2020年1月31日金曜日

【回転窓】多様性による相乗効果

飲食店でベテラン店員が若手に指示を出していた。2人とも南米出身の外国人だった▼業務連絡は母国語でやりとりするが日本語も堪能。客と楽しそうに話しつつ、てきぱきと動く姿に好印象を持った。コンビニや飲食チェーンなどでは「外国人がいなければ経営が成り立たない」との声もある▼採用関連サービスを展開するリクルートジョブズの調査によると、外国人材の採用理由は「人手不足解消」が50%で最多。一方で「グローバル戦略のため」(22%)、「社内活性化につながる」(11%)との回答も一定数あった▼リクルートは2020年トレンド予測で「多国籍人材を積極活用する企業、そこで活躍する多国籍人材が増えていく状態が進む」と指摘している。その際には採用時研修などに加え、多国籍人材の向上心を刺激するようなキャリアプランを準備することが重要になるという▼「単にダイバーシティー(多様性)が進むだけでは駄目だ」。あるゼネコンのトップがそう話していた。互いに認め合っていかなければ大きな相乗効果は生まれない。本当の意味での融合をどう図るのか-。本気度が問われている。

【国交省と静岡県が合意】リニア静岡工区、有識者会議設け環境対策議論

 国土交通省と静岡県は30日、JR東海が進めるリニア中央新幹線建設プロジェクトのうち、未着工の静岡工区の環境対策を議論する有識者会議の設置で合意した。

 静岡県の難波喬司副知事が同日、会議設置の前提条件5項目を国交省に提出した。水嶋智鉄道局長(写真左)は「真摯(しんし)に受け止める」と回答。会議の早期開催に向け運営方法などを協議する場を早ければ来週にも設ける意向を示した。JR東海の参加も視野に入れる。

 静岡工区の整備を巡っては、静岡県が県内を流れる大井川など水資源や環境に与えるトンネル掘削の影響を懸念。現時点で着工に至っていない。有識者会議では課題への対策を科学的、工学的な見地から議論する。

 県は会議の設置に当たり、大井川流域市町の首長などの意見を集約し、前提条件を設定した。条件は▽会議の透明性確保(全面公開)▽議題は県がJR東海に提示した協議項目47件とすること▽会議の目的は国交省によるJR東海への指導とすること▽中立公正で、これまでの協議の経緯を踏まえた人材を委員に据えること▽会議のトップを関係者が設置した会議体の委員や利害関係者以外から選定すること-の5項目。水環境や生態系、農業・工業用水などを所管する他省の関与が不可欠と注文を付けた。

 有識者会議の設置は、静岡県が国交省に昨年提出した要請文への回答書(1月17日付)の中で、国交省が提案した。

【重複開発防ぎ早期実用化目指す】鹿島と竹中工務店、ロボット・IoT分野で技術連携

 鹿島と竹中工務店が、ロボット施工やIoT(モノのインターネット)分野で技術連携を開始した。プロジェクトチーム(PT)を既に設置しており、建築現場で活用する資材搬送システムなどを共同開発する。

 開発済み技術も相互利用する。今後は両社以外の参画も幅広く受け入れる方針。業界全体で活用できるような技術を開発し、生産性や魅力の向上につなげる。

続きはHP

【ネーミングライツ、日本エスコンと契約】新球場は「ESCON FIELD HOKKAIDO」に

 プロ野球・北海道日本ハムファイターズ(HNF)は、札幌市内で記者会見し、北海道北広島市で2023年度の開業を目指す新球場の命名権について、日本エスコンと契約したと29日発表した。

 新球場名は「ESCON FIELD(エスコンフィールド)HOKKAIDO」で、契約期間は1月1日から10年以上。日本エスコンは、ホテル開発など球場周辺の街づくりにも参画する。

 命名権契約は新球場を保有・運営するファイターズスポーツ&エンターテイメント(FSE)と日本エスコンが結んだ。契約額は明らかにしていないが、国内過去最高額の日産スタジアムの年間4・7億円を上回るという。

 記者会見では、球場建設地となるボールパークエリア(総開発面積約36・7ヘクタール)全体の名称は「北海道ボールパークFビレッジ」とし、開業から42年までの20年間を4年ごと5期に分け、エリア全体の開発に取り組む計画も発表した。

 23~26年のフェーズIでは球場に隣接する南東側の敷地を対象に、▽自然との融合▽ロングターム&ステイ▽アクティビティ-をキーワードに、多種多様なニーズに応えられる複数の宿泊施設や定住も見据えたレジデンス、子ども向けの球場、イベント広場などを整備する。日本エスコンはこのうち約9400平方メートルの敷地でホテルなどの不動産開発を手掛ける。

 日本エスコンの伊藤貴俊社長は「今まで日本にない球場を造るという構想に感動した。構想全体にも関われるのは非常に価値があり、世界がまだ見ぬボールパークの建設、町全体の付加価値の向上に貢献したい」と述べ、「北海道に拠点を構え、住宅や商業施設、オフィスの開発など北海道でも地域に評価される開発事業を手掛けていきたい」と今後の道内での事業展開に意欲を見せた。

【使用木材は提供自治体に返還】選手村ビレッジプラザ、設計で「みんなで作る」表現

 東京五輪・パラリンピックの出場選手や家族の交流拠点となる仮設施設「選手村ビレッジプラザ」(東京都中央区)が29日に公開された。

 「みんなで作る」をコンセプトに、全国63自治体が無償提供した地場産木材を用いて建設したことが最大の特徴だ。各自治体の部材が互いに支え合う架構形式をメインで採用し、設計にも「みんなで作る」という考えを盛り込んだ。

 整備主体は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会。設計は日建設計、施工は熊谷組・住友林業JVが担当した。昨年6月ごろから各地の木材が続々と届き始め、同11月に棟上げが完了。4月に完成する。

 5棟構成の建物には入村式や記者会見を行うスペースに加え、雑貨店やカフェ、ヘアサロンなどさまざまな生活関連施設がそろう。事務所などの小空間は格子梁架構、記者会見室などの大空間はトラスアーチ架構とするなど各棟の用途に応じ架構形式を変えた。

 中でも目を引くのが、間仕切り壁を必要としないエントランスや選手らの交流スペースに使われた「レシプロカル構造」を応用したオリジナルの架構形式だ。3本の斜柱をツイストさせた組柱で梁を支え、部材が複雑に入り組む印象的な空間を演出する。

 日建設計の高橋秀通氏は「各自治体の部材が持ちつ持たれつの形となり、互いに協力し支え合う」と狙いを話す。斜柱のツイスト方向が左右交互となるよう配置し、力の掛かり方を打ち消し合って強度を出せるようにした。

 各自治体から木材を調達する方法も工夫した。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用し、約4万本の木材一つ一つの設計データを各自治体と共有化。部材の仕口などは地元で加工を済ませ、現場では組み立てるだけにした。

 大会後に施設は解体され、10月以降に部材はそれぞれの地元に返却される。簡単にばらすことができるよう、主にボルトで締めるだけで部材をジョイントする方法を取った。

 同日には木材提供自治体向けの披露式典と内覧会が開かれた。長良スギや東濃ヒノキを提供した岐阜県の古田肇知事は「木の香りがする心地いい空間を満喫した。部屋(棟)ごとに微妙に香りが変わり、回っているうちに63自治体の五輪への思いが伝わってきた」と感無量の様子だった。

 式典に訪れた日建設計の亀井忠夫社長は「各国の選手らが集まり、交流する施設にふさわしく、各自治体が集まり、寄り合うデザインを実現した。ストーリーが一貫したものに仕上がった」と手応えを語った

2020年1月30日木曜日

【63自治体が木材提供】選手村ビレッジプラザの棟上げ完了、4月完成へ

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が東京都中央区の選手村近くに建設している仮設施設「選手村ビレッジプラザ」の棟上げが完了し、29日に報道機関や木材提供自治体の関係者らに施設を公開した。

 大会中は出場選手団の入村式や交流の舞台となり、物販店舗やカフェも運営する。基本設計は日建設計、施工は熊谷組・住友林業JVが担当。4月に完成する。

 施設は木造平屋の5棟で構成し、延べ床面積は約5300m2。全国63自治体(連名での応募を含む)から無償提供してもらったスギやヒノキ、カラマツなどの地場産材を約1300m3(約4万本)使用した。各棟の用途に応じ△レシプロカル△格子梁△トラスアーチ-という三つの木造架構形式を採用した。

 組み立てられた木材の一つ一つに提供元の自治体名を刻印している。大会後は木材を返却し、各自治体の公共施設で再利用される予定だ。

【2000席大ホールなど配置】福岡市拠点文化施設整備・須崎公園再整備PFI、日本管財ら6社グループに

福岡市拠点文化施設の完成イメージ
福岡市は、老朽化した市民会館の建て替えと公園の再整備を一体的にBTO(建設・移管・運営)方式のPFIで行う「福岡市拠点文化施設整備および須崎公園再整備事業」の一般競争入札(WTO対象)で日本管財を代表企業とするグループを落札者に決定した。落札価格は208億7140万2038円。市議会の議決を得て6月に契約を締結する。入札参加は1者だった。

 日本管財グループの代表企業以外の構成員は▽戸田建設▽JTBコミュニケーションデザイン▽九州林産▽占部建設▽照栄建設。協力企業として▽梓設計▽俊設計▽戸田芳樹風景計画▽サン・ライフ▽古賀緑地建設-が参画する。

 事業エリアは中央区天神5の6ほかの須崎公園内(市民会館約1・06ヘクタール、公園約2・96ヘクタール)。拠点文化施設の建設後、現市民会館を解体し敷地を公園として再整備する。

 拠点文化施設は約2000席の大ホールや約800席の中ホール、約150席の文化活動・交流ホール、リハーサル室・練習室などで構成。公園は水辺に開かれた公園として現在の面積を確保しつつ、まとまった整形な形状に再整備する。

 設計・建設期間は2026年3月まで。運営期間は39年3月まで。拠点文化施設と須崎公園エリアの再整備を行う1期は、24年1月に引き渡しを行い、同3月に供用する。

【8割進捗、3月21日供用開始】山手線原宿駅改良工事(東京都渋谷区)が終盤に

拡張工事が進む原宿駅表参道方面改札付近
(1月27日撮影、JR東日本提供)
JR東日本が進める山手線原宿駅(東京都渋谷区)の改良工事が終盤を迎えている。駅舎の新設や改札の拡張などを実施するプロジェクトは進捗(しんちょく)がおよそ8割に達した。施工は鉄建建設が担当している。3月21日の供用開始を予定している。

 新駅舎は線路とホーム上に設置する。建物は2層建て。駅業務施設、コンビニ、カフェなどの機能も配置する。

 既存コンコースを約3倍、トイレは約2倍に広げるとともに、表参道方面の改札も拡張し、混雑緩和につなげる。新たに3基の24人乗りエレベーターも設置。山手線外回りの新ホームとホームドアも整備する。

 東京五輪・パラリンピックの開催をにらみ、混雑緩和、利便性・快適性の向上を目的に工事を進めている。既存の駅舎は五輪後に解体し、現在の意匠を継承しながら建て替える方針だ。

【外径14m、施工は熊谷組JV】リニア新幹線工事で最初のシールド機完成

 JR東海は、リニア中央新幹線(東京・品川~名古屋)の第一首都圏トンネルのシールド掘削を2021年度初めに開始する方向で調整に入った。

 品川駅(東京都港区)の南方約1キロに位置する北品川非常口(品川区)となる立坑から発進するシールドマシンが完成し、4月ころから立坑に搬入する。今秋から防護工や必要な設備を整える発進準備に着手する。リニア本体初のシールド掘削工事で、最大土被り約90メートルの大深度掘削がいよいよ始まる。

 第一首都圏トンネルは、品川駅の近くから名古屋方面への延長約36・9キロ。約33キロがシールド掘削の対象となる。完成したマシンは、同トンネルのうち熊谷組・大豊建設・徳倉建設JV施工の北品川工区約9・2キロの区間内を掘削する。2019年12月に完成した北品川非常口を発進し、東雪谷非常口(大田区)を経由し、等々力非常口(川崎市中原区)に至る。

 東雪谷、等々力の両非常口は建設中。マシンは北品川の地下約80メートルから出発し、地下約50メートルの首都高速中央環状品川線の下をくぐりながら、上総層群の固い地盤を掘り進む。土被りは最大約90メートル。等々力到達後、マシンの一部は北品川から品川駅方面の掘削に再利用する計画だ。

サンライズビットを備える泥土圧式シールドマシン(一部CG合成、提供:JR東海)
マシンはJIMテクノロジーが製作した。泥土圧式で、外径は14・04メートル、機長14・53メートル。カッターヘッドは、掘削面に約700個のビットを備える。8キロ以上の長距離掘削となり、立坑のコンクリート製仮壁と地盤を最適な仕様で掘削する必要もある。

 熊谷組とJIMテクノロジーが共同開発した「サンライズビット工法」を適用。機内から遠隔操作で安全に交換できる「サンライズビット」を22基備えている。地山用、仮壁用、地山用予備といったビットが順に掘削面に出る装置で、施工に万全を期すためにビットを複数用意した。

 検知用のビットを利用し、ビットの摩耗は高い精度で管理する。ビットは総計1100個以上になるという。かき込んだ掘削土を搬送するスクリューコンベヤーは2段式で、耐久性の高い耐摩耗性鋼板を使った。

 品川~名古屋間は、施工難度が高い南アルプストンネル、品川駅、名古屋駅などから施工に着手している。(仮称)神奈川県駅(相模原市緑区)の先から西側の第二首都圏トンネルや、名古屋駅(名古屋市中村区)の東側までなど、首都圏、中部圏の都市部は大深度地下にトンネルを築造する。既に設計・製作中のマシンは別にもある。

 JR東海は29日、神戸市兵庫区の三菱重工業神戸造船所で完成したマシンの見学会を開いた。JR東海中央新幹線推進本部の吉岡直行担当部長は「都市部のシールド工事を始める。今まで以上に力を尽くす」と掘削開始に意欲を示した。その上で「地上への影響がない一方で、固い地盤と高い水圧の中を頑強なシールドマシンで掘っていく。厳しい工事になるかもしれないが、万全の準備をしたい」と語った。

2020年1月29日水曜日

【理想のライフロードマップ作成】九州整備局、官民女性技術者交流会開く

 国土交通省九州地方整備局は、働きやすい職場を目指して九州の官民の女性技術者が意見交換を行う「官民の女性技術者交流会」を27日に福岡市内で開いた。

 仕事とプライベートで起こるライフイベントを踏まえた課題や解決策を話し合い、理想の「ライフロードマップ」を作成した。幸せを引き寄せるキャッチフレーズとして「何でも『女性初』になる」「トップを目指せ」といった前向きな発表があった。

 交流会は18年度から開催。3回目となる今回は同局や地方自治体、建設会社、建設コンサルタントなどで働く約40人が参加した。

 参加者は世代別の班に分かれて社会人としての人生を振り返り、グラフ化した各個人の「ライフチャート」を作成。チャートから見えてくる課題と解決策について意見交換し、世代別に理想とする目標を立てて具体的に行動していくための行程表「ライフロードマップ」を作成した。

 ライフチャートから見えてくる課題では仕事、プライベートのいずれも「時間がない」との意見が多かった。仕事面の課題では「仕事量が多い」「世代間の考え方の違い」「モチベーション」などが挙げられ、解決策には「業務の平準化」「業務の取捨選択」「男性も含めた働き方改革」などの意見が出た。

 プライベートでは「心の余裕」「健康」などが課題とし、解決策は「趣味を見つける」「お金で解決できるものはお金で解決する」などが挙げられた。

 ライフロードマップの発表では結婚、昇進、住宅購入、介護など設定したライフイベントを乗り越え、幸せを引き寄せるためのキャッチフレーズを披露した。

 仕事については「何でも『女性初』になる」「自分を知って現実を受け入れる」、プライベートでは「体と心のメンテナンス」などのキャッチフレーズが発表され、仕事とプライベートの両方で「トップを目指せ」とする前向きな発表もあった。

 発表後の講評で九州整備局の堂薗俊多企画部長は「視点が広く、多彩」と評価。林孝標企画調整官は「いろいろなところで発信し、いいスパイラルをつくってほしい」と述べた。

 同局九州女性技術者の会の原田佐良子会長は「理想を自分の中でカスタマイズし、今後の自分をイメージしてもらえれば」と話した。会の進行役を務めた濱砂圭子氏(フラウ社長)は「夢や理想に自分から近づいて」と呼び掛け、自分から職場を変える姿勢が大事だと強調した。

【旧京都中央電話局改修し複合施設に】NTT都市開発、新風館(京都市中京区)を4月16日開業

 NTT都市開発は、京都市中京区で開発している複合施設「新風館」を4月16日に開業する。1926年9月に竣工した旧京都中央電話局を改修しながら一部新築し、ホテルと商業、映画館が入る複合施設を整備する。

 設計・監理をNTTファシリティーズ、隈研吾建築都市設計事務所が建築デザイン監修を手掛けている。施工は大林組。

 計画地は烏丸通姉小路下ル場之町586の2(敷地面積6384平方メートル)。京都市営地下鉄の烏丸御池駅に直結する。建物はS造地下RC造地下2階地上7階建て、総延べ2万5537平方メートルとなる。

 米エースホテルがアジアに初めて進出する。名称は「エースホテル京都」。客室数は213。三つのレストラン、イベントや結婚式に利用できるバンケットルームとミーティングルームを設ける。

【のんさんと渡邉理佐さん起用】建災防、年度末労災防止強調月間のポスター制作

 建設業労働災害防止協会(建災防、錢高一善会長)は、3月に迎える「建設業年度末労働災害防止強調月間」の普及啓発に向けたポスターの販売を始めた。

 工事が完成する繁忙期を迎え、労働災害の多発が懸念されるため、安全衛生意識をさらに喚起する。ポスターのモデルには女優ののんさん(写真右)と、アイドルグループ欅坂46の渡邉理佐さんを起用した。

 価格は税込み200円。東京からの注文は建災防本部の教材管理課、東京以外は道府県支部で受け付ける。

2020年1月28日火曜日

【回転窓】地域活性化に役立つ道の駅

幹線道路沿いなどに設けられている道の駅。車を運転していて見掛けると「何か面白い物はあるかな」と、つい寄りたくなる▼地元の名産品や新鮮な野菜、中には超激辛アイスといった変わり種もある。1993年に制度が創設されてから現在までに1100カ所以上が設置されたそう。地域の活性化や交流の深化などに役立っていると聞く▼国土交通省は先週、新設やリニューアルを重点的に進める道の駅として、国交大臣選定と地方整備局選定の各15カ所を公表した。選ばれたのはどれも個性的な取り組み。北海道から九州まで30カ所で観光や子育て、地域創生、農業などさまざまな視点からプロジェクトが展開される▼大規模な自然災害が全国で頻発している中、国交省は来年度、災害対応に必要な物資を備え、広域防災拠点として道の駅を機能させる認定制度の創設を目指している。創意工夫で地域に根差し、暮らしを支え、多くの人に楽しみを提供する道の駅。公共事業の在り方を考える上でもっと評価を受けてもいいのではないか▼ちなみに超激辛アイスは福島県南東に位置する平田村にある「道の駅ひらた」の名物。

【ガンダム、動く】山下埠頭に実物大ガンダム、建築テクニカルパートナーに川田工業

 一般社団法人のガンダムGLOBAL CHALLENGE、バンダイナムコホールディングスグループのEvolving Gは、横浜市と連携し、実物大の動くガンダムが見られる「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」を横浜・山下埠頭に10月から期間限定で開設する。

 間近な観覧デッキ「GUNDAM-DOCK」や、動く仕組みを分かりやすく紹介する「GUNDAM-LAB」で構成。両施設は川田工業が設計・施工する。

 アニメ「機動戦士ガンダム」の40周年プロジェクトの一環。計画地は中区山下町279の25。みなとみらい線の元町・中華街駅が最寄り。面積は約9000平方メートル。設置は今のところ約1年間。

 DOCKは604平方メートル。高さ約25メートルのメンテナンスデッキを備える。整備工場や格納庫をイメージした展示施設で、動くガンダムの基礎を整え、保守管理に最適な柱のない空間とする。LABは設計、構造が学べる展示施設やショップ、カフェなどがある2階建て延べ2097平方メートルの複合施設。川田工業は全体の建築計画のテクニカルパートナーを担い、システム建築の技術力を駆使し、すでに国内外から注目を集める夢のプロジェクトの実現に貢献する。

 プロジェクトを巡っては、さまざまな研究者、エンジニア、クリエイターなどが集まり、18メートルの実物サイズを設計・開発し、動かすための検討が2014年から続いてきている。

【人が集い、笑顔があふれる場所に】今治.夢スポーツ、FC今治新スタジアムの基本設計着手

 サッカーJリーグのFC今治を運営する今治.夢スポーツ(愛媛県今治市)は、新しいホームスタジアム「里山スタジアム」の基本設計に今春から着手する。

 設計は梓設計が担当。民設民営方式で、今治市高橋ふれあいの丘にある現スタジアムの隣接地に整備する計画。今治市議会が2019年12月に用地を無償貸与することを議決しており、早期の着工を目指す。FC今治は、今シーズンからJ3に昇格する。

 里山スタジアムの整備事業を推進する主要メンバーとして、梓設計のほか、りんかい日産建設、四国通建、吉田進一氏らが参画している。梓設計は、企画・設計提案を行ってきた。規模や仕様など詳細は検討中。試合のない日でも幅広い世代の多くの人たちが集まる空間を創出する。

 26日に同市内で行われたFC今治の新体制発表会で、今治.夢スポーツの岡田武史代表取締役会長は「目指すのは複合型スタジアム」と表明。学童保育、英会話教室、オフィスなどとして利用するプランも披露した。その上で「365日、人が集い、笑顔があふれる場所にしていく。コンクリートを流し入れて造った廃れていくだけのスタジアムではなく、自然に囲まれて人々が癒やされ、心のよりどころになるようなスタジアムを目指す」と意気込みを語った。

【有楽町エリアで再開発実施へ】三菱地所、丸の内街づくりで最大7000億円投資

 三菱地所は拠点を置く東京都心部の「大丸有エリア」で展開する街づくりプロジェクトの方針を発表した。「丸の内NEXTステージ」と題し、2030年までに6000億~7000億円を新規投資する計画。公表済みの四つのプロジェクトに加え、「有楽町エリア」での施設建て替えによる再開発事業を推進する。

 これまで二つのステージに分け取り組んだ「丸の内再構築」の成果を踏襲しながら、変化し続けている社会環境に対応する街づくりを目指す。テーマは「丸の内Reデザイン」。同エリアに集積する企業との連携や、広い敷地を活用した実証実験の場の提供などでイノベーションを促進。地球環境の改善に寄与するデジタル基盤なども整備する。

 公表済みの▽東京駅前常盤橋プロジェクト▽大手町ビルリノベーション▽(仮称)丸の内1-3計画▽(仮称)内神田一丁目計画-の4事業を着実に進めつつ、有楽町エリアの再開発に取り組む。

 同エリアでは、クリエーティブな活動を支援する機能の確立、駅や建物、広場などをつなぐネットワークの構築などを推進。文化芸術・MICE(国際的なイベント)を核とした「まちづくりのショーケース」をコンセプトにする。同エリアの街づくりを巡っては昨年1月、丸の内開発部に「有楽町街づくり準備室」を新設し、社内の検討体制を整えた。4月1日付の機構改革で準備室を「有楽町街づくり推進室」に改称し、プロジェクトのアクセルを踏み込む。

【凜】東京・新宿区新宿駅周辺整備担当部・嶋田千晶さん

◇建築技術を区政で生かす◇

 大学院まで建築の構造を専攻した。先進的な技術を研究する中で、技術の実現には制度の整備も欠かせないと実感。建設関係の企業に進む同級生が多い中、行政機関への就職を決めた。

 基礎自治体を選択したのは「自分が取り組んだ仕事で、街が少しずつ変わっていく様子を見守ることができる」と考えたから。事業が完了した後も、一つの街と関わり続けることができる環境に魅力を感じた。

 都が昨年5月、街並み再生地区に指定した「新宿駅東口地区」の街づくりビジョンや再生方針の策定に携わった。指定基準に「駅周辺機能更新型」を適用した初の案件。前例がないため検討には苦労したと振り返る。大規模事業が多い新宿では、経験豊富な関係者と仕事する機会も多い。若手の自分を見て「相手を不安な気持ちにさせない」ことも大事にしているという。

 今後は「街づくり以外の部署も経験し、区の建築職の仕事を理解したい」と意気込む。区政全体で抱える課題の解決に、建築技術を役立てることが最終的な目標だ。

 区と都は2040年代の完了を見据え、新宿駅構内や駅前広場を大規模に再編する「新宿グランドターミナル」計画を進めている。「現在の部署を離れても、さまざまな形で計画を支えていきたい」。学生時代を過ごした新宿の変遷を間近に感じながら、これからも仕事に情熱を注ぐ。

 (新宿駅周辺まちづくり担当課、しまだ・ちあき)

【サークル】佐藤工業SKフットサル同好会「発注者・協力会社と共に楽しむ」

 佐藤工業北陸支店の現場作業所メンバーを中心に結成した「SKフットサル同好会」。佐藤工業の社員だけでなく、会社の枠を超えて発注者や協力会社を巻き込んでいる点が特徴だ。

 「仲良く・楽しく・けがをせずに、ベストを尽くす」をモットーに、月1度のペースで汗を流している。

 現場作業所に配属されていたサッカー経験者の若手社員が、「社内だけではなく社外との交流の場を作り、いろいろな職種の人とも気軽に親交を深めていきたい」と周りに声を掛けたのが発足のきっかけ。2019年10月時点で学生を含む約20人が所属、会社や年齢の壁を越えて多様なメンバーで構成する。

 現在は月1度のペースで活動中。北陸支店建築事業部建築部工務課(設備担当)の中西拓史さんは「今後は会社対抗や同級生対抗など、内輪だけの大会を主催して楽しみたい」と話す。

 現在はメンバーのうち15人程度が参加しているが、「最低でも4チーム、20人は常時参加できるようにしたい」と中西さん。メンバー集めに励みつつ「初心者でも気軽に参加してもらい、楽しんでいってもらいたい」とファイトを燃やす。

【駆け出しのころ】ケミカルグラウト常務技術本部副本部長・多田信一郎氏

 ◇好奇心持ち仕事を楽しむ◇

 高校時代は山岳部に所属し、身近に山がありました。大学院を修了し、入社後は街中の現場を希望しましたが、山深い現場勤務が続きました。

 新人研修の最終日に、青森のダム現場への配属が伝えられ、片道の航空券を渡されました。翌日、悪天候で飛行機が飛ばないことを上司に告げると、「万難を排して目的地に行くように」との指示を受け、その日の夜行列車で現地に向かいました。4月半ばでしたがまだ雪深く、「すごいところに来てしまった」と感じたのを今でも覚えています。

 青森のダム現場では、元請JVの一員という立場で働きました。いきなりの大現場で仕事のイロハも分からず、早朝の朝礼から始まり、昼間は現場の追いまわし、夕礼後、事務所に戻って日報整理の毎日でした。タヌキやウサギの出る現場宿舎での暮らしも含め、最初は大変な現場だと思いましたが、先輩上司をはじめ食堂のおばちゃんからも温かく受け入れてもらい、そんな日々を楽しく思えるようになりました。

 入社1年目の新人技術者ということもあり、JVの現場所長をはじめ、現場の皆さんから、担当のグラウト工事以外の測量や土工事、埋設計器など、いろいろ教わりました。当時、鹿島が全社で取り組んでいた品質管理のTQC活動を通じ現場作業も細かく見直され、大変勉強になりました。

 現場で発生する問題に対し、コンサル以外に施工者側からも、対応策を提案し、その中で最良の案が採用される現場でしたが、私の提案は連戦連敗。知識が無いのが大変悔しくて、お盆の休暇中、国立国会図書館へ通いダムグラウト関係の資料や、過去の論文や文献などを参考に、一から勉強を始め、自分の提案が採用された時は大変うれしかったです。

 10年を過ぎ、大規模なダム現場から、市中の小規模なアンカー工事の現場を任されました。入社から元請側の仕事を長く務めていたため、頭でっかちな技術者となっていたことを痛感しました。知識や技術だけではなく、元請や他工種の職長さんとの調整をうまく行い、職人さんたちが気持ち良く仕事ができる環境をつくること。結果として効率良く出来高が上がること。現場技術者の基本を改めて気付かされました。

 若い人たちには常に好奇心を持ち、仕事に当たってほしいと思います。目の前の仕事だけでなく、他社の工事や前後の工程にも関心を持ち、工事全体を知ることで自分の仕事の目的や求められる品質も見えてきます。 受け身にならず、いろいろな問題に対し自分なりの解釈や判断を積み重ねることも大切と思います。

 いっぱい失敗をした自分を受け止めてくれた先輩たちには、感謝の気持ちしかありません。
入社1年目の冬、青森のダム工事現場で
(ただ・しんいちろう)1982年日本大学大学院生産工学研究科土木工学専攻修了、ケミカルグラウト入社。西日本支社副支社長兼九州支店長、関西支店長などを経て2019年6月から現職。神奈川県出身、62歳。

2020年1月24日金曜日

【回転窓】スポーツ観光に期待

スポーツを軸に集客を図るスポーツツーリズムへの関心が高まっている。競技大会などを開けば参加者はもちろんのこと、観覧者やこれらをターゲットにした出店なども期待でき、地域活性化の一助になるためだ▼スポーツ庁はスポーツ文化ツーリズムアワードと呼ぶ取り組みを展開中。2019年度は、栃木県日光市で開かれている「日光国立公園マウンテンランニング大会」が入賞した▼日光東照宮などの世界遺産や奥日光国立公園を走るぜいたくなコースが、人気になっているそうだ。きっかけは15年8月に同地域を襲った台風。被災した地域で元気を取り戻そうと地元の若者が企画したという▼文部科学省はスポーツ資源を活用したインバウンド(訪日外国人旅行者)の拡大に向け、20年度予算案に新規施策の経費を盛り込んだ。快適な基盤や交通網の拡充も必要だろう▼今年は夏に東京五輪・パラリンピックが開かれる。トップアスリートのハイレベルな戦いは魅力だが、巧拙問わずに幅広い楽しみ方があるのがスポーツの良いところ。武道ツーリズムなどバリエーションも広がっている。盛り上がりの加速を期待したい。

【安全戦士・奥村くみ参上!!】奥村組、1月26日からCM第3弾を放映

 奥村組は、建設の仕事が好きな新米女子社員を女優の森川葵さんが演じるテレビCM「建設LOVE 奥村くみ」の新シリーズを制作した。

 森川さん演じる奥村くみがチャーミングな「安全戦士」となり、建設現場の安全確保に奮闘する。同社が協賛し、26日に開催される「第39回大阪国際女子マラソン」の番組内で放映予定だ。

 新CMは全2話(各15秒と30秒)で構成する。着工間もない工事現場のシーンでは、総勢85人の同社社員が撮影に参加。先輩社員役を俳優の山中崇さん、後輩社員役を女優の木村舞輝さんが演じている。CM楽曲は前回と同様、シンガー・ソングライターの竹原ピストルさんが書き下ろした「いくぜ!いこうか!いこうよ!」が使用される。

 新CMについて森川さんは「とても寒い中、皆さんと協力して一体感のある撮影ができた。奥村組のチームになった気がして胸が熱くなった」とのコメントを寄せた。

【100億円投資、USJで実績の森岡氏が協力】西武鉄道ら、西武園ゆうえんちリニューアル

 西武鉄道は23日、埼玉県所沢市にある「西武園ゆうえんち」で計画する大規模リニューアルの事業概要を明らかにした。

 1960年代の幸せと人情にあふれていた日本の街をイメージ。訪れた人が幸福感に満たされる場所を提供する。今月に西武建設の設計・施工でリニューアル工事に着手した。2021年の開業を目指す。総事業費は約100億円を見込む。

 西武園ゆうえんち(山口2964、敷地面積約20ヘクタール)の開園70周年記念事業となる。「心あたたまる幸福感に包まれる世界」をコンセプトに据え、人との情緒的なつながりなどを感じられるアトラクションなどを設ける。アトラクション数は現在の17から大幅に増える見通し。リニューアルに併せ、西武遊園地駅など周辺の駅名の変更も検討する。

 同日東京都内で事業の発表会が開かれ、後藤高志西武ホールディングス社長兼西武鉄道会長(写真㊧)、西武鉄道とともに事業を推進する刀(東京都港区)の森岡毅代表取締役兼最高経営責任者(CEO)が概要を説明した。

 事業の位置付けについて、後藤社長は「世の中が便利になる一方で、時間を持て余し人と人の付き合いが希薄になる『飽時(ほうとき)』の時代が訪れようとしている。それを打開するための『解』がこの事業だ」と説明。「グループを挙げて絶対に成功させなければならない」と意気込んだ。

 森岡CEOは「今までの遊園地の変遷やアセットを考慮しながら持続可能な施設に生まれ変わらせる難易度が高い事業」とした。コンセプトを固めるに当たっては「開業から70年経過し、遊具などで古いものが多い。古さを逆手に取り、今あるものをより良く見せ、日本の古き良きもので幸せを提供することを考えた」と話した。

 森岡CEOは、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で新たなアトラクションやイベントを仕掛け、来場者の大幅増に貢献した実績がある。
1950年開園当時の西武園ゆうえんち

【どうなる施設更新、建築界から保存・活用求める声】葛西臨海水族園更新、機能移設ありきの計画に異論

 東京都が検討している「葛西臨海水族園」(江戸川区、1989年竣工)の施設更新を巡って、建築界から異論が出ている。

 都は既存施設の隣接地に新施設を建設し、水族園機能をすべて移設することを想定。建築家の谷口吉生氏が設計を手掛けた既存施設は従来の用途を失うことになり「取り壊しも示唆する内容だ」と反発が起きている。既存施設の保存・活用は現時点で検討の俎上(そじょう)にも載っておらず、今後、都の対応が求められる。

 昨年12月、日本建築学会(竹脇出会長)の主催で既存施設の長寿命化をテーマに緊急シンポジウムが開かれた。基調講演を引き受けた建築家の槇文彦氏は、自身が設計した「沖縄国際海洋博覧会・海洋生物園」(沖縄県本部町、1975年竣工)が「一切われわれには言わないで」取り壊された経験を引き合いに出しながら、既存施設がつくる景観の保存を繰り返し訴えた。

 槇氏は林立した建物が連なる臨海部にあって、東京湾や公園全域と一体化した景色の希少性を強調。さまざまな場面で重層的な風景が味わえると魅力を語り、「東京に欠くべからざる景観であると強く認識している」と力を込めた。

 都は数年前から、躯体や設備の老朽化を受け水族園の将来像の検討を開始。昨年1月に公表した施設更新の基本構想で新施設の建設方針を打ち出し、既存施設は「水族園機能を移設後、施設状態などを調査の上、その在り方を検討」と明記した。

 ところが、続いて設置された新施設の事業計画を検討する有識者会議で、その方針に待ったがかかった。建築分野から参画した安田幸一東京工業大学教授と柳澤要千葉大学教授は、既存施設が将来的に水族園機能を果たさないとされた決定プロセスを疑問視。再三にわたり既存施設の保存・活用を並行して検討するよう求めたが、都は有識者会議が新施設の検討を目的に設置されたことを理由に「既存施設の在り方は検討対象としていない」との説明に終始した。

 既存施設を対象とした検討組織の別途設置について、都の担当者は「可能性を検討している」と否定してはいない。ただ、どのような用途に改修が可能か判断するには「水槽の水を抜いてから調査が必要になる」と説明。機能移設時期に想定している約7年後まで調査は不可能で「その間は後利用について結論は出せない」という。

 建築学会のシンポ後には、小池百合子知事が定例記者会見で「ガラスドームの既存施設はなかなかすてき。ユニークベニューとして結婚式などに使ったらいいのでは」と用途転換の可能性を示唆する場面もあった。新施設の事業計画は素案の段階で都民意見を募集中。このまま策定されれば来年度から事業化手続きが本格化する。既存施設がその役割を終えるのか、それとも新たな役割で息を吹き返すのか。これまで以上にオープンな議論が必要だ。

 □新施設の事業計画検討会委員・柳澤要氏/機能失えば「死に体」に□

水族園は新しくし、既存施設の機能は残さないという都の姿勢はかたくなだ。城郭などの文化財で、機能的に失われても建物の価値を残していく例はある。だが、おそらく水族園のような(特殊な)施設は、機能を失った時点で「死に体」となってしまう。建物だけを残しても、それを生かすことは難しい。既存施設を含めた上で、これからの水族園の整備計画をつくらなければならない。

 新施設の検討をリセットするよう主張しているわけではない。ただ要求されている機能の中には、既存施設で満たせるものも十分にある。だからこそ新施設と既存施設を別々に考えるのではなく、既存施設をどう有効活用できるかも併せて検討したほうがいい。その検討が今は難しいのなら、別の検討会を設置してほしいとも提案してきた。

 都は水族園機能を移設しなければ既存施設を調査できないとしている。今の段階では躯体状況が分からず、検討にすら入れないという説明は理解に苦しむ。既存施設がどんな状況で、水族園としてあるいは別の形でどう利活用できるのか、少なくとも検討は始めなければならない。

 □20年度以降に事業者選定へ□


 既存施設はSRC造3階建て延べ1万5800m2の規模。マグロが遊泳する全周90m程度のドーナツ型水槽を備える。

 新施設は延べ床面積2万2500m2を想定し、整備手法としてBTO(建設・移管・運営)方式のPFIを採用する方針。年度内の事業計画決定後、2020、21年度を施設要求水準の整理や事業者選定手続きに充て、22年度以降に設計や工事を実施。26年度の開園を見込んでいる。

2020年1月23日木曜日

【回転窓】迷走する大学入試

1990年に始まった大学入試センター試験が終わった。国公立大を対象とした5教科5科目の共通1次試験に代わり、大学が受験に使う科目を選べる「アラカルト方式」を採用。私立大の利用が進み、受験校の選択肢も広がった▼すべてマークシート式で回答するセンター試験。学力を一律的に判断するには適していると思われる。一方で思考力や判断力、表現力を十分に評価できないと、批判的な意見も少なくなかった▼来年から始まる大学入学共通テストでは、そうした課題を改善しようと議論が進展。英語に会話力などを測る民間試験を導入し、国語と数学にも記述式問題を取り入れる方向が示された。だが受験生間で格差が生じ、不公平感を抱かせるやり方に反対する世論の高まりから、新たな取り組みは見送られた▼先週、文部科学省の有識者会議で入試制度の議論が再び始まった。年内に2024年度以降の新しい仕組みを決めるという。その間、これまで同様にマーク式の共通テストが続けられる▼大学受験は多くの若者の将来を左右する大きな節目。同じ過ちを繰り返さないよう、議論の行く末を見守りたい。

【1月31日から、会場はフジフイルムスクエア】建コン協、都内でフォト大賞写真展開催へ

第8回の最優秀賞「水田鏡」
建設コンサルタンツ協会(建コン協、高野登会長)は、31日~2月6日の7日間、東京都港区の富士フイルムフォトサロン東京で「建コンフォト大賞」の写真展を開く。2016、17年度の入賞作品を展示する。生活に身近な土木インフラを紹介し、来場者に土木施設の魅力をアピールする。

 募集テーマである「あなたのお気に入りの土木施設」に沿い、作品は全紙・半切サイズ32点、モザイクアート2点の計34点を見込む。小中高生が対象の「建コンフォト大賞Jr」の写真も展示する。初日の午後1時は、審査委員長を務めた宇於崎勝也日本大学理工学部建築学科准教授によるギャラリートークも予定する。

第9回の最優秀賞「大自然とともに」
会場は赤坂9の7の3のフジフイルムスクエア内。時間は午前10~午後7時(最終日は午後4時まで)。入場無料。詳細は富士フイルムのホームページへ。

【帝国データが調査】企業の働き方改革取り組み、4分の3が積極的

民間調査会社の帝国データバンクが、企業の働き方改革に対する取り組み状況や見解を調査したところ、約4分の3が働き方改革への取り組みに積極的であることが分かった。

 具体的な取り組みとして「休日取得の推進」が最も多かった。一方で、取り組んでいない企業もあり、「必要性を感じない」や「効果を期待できない」などが理由に挙げられた。

 調査期間は2019年12月16日~20年1月6日。調査対象は全国2万3652社で、有効回答企業数は1万292社(回答率43・5%)だった。

 働き方改革への対応では「取り組んでいる」(60・4%)と「現在は取り組んでいないが、今後取り組む予定」(16・3%)を合わせると、取り組みに積極的である企業が76・7%となった。「取り組んでいる」との回答は、前回調査(18年8月)よりも22・9ポイント増加している。「取り組む予定はない」は8・9%だった。

 取り組みの具体的な内容は「休日取得の推進」が77・2%でトップ。「長時間労働の是正」が71・0%だった。次いで、「人材育成」(49・6%)と続いた。「業務の合理化や効率化のためのIT・機器・システムの導入」は43・6%であった。

 今後の取り組みでは、「サテライトオフィスやテレワークの導入」が23・6%と最も高く、「副業の許可」が22・5%だった。取り組みで最も重視する目的は、「従業員のモチベーション向上」が32・4%で最多。次いで、「人材の定着」(20・2%)、「生産性向上」(13・5%)も上位となった。

 取り組んでいない企業に理由を聞いたところ、「必要性を感じない」(34・2%)や「効果を期待できない」(25・4%)、「人手不足や業務多忙のため、手が回らない」(22・4%)という回答が多かった。

【クラウド測位エンジンの実証など開始】NTTドコモ、インフラ整備など5G活用を強化

 NTTドコモは、第5世代通信規格(5G)の商用サービスが今春開始されるのに伴い、社会インフラの整備・維持管理や、街づくりでの5G活用を一段と強化する。

 橋梁の劣化推定技術や、NTTと協力した測位技術の開発を推進。建設現場向けのソリューション提案にも力を入れる。高速大容量通信や低遅延といった5Gの特長を生かすことで、提供サービスの価値を高められるとみて、対応を進める。

 同社は撮影した動画、車両走行時のたわみ、車重から橋梁の劣化を人工知能(AI)で推定する技術の実証を、富山市で昨年12月から京都大学と始めた。表面の劣化、損傷からは把握できない構造物としての健全性を見極める。

 動画の撮影に市販または工業用のカメラを利用しており、送受信するデータが多い。5Gによって高速大容量通信に加え、動画の解像度が高まり取得できる情報が増やせる見通しで、研究開発を推進する。

 情報化施工の分野では、高精度GNSS(全球測位衛星システム)の位置情報を電波の不具合が出やすい都市部でも活用するための実証に早ければ2月にも着手する。取得した情報の演算機能を担うクラウドタイプの測位エンジンを使った検証作業をライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティングと始める考え。NTTとも協力する。

 人や物など工事現場のさまざまな情報を集約・管理し、業務を効率化する「ドコモ建設現場IoTソリューション」は、ゼネコンの複数の建築現場で活用されるようになった。進捗(しんちょく)が遅れている理由をエリアごとに把握したり、依頼した作業の遂行状況をチェックできたりする機能などの実装を視野に入れる。

 導入現場の意見を収集・分析し提供するサービスの改善に役立てる。人のコミュニケーションに着目し、翻訳ツールを組み合わせた多言語対応のサービス提供も急ぐ。

 5G対応の基地局整備が進展するにつれ、維持管理の業務が増えるため、VR(仮想現実)を活用した危険の体感コンテンツを充実させる。過去の事故の事例などを踏まえ、新人教育や作業前の安全教育などに役立てる環境整備を進める。5Gの無線技術を応用した建設・鉱山機械の遠隔制御システムのデモンストレーションなども積極的に開く。

 NTTドコモは、23~24日に東京都江東区の東京ビッグサイトで「ドコモオープンハウス2020」を開き、5G、AI、IoT(モノのインターネット)関連の技術、サービスの情報を広く発信する。会場に建設関連のブースも設ける。

 □6G実現へ技術開発に本腰□


 NTTドコモは第6世代通信規格(6G)の実現に向けた技術開発を本格化する。今春に商用サービスがスタートする5Gの性能をより高め、海上や空中に加え、宇宙での通信の実現を目指す。電力消費を大幅に抑えるとともに、危険な作業のロボットなどによる無人化を後押しする。

 同社は2018年から6Gに向けた検討と研究開発を続けていた。他業界や官学とも幅広く連携。早期の実用化によって国際競争で主導権を狙う。6Gは2030年ごろの実用化が見込まれている。

 同社は22日、6G開発の技術コンセプトを発表した。開発の方向性として▽超高速・大容量通信▽空、海、宇宙への通信領域の拡張▽超低消費電力化▽超低遅延▽危険な作業を伴う産業向けへのカスタマイズ▽超多接続-などを挙げた。

 超高速・大容量通信に向けては、テラヘルツ波など新たな高周波数帯を開拓。超低消費電力化によって充電不要な端末の開発につなげる。接続可能なデバイスの数を1平方キロ当たり1000万デバイスに拡大する。製造業や建設業など危険な作業を伴う業界に対しては6Gを駆使することで省人化、無人化できる作業の幅を広げる。

 6Gを見据えた戦略検討では、総務省が月内に有識者会議を開催する。目標とするサービスや必要不可欠な技術などを示す総合戦略を今夏に策定する。

 5Gの商用化では車の自動運転やスマートシティーの整備、遠隔医療などが期待される。ただ中国や米国に比べ関連特許の取得などで取り組みは遅れており、国際競争力の低下を危惧する声が高まっている。

【星野リゾートが再整備案を提案】茨城県ら、偕楽園周辺エリアの魅力向上策検討

星野リゾートの提案した偕楽園周辺の再整備イメージ
茨城県と水戸市は、日本三大名園として知られる「偕楽園」周辺の魅力向上策を検討している。県から検討業務を受託した星野リゾートは昨秋、ホテルや観光交流拠点、円形ブリッジの配置などを柱とする再整備案を提出。県庁内に設けたプロジェクトチームを中心に具体化する。市も千波湖周辺でPark-PFIを活用した飲食施設などの整備を検討している。県担当者は再整備案をたたき台として「地域の魅力向上へ向け、民間事業者に興味を持ってもらうきっかけになれば」と話す。

 同社の提案は「都市観光なのにリゾート気分を味わえる地 水戸」をコンセプトに、公園全体を▽偕楽園本園と歴史館▽偕楽園拡張部▽千波湖畔-の3エリアに分けて再整備する。目玉は千波湖畔に整備する観光交流拠点「MitoMix」と、回遊性向上策の切り札となる円形ブリッジ「MitoLink」の設置だ。

 MitoMixには、地元産品を提供する飲食や物販店舗が入居。MitoLinkは水戸の新たなランドマーク的施設として、高低差や鉄道で分断された3エリアと中心市街地をつなぐ。全周1・5キロのデッキは歩行者や自転車が通行でき、景観や親水性を考慮して可能な限り水面に近い位置に設置する。

 各エリアの再整備計画では、県歴史館をリニューアルし、オープンスペースの拡充や体験型展示の充実を図る。偕楽園本園も観光客の多い梅の季節だけでなく、通年にわたって楽しめるよう、園内施設の拡充やライトアップなどを行う。偕楽園拡張部では、バーベキュー・グランピング場や子ども向けのアスレチック施設などを整備。点在する駐車場を集約し、全天候型の子どもの遊び場も併設する。千波湖畔の周辺にはMitoMixのほか、商業施設やカジュアルホテル、地域活動拠点となるコワーキングスペースなどを設ける。

 提案に対し大井川和彦知事は「活用できるアイデアはスピード感を持って取り組む」と表明している。

 市は、千波湖周辺の千波公園(敷地面積約73・57ヘクタール)の再整備を目指し、2019年度に民間事業者から意見を募るサウンディング(対話)調査を実施した。レイクサイドボウル跡地、消防学校跡地、せせらぎ広場、西の谷の4エリアに分け、魅力向上策を探った。調査ではカフェやレストラン、温浴施設、博物館などのハード整備、屋形船運航やウオーキングイベントといった企画提案があった。

 県と市は連携しながら魅力向上策の具体化を図る。同社も継続して検討に関わり、偕楽園周辺の再整備を契機とした地域活性化を後押ししていく。

2020年1月22日水曜日

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/ホアンキエム湖周辺修復計画説明

 ハノイ市ホアンキエム区は、ホアンキエム湖周辺の修復工事を計画している。2日に市民説明会を行った。有名観光地である同湖周辺の堤防や歩道は、老朽化のため損傷や陥没が多く見られる。区は2010年から修復のための調査を行ってきた。

 説明会では、中空コンクリートブロックを用いた修繕工法が紹介された。耐久性が高く、景観の維持にも役立つとされる。工事は夜間に行えるため観光への影響も少ない。御影石を使った舗装の張り替えも予定している。

セイ・ズン、1月7日)

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/スマート技術審議の体制拡充

2020年の技術型入札に関する審議を遂行する「審判団」が編成される。調達庁は19年末までに、国土交通部の中央建設技術審議委員会は1月末までに設計審議分科委員会の委員を編成。今年の設計審議分科委員会の委員リストには「スマート建設技術」分野を新設する考えだ。

 19年の調達庁の設計審議分科委員会の委員は9分野・50人で編成。今年も全体の人数は同じ規模を想定。技術型入札で「スマート建設技術」をモデル的に評価するため、新たにBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)分野を設けている。

 国土交通部も今年の設計審議分科委員会の委員編成(最大300人)に本格着手。委員名簿に「スマート建設技術」分野を新設する方向で検討している。

 業界関係者は「審議対象は多くないものの、調達庁、国土交通部ともに『スマート建設技術』に対する評価を予定しており、今後の発注方式にどのような影響を及ぼすのか関心が集まっている」と話している。

CNEWS、19年12月23日)

【レンガアーチの高架橋下を活用】山手線有楽町~新橋駅間に商業空間、6月下旬開業へ

 JR東日本東京支社とジェイアール東日本都市開発は、山手線有楽町駅~新橋駅の高架下に整備している商業空間「日比谷OKUROJI」を6月下旬に開業させる。

 100年以上の歴史があるれんがアーチの高架橋(延長約300メートル)の下に東京初出店や新業態の44店舗が出店する。

 所在地は東京都千代田区内幸町1の7の1。開発規模は約7200平方メートル。名古屋で人気のウナギ店やアウトドア系ショップなど物販・食物販16店、飲食28店がある。

 東海道線、東海道新幹線の高架下を含め、JR東海とともに高架下のスペースを再生する取り組みを進めている。JR東日本、ジェイアール東日本都市開発が所管するエリアの整備は東鉄工業が担当している。

【高さ185mの新ランドマーク誕生】虎ノ門ヒルズビジネスタワー(東京都港区)が竣工

 東京都港区の虎ノ門一丁目地区市街地再開発組合(佐藤茂理事長)が建設していた複合ビル「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」が竣工し、21日に現地で竣工式が開かれた。オフィスを主用途とする延べ約17万平方メートルのビルを整備した。

 開業は4月を予定している。参加組合員として事業に参画する森ビルが設計を担当。施工は▽建築=大林組▽電気設備=きんでん▽空調設備=三機工業▽衛生設備=斎久工業-が手掛けた。

 虎ノ門ヒルズビジネスタワーの所在地は虎ノ門1の17の1ほか(敷地面積1万0065平方メートル)。複合エリア「虎ノ門ヒルズ」に隣接し、東京メトロ銀座線虎ノ門駅と虎ノ門ヒルズ新駅に直結する。

 建物は地下3階地上36階建て延べ17万2925平方メートルの規模。総貸室面積約9・6万平方メートルのオフィスが5~36階に入る。地下1~地上3階に商業機能を配置。インキュベーションセンターを4階に設ける。

2020年1月21日火曜日

【回転窓】暖冬と建設業の関係

暖冬傾向が続く今シーズン。偏西風が北に蛇行しやすいパターンによって寒気が南下しにくくなり、全国的に気温の高い状態が続いているそうだ▼北海道や東北、北陸でもまとまった降雪は少ない。雪不足は観光産業などにじわりと影響を与えている。今月31日に雪まつりの開催をひかえる札幌市。準備が本格化する中で、雪の確保に苦労しているという▼市の雪まつり担当者によると、雪像作りなどで必要な雪の量は5トントラックで5016台分。例年であれば市の郊外で確保できるのだが今冬はそれがままならず、100キロ以上離れたニセコ町などまで雪集めの足を伸ばしたそう。「大雪像の雪は何とか確保できた」と胸をなで下ろしていた▼気象庁の1カ月予報によると、暖冬は今後も続くという。降雪が少なければ除雪作業の出動も限られているのではと思い、国土交通省の出先事務所に問い合わせみた。すると回答は「雪が少なくても路面の凍結などがあるので出動してもらっている」▼雪が多くても少なくても待機している地域建設業の方々は苦労が絶えないはず。備えあれば憂い無しを支えていることに感謝したい。

【6月開業、渋谷に新名所】宮下公園複合開発(東京都渋谷区)、街区名は「MIYASHITA PARK」に


 東京・渋谷区と三井不動産は20日、PPP事業として複合用途の開発を進めている区立宮下公園について、街区名を「MIYASHITA PARK」に決め、6月に開業させると発表した。

 立体都市公園制度を同区で初めて活用し、公園、駐車場に加えて、商業施設、ホテルを設け、にぎわいを創出する。公園にあったスケート場、ボルダリングウオールだけでなく、イベントスペース、芝生広場も整備する。

 宮下公園は梨本宮家の邸宅地に隣接した当時の宮下町に1953年に開設され、1966年に東京初の屋上公園として整備された。老朽化対策、防災対策の必要があり、区と三井不が連携して整備に乗り出していた。MIYASHITA PARKは、敷地約1万0740平方メートル、全長約330メートル。南(渋谷1の26)、北(神宮前6の20)それぞれの街区を一体的に開発した。

 商業棟を南街区(1~4階、1万5922平方メートル)、北街区(1~3階、1万0649平方メートル)に整備する。ホテル棟は4~18階に240室を設ける。駐車場は375台とする。事業主は三井不、プロジェクトアーキテクトを日建設計、設計・施工は竹中工務店が担当。竣工は4月を予定している。区は、三井不と西武造園で構成する宮下公園パートナーズを指定管理者に選定している。

【凜】ダイダン東京本社技術第一部技術第二課・江口紗織さん

 ◇「楽」するための努力惜しまず◇

 東京都内のオフィスビル新築工事で電気設備の施工管理を務める。施工箇所の確認と図面作成、打ち合わせが中心。更地の状態から3年間携わり、現場での仕事はもはや生活の一部。完成に近づく様子を間近で見ると「本当に建物ができているという実感が湧いてきて、わくわくする」とうれしそうに話す。

 中学生の時、太陽光発電が話題になっていたことから、工業高等専門学校の電気情報工学科に進学。就職では「いろいろな人と関わり調整する職種に就きたい」と考えていた。教師からダイダンを勧められ試験を受けた。

 現場で心掛けているのは安全対策の徹底。「安全な作業環境をつくること」を第一に仕事と向き合っている。モットーは「楽するための努力は惜しまない」。目先の楽ではなく、最終的な「楽」を見据えて大変な下準備でも怠らない。

 現場に配属されたばかりの頃は、建築工事に関連する電気の知識と経験が足りず苦労した。分からないことは素直に聞くようにしている。スキルを磨くために電気工事士資格の実技試験に挑戦し、消防設備士資格も勉強中だ。

 苦労する半面、経験豊富な職人から「また一緒に仕事がしたい」と言われるとやりがいを感じる。「まだまだ知識と経験が足りない」のが素直な思い。失敗を恐れずいろいろな経験をして「また一緒に働きたいと思われる技術者になりたい」と話す。

 (えぐち・さおり)

【中堅世代】それぞれの建設業・244

高齢者が自分らしくいられる場所をつくるー。
試行錯誤の日々を過ごす

 ◇高齢社会研究の原点は建築学◇

 「実は建築に深い思い入れがあっての入学ではありませんでした」。こう打ち明ける安倍弥生さん(仮名)は、大学での学生生活を「何かさまよっていた」と振り返る。自分らしく生きるために何かしたいと思いながらも、同級生が徹夜で課題に打ち込む姿や、先輩たちの建築に対する熱い思いについていけなかった。

 大学入試の時に「建築って楽しいよ」と心から楽しそうに語る面接官の教授との出会いが、「私の運命を決めたように感じる」という。面接官の言葉と笑顔が頭から離れず、その教授が担当する「都市計画」の授業だけは一生懸命に聴講していた。卒業論文は、完成から年数が経過したニュータウンに住む高齢者をテーマにした。

 現地に通い、居住する高齢者がどのような外出行動を取るのかひたすら観察。会いたい、つながりたい、知りたい、食べたいなど“何かをしたい”という思いがある限り、例え身体が不自由でも外出することが見えてきた。同時に高齢者が抱く“何かをしたい”をサポートするため、外部環境の在り方について興味がわいてきた。

 遅まきながら本当の意味で学生生活が始まった。教授の勧めで進学した大学院では、これまでの勉強不足を埋めながら、社会学や老年学といった知識を得るため、生まれて初めてといえるほど「猛勉強の日々」を過ごした。核家族で育ったこともあり高齢者のことをほとんど知らないという焦りもあった。

 有料老人ホームやケア付き集合住宅などにボランティアとして通った。そんな中で、転居しても活動や交流が縮小しない高齢者がいることに気が付いた。博士論文では、転居先の居住形態による高齢者の行動を比較研究することにした。

 高齢社会をテーマに研究活動を始めてからこの春で15年目を迎える。高齢者が意思を持ち続ける限り可能性が継続できる地域社会、居場所の在り方について研究を続けている。学会や研究会などのさまざまな場で話す機会にも恵まれ、「一般的な社会学や福祉学、心理学の出身者とは違う広い視野を知ることができた」といったコメントをもらうことも。「さまざまな分野を吸収しつつも、私の原点は建築学なんだ」と実感している。

 高齢化社会が進展し、気が付くと親世代も高齢期を迎えた。「まだ介護が必要というほどではないが、やっぱり足腰は弱くなっている」。そんな姿を目の当たりにし、身体が不自由でも「何かをしたい」と外出したり、社会とつながり続けたりする手段として、ICT(情報通信技術)の活用に大きな可能性を感じる。

 「都市に住む高齢者の仲間や知り合いとの緩やかなつながり」や「家庭、職場に続く居心地の良い場の形成」など、研究テーマは尽きない。充実した毎日を送っているが、「研究の面白さを後進にどう伝えていけばいいのか」と悩むことも。「教授を見習って『研究って楽しいよ』と心から楽しそうに語っていきたい」。

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】東急建設「渋谷でも着られる機能性ブルゾン」

 2016年11月から着用している防寒ブルゾンは、表生地にはっ水、透湿の機能がある素材、中綿に軽くて保温性の高い機能綿を採用した。デザインは「長く着用されることを考え、流行などに左右されないように」(開発担当者)配慮し、シンプルで機能的に仕上がっている。

 現場での使いやすさを考慮し、野帳やタブレット端末、携帯電話など現場の必需品の収納に対応したポケットを8カ所に設けた。ファスナーのつまみ部分にテープが付いており、手袋をしたまま楽に開閉できる工夫も。

 デザイン面では本社がある東京・渋谷などの商業エリアでも違和感なく着用できるよう、メインカラーに品性のあるブルーを採用。内えりには汚れが目立ちにくい黒を配色した。

 開発に当たっては試作を経て現場でモニタリングを実施するなど、試行錯誤を重ねた。当時の開発担当者によると「軽くて薄くても暖かい新素材の採用により、前回の30年前にデザインした従来品と比較して働きやすさが格段に向上した」という。現場の社員からは「寒がりの自分の強い味方となっており、冬場は毎日手放せない」と好評だ。

【駆け出しのころ】東亜建設工業執行役員東北支店長・後藤良平氏

 ◇土木の素晴らしさ伝え続ける◇

 昔から本を読むのが好きな子どもでした。学生時代には曽野綾子さんの『無名碑』や吉村昭さんの『高熱隧道』、木本正次さんの『黒部の太陽』を読み、仕事に就くなら土木しかないと考えていました。

 就職活動では官庁やコンサルタントに全く関心がなく、会社名は問わず建設会社に入れればと思っていました。学校推薦のあった建設会社のうち、東亜建設工業に入社することになりました。

 入社1年目はいろいろな現場に数カ月の応援に出向くことが多かったです。2年目の夏、あちこちの現場を短期で回ってばかりの自分の姿を見かねた現場所長が、千葉県市川市の工業用水シールドトンネルの現場に呼んでくれました。坑内の距離が日々伸びていくのを実感しながら、毎日楽しく掘進測量を行っていました。

 次に配属された道路トンネルの開削工事は、超突貫の現場でした。工事が進むと隣の工区とトンネルの枠が合わず、ずれていることが判明。間違った相手側の企業が壊して作り直している姿を見つめながら、測量は気を引き締めてやらなければと心にとどめました。

 これまで携わった9本の高速道路のトンネルのうち、一番印象に残っている現場は初めて作業所長を務めた秋田県内のトンネル工事です。地質が悪く、メタンガスが出るなど、難工事となりました。より良い対策を打ち出すのに奔走し、なんとか当初の工期内で完工できました。

 公共工事への風当たりが強かった時も、周りに惑わされず、社会のためにしっかりとしたものを造ろうと頑張ってきました。東日本大震災では道路が市民にとって「命の道」になりました。私は今でも土木の仕事が大好きで、大いにやりがいを感じています。

 信濃川大河津分水の自在堰改修工事の竣工碑に刻まれた、「万象ニ天意ヲ覚ル者ハ幸ナリ 人類ノ為メ国ノ為メ」という土木技師・青山士の言葉。いろいろな解釈がありますが、私は「土木の対象は自然と人間の織り成す万象であり、この万象に自然の真理を悟ることが技術者の喜びである。人類のために、国のために働こう」と捉えています。

 若い世代には土木の仕事のスケールの大きさや重要性、素晴らしさを伝えていきたい。東北の被災地で津波の到達点に桜の木を植えるボランティア活動に支店の若手を先日連れて行きました。土木の仕事の重要性を再確認し、日々の仕事に励んでくれています。

 仕事に集中する一方で、気分転換も大切です。若いころは現場が終わると、山登りをよくしていました。最近は合唱をやっており、仙台で定期開催される第九コンサートにも参加しています。来月23日には東京の両国国技館で行われる5000人の第九コンサートに参加します。興味のある方はぜひ鑑賞して下さい。

入社2年目ごろ、シールドトンネルの現場で関係者らと(後列左端が本人)
(ごとう・りょうへい)1983年東海大学工学部土木工学科卒、東亜建設工業入社。執行役員土木事業本部技術部長などを経て、2018年4月から現職。岩手県出身、59歳。

2020年1月17日金曜日

【回転窓】継承すべきもの

「何不自由なく暮らせている地球が、本当にあんなに揺れるのか」。25年前の1月17日に近畿地方を襲った阪神・淡路大震災。大学生が当時の揺れを起震車で体験した時の感想を、ウェブメディア「リメンバー117」に記している▼この取り組みは兵庫県による阪神大震災25年記念事業の一つ。大震災後に生まれた若者を中心に運営している。リポートした学生は災害を経験したことがなく、怖さを知らないから体験しようと考えたという▼四半世紀という時間は決して短くない。建設産業の最前線にいる若手にも当時の経験や教訓を伝えていくことが重要であろう▼「効果的な基盤整備、バックアップ機能、環境も踏まえて、納得してもらえるインフラの在り方を、今こそ考える時期」。阪神・淡路大震災翌年のインタビューで当時、日本建設業団体連合会(現日本建設業連合会)の会長だった前田又兵衞氏は、こう語った▼大震災を契機にさまざまな基準が変わり社会の安全性は高まった。先人の努力で今の安心は構築されている。だが台風など災害は今でも頻発している。安全・安心な暮らしを実現する歩みに休息はない。