 今回のプロジェクトでは、商工中金千葉支店がアレンジする総額90億円のシンジケートローン(協調融資)が組成された。千葉、三井住友、みずほ、京葉、千葉興業の5行と銚子信用金庫の相互協力で、同グループの取り組みを後押しする。

【震度7級再現、建材などの試験に活用】国内最大規模の静的加力装置、建研施設内に完成

 建築研究所(建研、緑川光正理事長)は、建築部材の性能評価に使用する静的加力装置を、茨城県つくば市にある研究施設内に完成させた。

 7基のジャッキで上部から2000tの鉛直力を掛け、正面と横の2方向からも加力することで、地震時の揺れに対する部材の耐力などが確認できる。震度7クラスの地震も再現可能といい、国内最大規模の装置としてゼネコンやメーカーなどに利用を呼び掛けている。

 16日に研究施設で完成披露会が行われた。完成した装置は上部から2000tの鉛直力と、2方向(正面、横)からの加力を可能にする。高さ12m、幅14m、奥行き6mの規模。建研が所有する既存の加力装置に比べ、鉛直方向の力が2倍大きい上、2軸からも加力できるなど性能をアップさせた。大規模地震の発生を受け、ゼネコンなどから高精度な評価試験を望む声が寄せられていたため、約5億円を投資した。

 装置は7台の油圧ジャッキのほか、加力制御装置、部材となる試験体を設置する加力梁などで構成する。専用の演算装置で地震力を入力後、自動制御でジャッキを動かす。幅広い地震力に対し、さまざまな試験体の性能を評価できるのが大きな特徴だ。より操作性を高めるため、手動で制御できる「7軸特殊ペンダント」も搭載している。

【インスタ映えの写真をぜひ】首都高技術、SNSで情報発信!!

 ジャンクションの点検、異常なし!-。首都高技術(東京都港区、小笠原政文社長)がSNS(インターネット交流サイト)を利用した情報発信に力を入れている。

 首都高速道路の点検作業や維持管理の技術、新卒採用などの情報をインスタグラム、フェイスブックでも発信する取り組みを開始。20代の職員が中心になって画像を厳選し、コメントを添えてアピールしており、アカウントのフォロワーが着実に増えている。

 首都高速道路会社が全額出資する首都高技術は、道路構造物の維持管理や技術支援などを手掛ける。SNSの情報発信は、2017年11月に始めた動画投稿サイト・ユーチューブが最初だった。おなじみの黄色いパトロールカーを使った道路点検の動画をアップ。損傷を素早く検知したり、位置情報を駆使して補修作業を効率化したりする様子を発信した。

 「情報の発信力を強化し、当社のことをたくさんの人に知っていただきたいと思った」。施設部施設課の石塚尚樹さんは動画投稿を始めた当時をそう振り返る。人や機械が動画で紹介されるメリットに着目。首都高速を安心して快適にたくさんの人に利用してもらうため、日々努力しているメンテナンスの担い手の視点で情報を発信しようと考えた。

 SNSが発信源となって人気が再燃した観光地や製品は枚挙にいとまがない。企画部企画課の竹中里奈さんは、「身近な存在で目にとめていただくきっかけになる」とSNSに着目した理由の一つを語る。幅広い世代に閲覧してもらえるよう複数のSNSを利用することにした。情報を伝える上では「発信する側が必要と考える情報ではなくて、必要とされる情報が何かにこだわろう」(竹中さん)と心掛けている。

 SNSに投稿する内容は石塚さんや竹中さんら、職務や入社年次が異なる20代の14人が企画を立てている。撮影した写真や動画を選定・編集し、書き込むコメントにも工夫を凝らす。

 「構造物の延命化に貢献する中で、取り組みを首都高速の魅力と合わせて知ってもらいたい」と石塚さん。写真やコメントを巡っては、近い世代だからこそ率直に指摘し合うこともあるという。

 インスタグラムフェイスブックとも2月18日に公式アカウントを取得した。「いいね」が最も多かったのは箱崎ジャンクション関連の投稿。ハッシュタグを付けている「インフラ映え」する画像をあえて1枚目にアップした。

 今月1日には、7人の新入社員が重ね合わせた手の画像をインスタグラムにアップ。「すごく好きなんだ」と上司がスマートフォンの画像を見せてくれた。投稿してすぐに「いいね」が付くなど手応えを感じており、「1年を通して首都高速に親しんでもらえようにみんなで頑張る」(竹中さん)と笑顔で話す。

【収容1万人規模、ブースターの声に対応】千葉ジェッツ、新アリーナ建設プロジェクト始動

 プロバスケットボールチーム・千葉ジェッツを運営する千葉ジェッツふなばし(千葉県船橋市、島田慎二社長)は、1万人規模の新アリーナ建設を目指すプロジェクトを始動した。

 建設地や詳細な施設規模、事業スケジュールは今後検討するものの、同社が所有・運営する方向で整備計画を詰める。エンターテインメントとして試合を提供するための仕様にしながら、試合開催以外の用途にも対応できるようにする。

 千葉ジェッツは、プロバスケ・Bリーグの1部(B1)で2年連続地区優勝、天皇杯3連覇を果たした強豪。Bリーグ参入以降は観客動員1位の人気チームとなっている。船橋アリーナ(千葉県船橋市)と千葉ポートアリーナ(千葉市中央区)をホームアリーナにしているが満員開催が増加。ブースターと呼ばれるファンから「試合を見たいのにチケットが手に入らない」といった指摘が相次いでいる。

 同社は観戦環境の整備をチーム運営や経営の課題に挙げ、より多くのブースターが試合を体験できるよう、新アリーナの建設に乗りだすことにした。パートナーシップ契約を結んでいるミクシィと建設事業の実施に向け資本業務提携しており、ミクシィが株式の過半数を取得し、親会社となる見通し。

 新アリーナの詳細は未定ながら、「顧客満足を追求する」(同社広報担当者)考え。チームの試合開催は年間30日程度となるのを踏まえ、バスケットボール以外での施設利用も想定した計画を検討するという。

2019年4月16日火曜日

【総延べ9.6万㎡、総事業費633億円】中野二丁目地区再開発、特定業務代行者に西松建設

 東京都中野区の中野二丁目地区市街地再開発組合は、特定業務代行者に西松建設を選定した。

 総延べ約9万6200平方メートルの再開発ビルの施工や保留床の処分などを担う。組合は今後、権利変換計画認可の取得を目指し、合意形成を進める。総事業費は約633億円を見込む。

 計画地はJR中野駅南口の駅前広場に隣接する中野区中野2(地区面積1ヘクタール)。2018年7月の本組合設立認可時の計画によると、再開発ビルは敷地北側の事務所棟(S造地下2階地上20階建て)、南側に住宅棟(RC造地下1階地上37階建て)の2棟で構成する。

 共同住宅の戸数は438戸。地区内の高低差を踏まえ、地上2階レベルに広場を設け、ユニバーサルデザインに配慮した歩行者動線を創出する。19年度の着工、22年度の竣工、24年度の事業完了を見込む。再開発のコンサルタントと基本設計はアール・アイ・エーが担当。参加組合員として住友不動産が参画する。

 再開発事業区域を含む約2・4ヘクタールの区域では、組合施行の土地区画整理事業が進む。区画道路や中野駅の南口駅前広場の整備などを行う。業務代行者として西松建設、コンサルタントとして日本測地設計が参画している。

【回転窓】使う機会がなかった入場券

先日自宅から歩いて最寄りの駅まで向かっている時、途中に設置されていた選挙候補者のポスターを貼る掲示板が気になった▼理由は県議選の候補者ポスターの上に貼られた告知文。正確ではないかもしれないが「立候補者が定員と同数のため無投票当選になった」という内容だった▼後半戦に入った第19回統一地方選。14日に政令市以外の86市長選と294市議選、東京特別区の11区長選と20区議選が告示された。市長選には全国で161人が立候補したそうだが、二つの県庁所在市を含む27市で無投票当選が決まった▼無投票当選は公職選挙法で規定されたルールなので悪いことではない。ただ2015年の第18回統一地方選も県議、指定市議、市長、町村議選で無投票当選がその前の回を上回った。例えば県議選は321選挙区で501人が無投票当選人になった(総務省15年「地方選挙結果調」)。選挙に立候補するには本人の意思はもちろん、さまざまな条件をクリアしなければならず、そう簡単ではないのだろう▼自宅に届いていた県議選の投票所入場券は居間にあるコルクボードに画びょうでとめたままになっている。

【鹿島JVや横河ブリッジなど6チーム】政府、廃炉作業チームに首相感謝状贈呈

安倍首相(中央)と記念撮影する福島第一原発3号機
原子炉建屋カバーリング工事JVのチームメンバー
(写真提供:経済産業省)
政府は14日、福島第1原発(福島県双葉、大熊両町)の廃炉・汚染水対策に取り組む企業のうち、厳しい作業環境で顕著な功績を挙げた作業チームに「内閣総理大臣感謝状」を授与した。授与式には安倍晋三首相が出席し、受賞した作業チームの代表者に感謝状を手渡した。続いて安倍首相は作業チームの関係者と今後の作業見通しなどで意見交換した。

 意見交換後、安倍首相は「現場の皆さんの大変な努力によって廃炉作業が一歩一歩着実に進んでいる。(2013年9月の)視察は完全に防護服で身を固めなければならなかったが、今回はスーツ姿で視察できた」と話した。その上で「今後も廃炉・汚染水対策は多くの課題があり、これから正念場だ。国が前面に立って取り組みを進める」と強調した。

 感謝状を授与されたのは▽東芝福島第一原子力作業所工事チームメンバー▽福島第一原発3号機原子炉建屋カバーリング工事JV(鹿島・清水建設・竹中工務店・熊谷組・安藤ハザマJV)工事チームメンバー▽東芝プラントシステム福島第一安定化作業所工事チームメンバー▽山田工業(新潟県柏崎市)福島営業所工事チームメンバー▽富永工業(東京都中野区)工事チームメンバー▽横河ブリッジ福島第一原子力発電所作業所工事チームメンバー-の6チーム。

 いずれも13年10月~18年2月に行われた「3号機原子炉建屋使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向けたオペレーティングフロアの線量低減工事および燃料取り出し用カバー設置工事」に従事した。

【熊本空港コンセッション、事業始動へ】三井不グループ、新旅客ビル整備など提案

 国土交通省は15日、熊本空港(熊本県益城町)のコンセッション(公共施設等運営権)事業で、優先交渉権者に選んだ三井不動産を代表とするグループの事業提案概要を公表した。

 2017年度実績で334万人(うち国際線16万人)だった空港の旅客数を、34年後の51年度に622万人(175万人)まで増やす目標を設定。23年の供用開始を目指し、国内線・国際線一体型の新旅客ターミナルビルを整備する。

 既存旅客ビルを解体し跡地に新設する新旅客ビルは、熊本地震での被害を踏まえ、冗長性のある構造や電源の確保といった対策を講じ、利用者の安全安心や被災時の空港機構を確保する。国際線旅客も利用できる滞在型のゲートラウンジを整備するのも特徴。完成するまでの対策として、商業機能や待合機能を補完するサテライトビルや、立体駐車場などを整備する。

 同グループは、空港コンセッションに初めて参画する三井不動産のほか、九州電力や九州産業交通ホールディングスなど計11社で構成。事業期間は原則30年(最長35年)としている。

 国交省は同グループの提案について、建設費や工事のスケジュールに関する内容は公表していない。4月に基本協定を結び、5月の運営権設定と実施契約締結を予定。同グループは7月に既存旅客ビルの運営、20年4月に滑走路の維持管理などの空港運営をそれぞれ開始する。

2019年4月15日月曜日

【回転窓】高齢期の住まい方を考える

1日のうちほとんどの時間を建物の中で過ごす方が大半ではないだろうか。長寿命化が進む時代、人は窓や壁、床、天井に囲まれた空間で何十年という長い時間を過ごす▼仕事を退職した後は自宅にいる時間がますます長くなる。暮らしをより健康で快適なものにするには住まいの備えが欠かせない。だが高齢者のいない世帯では手すりの設置や段差解消などバリアフリーへの配慮や介護に備える意識はそう高くない▼多くの高齢者が自宅での生活を希望しているという。国土交通省が「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を策定し、自宅改修のポイントなどを紹介している▼介護の必要に迫られ時間的な余裕がない状況ではなく、気力や体力、そして金銭的に余裕のある段階から検討し行うことが望ましいそうだ。高齢期の住まいは改修だけでなく、建て替えや住み替えなど選択肢は多様。自らの意思や家族の状況などに基づき判断することの大切さも指摘している▼将来、どんな住まい方をしたいか…。日ごろなかなか考える機会のない話題だが、ガイドラインを見ながら家族で語り合ってみては。

【工事用高力ボルト、不足が深刻化】国交省、安定需給へ対策検討急ぐ

不足が深刻化する高力ボルト。安定供給へ課題は多い
(提供:国土交通省)
昨夏以降に全国で顕在化した工事用「高力ボルト」の不足問題が深刻化している。国土交通省は3月、メーカーやユーザーを対象に2回目の需給動向調査を実施。約9割が「工期に影響がある」と回答した。同様に回答したのが83%だった昨年10~11月の初調査時点に比べ、変更や延長といった工期に及ぼす影響が大きくなっている事態が浮き彫りとなった。

 12日に行われた衆院国土交通委員会で、国交省の野村正史土地・建設産業局長が井上英孝衆院議員(日本維新の会)の質問に対する答弁で明らかにした。需給動向調査結果の詳細は集計中という。野村局長は経済産業省や高力ボルトのメーカー、ユーザーのファブリケーターといった関係者と協議し、需給安定化に向けた新たな対策を検討しているとも説明した。

 国交省によると、高力ボルトが不足する主な要因には、全国的な大規模建築プロジェクトの増加に伴う鉄骨需要の増大に、ボルトの生産が追い付かない状況があるという。

【34日間、路上工事で混雑回避策】東京都、五輪期間中の発注工事調整で取組方針

東京都は、2020年東京五輪・パラリンピック開催期間中の都発注工事の調整に向けた取り組み方針をまとめた。大会期間中の計34日間を対象に路上工事の回避策を講じる。

 区部の競技会場周辺や大会輸送ルートのある地域では、発注時期の調整や工事の一時休止、夜間工事への振り替えなどを実施する。さらに都内全域で工事車両数の削減にも取り組む方針だ。今夏には本番に向けたテストとして、受注者の協力が得られる工事を対象に、早朝・夜間の工事車両出入りなどを試行する。

 大会期間中の交通混雑緩和の取り組みをまとめた「都庁2020アクションプラン」に工事調整の項目を書き加えた。具体的には「路上工事によるボトルネック化の回避」と「工事から発生する車両数の削減」に取り組む。年間発注量の維持を前提に関係各局で具体策を検討する。

 公表した取り組み方針では、対象となる期間やエリア、調整手法が示された。路上工事の抑制は五輪前後(2020年7月23日~8月10日)とパラリンピック前後(同8月24日~9月7日)の計34日間。車両数の削減は交通需要システム(TDM)重点取り組み期間に当たる計19日間を対象とする。

 対象エリアは、▽大会関係地域(会場周辺や輸送ルート上)▽区部(会場など有り)▽同(会場など無し)▽多摩地域(圏央道内)▽同(圏央道外)-の5地域に分け、きめ細かく対応策を決めた。

 大会関係地域や区部(会場など有り)では、都道などの道路工事を中心に路上工事を避ける。工事車両の出入り時間帯の振り替えなどによる車両数の削減は、対象エリアを区部(会場など無し)や多摩地域(圏央道内)にも広げる。さらに多摩地域(圏央道外)も含めて、大会関係地域を通行しないなど混雑回避を呼び掛ける。ただし、緊急対応工事や沿道建物へのライフライン供給工事などは調整対象に含めない方針だ。

 今夏のテストは、大会期間に相当する7月22日~8月2日、同19~30日(いずれも土日は除く)に行われる。工事車両の出入り時間帯の振り替えや車両数削減への呼び掛けなどを実施予定だ。

【2022年3月完成めざす】名古屋競馬場移転整備PFI、大和リースら3社グループに

 愛知県競馬組合は、PFIを導入する「名古屋競馬場移転整備等事業」の総合評価一般競争入札で、大和リース、熊谷組、日本管財で構成するグループを落札者に決めた。

 協力企業として松田平田設計、エコシステムズ・ジャパンが参加する。落札額は121億8240万円。同競馬場を名古屋市港区から弥富市へ移転・整備し、施設の維持管理を行う事業。本年度から設計に着手し、2022年3月までの完成を目指す。競馬場整備にPFIを導入するのは全国で初めて。

 移転先は、同組合弥富トレーニングセンター(弥富市駒場)の敷地約59万4700平方メートル。競馬を開催できるようコースの改修、スタンド新設などを実施する。スタンド棟はS造3階建て延べ約5450平方メートル。

 地方競馬で初となる「ホースビューコリドー」を設置、パドックからコースに移動する競走馬を間近で見られるようにする。コースは、ナイター競馬を開催できるよう照明設備を充実させる。大型映像装置を設置したりゴール前直線を長くしたりして、レースの迫力を演出する。

 このほか、S造8階建て延べ約4000平方メートルの調教関係者住宅(1K、2DK、3DK合計92戸)などを新設し、騎手会館、装鞍所を改修する。

 事業はBTO(建設・移管・運営)方式。維持管理は37年3月までの15年間。アドバイザリー業務を三菱UFJリサーチ&コンサルティング、基本設計を山下設計が担当した。

【熊本地震から3年】創造的復興へ基盤整備進む

阿蘇大橋地区斜面対策は19年度末に既成を予定する
(3月撮影、提供:熊本復興事務所)
 ◇県市町村の災害復旧工事は6割完成◇

 2016年4月の熊本地震の発生から3年を迎えた。熊本県と県内市町村の災害復旧事業の工事は約9割が発注を終え、6割超が完了。阿蘇地域で国道57号の災害復旧「北側復旧ルート」の整備が進み、益城町で土地区画整理事業がスタートするなど県が掲げる「創造的復興」の姿は徐々に見えつつある。一方、入札の不調・不落は依然として高い割合で発生し、円滑な施工体制の確保が課題だ。19年度は県の熊本復旧・復興4カ年戦略の最終年度に当たる。早期の復興と将来の発展に向けた取り組みの加速化が求められている。

 JR豊肥本線は20年度運転再開 


 大きな被害を受けた益城町では被災市街地復興土地区画整理事業が18年9月に認可。同事業と一体的に行う県道の4車線化も1月に着工した。

 阿蘇地域では無人化施工技術を駆使して進められていた阿蘇大橋地区の大規模斜面崩壊対策工事が進み、18年9月に有人作業に全面的に移行。国土交通省は12日、同対策工事を19年度末に概成させ、斜面崩壊で被災し復旧工事の進むJR豊肥本線の運転を20年度に再開させると発表した。

 地震やその後の降雨により斜面崩壊や土石流が多数発生したことを受け、阿蘇山・阿蘇カルデラでの直轄砂防事業もスタートした。

 阿蘇大橋の架け替えと合わせて20年度の開通を目指す「北側復旧ルート」はメインの構造物となるトンネルが貫通し、2月に行われた貫通式で蒲島郁夫知事は異例のスピードで進む工事を「奇跡」と称賛した。このほか道路関係では国が権限代行で進めている俵山トンネルルート(県道熊本高森線)の全線本復旧が今秋に完了する。

 大切畑ダム復旧本体工事発注へ 


 熊本城では天守閣のうち大天守の外観の復旧が進み、今秋に天守閣前広場が開放される予定。今後、復旧の様子を見学できる特別見学通路の工事も進められる。

 18年6月には県内で初めて災害公営住宅が西原村に完成した。県の集計によると県内で計画されている災害公営住宅70団地1717戸のうち3月末時点で29%に当たる25団地496戸の工事が完了している。

 堤体にひび割れが発生するなどした西原村の農業用ため池「大切畑ダム」は堤体を移設する災害復旧の事業費が決定、県が本年度中に本体工事を発注する。

 県が創造的復興のシンボルと位置付ける熊本空港の民営化ではコンセッション(公共施設等運営権)事業の優先交渉権者が3月に決定した。同事業では旅客ターミナルビルの運営などに加え、地震で被災した国内線と国際線のターミナルビルの一体的建て替えも行う。関連して空港へのアクセスを改善する新たな鉄道整備について県とJR九州が2月に合意。今後、ルートなどの検討が進められる。

 入札不調・不落依然高い発生率


 県の集計によると県・市町村の災害復旧工事は18年12月末時点で総件数1万0191件のうち件数ベースで88・4%(9012件)の発注を終え63・9%(6516件)が完了した。

 一方、入札の不調・不落は国交省と県、市町村の18年度の発注工事7585件のうち1201件(18年12月時点)で発生し、前年度よりは落ち着いたものの15・8%と依然として高い割合で発生している。被災庁舎を建て替える人吉市と大津町の新庁舎建設工事で不調・不落が続くなど特に建築工事で落札決定しないケースが目立つ。

 国交省は被災地で円滑に工事を進めるため土木工事積算の復興歩掛かりと復興係数の継続を決めたが、今後は「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」に伴う工事量の増加が見込まれ「予断を許さない状況」(県幹部)は続く見込みだ。

 終盤に差し掛かった災害復旧を着実に進めるためにも余裕期間の設定や発注ロットの大型化といった地域の実情に即した入札・契約制度の弾力的な運用に加え、受・発注者間での情報共有など円滑な施工体制の確保に向けた対策が引き続き必要となる。

【凜】土木学会研究事業課・丸畑明子さん


 ◇母からのバトンを娘に◇

 研究事業課で委員会業務を担当する。この課に配属されるのは2度目。論文集の編集・発行にも携わる。小学4年生の娘を持ち、子育てと仕事を両立する。「毎日が時間との戦い」というが、朝は必ず娘を送り出してから自宅を出る。

 大学で土木を専攻し、卒業後はコンサルタント会社で働いた経験もある。「学会の仕事は実務と違い、道路や橋が完成した時のような感動はない。それでも任された委員会の運営が滞りなく進み、お礼を言われるとうれしい」と話す。

 一般の方々に土木の魅力を体感してもらうイベントに携わった。1年目は主催者側として、2年目は娘を連れて参加した。「子どもが土木に興味を抱くようになり、夏休みの宿題で一緒に液状化の実験にも挑戦した。ここで働いていて良かった」と笑顔を見せる。

 働く母親を見て育ち、出産後も仕事を続けようと決めた。「今は育休や時短など支援制度が充実しているが、母の時代は苦労したと思う」。感謝の気持ちを抱きながら「当時の女性の頑張りが今の環境整備につながっている。娘が就職するころにはもっと女性が働きやすいようにしてあげたい」。

 東京・四谷にある職場は直前で80メートルほどのなだらかな坂を通る。「下りと上りで仕事とプライベートの切り替えにちょうどいい」。きょうも「切り替え坂」でモードを整える。

 (まるはた・あきこ)

【やっぱり!マイ・ユニフォーム】東芝エレベータ「デザインと機能を両立」

 ベースカラーに採用したのはシルバーグレー。汚れが目立たないようにするのはもちろん、さまざまなICT(情報通信技術)を活用する昇降機事業の特徴を前面に打ち出そうと考えた。

 背中には夜間の視認性を高めるため、横一文字の反射材を付けている。肩まわりにはシャープでスピード感を感じさせる赤いラインを入れ、移動中の見栄えまでも考慮している。

 製作に当たっては、現場で働く従業員の意見を幅広く取り入れた。加えて重視したのがユニホームから伝わるイメージ。担当した前安全環境センター安全衛生担当の相馬卓磨さんによると、「着用していて自社を誇りに思えるようなユニホームにしていきたい」と考えたという。

 現在の作業服を使い始めたのが2008年3月。デザインは社員に好評だ。16年夏から導入した空調服にもデザインを取り入れた。海外子会社の一部も同じデザインを採用するなど、社内だけでなく東芝グループの中でも人気があるという。

 17年度からはブルゾンと冬ズボンで生地のポリエステル比率を変更。汚れが落ちやすく、洗濯してもくたびれにくくなった。デザインはそのままに、機能性の向上を図っている。

【駆け出しのころ】長谷工コーポレーション常務執行役員建設部門技術担当・山本三里氏

 ◇技術力と人間力のアップを◇

 高校時代、手にした本に描かれていた設計図面を見て、寸法線などがすごく繊細で美しく、素晴らしいと感動しました。大学で建築を専攻し、将来進むべき道を考えていた際、ヘルメットをかぶった現場監督が図面を抱えながら作業員に指示している姿を見て、自分には現場で働く仕事が向いていると感じました。

 入社後は東京周辺のマンション現場を中心に担当してきました。新入社員で何も分からない中、上司や先輩たちの指導を受けながら毎日がむしゃらに働きました。夜には事務所に戻り、昼間に行った作業での技術的な事柄を「技術ノート」に書き込み、翌日先輩にチェックしてもらう日々。真っさらなノートに書き込んだ杭工事や鉄筋工事などの内容は、いまでも鮮明に覚えています。

 先輩に借りた専門書「絵でみる鉄筋専科」を読み、現場の技術は数字なのだと思い知らされました。鉄筋のアンカーやかぶりなど、すべて定められた数字をしっかり覚えることが施工管理の一歩となります。新入社員への役員訓話では、技術ノートと鉄筋専科の話を毎年伝えています。

 入社4年目で型枠工事の担当となり、コンクリートの施工図を寝る間を惜しんで何枚も書きました。建築は、1ミリ単位で仕事をしていることを実感しながら現場での躯体の収まりなど、設計図書を見る力を養うことができました。

 最近はICT(情報通信技術)を駆使した勉強会なども見られますが、社員教育の一環で技術ノートはいまでも使われています。技術指導でのコミュニケーションの大切さはいつの時代も変わりません。

 現場では役所や近隣などとの対外的なマネジメント力も重要です。一方通行の狭い道路で大きな機械をどう搬入すればいいか。さまざまな問題解決に当たり、関係機関の許可や地域住民の同意を得るために何度も通いました。苦難を乗り越え、周囲の足場とシートを外し、建物全体が見えた時の喜びは何物にも代え難いものがあります。

 社内では現場を後方支援する体制が整備・拡充されてきていますが、所長が先頭に立って熱意を伝え続けないと現場は前に進みません。建設生産ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などITによる高度化が急速に進んでいますが、コンピューターやロボットの世界だけではなく、人としての魅力といった「人間力」を高めることも大切です。

 技術の継承では、若い人たちの考え方と最先端の技術をかみ合わせ、ベクトルをそろえて導くことがわれわれの役目になると思います。長谷工のDNAをつなぎ、技術力のアップを目指します。
入社1年目、毎日がむしゃらに働いていた
(やまもと・みさと)1980年東京理科大学理工学部建築学科卒、長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)入社。建設部門第三施工統括部建設2部長、第一施工統括部長、執行役員などを経て、2019年4月から現職。山梨県出身、61歳。

2019年4月12日金曜日

【回転窓】職人育成も生産性向上を

こてで壁面に土を塗りつけた後、はがす作業を繰り返す「塗り壁トレーニング」。左官職人の久住章氏は、自ら考案したこの練習法を10年は続けたという▼1999年に日本建築学会文化賞を受賞した「カリスマ」であっても技能を維持・向上させるために、人知れずトレーニングを重ねている。ただただ感服する話だ▼久住氏によれば、若い職人を育てる上で「現場だけでは不十分」。材料の調合などを一人で理解できるようになるまでに相当の年月を要する。「一生は短い」。短時間での習得には「実戦を補う教育が必要」と説く▼左官業界で今、久住氏の塗り壁トレーニングを効果的に行おうという取り組みが広まっている。アスリートのトレーニングでも採用される「モデリング」と呼ぶ手法。動画に撮ったプロの動きをまね、同じように塗れるようになることが技能習得の近道。「技は見て盗む」を現代的に置き換えたものといえる▼ICT(情報通信技術)を用いるなどして現場の生産性を向上させる取り組みが進む。現場を支える職人の育成にも、生産性を高める手法をもっと追求する視点があって良いのではないか。

【シールドトンネルの地中接合完了】都下水道局の隅田川幹線工事(足立区)が終盤に


 東京都下水道局が足立区千住地区の浸水対策として進めている「隅田川幹線」の整備工事が終盤を迎えた。

 地下約40メートルで行われていたシールド機の掘進作業は昨年11月に最終地点へ到達。本年度にトンネル坑内をコンクリートで仕上げる二次覆工を終える。2008年から長い時間を費やし造り上げてきた主要な土木構造物がほぼ完成した。

 隅田川幹線は内径4750ミリ・延長3120メートルのシールドトンネルで、下水管に流れ込んだ雨水を一時的に貯留する役割を持つ。たまった雨水を近隣の「千住関屋ポンプ所」(整備工事中)に送り、隅田川に放流する仕組みだ。毎秒37・3立方メートルの雨水量に対応できるようにする。

 既にシールドトンネルは構築を終えており、現在は「隅田川幹線その4工事」として、シールドトンネルと千住関屋ポンプ所を結ぶための地中接合シールド工事が進行中。施工は東急建設が担当している。

 地中接合に当たっては、既設トンネルと接合トンネルの直径が異なるため、既設トンネルの接合部を約2倍に拡幅する「同その3工事」を事前に行った。掘削する地盤を保持するため、人工的に地盤を凍らせる「地盤凍結工法」を採用。国内最大級となる約3700立方メートルの凍土を造成した。

 既設トンネルの拡幅された接合部をターゲットに、昨年1月から接合トンネルのシールド機が掘進を開始。同11月に接合部まで到達し、二つのトンネルの地中接合が無事完了した。今後は接合部などの二次覆工を進め、雨水がトンネル内をスムーズに流れるようにする。都下水道局によると、別発注で付帯施設工事なども予定しているという。

 住宅地の道路直下で行われる工事で、高い技術力が要求された。現場を担当した東急建設の佐藤忠信所長は「軟弱地盤のため地表への影響が無いよう気を配った。線形管理にも細かく神経を使った」と工事を振り返った。

【延べ9万㎡、8月着工へ】新宿ミラノ座跡地再開発、施工は清水建設JV

 東急レクリエーションと東京急行電鉄は、東京・歌舞伎町で計画する「新宿TOKYU MILANO再開発計画」の施工者を清水建設・東急建設JVに決めた。

 劇場や映画館、ホテルなどが入る延べ約9万平方メートル規模の複合施設を整備する。設計は久米設計・東急設計コンサルタントJVが担当。8月に着工し、2022年8月の竣工を目指す。

 計画地は新宿区歌舞伎町1の29(敷地面積約4600平方メートル)。14年に閉館した旧新宿ミラノ座と、隣接する旧ホテルグリーンプラザ新宿の跡地を一体活用する。現地では障害撤去工事や土工事が進む。プロジェクトは18年6月、東京圏国家戦略特別区域の特定事業に認定された。

 建物は地下5階地上48階塔屋1階建て延べ8万9600平方メートル、高さ225メートルの規模。地下に最大約1500人収容するライブホール、中層部に約850席の劇場や約8スクリーンの映画館を設けるなど、複合的なエンターテインメント機能を備える。低層部には店舗やラウンジを配置。高層部がホテルとなる。

 複合ビルの開発に併せた空港連絡バスの乗降場の整備や近隣交差点の改良などで、周辺の回遊性の向上も図る。

【堤防でお絵かき!!】伊藤組土建が都内で園児招きイベント

 伊藤組土建(札幌市中央区、玉木勝美社長)は11日、東京都墨田区で施工している堤防整備工事の現場で幼稚園児向けのイベントを開いた。

 近隣にある向島文化幼稚園から約60人の子どもたちが参加。下絵が描かれた堤防をキャンバスに見立て、環境に無害な水溶性塗料で虹などを描いてもらった。

 イベントを開いた現場は、関東地方整備局荒川下流河川事務所が発注した「H30荒川右岸八広六丁目高潮堤防整備工事」。2カ所の護岸工の片方で堤防に下絵を描き、子どもたちが色を付けた。同社の佐藤勝則所長は「地域貢献の一環として事務所でアイデアを出し合った。絵は程なく覆土するため見えなくなってしまうが、この場所が子どもたちの思い出に残ればうれしい」と話した。

 参加した園児の1人は「思ったよりも簡単。楽しい」と笑顔で話した。お絵描きだけでなく建設機械の試乗も体験してもらった。

2019年4月11日木曜日

【回転窓】開かれる宇宙への扉

小惑星「りゅうぐう」に人工クレーターを作る宇宙航空研究開発機構(JAXA)の実験が成功したというニュースが5日に報じられた。小惑星や太陽系の歴史をひもとく科学的な成果はもちろん、宇宙の謎に近づくと聞くと、ロマンを感じずにはいられない▼JAXAは宇宙探査に向けて、現状を打破して変革を促す技術開発を目指している。キーワードは「ゲームチェンジング」。宇宙探査の在り方を変えると同時に、地上での技術革命につなげることも目標にする。幅広い産業と連携を進め、その中には建設分野も含まれる▼宇宙での活動を目指す段階に入っており、月面上などでの居住空間の整備を見据えている。当然ながら建設技術がなければ実現しない。「宇宙開発に貢献できるのは大きなモチベーション向上になる」。あるゼネコン関係者がそう話していた▼建設産業の大きな使命は誰もが快適に過ごせる場をつくること。それは宇宙でも同じであり、地球を越えた展開がいよいよ始まっていく▼間もなく迎える令和の時代。建設産業の活躍の場にも変化が生まれるだろう。宇宙開発も含めしっかり追っていきたい。

【多様な個性で新たな価値を】戸田建設、140周年に向けロゴマーク制定

 戸田建設がグループ共通のロゴマークを制定した。デザインコンセプトは「オーケストレーティング・イノベーション」。多様な個性やアイデアの集合体によって「戸田建設」の「戸」の文字を形成し、新しい価値が生まれてくる期待感を表現している。2021年に迎える創業140周年を見据えた取り組みの一環。パンフレットや名刺、工事看板など幅広く展開していく。

 漢字の「戸」をモチーフに採用することでオリジナリティーを高めた。日本発のグローバル企業として、クオリティーやホスピタリティーなどの感性価値を大切にする意志も込めたという。構成色はライトブルーとオレンジレッド、シルバーグレーの3色で、「先進の技術」「創造と挑戦」「協調と共生」を表現している。

 ロゴマーク制定に当たっては、社内アンケートや、グループ社員と家族からのロゴ案募集、社員投票などを行った。今回のロゴマーク制定により、グループの一体化や新しい価値の創造を目指すとしている。

【日本らしさやシンプルさを追求】新国立競技場、内部の細部デザイン最終決定

情報の庭内観パース
(大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JV作成/JSC提供)
日本スポーツ振興センター(JSC)が整備している新国立競技場のデザインが固まった。10日に開かれた記者会見で、設計を手掛ける大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVの代表者が出席し、内装デザインや照明デザインについて最終段階の検討結果を明らかにした。

 ホスピタリティエリアの内装デザインと照明デザインを中心に見直しを行った。いずれも細部の微修正となる。隈研吾氏は「内装や照明についてはモックアップを製作し微調整した。万全を期して設計チーム全体で取り組んだ」と説明した。

 ホスピタリティエリアは、日本らしいシンプルな表現をさらに追求。木の量感を生かしたり和紙を使ったりしたデザインに見直した。VIPエントランスの柱は、木のルーバーから木練り付けの大和張りに変更。VIPラウンジの壁も木のルーバーを中止し、楮(こうぞ)の繊維が浮き立つような和紙クロス張りとした。VIPラウンジのソファは、最終的に座布団を折ったようなデザインに決めた。
VIPラウンジ内観パース
(大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JV作成/JSC提供)
照明デザインは、かつて渋谷川に集まっていた蛍をモチーフとした器具に変更した。長さ約3000ミリの蛇行する線状の照明ユニットを取り付け、蛍線(けいせん)を表現する。御簾(みす)をモチーフとした半透明のシェードも新たに採用する。

 新国立競技場の整備工事は11月末完成予定。既に屋根の鉄骨工事と仕上げ工事が完了し、内外装工事やフィールド工事など仕上げ段階にある。隈氏は「これまでにない日本らしい温かみのあるスタジアムとなる。皆さんに体験してもらいたい」と語った。
風のテラス~コンコース内観パース
(大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JV作成/JSC提供)