清水建設が「軍艦島」の通称で知られる長崎市沖の端島(はしま)に56年ぶりとなる新棟を建設し、16日に供用を開始した。組み立てや解体が容易な独自の木造仮設技術を導入。研究拠点施設「72号棟」として、建物群など遺構の保存に取り組む。災害や体調不良者の発生時には観光客ら一般来訪者を含めた一時避難所にもなる。崩壊と劣化が進行する世界文化遺産を守り抜く。
同社は、2025年10月に島内の老朽建物保存活用で連携協定を結んだ長崎市の共同事業者として研究拠点施設を建設した。
同11月に着工した72号棟は、木造平屋の床面積約50平方メートル、高さ約3メートルの規模。施工は地元工務店の四季工房(長崎県長与町、松浦文彦社長)、整地と蛇籠(じゃかご)基礎工は日本道路が担当した。
「シミズサイクルユニット」と呼ぶ独自仮設木造システムを採用した。一般流通木材を使い、柱・梁の組み立てや地震時の水平力を負担する外壁(構造用合板パネル)の設置まで簡単な工程で対応できる。建築物として恒久施設とほぼ同等の性能を備える。
島内の史跡内では地盤が改変できないため、研究拠点施設外周に配置したウエートで強風時などに建物の転倒を防ぐ機構とした。ウエートには、現地にある史跡構成要素以外のがれきを詰めたじゃかごを使い、資材の揚陸も削減している。
研究拠点施設を運用するための電源システムも導入し、舗装型太陽光発電システムを検証する。地面に敷設した35センチ角の発電ユニット(パネル)と可搬型蓄電池を接続し、ユニット上では歩行も可能。当面は施設の照明・空調・通信用に最大発電能力約21ワットのユニット20枚を設置し、必要に応じて増設していく。通信環境も低軌道衛星通信サービス「スターリンク」を導入して改善した。
研究者や作業員ら衛生環境にも配慮し、長崎市が管理する新たなトイレシステムも設置。下水道への接続を必要とせず、水をミネラルイオン溶液で再生循環させる。化学溶液を添加した洗浄水400リットルを初期投入すると、2500回程度の利用が可能になる。
今後、研究拠点施設を活用し、デジタルツインで建物の劣化や被災度を定期的に可視化・自動診断するシステムの開発を目指す。点群データを基に部材単位で変化を比較し、対策の検討に役立てる。
清水建設は、1916(大正5)年に竣工した国内最古のRC造集合住宅とされる「三菱端島砿業所30号アパート」をはじめ、島内にある建築物の大部分で施工や保全を手掛けてきた。15年の世界遺産登録時には、保管する図面類を歴史資料として長崎市に提供した。引き続き市と連携し、遺構の保存や公開活用などに貢献する。
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