2021年4月30日金曜日

【回転窓】プラスの効果

  春の大型連休に入った。新型コロナウイルス感染拡大を受けた3度目の緊急事態宣言の発令、まん延防止等重点措置の適用を受け、遠出を避けてステイホームで過ごす方も多かろう▼緊急事態宣言下の措置では、酒類を提供する飲食店への休業要請など、これまでの対策から一歩踏み込んだものもある。だが路上での飲酒の増加など、新たな社会的問題も目立ってきた▼飲食の機会が半強制的に減り、仕事関係の飲み会の対応にも影響が見られる。3月に行った民間の意識調査によると、上司に誘われた飲み会に行きたくない時は7割が、取引先の誘いでも6割が「断る」と回答。コロナ禍で在宅勤務が増えるなど、断りやすい雰囲気が助長されているようだ▼夜の付き合いが減ってプライベートの時間が増え、家族とのだんらんが増えたことはプラスの効果か。我慢を強いられる抑圧的な環境を前向きに捉え、普段の生活習慣を見直し健康増進に取り組む人もいる▼それぞれの立場で様相は異なり、苦境に立たされている人も少なくない。みんなで楽しく会食するプラスの効果は、アフターコロナでも変わらず大切にしたい。

【施工は戸田建設JV、5月6日開庁】山形県長井市の駅舎一体型庁舎完成

  山形県長井市が昨年7月から山形鉄道フラワー長井線の長井駅東側で新駅舎と一体的に建設してきた新庁舎が完成した。

 新駅舎と合築した市の「まちなか交流施設」と新庁舎が融合した南北に延びる全長170メートルのデザインが特徴。鉄道駅一体型の市庁舎は全国初になる。設計は秦・伊藤設計(山形市)、施工は戸田建設・那須建設(長井市)・大泉建設(同)JVが担当した。5月6日に開庁する予定だ。

 長井駅東側の敷地約1万8800平方メートルに新庁舎と、新駅舎を含むまちなか交流施設を一体的に建設。老朽化した現庁舎(第1・2庁舎)や、市内に分散している教育委員会庁舎や保健センターなど7カ所の行政機能を集約した。新庁舎とまちなか交流施設を合わせた建物の規模はSRC造3階一部4階建て延べ8320平方メートル。工事費は約41億円。

 南側の新庁舎は駅へのアクセス利便性に考慮し、1階に総合案内と利用頻度の高い窓口部門を設置した。

 北側のまちなか交流施設は1階に市民交流ホール、2階に市民防災研修室を配置した。3階は議場や執務室が入る議会エリアとした。1階には山形鉄道本社や長井駅の改札口も入る。

 メインアプローチがある庁舎の東側は採光用の大きなガラス面と市の歴史ある商屋建築の木格子をイメージした縦型フィンを設置。西側は窓面積を抑えエネルギーロスの削減を図るとともに、フラワー長井線を利用して訪れる乗客を迎える最初の顔としてデザインした。

【「あつ森」活用し若い世代に防災啓発】中部地域づくり協会、水害避難学習動画作成

 中部地域づくり協会は、任天堂が発売しているゲームソフト「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」を活用した水害時の避難学習動画を作成し公開した。動画投稿サイト・ユーチューブの同協会公式チャンネルで見ることができる。

 動画では大雨に見舞われたゲーム内のキャラクターが、自宅の2階以上や知人・親戚の家、近所の高い建物へ避難する様子を映し、指定された避難所以外にも選択肢があることを啓発。子どもや若い世代に水害時の早期避難とハザードマップ確認など日頃の備えの大切さを知ってもらう内容になっている。

 同協会は、防災意識の向上を目的に浸水疑似体験映像や防災啓発冊子をホームページで公開。今回は子どもたちも関心を持てるよう、人気ゲームを活用し動画を作成した。

【4段階で工事実施、改修面積8.9万㎡】関空第1ターミナル改修、大林組と契約

4階新保安検査場の完成イメージ

  関西エアポート(山谷佳之社長兼最高経営責任者〈CEO〉)は、関西国際空港第1ターミナル(T1)のリノベーション工事で大林組と契約を結んだ。コロナ禍で工事スケジュールが遅れたが、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)までに国際線の出発エリアや新保安検査場など主要機能の供用を目指す。5月28日から本格的に工事を始める。契約額は非公表。

 リノベーション工事は4段階で進め、第1段階では国内線エリアの増築・改修と本館3階国際線到着動線を増築。第2段階で2階中央に国際線出発エリアを新設し、一般エリアに商業施設を設ける。第3段階で4階保安検査場エリアの増築や3階国際線ラウンジを新設。第4段階では2階国際線の出発エリア(南北)の拡張を予定する。全体の改修面積は約8万9000平方メートル。

 保安検査場を集約するほか、自動チェックインやスマートレーン、自動化ゲートを設けて混雑を緩和。国内、国際両線のエリアを見直し、国内線を南ウイングに移す一方、既存国内線エリアを国際線に変更することで一体的に運用する。国際線の出発エリアの面積は60%拡大し、駐機スポットは34カ所から39カ所に増やす。総事業費は約700億円を見込む。

 22年秋ごろに2階の新国内線エリアなどの運用を開始し、23年冬ごろに2階国際線出発エリア(中央)の供用を予定。万博前の25年春ごろに4階新保安検査場と3階国際線ラウンジの運用を予定。その後、26年秋ごろに2階国際線出発エリアの南北商業施設が運用する予定。

 山谷社長は「今後の航空需要に着実に対応するとともに、万博の際にはファーストパビリオンにふさわしい機能を提供し、快適で新しい旅の体験ができる空港を目指す」とコメント。大林組の蓮輪賢治社長は「ファーストパビリオンとして万博の盛り上げに貢献できるよう、品質の確保はもとより、施工中の安全衛生管理にも万全の対策を講じるなど全力で尽くす」と述べている。

【事業費700億円、来年1月の着工目指す】長崎スタジアムシティプロジェクト、実施設計・施工の優先交渉権者に竹中工務店ら

スタジアムなどの鳥瞰イメージ
(構想段階のため変更の可能性がある。ジャパネットHD提供)

  長崎市にある造船所跡地を大規模開発する「長崎スタジアムシティプロジェクト」で、実施設計と施工の優先交渉権者が決まった。スタジアムやホテルを建設するI工区は竹中工務店、アリーナやエネルギーセンターを整備するII工区は戸田建設を選定。戸田建設はオフィス棟を建設するIII工区も担う予定。駐車場棟(IV工区)の優先交渉権者は松尾建設。

 プロジェクトは通販大手・ジャパネットホールディングス(HD)のグループ会社、リージョナルクリエーション長崎(長崎市、高田旭人社長)が企画・運営。来年1月の着工を予定している。完成目標は2024年。事業費は700億円を計画している。

 建設地は三菱重工業長崎造船所幸町工場跡地(長崎市幸町ほか、約6・9ヘクタール)。サッカーJリーグV・ファーレン長崎のホームとなる約2万席のスタジアム、約5000席のアリーナ、約270室のホテル、オフィス、商業施設などを建設する。

 竹中工務店はスタジアム棟・ホテル棟・南商業棟(S・RC造16階建て延べ約10万6800平方メートル)、戸田建設はアリーナ・サブアリーナ棟・エネルギーセンター棟(SRC・RC一部S造4階建て延べ約2万6300平方メートル)とオフィス棟(S造13階建て延べ約4万1800平方メートル)、松尾建設は駐車場棟(S造6階建て延べ約2万平方メートル)をそれぞれ施工する予定。実施設計は基本設計担当者とJVを結成して行う。

 PM(プロジェクトマネジメント)業務はジョーンズラングラサール、CM(コンストラクションマネジメント)業務は三菱地所設計、基本設計業務は環境デザイン研究所・安井建築設計事務所JVが担当。

2021年4月27日火曜日

【記者手帖】インフラのありがたさ

 コロナ禍で息の詰まる日が続く。たまには息抜きも必要と思い、新たな趣味として山登りを始めた。野外で他の登山客と距離をとれば密を避けられるし、何よりも自粛疲れで凝り固まった体を動かしたかった。首都圏に「まん延防止等重点措置」が適用される直前、丹沢の大山に登った◆中腹にある大山阿夫利神社の下社までは険しい「男坂」を進んだ。登山客を拒むような石積みの急階段が続き、日ごろ怠けている筋肉と心肺がすぐに悲鳴を上げた。下社を参拝した後に入った登山道も男坂に負けず劣らずの厳しさ。何度も休憩を挟み、悪路に文句を言いながらなんとか頂上までたどり着き、美しい景色を堪能できた◆下山途中で体力が尽き、下社からケーブルカーに乗ると、ふもとの参道まであっという間に到着。登りの苦労を思うと、インフラのありがたさが骨身にしみた◆あれだけ苦しめられた階段も、先人が一つ一つ石を積み上げて整備してくれたからこそ上ることができたのだ。今度、大山を登るときは文句ではなく感謝の言葉を言えるよう、もう少し体力を付けたい。(ま)

【回転窓】巣ごもりと書店の関係は?

  以前はどこの街にもあった書店。子どもの頃は毎週のように週刊漫画を買いに行き、顔なじみになった店番のお姉さんと話すのが楽しみだった▼活字離れや電子書籍の台頭もあって紙書籍の需要は減少。書店も苦戦を強いられ、倒産に追い込まれる店舗が後を絶たない状況だった▼そんな流れの中で、2020年度の書店倒産数(負債総額1000万円以上)が大幅に減ったそうだ。帝国データバンクの調査によると昨年度の倒産は12件で前年度から半減。00年度以降で最も少なかった▼若年層を中心に本を読まない人が増え、書籍のデジタル化もあって売り上げが頭打ちだった書店。お店を助けたのは映画が爆発的にヒットした『鬼滅の刃』などの売り上げがあるという。「書店によってはコミックの売り上げが前年から1割以上増加した」ケースもあり、「経営に持ち直しの動きもみられている」▼3度目の緊急事態宣言が発令されるなどコロナ禍は続く。家にいる機会が多くなり「どうやって過ごそうか」と思案する中でコミックや本を選択する人がいるのだろう。もうすぐ大型連休。有意義な巣ごもり方法を考えるとするか。

【品川開発Ⅰ期、2024年度街開きは維持】JR東日本、鉄道遺構「高輪築堤」の一部を現地保存

 JR東日本は東京都港区で進める品川開発プロジェクト(I期)の計画地で出土した鉄道遺構「高輪築堤」を一部保存する。

 有識者委員会の報告を踏まえ、橋梁部を含む約80メートルと公園隣接部の約40メートルを現地保存し、信号機土台部を含む約30メートルを移築保存する。区教育委員会と連携して記録保存調査も進める。設計変更などに伴い300億~400億円の費用が必要になるという。I期の2024年度の街開きは変更しない。

 高輪築堤は1872年に日本で初めて開業した鉄道路線の一部。品川開発プロジェクトで都市計画決定されたI期の1~4街区と、構想段階(II期)の5、6街区にわたって約800メートル出土した。

 同社は1~4街区の敷地計約7・2万平方メートルに、160メートル超の複数の超高層ビルなど総延べ約85万平方メートルの整備を計画している。保存や移築の在り方を検討してきた有識者委員会が取りまとめた調査・保存方針を踏まえ、現地保存や公開などの検討に着手する。

 象徴的な「第7橋梁」が位置する3街区は、橋梁部を含む約80メートルを現地保存し、建設当時の風景をそのまま感じられるように公開する。2街区では残存状況が良好な公園隣接部約40メートルも現地保存。文化の発信拠点となる施設と一体的に公開する。4街区で出土した信号機土台部を含む約30メートルは、高輪ゲートウェイ駅前の国道15号沿いの広場に移築保存する方向で検討、調整する。


 記録保存調査の範囲は1~4街区の約700メートル。道路下など築堤を土の中に埋めたまま現地保存できる範囲は調査対象から除く。

 港区教育委員会と連携し、考古学や鉄道史など各分野の知見に基づき調査を実施。築堤から取り外した石や杭を計測・記録するほか、築堤内部の土層状況も調査・記録する。

 現地保存や公開に向け、3街区の建物などの計画を変更する。プロジェクトは国家戦略特別区域会議などを経て内閣総理大臣が都市計画決定している。同社は変更手続きを国、東京都、港区など関係行政と連携して進める。



2021年4月26日月曜日

【首都高日本橋区間地下化】都心環状線、5カ所で試掘工事着手へ

  首都高速道路会社は、都心環状線の日本橋区間地下化事業(神田橋JCT~江戸橋JCT間、約1・8キロ)に向け、東京都千代田区と中央区の計5カ所で試掘工事に着手する。シールドトンネルなどを計画する上で重要な工程の一つ。首都高の地下化プロジェクトは着実に前進する。

 更新・建設局は「(高改負)高速都心環状線(日本橋地区)他試掘等工事」の一般競争入札を22日に公告した。申請書と技術資料の提出は5月14日まで更新・建設局総務・経理課への持参など(申請書は電子入札システムも可)で受け付ける。6月17日に開札する。発注見通しによる工事規模は2億~4億円(税込み)。

 受注者が着工までに発注者に対して週休2日に取り組む旨を協議した上で工事を実施する「週休2日制工事(受注者希望方式)」を適用する。工事契約後に監督職員と協議が整った場合、CIMの対象とすることもできる。

 入札には、土木工事でB等級の認定を受けている単体が参加できる。2006年度以降に都市部の往復4車線以上の道路上で床付け面の深さが2メートル以上の車線規制を伴う掘削工事を施工した実績なども求める。

 都心環状線(日本橋区間)の地下化に関する試掘と、さいたま市中央区と埼玉県鴻巣市を結ぶ新大宮上尾道路(延長25・1キロ)の与野~上尾南区間8キロの新設で、ヤードの整備に向けた舗装の撤去などを一括して任せる。工事区間長は、日本橋区間が約1キロ、新大宮上尾道路区間が約0・4キロ。工事のための街路規制を計486日間(同日に複数カ所)計上している。

 都心環状線の地下埋設物調査として、5カ所で試掘工事を実施する。総対象面積は約2209平方メートルに及ぶ。内訳は▽小網町付近約1070平方メートル▽一石橋右岸側付近約527平方メートル▽常盤橋付近約372平方メートル▽新常盤橋付近約42平方メートル▽三越前駅付近約198平方メートル。このほか、護岸構造調査としての掘削工2カ所、躯体調査の掘削工1カ所も実施する。ボーリング孔の構築は、水上と陸上でボーリング(計63カ所、約828メートル)を実施する。

【凜】千葉市公園建設課・三部早紀さん

  ◇造園の知識生かし早く一人前に◇

 今の仕事に就いたのは「公務員だからというより緑に携わる仕事がしたかった」から。子どものころよく遊んだ緑地に桑の林があり、散歩の時に父親が「桑の実は食べられる」などいろいろなことを教えてくれた。話を聞いているうちに、自然と植物に興味を持つようになった。大学に進学する時、「仕事にするなら好きなことをやりたい」と農業大学を選んだ。

 大学で造園を学び、風景学から富士山の文化遺産を調べる研究室に所属した。富士吉田から5合目まで実際に登って、富士山信仰(富士講)の遺跡調査も行った。登る途中で「気付くと生活音だけでなく森の音や生き物の音もなくなり、全くの無音になる」という不思議な体験をしたのが今も心に残っている。

 働き始めて今年で5年目。大学で学んだ造園の知識は「一目見れば枝切りの時期が分かる」ほど仕事に生かされている。長所は「コツコツやること」だが、「経験がまだ足りない」と自己評価は厳しめ。「資格を取って早く技術者として一人前になりたい」と話す。

 尊敬する人物は入庁して最初の上司。「しっかりスケジュールを組んで工程管理ができる」ようになることが目標だ。

 家でもコウモリランやハオルチアなど観葉植物を育てている。植物を見ていると「宝石のようなきれいなものを見ている感じ」で心が癒やされるという。

 (さんべ・さき)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】建設コンサルタンツ協会「素材や機能にこだわり」

  建設コンサルタンツ協会(建コン協、高野登会長)が協会ロゴの「JCCΛ」の商標登録を機に、災害対応用のユニホームを製作した。

 災害が発生し国や自治体から建コン協に支援要請があった時などに着用する。冬用と通年用のジャケット、安全ベストの3種類を用意。右腕には公募で選んだシンボルマークが入る。

 通年用の白いジャケットは超軽量でストレッチやはっ水、防汚などの機能を持つ。左腕にスマートフォンホルダーを設け、現代の働き方に対応した。青ベースの冬用ジャケットには白い縁取りのあるロゴを配置している。

 広報専門委員会の長部孝彦委員によると、製作の3年前からサンプルを取り寄せ「素材や機能、プリントの剥がれがないことを確認して製品を選んだ」という。「自信を持って取り組むことができた」(長部委員)。

 実際に着用した会員は「通年用のジャケットはとにかく軽く、小さくたためるため、持ち運びに負担がない」と出来栄えに満足な様子。冬用も「スタイリッシュで暖かく、素材の進化を感じる。安全ベストと腕章を組み合わせ、着用者の安全確保にもつながる」と話している。

【駆け出しのころ】五洋建設執行役員建築部門担当(設備)・川延直樹氏

  ◇トレンド追いかけ楽しむ◇

 就職活動をしていた時、海洋土木が主力の五洋建設には、これから建築を伸ばそうという勢いを感じました。

 最初に配属された横浜支店ではまず、研修も兼ねて大型マンション現場に常駐しました。他の現場を兼務する設備担当の上司に指導を受けながら、図面の整合調整をはじめ顧客や設計事務所との打ち合わせなどに奔走。新人ながらやりきったという思いがありました。

 設備担当の技術者として3年目以降は複数の現場を掛け持ちしました。業務量は多かったですが、さまざまな人との出会いからコミュニケーション能力が高まったと思います。設備の基礎的な知識やスキルは、サブコンの方々から学んだところも少なくありません。事業者との打ち合わせではさまざまなニーズに合わせた調整力も必要です。生産系などの専門施設では施主の方が技術的なことを熟知されており、こちらの提案を承諾してもらうのに苦労しました。

 20代後半で常駐した大型清掃工場の現場も人との出会いがその後の糧になりました。現場の収まりや取り合いなどについて、プラント会社の建築担当とかんかんがくがくの議論をする毎日。建築担当者にも堂々とものが言えるようになろうと決意したことが、1級建築士の資格を取得するきっかけでした。

 12年目に当社発祥の地にある中国支店へ異動になりました。歴史と実績のある支店でしたので、従来のやり方にこだわりが強かったと記憶しています。業務の無駄をなくし最適化するため、論理的に改善効果を説明するなど、支店で設備部門の業務変革に力を注ぎました。

 中国・四国・九州地方で当時最も高い166メートルの超高層複合ビルの建設工事は思い出深い現場の一つです。自分にとっても初の超高層案件。内装と設備のユニット化や独自に設計した消防設備など、試行錯誤しながら新しいやり方を積極的に取り入れました。

 バブル崩壊後の不況期には多くの企業がリストラを断行しました。早期退職などで周りの社員が辞めていく姿を見て、将来に悩んだこともありました。大学時代の恩師から「バブル期に建てた施設は設備を今後更新するから、これからの主役は設備だよ」と励まされました。

 特定の人や組織にしかできないことを、誰でもできるようにすることを常に心掛けてきました。その時々のトレンドを取り入れ、より良いものにすることが重要です。特に建築設備はメーカーの技術競争もあり変化が早い分野。創意工夫を凝らし機能や性能をグレードアップし、利用者に快適さや安心・安全を届ける。若い人たちはそこにやりがいを感じながら、楽しんで仕事をしてほしいと思います。

入社5年目、工事事務所で施工図などを夜遅くまで確認していた

 (かわのべ・なおき)1987年関東学院大学工学部建築設備工学科卒、五洋建設入社。東京建築支店設備部長や建築部門建築本部設備部長などを経て2019年4月から現職。神奈川県出身、57歳。

2021年4月22日木曜日

【回転窓】睡眠の時間と質

  春眠暁を覚えず--。朝晩の寒さも和らぎ春の爽やかな気候に、ついつい長寝をしてしまう方も多かろう。毎日の通勤では電車の心地よい揺れも加わり、眠気に誘われることもしばしば▼厚生労働省が1月に公表した健康実態調査結果によると、最も多かった睡眠時間は「6時間以上~7時間未満」で32・8%。睡眠時間の取れている度合いでは、3~4割が「日中、眠気を感じた」や「睡眠全体の質に満足できなかった」と回答していた▼寝具メーカーの西川が「睡眠の日(9月3日)」に毎年公表している睡眠白書によると、昨年調査で約1万人の半数が「不眠症の疑いが高い」ことが分かった。特に20代、30代の働き盛り世代で割合が高かった▼睡眠をキーワードにした商品やサービスは多い。先進の情報通信技術で眠りの改善につなげようとする動きも目立つ。カシオ計算機とアシックスは睡眠時の計測データなどを活用した健康関連の新事業を検討中という▼さまざまなストレスにさらされる現代社会では「質の高い睡眠」へのニーズは増す一方。より快適な眠りを得られる住宅など、建設分野の取り組みにもぜひ期待したい。

【設計・施工は鹿島・住友電気工業JV】秋田洋上風力発電、風車設置へ洋上工事着手

秋田港に入港したSEP船「ザラタン号」(秋田洋上風力発電提供)

  秋田県の秋田・能代両港で大型洋上風力発電事業の洋上工事がスタートする。港湾区域で事業を進める特定目的会社(SPC)の秋田洋上風力発電(秋田市、岡垣啓司社長)は、20日に秋田港飯島ふ頭で洋上工事の安全祈願祭を開いた。

 式典には秋田洋上風力発電や設計・施工を担う鹿島・住友電気工業JVをはじめ、来賓として東北地方整備局秋田港湾事務所や県などの関係者が出席。地元の伝統行事である「なまはげ」の演舞も披露された。

 本格着工に向け、鹿島JVが洋上風力発電設備の据え付け実績が豊富な英シージャックス社の日本法人を通じて大型のSEP(自己昇降式作業台)船「ザラタン号」を導入。工事の無事故・無災害を祈った。

 秋田洋上風力発電は、国内初の商用洋上風力発電事業として秋田港に13基、能代港に20基の風力発電機を設置する。発電規模は合わせて140メガワットで、全て20年間にわたり東北電力に売電する。今月下旬には本格的な洋上工事に着手し、SEP船を使って風力発電設備の基礎部材(モノパイル、トランジションピース)を据え付ける。2022年末までに商業運転開始を目指す。総事業費は約1000億円。

2021年4月21日水曜日

【焼失前の姿、BIMで再現】米オートデスク、ノートルダム大聖堂の修復支援

BIMで再現したノートルダム大聖堂

  米オートデスクが2019年4月の火災で焼失したノートルダム大聖堂(フランス・パリ)の修復を支援している。大聖堂の保全と修復などを担当する現地公施設法人の依頼を受け、倒壊前の状態をBIMで再現。鮮明に描かれた3Dモデルは修復作業を後押しする技術になりそうだ。

 オートデスクが開発するリアリティー・キャプチャ技術で作製した3Dデータを利用した。BIMで歴史的なデジタル記録を仕上げたり、最新技術で火災後の3Dモデルも作製したりしている。公施設法人のジャン=ルイ・ジョルグラン理事長は「ノートルダム大聖堂にとって、修復現場の監督・管理用に設計されたデジタル技術は不可欠だ。最先端の設計・建設技術とBIMを通じたオートデスクの支援によって、大聖堂の再建が現実になりつつある」とコメントした。

 オートデスクは火災発生後、フランスのヘリテージ財団を通じ資金と技術を提供するなど、修復事業を支援してきた。

【横浜臨海部に新名物】泉陽興業の常設都市型ロープウェーが22日開業

  レジャー関連施設の企画や運営などを手掛ける泉陽興業(大阪市浪速区、山田勇作社長)が22日、横浜市西区のみなとみらい(MM)21地区で、国内初の常設都市型循環式ロープウエー「横浜エアキャビン」を開業する。

 JR京浜東北根岸線の桜木町駅東口駅前広場と新港ふ頭の運河パークを約5分で結ぶ。延長は約630メートル。横浜都心臨海部の回遊性向上や新たなにぎわい創出を目指す。

 ルートは汽車道沿いの海上で、停留所は桜木町駅前と運河パークの2カ所。支柱は地上2基(高さ約10メートル)と海上3基(約40メートル)。キャビン(8人乗り)数は36基。ロープウエー本体の製造と組み立ては日本ケーブルが担当。海上基礎工事は東亜建設工業、駅舎の設計は山下設計、建設はピーエス三菱が担当した。照明計画は世界的な照明デザイナー・石井幹子氏が監修している。

 ロープウエー事業は市が2017年に公募した「まちを楽しむ多彩な交通の充実」で採用した提案の一つ。横浜都心臨海部に新たな交通ネットワークを形成するとともに、移動自体を楽しむことと新たな景観づくりなどがコンセプトだ。

 17日には関係者らを招き試乗会を開催。約1500人がランドマークタワーや横浜新市庁舎などが一望できる空中散歩を一足早く楽しんだ。

【記者手帖】ドボジョブームが終わる時

  「『ドボジョ』ブーム、早く終わらないかな」--。ゼネコンに勤めるある女性土木技術者がそう漏らしていた。建設業界は空前のドボジョブーム。入社当初から貴重な女性技術者として扱われ社内外のメディアに登場してきた。建設業界の発展のためにと理解していても、仕事を抜けて取材に応じる自分を同期の男性社員がどう思っているのか、気になってしまうという◆女性技術者の積極登用をうたうある地場ゼネコンから案内のあった現場見学会。事前に資料を読んでいておや?と思った。少なくとも過去に3回、別の大規模現場の取材で見掛けた女性の名前を見つけたからだ◆彼女はメディアに取り上げられる現場から現場に、数カ月の短期間で異動していたことが分かった。はたから見ればさまざまな現場で多くの女性技術者が活躍しているように見える。それが女性技術者「積極登用」のからくりかと思うと、複雑な気持ちになった◆別のゼネコンの社長は「世の中はもうLGBT(性的少数者)への対応にまでシフトしている」と指摘する。女性更衣室の設置や女性技術者の登用などに力を注ぐ建設業。世の中の動きとのギャップに危機感を募らせる◆建設業界の女性活躍はまだ過渡期にある。男女関係なく働きやすい環境が整う時こそ、ドボジョブームが終わるのだろう (ゆ)

【凜】JICA地球ひろば地球案内人・岡山萌美さん

  ◇世界とのつながりを伝えたい◇

 東京・市谷にある国際協力の情報発信拠点「JICA地球ひろば」で案内役を務める。

 高校や大学で途上国に思い入れのある恩師に出会った。大学のボランティア部で青少年育成に関わり、「経験を生かそう」と、卒業と同時に青年海外協力隊としてモンゴルで青少年活動に従事しようと決めた。訓練の直前に東日本大震災が発生。海外に初めて救援隊を派遣するなどモンゴルの日本への支援を知り、「恩返し」の気持ちも抱いて2011年6月に旅立った。

 首都ウランバートルから約500キロ離れた北部のスフバートル市で、職業訓練校の15~18歳の生徒にピアノやダンスなどを放課後に教えた。働くための技術習得を優先する生徒らと向き合う中で心掛けたのは「諦めずにできることを増やしてもらおう」。意欲と連帯感の高揚が間近に分かり、職業訓練校の音楽の全国大会に出場。多くを学ぶことができた貴重な2年間となった。

 中学校講師や協力隊訓練所スタッフなどを経て、20年8月から案内人に。震災から10年、ひろばは企画展「災害にもっと強い世界をめざして」を実施中。「日本の災害経験が途上国の防災・復興にどう生かされているか、災害に備え自分たちにできることを考えてもらいたい」。協力隊の経験も中高生らに伝え、「世界とのつながり」を意識してもらおうと考えている。

 (おかやま・めぐみ)

【中堅世代】それぞれの建設業・285

建コン各社で経験者を採用するケースも多い

 ◇自分の可能性を信じて◇

  人材不足に陥る建設関連業界で、専門知識を持った経験者を採用するケースは少なくない。大手建設コンサルタントで広報・投資家向け情報提供(IR)業務に従事する海崎響さん(仮名)もその一人。自分に合った仕事が何かを悩むうち、気付けばIT関係や金融機関など複数企業を渡り歩いてきた。転職の多い自分を迎え入れてくれた今の会社に貢献したい一心で仕事に励む。

 自然豊かな地方都市で生まれ育った。学生時代から化学が得意で、地元の大学で繊維工学を専攻した。就職氷河期の真っただ中にあった当時、大学院への進学も考えた。大学の恩師からIT関連企業でシステムエンジニア(SE)の仕事を紹介された。大学で学んだ知識が役に立つのかという迷いもあったが、「これも何かの縁だ」と割り切り、SEの世界に飛び込んだ。

 入社後は主に会計管理用ソフトウエアの開発に携わった。責任ある仕事を任されるようになったある時、大手証券会社が人材募集を行っているとの情報を目にした。これまでの経験を生かし、「関心のあった証券の仕事に携わりたい」と感じ転職を決意。技術営業がメインの部署に配属されたものの、実際に働いてみると「自分の肌に合わない」と思うように。

 証券や金融機関にばかり固執していたが、SE時代に培った予算管理やファイナンスの知識を他業界にも生かせるはずだ。漠然とした不安は日増しに強くなり転職が頭をよぎる。人材派遣会社に相談するうち、紹介されたのは建設コンサルという未知の領域だった。生活を支える社会インフラの役割を知れば知るほど、興味がわくようになった。自分の知識と経験が生かせると確信し、思い切って採用試験を受けた。

 「うちの職場には社会に貢献したいと思う社員が多い」。配属された広報・IR部の上司は笑顔でこう話していた。技術力と知的生産性が会社を支える建設コンサル。事務職は技術職に比べて「弱い立場」と捉えていた。上司の話を聞いたり、投資家に自社の役割や魅力をアピールしたりしているうちに、「現在のセクションはさまざまな部署を橋渡しする役割を担っている」と実感。意識がガラッと変わった瞬間だった。

 最も力を入れているのは新会社の立ち上げに向けた準備。2022年4月に東証が現在の上場区分を見直す予定で、新会社は最上位に当たる「プライム市場」への移行を目指している。ガバナンス(企業統治)強化や開示情報の英文化などクリアすべき課題は山積する。同時に自分がステップアップを図る千載一遇のチャンスと捉え、「必死に食らいついていく」覚悟だ。

 自分の可能性を信じる。今の心の支えであり「好きと思えるようになれば、いつかは報われるはずだ」。そんな自分の能力に賭けてくれた会社には感謝の気持ちしかない。今後を左右しかねない新会社の発足という最重要案件に気を引き締めて臨む。

【駆け出しのころ】東亜建設工業執行役員土木事業本部技術部長・川森聡氏

  ◇体験からいろいろな学びを◇

 北海道の日本海側の小平町で生まれ育ち、幼いころから海辺でよく遊んでいました。隣の留萌市には世界の中でも特に波が厳しい「三大波濤(はとう)港」の一つに挙げられる留萌港があり、荒波のエネルギーのすさまじさを間近で見てきました。

 就職活動ではマリコンを志望し、大学の教授からの勧めもあって当社に入社しました。高校時代に留萌港でフローティングドック(FD)からケーソンが進水する様子を「変わった船だな」と眺めていたのが、当社のFDだったことを後から知って不思議な縁を感じました。

 最初に配属された秋田港でのFDによる防波堤ケーソンの製作現場では、技術的なこと以上に苦労したのが言葉の壁。地元の作業員だけでなく、発注者の方もなまりがきつく、会話を理解するのに半年以上かかりました。作業員には兼業農家の方が多く、田植えや稲刈りなど繁忙期は現場に出てきません。地元ならではの諸事情も踏まえて工程を組むことが求められました。

 3年目には大規模な水産加工団地の汚水管改修工事で現場所長を任されます。濃度の高い硫化水素が発生し、過去に管内清掃作業員が亡くなっている工区の担当となり、まずはおはらいからスタートしました。深夜作業の現場で夜中にガス警報器が鳴り響くと、髪の毛が逆立つほどのストレスを感じました。当時、結婚が決まっていなかったら会社を辞めていたかもしれません。

 一人現場でどうすればいいか分からず、同じ工事で他社工区の所長の方々に教えを請いながら作業を進めました。各工区の良いとこ取りのおかげで一番早く竣工。周りの方々に助けられ、大変ありがたかったです。

 7年目に異動した土木本部の設計部時代に阪神淡路大震災が発生し、顧客の工場で護岸の復旧作業に携わりました。緊急時で規格にばらつきがある鋼管杭に合わせて設計するのに苦労したのを覚えています。

 若い時から責任ある立場で仕事をさせてもらいました。技術的なことだけでなく、仕事に対する責任感などを養い、逃げたり楽したりすると逆に大変になることも学びました。細かいところでけちらず、作業員を中心に働きやすい環境を整えることが、円滑な現場運営につながります。

 30代の7年間を過ごした横浜支店で学んだのは、発祥の地で他社に負けないことはもちろん、当社だけ得するのではなく、周りにも目配りすること。当社社員として仕事に対する根本的な部分を教えてもらいました。

 土木の仕事は人の生活とつながり、暮らしを助ける。だからこそ、より良いものを造り、後世に恥ずかしくないものを残すことがわれわれの使命です。若い人には頭で考える前に、体験からいろいろ学んでほしい。体で覚えたことはいつまでも忘れません。

入社1年目、ケーソン製作のため秋田港に停泊していたFDで

 (かわもり・さとし)1987年室蘭工業大学工学部土木工学科卒、東亜建設工業入社。東北支店次長、土木事業本部技術部長(現任)などを経て、2020年4月から現職。北海道出身、57歳。