◇PCa工法で工期短縮
陸上自衛隊武山駐屯地は、三浦半島の西側、相模湾に面している。防衛省南関東防衛局の加藤琢朗調達部長は、整備の課題に部隊活動、期間、交通の三つを挙げる。学校教育や部隊訓練への影響を最小限にとどめ、2028年度の男女共学化に向けた工事を地域交通に配慮しながら工程通りに進める必要があるためだ。学校生活や訓練があり、工事に使える敷地が限られ、「どう進めるか、困難がいろいろあった」という。
防衛省はECIの設計業務、技術協力業務の中で、学校、部隊、設計者、施工予定者と課題を整理し、技術提案を踏まえながら対策と施工に伴う計画を練り上げた。「コストを含めた総合的な判断」(加藤部長)から、新築する一部の学生隊舎、隊庁舎の新築にPCa工法を適用した。「工期を1年は短縮できた」(同)とみている。最大18トンの部材を揚重する必要があり、五洋建設JVは対応可能なクレーンの能力を見極め、最適な配置にこだわった。
建物の基礎構築やインフラ工事などから約4・4万立方メートルの建設発生土が出る。車両搬出なら安全確保を徹底しても駐屯地前の国道134号の渋滞が懸念される。そこで設計業務の際に発注者、設計者、施工者が海上搬出について協議した。護岸などを訓練に使う海自と横須賀教育隊の運用を調整し、仮設桟橋を設けた。浚渫も行い、土砂を作業船からガット船に積み替えて搬出する「土木、建築両部門が連携したモーダルシフト」(五洋建設JVの岩崎利彦所長)の体制を整えた。津波対策のために杭径が高層マンション級に大きくなるような建物もあるが、土の搬出と移動を減らす工程と計画を立案した。
現場は週休2日で作業する。平日、作業員は横須賀市の体験型公園「ソレイユの丘」の駐車場に車両を止め、マイクロバスで現場に移動する。市内業者にはビジネスマッチングの場を通じて、食事の配達やクリーニングなどを担ってもらっている。武山駐屯地の学校整備は、自衛隊の将来を担う人材の確保に直結する。重要な事業ながらも防衛省は「安全保障と経済の好循環」(加藤部長)として地元経済への貢献に努めている。
「部隊の活動や、建物の仕様、周辺の道路を利用する住民の生活環境も理解してもらえている」。陸自武山駐屯地業務隊の龍崎直樹管理科営繕班電気係長は、現場作業をそう話す。津波対策をはじめ発注段階では仕様を確定できない工事や、インフラの収まりが課題になる建物があり、設計者、施工者と知恵を出し合ってきた。訓練の場所を変えるなど陸海空の各部隊と施工側の要望を擦り合わせながらの作業が続くが、龍崎係長は「勤務環境、生活環境を改善する工事に隊員の期待は大きい」と話す。
防衛省は防衛3文書の防衛力整備計画に基づき、全国の駐屯地・基地など283地区で最適化事業を推進し、自衛隊施設の強靱化に取り組んでいる。26年度予算にはECI方式を適用する25地区の経費を計上。「ECIでないとできなかった工事」(加藤部長)の経験を次の事業に生かす。 (編集部・溝口和幸)
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