2024年7月30日火曜日

回転窓/変わらない金への思い

 世界最大級の金生産地だった「佐渡島(さど)の金山」(新潟県佐渡市)が世界文化遺産に登録された。長年の念願がかない、尽力してきた地元関係者の喜びもひとしおだろう▼「史跡 佐渡金山」のウェブサイトによると、1601年に開山され、1989年3月に資源枯渇のため操業を休止。江戸から平成までの388年間に産出した金は78トンに上るという▼世界で機械化が進む中、19世紀半ばまで手工業による金生産が行われ、17世紀前半には世界の金の約1割を佐渡で生産していたとも。韓国からは強制労働問題を巡って抗議の声も聞かれたが、両国が歩み寄って今回の遺産登録に至った▼貴金属の中でも金は美しさや希少さに加え、やわらかくて加工しやすく、さびにくい特徴を持つ。時の権力者の豊臣秀吉が造らせた日本最大の金貨として知られる「天正長大判」は1枚の重さが165グラム。日常的な通貨ではなく、手柄を立てた家臣への褒美、親しい人への贈り物として使われたようだ▼パリ五輪では各競技のアスリートたちが金のメダルを目指して熱戦を繰り広げている。今も昔も金への人の思いには熱いものがある。

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2024年7月29日月曜日

回転窓/世界溺水防止デーを迎えて

 夏は水の事故が増えてしまう季節でもある。先週25日の「世界溺水防止デー」に合わせ、関係機関が改めて事故防止を広く呼び掛けている▼世界では年間25万人近くが水に溺れて命を落としているという。溺水の危険に対する認識を高めて未然防止につなげるため、2021年4月の国連総会で毎年7月25日を世界溺水防止デーとすることが宣言された▼子供たちの夏休みが始まると痛ましい事故の報道が相次ぐ。大人も例外ではなく、海や川などでの事故は後を絶たない▼水難事故のリスクについて、岐阜県河川課のQ&A方式で注意喚起している内容が分かりやすい。例えば〈岐阜県内の河川で、安全に泳げる場所はありますか?〉への答えは〈ありません。河川は自然そのものであり、安全は一切保証されていません〉。明確な表現であり川を決して甘く見てはいけないと強く認識できる▼制定4年目を迎えた世界溺水防止デーだが、日本での認知度をもっと高めていかなくてはならない。今後も官民による継続的な啓発活動が必要だ。大人も子供も水の怖さを正しく理解し、そして安全に楽しむための知識を持ちたい。

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2024年7月25日木曜日

回転窓/ふるさと納税の使われ方

 生まれ育ったまちへの恩返しになればとふるさと納税を考えている。なるほどと思える返礼品だが、他の自治体も調べてみると特産品をはじめ旅行チケットやイベント観賞といった体験を重視したものなど、その多彩さには驚く▼長野県小谷村が返礼品に村内の水力発電所で発電した電気の提供を始めた。同県のほか中部4県(岐阜、静岡、愛知、三重)に居住し電気契約している世帯が申し込める▼村は2020年に気候非常事態宣言を表明し、50年までに二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを目指している。1万円の寄付で150キロワット時を提供し、CO2排出量は70キログラム削減されるそうだ▼総務省は先月、ふるさと納税に関する基準を見直すと発表。来年10月から利用者にポイントを付与する仲介サイトで自治体が寄付を募ることを禁止する。サイト間でのポイント競争の過熱を問題視した措置。自治体が仲介サイトに支払う手数料やポイントも税金で賄われていることを踏まえると致し方なかろう▼納めた税金で育ったまちや応援したい地域に活力が生まれてほしい。返礼品だけではなく使われ方にもっと目を向けなければ…。

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2024年7月23日火曜日

回転窓/日焼けにご用心

 仕事がら外出する機会が多いこともあり、晴雨兼用の折り畳み傘を常備している。この時期は突然の夕立に加え、日傘としても頻繁に使用する▼温暖化の進展などにより、夏場の暑さは年々厳しさが増す一方。肌を刺すような日差しやうだるような暑さを少しでも和らげようと、都市部を中心に「日傘男子」が急増しているとか。女性限定のイメージが強かった日傘の男性利用も市民権を得つつある▼デパートなどの傘売り場では多種多様な機能やデザインの商品を豊富にそろえる。紫外線(UV)の遮蔽(しゃへい)率の高いUVカット加工を施し、内側の遮熱加工で暑さを防ぐ工夫も。はっ水性に優れたものも多く、急な雷雨に襲われた時も安心だ▼大手化粧品メーカーの研究によると、UVのダメージを受けやすいのは女性より男性なのだそう。意外にも男性の方が肌のバリアー機能が弱く、抗酸化力が低い傾向にあるという▼先週末までに梅雨明け宣言の地域が一気に広がり、全国的に夏本番を迎える。屋外作業が基本の建設現場では熱中症と合わせ、UVの対策も重要となろう。スキンケアに疎い男性陣は日焼けにご用心を。

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2024年7月22日月曜日

回転窓/タウトの日記をたどる

 ドイツ人建築家のブルーノ・タウト(1880~1938年)は日本に長期滞在していた当時、群馬県の草津温泉(草津町)や四万温泉(中之条町)などを訪れている。日記にその記述がある(『日本 タウトの日記』岩波書店)▼出版社編集長らと四万温泉に行ったのは35(昭和10)年6月。途中で織物を作る農民と会った後、旅館の温泉に入り夕食を取った。公衆浴場やわらぶき屋根の古い神社などを見たことも書かれている▼タウトが「四萬は、深い渓谷の中にあり、淙々と流れる澗流は、この邊になるととりわけ美しい」とつづった魅力は今も変わらない。地元関係者に聞くと、最近は静かな時間を求める外国人観光客らも増えているという▼タウトは日本滞在3年半のうち2年以上を群馬で過ごしている。34年8月から日本を去る36年10月まで、高崎市の少林山達磨寺境内「洗心亭」を住まいにしていた▼京都、仙台にも滞在し、日本の伝統美を高く評価したタウト。県指定史跡の洗心亭にはドイツ語で〈私は日本の文化を愛す〉と書かれた碑が立つ。この夏、日記を頼りにゆかりの地巡りへ出かけようと決めている。

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2024年7月19日金曜日

回転窓/深刻化する交通空白

 最寄りの駅前でタクシーを待つ列が長く伸びる光景をよく見るようになった。買い物袋を抱えた高齢者や子ども連れらが待ち続けているが、タクシーはなかなか来ない▼1日約5万人が利用する首都圏の鉄道駅前でさえこの状況。地方で深刻度が増しているのは想像に難くない。国土交通省のまとめによると、2019~21年度にバス・タクシーのドライバーは約5・5万人減少した▼地方などで乗り合いバスや鉄道路線の廃止も増えている。08~23年度に計2・3万キロ超の乗り合いバス路線がなくなった。高齢ドライバーの免許返納も進んでいる状況下で、公共交通の確保は死活問題となる▼こうした課題に対応するため、国交省が17日に「交通空白」解消本部を立ち上げた。本部長の斉藤鉄夫国交相は「交通空白問題の『主治医』として知恵を絞って取り組みを進めていく」と表明した▼自家用車で乗客を有償運送する「ライドシェア」の普及促進などが柱。運賃・料金の多様化も検討課題だ。自動運転の普及で状況は変わるだろうが、社会実装には時間がかかる。課題を乗り越えるための工夫と関係者の協力が求められている。

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2024年7月18日木曜日

回転窓/AIの生かし方

 未来から送り込まれたサイボーグが一人の女性をどこまでも追い回す--。米俳優アーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFアクション映画「ターミネーター」は、初公開から40年がたつ今も古さを感じさせない不朽の名作といえる▼同作はシリーズを通して「スカイネット」と呼ばれる架空のAIが登場する。人類とAIをテーマにした映画は多く、時にはAIが暴走するなど身の毛もよだつ作品に出会う▼現実の世界で注目度が高い生成AIは、さまざまな分野で業務負担の軽減に役立つ。行政機関では相模原市が6月定例議会で市長の答弁書をAIで作成した。東京・品川区は区民からの要望をAIで分析し、補正予算の編成に生かした▼浜松市の企業が開発した「AI語り部」は、戦争体験を語り継ぐ人たちが高齢化していることに対応。質問者の問い掛けに最適な答えを語り部の映像と共に出力する▼AIの台頭で将来なくなると言われている職業がある。新聞記者も候補の一つ。とはいえ読者に価値ある記事を書き続けなければ、淘汰されてしまうのはいつの時代も変わらないだろう。AIに教わるまでもないが…。

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2024年7月17日水曜日

回転窓/伝統と創造の甲子園

 阪神甲子園球場が8月1日に開場100周年を迎える。プロ野球・阪神タイガースのホームグラウンドであり、高校野球の聖地としても数々の記憶に残る熱戦のドラマが繰り広げられてきた▼長い歴史の中で継続的に改修を重ねている。最も大規模だったのが2007年10月から10年3月まで3期に分けて行われたリニューアル工事。耐震補強や内外装改修、甲子園の名物である内野席の一部を覆う大屋根「銀傘(ぎんさん)」の架け替えや外壁に植生されたツタの植え替えなどが実施された▼球場を運営する阪神電気鉄道は昨年7月、数年後に銀傘を高校の応援団が集まるアルプス席まで拡張する構想を発表。観客の暑さを和らげ熱中症対策に万全を期す▼大屋根はもともと開場当初から戦前まで「大鉄傘(だいてっさん)」という呼び名でアルプス席まで覆われていた。一連の改修は次の100年に向け新たな価値を創造し、誰にも愛される日本最古の球場としての歴史と伝統を紡いでいく意味合いがある▼夢の舞台を目指す高校球児らの全国各地の予選でも熱闘が続いている。1年で最も熱い甲子園の夏がまもなく到来する。

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2024年7月16日火曜日

回転窓/街路樹の恩恵

 うだるような暑さの日中は、歩道を歩いているだけでもつらい。そんな時は信号待ちで街路樹がつくる木陰に入り、先客がいればつかの間の涼を共有している▼身近な街路樹には〈夏の日差しをさえぎったり、排気ガスや騒音をやわらげ、道路沿いの環境を守ります〉などといった役割がある(東京都建設局ウエブサイトより)。中でも今の季節は強い日差しを遮断してくれるのが何よりありがたい▼街路樹の歴史は古い。近代では1870(明治3)年、都内の新島原(京橋)と根津門前(本郷)の道路中央にサクラが植栽されたという。恐らくこれが明治に入り東京で初めての街路樹と、映画監督・脚本家の樫原辰郎氏が『帝都公園物語』(幻戯書房)に書いている▼都市やまちにグリーンインフラとして恩恵をもたらす街路樹だが、大径木化や過密化、根上がり、落ち葉、倒木などが問題となることも。それぞれの地域や沿道に適した形での効果的、効率的な維持管理が求められる▼小欄がいつも目にする街路樹は、毎年11月ころに葉がきれいな黄色に染まる。いずれ来る秋の姿を思い浮かべながら、厳しい暑さを乗り越えよう。

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2024年7月12日金曜日

回転窓/「お客さまは神様」の真意

 民鉄やJR各社ら鉄道事業者が暴力行為防止のPRポスターを12日から一斉に張り出す。「その拳、一発でもダメ!」と強く表現した▼鉄道事業者37社局の統計によると、2023年度の鉄道係員に対する暴力行為は517件。曜日では金土日、時間帯では夜・深夜が多い。年齢別では60代以上が唯一2割を超えているが、年代に限らず幅広い層が加害者になっている▼「お客様は神様です」というフレーズは歌手の三波春夫が広めたとされる。三波は『歌藝の天地』(PHP研究所)で「舞台に立つとき、敬虔(けいけん)な心で神に手を合わせたときと同様に、心を昇華しなければ真実の芸はできない」と記している▼芸一筋に生きた中で「お客様を神様とみる」という心構えを持ち続けたのが真意。聴衆にこびる発想ではないと、三波のオフィシャルサイトは記している▼顧客とサービス提供者の双方がいなければ社会は回らない。お互い様の気持ちが不可欠だ。働き方が変わりつつある建設業界と発注者との関係も同じ。より良い社会を保ち続けるためにも、カスタマーハラスメントには毅然とした態度で臨む必要がある。

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2024年7月11日木曜日

回転窓/建設ファンのコンビニ経営者

 自宅近くの駅周辺にはコンビニエンスストアが5店舗もひしめき合う。弁当や飲料水などを意識してコンビニで買っているわけではないが、いつからかヘビーユーザーの一人となっている▼コンビニ業界大手セブン-イレブンの1号店が東京・豊洲に開店してから5月で50年を迎えた。現在の国内店舗数は約2万1000超に上る。この間に多くの新サービスを導入しコンビニの進化をリードしてきた▼1978年にのりを自分で巻くおにぎりを発売し、81年に宅配便の取り次ぎ、87年に電気料金の収納代行を開始。2001年にはコンビニATMの銀行が誕生し、10年からは住民票の写しなども発行可能に。他のチェーン店を含めてコンビニは生活に欠かせないインフラとなっている▼コンビニ店を経営する知人からうれしい話を聞いた。作業服姿で買い物に来る建設業の人たちの印象はとても良いのだとか。レジなどで気さくに声を掛けてくれる人が多く、「それがうれしく気持ちいい」という▼建設業で働く一人一人が業界のブランディングを担う。身近なところでのちょっとした気配りでも建設ファンを増やしていける。

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2024年7月10日水曜日

回転窓/被災地の漁港復興へ

 石川県漁業協同組合によると、能登半島の北から南には年間100種類以上の魚がやってくる。同組合は甲殻類なども含めた県産水産物を「石川の四季のさかな」と呼んで観光客らにアピールしている▼その「夏のさかな」の一つがスルメイカ。刺し身はもちろん、煮ても焼いても甘みと弾力があっておいしい。内臓と塩を漬けて発酵させた「いしる(いしり)」は万能調味料として日本三大魚魚醤(ぎょしょう)に数えられている▼1月1日の能登半島地震では、石川県内の60漁港が被害を受けた。同下旬には一部の漁港で定置網漁が再開され、組合関係者は当時を「再建の一歩になった」と振り返った上で、今も各地で復旧工事を続ける建設会社に「とても感謝している」と話す▼先週5日、水産庁は被災した漁港を復旧する技術的な考え方をまとめた。地盤隆起の被害などに対しての復旧計画を立案する自治体に役立ててもらうのが狙いだ▼被災地では機能が停止したままの漁港がまだ多い。県外漁船の寄港が制限されるなどスルメイカ漁への影響も続く。「復興は先の長い話ですよ」と組合関係者。建設業の担う役割はこれからも大きい。

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2024年7月8日月曜日

回転窓/触れて感じる大切さ

 本紙が創刊80周年を迎えた2008年から09年にかけて、建築家・池原義郎氏(1928~2017年)と各界識者の対談シリーズを掲載した。テーマは「再生への実践シナリオ」。毎回、21世紀に目指すべき「都市と環境」について語り合っていただいた▼対談者のお一人が安田侃氏。世界に知られた彫刻家で、大理石やブロンズの作品は多くの人を魅了する。対談では手掛けた作品に触れる人が「時と自分を感じてほしい」と話した▼炭鉱の町だった北海道美唄市に芸術広場「アルテピアッツァ美唄」が開設されたのは1992年。廃校となった旧栄小学校を活用し、美唄で生まれ育った安田氏の作品が屋内外に展示されている▼ここを訪れると空や木々、丘、広場、木造の旧校舎、彫刻などが一体で作り出す心地よい空間が出迎えてくれる。時間がゆっくり流れる中で作品に触れながら鑑賞する人たちの姿は印象的だ▼建築でも触れて感じることは大事であり、「手は非常に生命的なもの、そこに通い合うものを感じるのですね」と池原氏。お二人の話を振り返り、改めて普段は意識しない手で感じる大切さに気付かされる。

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2024年7月4日木曜日

回転窓/日記と天気

 もうたばこは吸わないと「禁煙」を決意してから日記を付けている。何とかめげずに「卒煙」できた後も続けていて、読み返すと夏の時期には豪雨など天候のことを書いている日が多い▼今年の梅雨明けは沖縄を除きもう少し先のよう。懸念されるのは大規模水害を引き起こす線状降水帯の発生だ。奈良県十津川村で1日、大雨による土砂崩れで道路が寸断し住民17世帯が孤立した▼線状降水帯の予測精度を高めるため、気象庁はスーパーコンピューターを投入し、従来の11地方予報区を府県単位に切り替えて半日程度前から警戒を呼び掛けている。大雨による河川増水に悩まされてきた福島市は、レーダー雨量などの実績値を基に15時間後の河川水位を予測するシステムを使い、早期の避難誘導に役立てている▼気象情報大手のウェザーニューズはオムロンと共同で湿度や風速などを計測する気象センサーを販売。1分ごとの大雨や強風が観測でき、気象の変化を迅速に把握できるという▼ここ数年で進歩を遂げている気象予測技術を活用して災害リスクの低減につなげたい。今夏は日記に災害のことを記さないですむよう願う。

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2024年7月3日水曜日

回転窓/眺める派の富士

 日本を代表する国内最高峰の富士山。生まれ育った静岡、現在暮らす神奈川の地で日々眺めてきたその姿は、いつも変わらず威風堂々としている▼遠方からも一目で分かる特徴的な形は芸術家たちの創作意欲をかき立て、無数の作品を世に出してきた。江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の代表作である「富嶽三十六景」は世界的に知られる▼独創的な構図で富士の威容を示しつつ、周辺のさまざまな場所で生き生きと暮らし、働く庶民の姿などを描いた風景版画シリーズは全46図に上る。当初刊行された36図が好評だったことから、10図が追加・制作された▼きょう3日に発行される新紙幣のうち、千円札の裏面には同シリーズでも特に有名な「神奈川沖浪裏」が描かれている。海外の競売では1枚数億円で落札されるなど人気が高い▼個人的に富士山は眺めて楽しむ派だが、国内外から登山を楽しむ人が急増。オーバーツーリズム(観光公害)が問題視される中、1日に山開きした山梨県側登山道(吉田ルート)では人数規制と通行料を導入し、5合目付近には仮設ゲートが設置された。世界に誇る文化遺産を守り続けねばならない。

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2024年7月2日火曜日

回転窓/縁の下に光を

 陰ながら人々や社会のために重要な役割を果たす人は「縁の下の力持ち」と呼ばれる。これまで建設業の活動をたたえる際、このことわざがよく使われてきた▼日々の暮らしや経済・社会を支えるという使命を担う建設業。災害発生時には被災地で真っ先に重機を動かし、道路啓開やインフラの応急復旧、被災者の支援活動に懸命に取り組む。名声など見返りを求めず、それらを当たり前のように実行する姿はまさにことわざの示す通りだろう▼元日発生した能登半島地震から6カ月が過ぎた。国土交通省北陸地方整備局はこの間の被災地支援や復旧・復興の取り組みをまとめ、写真や図表を多用し160ページ超にわたって詳報している▼建設関連の企業・団体名や個人名を出しながら、甚大な被害を受けた被災地での建設関係者の対応を紹介。個社の工夫などにもスポットを当て、資料には多くの活動事例や作業に従事する人々の思い、地元からの感謝の声などが載る▼苦労をいとわず、被災地で奮闘を続ける人たちの姿は、悲しみに暮れる被災者を勇気づけ、復興への活力にもなろう。建設専門紙として、その姿に光を当て続ける。

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2024年7月1日月曜日

回転窓/芸術作品とハエ

 たとえ一匹でも近くに飛んでくると煩わしいハエ。例年6~7月に最も多く発生し、8月にやや減少するものの秋に再び増加するとされる。こうした時期に備え、各地の家畜保健衛生所などは畜産業者に対し適切な対策を講じるよう注意喚起している▼ハエは感染症を媒介し、家畜にストレスを与えて生産性も低下させてしまう。畜産業者にとっては悩みの種であり、大量発生を防ぐために発生源などへの対策が欠かせない▼飲食店にも迷惑な存在だが、昔からハエを描いた美術作品は珍しくないという。月刊誌『芸術新潮』6月号(新潮社)は〈ハエはどう描かれてきたのか?〉とタイトルの付いたリポートを掲載している▼イタリア・パルマで14世紀から現在に至るハエの作品50点以上を集めた展覧会がこのほど開催された。現地リポートでは展示作品のいくつかを画像とともに紹介。果物や婦人の肩にハエがとまっている絵画など、いずれも独特の世界観が表現されている▼作者たちはどのような意図でハエを描いたのだろう。羽音が聞こえただけで不快感を覚えて遠ざけたいハエも、作品の中で放つ存在感は強く印象に残る。

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