2021年7月26日月曜日

【駆け出しのころ】東洋熱工業執行役員東京本店副本店長兼工事統括・野崎豊氏

  ◇自ら考え経験を大切に◇

 アウトドアの趣味などを通じて、環境問題には学生時代から関心がありました。環境関連のビジネスができればと考えていましたが、当時は関連企業の選択肢も少なく、なかなか希望がかないませんでした。同じ学部の先輩たちが建築系の設備会社に就職していることを知り、当社が「環境貢献」を企業理念に掲げていたことが入社のきっかけになりました。

 正直、建設業というものをまったく知らず、建築設備の仕事も建物ができあがった後、比較的クリーンな作業環境で行うものだと考えていました。入社後、ヘルメットをかぶり、安全帯を付けて現場に立った時はさすがに戸惑いを感じたのを覚えています。

 2カ月の研修後、東京都内の事務所ビルの現場に数カ月勤務。工程が遅れ気味で現場勤務のイメージも違っていたこともあり、つらいところもありましたが、最初の3年間は何があっても頑張ろうと自分を鼓舞していました。

 1年目の後期には技術的な研修を受け、現場代理人になるための知識を学びました。現場と違って研修は定時で終わり、同期と懇親するなど、気分転換にもなりました。

 次の現場は都内の大型事務所ビル。計画段階から竣工までの現場の流れを2年半ほどかけて一通り経験できたのは良かったです。先輩の指導を受けつつ、施主や設計事務所など関係者らとの打ち合わせなど、事前検討ではある程度のことを任されました。大型案件で打ち合わせの関係者が多く、若手を応援してくれる人ばかりではありません。厳しい人も多かったですが、これから仕事を続ける自信を持つことができました。

 続いて担当したゼネコンの社員寮建設工事で、初めて現場代理人を任されます。空調設備を担当する当社のほか、衛生、電気など同業他社のベテラン技術者の方々から、仕事の段取りや流れ、管理の仕方などを教えてもらい助かりました。それでも現場を工期内に終わらせることばかりに気が回り、品質面のフォローが足りなかったと反省点は多く、竣工後のクレーム対応で苦労もしました。

 ある企業の本社ビルの建設工事では、建築主が思い描いていた建物のクオリティーが実際と異なっていると、基本設計までさかのぼる非常に大きなクレームに発展。第三者機関を介して解決まで2年ほどかかりました。上司や先輩たちの理解とサポートがなければ、つぶれていたかもしれません。当時は理不尽だと感じたクレームに余裕もなかったですが、建築主の思いをもっと深く理解しようとするべきだったと思います。

 口にはできない失敗も少なくありません。前例に縛られず、常に疑問を持ち、自ら考えながら仕事に向き合う。若手には経験から得たものを大切にしながら成長してもらいたいです。

入社5年目、応援で入った東京都内の現場事務所で

 (のざき・ゆたか)1986年埼玉大学工学部環境化学工学科卒、東洋熱工業入社。東京本店工事部長、執行役員東京本店次長を経て2020年4月から現職。神奈川県出身、57歳。

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