2020年10月30日金曜日

【回転窓】読書の習慣

  経営者への取材で趣味の話になった時、多くの人が挙げるのは読書。経営のヒントや気分転換に欠かせないという声も多い▼日本財団が全国の17~19歳男女を対象に実施した意識調査によると、コロナ禍で読書量が増えた割合は25%にとどまる。情報や学びを得るツールは、テレビが最も多く、SNS(インターネット交流サイト)、動画投稿サイトが続く。手軽にアクセスできる方にどうしても引き寄せられてしまうのだろう▼日本人の読解力は低下傾向にあると言われる。インターネットで発信される文章は短時間で内容が理解できるよう、分かりやすさを重視する傾向が強い。そうした文章に慣れると読解力が下がり、さらに簡単な文章を求めるという悪循環に陥る▼「短文だけで考えを伝えることを癖にしない」「スマホ離れさせる」-。読解力向上への対策に挙げられた自由意見だ。これは大人にも当てはまる▼11月9日までの2週間は読書週間。電子書籍の普及で選択肢も広がっている。変化の早い時代だからこそ学びや気づき、想像力がより一層必要。その一助として、秋の夜長のひとときを読書に充ててみてはどうか。

【111団体に協力依頼文書】年末年始の休暇分散、国交省が建設業団体に協力依頼

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言を受け、国土交通省は年末年始の休暇分散などについて、建設業団体に協力要請した。会員に広く周知するとともに、提言内容の適切な履行に取り組んでもらうよう求めた。

 新型コロナの感染拡大を防止する一環として、政府は「年末年始は帰省などで感染拡大リスクがある」と判断。分科会の提言を踏まえ、国交省は26日付で不動産・建設経済局名で協力依頼の文書を建設業111団体に通知した。

【東日本大震災から10年】復興庁が専用サイト開設、映像での復興状況発信も

  復興庁は来年3月で東日本大震災の発生から10年を迎えることを受け、震災の記憶や教訓、復興の状況などを発信する専用ポータルサイトを立ち上げた。

 福島と宮城、岩手の3県をはじめ東北地方で行われるイベント情報を集約。東北の魅力を伝えるフォトコンテストやオンラインシンポジウムなどを実施する。動画投稿サイトのユーチューブに公式チャンネルも開設。映像による情報発信も行う。


 ポータルサイトの名称は「~あれから10年。東北の今と、未来~」。フォトコンテストの作品募集を11月上旬から始める。「数字で見る復興」「写真で見る復興」といったコンテンツも公開する予定だ。平沢勝栄復興相は16日の閣議後会見で「随時情報を更新していく予定なので、広く皆さんにご覧いただけると幸い」と話した。

【パックマンの世界を重機で再現】キャタピラー、YouTubeに動画アップ

  キャタピラーは、コンピューターゲームの「パックマン」をモチーフにした動画を公開した。重機を用いて49.5m×55mの大きさの迷路のようなゲーム空間を造成。最新重機を配置してオペレーターが遠隔操作し、ゲームの世界観を再現している。

 パックマンは、ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が1980年に発表したゲーム。迷路に配置されたクッキーなどを敵であるゴーストをよけながら食べていく。シンプルな設定やキャラクターのかわいらしさなどが奏功し、日本のみならず世界中で大ヒットし、数多くの続編も生まれた。米国ではテレビアニメが放送され、高視聴率を記録したという。

 キャタピラーが公開したのは、顧客や業界内外の人に楽しんでもらおうと企画・制作している動画シリーズ「Catトライアル」の第9弾。次世代油圧ショベルや遠隔操作機能などを用いることで、ゲーム空間の構築時間を削減したという。動画は特設ホームページから閲覧できる。


【南摩ダムの工事を見に来て!!】水機構、ダム管理事務所予定地に展望広場開設

  水資源機構は11月1日、栃木県鹿沼市で実施している思川開発事業に関連し、南摩ダムの管理事務所予定地に「ダムサイト展望広場」をオープンする。

 思川左岸を造成して作った約3300平方メートルの敷地に展望台や30台収容の駐車場、サイクルスタンドを整備した。工事中の現場が一望できる。同ダムは今後、本体工事が始まる。ダムの完成予想図や解説を掲載したダムカードも配布する。

 南摩ダムの建設予定地は上南摩町。利根川水系の思川をせき止めて約5100万立方メートルを貯水し洪水調節に役立てる。支流である黒川と大芦川との間に導水路と送水路も整備。ダムにためた水を供給して川の渇水を防止する。


 南摩ダムは完成すればコンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム(CFRD)として国内最大の規模になる。堤高86・5メートル、堤体積約240万立方メートルなどを計画。現在は大成建設が敷地を造成中。鹿島が「思川開発導水路工事」、奥村組が「思川開発送水路工事」を施工している。

 「南摩ダム本体建設工事」は入札契約手続き中。11月2日に一般競争入札(WTO対象)を開札する予定だ。2025年3月の事業完了を目指している。水資源機構は「多くの人に展望広場へ来て頂き事業を知ってほしい」と話している。

 ダムカードは水資源機構思川開発建設所(口粟野839の2)などで配布する。問い合わせは同建設所総務課へ。

2020年10月28日水曜日

【回転窓】ピサの斜塔とジェットグラウト工法

 5・5度を3・99度に修正。何の角度かというと、イタリアにあるピサの斜塔の傾き。2001年に安定化工事を終え300年はこの傾きで持つという▼斜塔は1173年から約200年かけて建設された。建設中に地盤沈下で傾斜が始まり、傾いたまま完成。伊政府は長年、世界中の技術者に斜塔を安定化する技術協力を求めたが良案はなかった。補修方法が考案され工事着手したのは1990年。600トンの鉛の鋳塊で建物を一時的に平衡させ、鋼製ケーブルで基礎部分を固定した▼22日付本紙最終面にイタリアの学識者が著した書籍の翻訳本『軟弱地盤改良技術 ジェットグラウト工法』(技報堂出版)が掲載された。日本で50年前に開発された技術の解説書がなぜイタリアで書かれたのか▼実は70年代に行われた斜塔安定化国際コンペで同工法(CCP工法)が提案され、優秀案の一つに選ばれた。現地の建設会社が同工法に着目し、開発者と技術協定を結び、その後欧米で普及した▼訳者の1人、中西康晴氏は「国内に専門の研究者がいない」ためこの書籍を翻訳したという。日本の優れた技術なのに…。なんとも悔しい話だ。

【魔女の宅急便などの世界観イメージ】東京・江戸川区、角野栄子児童文学館の基本設計公表

 東京・江戸川区は、児童文学作家・角野栄子さんの作品の世界観を伝える「(仮称)江戸川区角野栄子児童文学館」の基本設計概要を27日発表した。

 約23億円を投じてRC・S造3階建て延べ1613平方メートルの建物を整備する。「ものがたりの世界」をコンセプトに建築、造園、展示が一体で楽しめるデザインにした。

 建設地はなぎさ公園(南葛西7の3の1)内の敷地約630平方メートル。1階は角野さんの代表作『魔女の宅急便』の世界を再現した展示室、2階が企画展などを開くスペースになる。2階の一部に読書や休憩で利用可能なテラスを設ける。3階はカフェが入る。外装は白、内装は角野さんのイメージカラー・ピンクを基調とした。

 隈研吾建築都市設計事務所が建築、造園をクロス・ポイント、乃村工芸社が展示部分の基本・実施設計を担当している。2021年3月にも実施設計をまとめる。21年度に着工し23年7月末の完成を目指す。

 同日に江戸川区役所で開いた記者会見には斉藤猛区長が出席。建築家の隈研吾氏と角野さんはリモートで参加した。斉藤区長は「作品と自然を通して子どもたちの想像力を育てる場にしたい」と述べた。隈氏は「外装と内装、周囲の景観が引き立つように力を尽くした」、角野さんは「子どもたちにはこの施設から自分の世界を見つけてほしい」と語った。

【日本橋に最上級ラグジュアリーホテル】ウォルドーフ・アストリア東京日本橋、2026年開業へ

  三井不動産は27日、東京・日本橋でのホテル開発に当たり、米ヒルトンとブランディング・マネジメント契約を結んだと発表した。ヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド「ウォルドーフ・アストリア・ホテルズ&リゾーツ」が国内に初めて進出。「ウォルドーフ・アストリア東京日本橋」として2026年の開業を目指す。

 ホテルは三井不が参画する「日本橋一丁目中地区第1種市街地再開発事業」(中央区日本橋1、区域面積約3ヘクタール)で整備する再開発ビルに入る。「C街区」の地下5階地上52階建てのビルのうち、39~47階に入居。60平方メートル以上のキングルームなど、計197室を配置する。三つのレストラン、ラウンジ、屋内プール、スパ、フィットネスセンター、宴会場、チャペルを備える。三井不は再開発事業に伴う権利変換によって、ホテル部分を取得する。

 再開発事業は組合が事業主体となり推進する。11月10日から清水建設(代表)、大林組、錢高組の3者乙型JVの施工で解体工事が始まる。A~Cの3街区に分け、総延べ38万0300平方メートルの複合施設群を建設する。設計は日建設計が担当。21年度に本体着工し、25年度の竣工を目指す。

 三井不の川村豊執行役員ホテル・リゾート本部長は「新たな大規模ミクストユース開発での進出が決まり、日本橋エリアの街づくりの核の一つとなることに期待している」とコメントした。

2020年10月27日火曜日

【回転窓】白物家電の今昔

  高度経済成長期急激に普及した冷蔵庫や洗濯機、炊飯器などの白物家電。今でこそカラフルな製品が増えたが1960年代ころは色は白がほとんどで、この名で呼ばれるようになった▼家事の労力を減らす家電の普及は暮らしのありようを大きく変えた。日本製品は高品質で故障しにくいという評判が世界を席巻し、メーカー各社はさまざまな製品を世に送り出した▼ただ日本メーカーが隆盛を極めた状況も今は昔。価格で他国のメーカーに太刀打ちできず、得意の高機能や多機能は「ガラパゴス化」しているといっても過言ではない▼白物家電市場が活況に湧いているそうだ。日本電機工業会が発表した2020年上半期(4~9月)の白物家電の国内出荷額は1兆3696億円。消費増税の駆け込み需要があった前年同期は下回ったものの、上半期としては1996年度以降で3番目の高水準だった▼好調の理由を同工業会は新型コロナウイルスの流行による巣ごもり消費と1人10万円の特別定額給付金とみる。単価が高くても気に入った製品を求める。トレンドをどう経営戦略に落とし込むか-。企業力が問われているのだろう。

【モデルは久間田琳加さんと小芝風花さん】建災防、年末年始労働災害防止強調期間の啓発ポスター作成


  建設業労働災害防止協会(建災防、今井雅則会長)は、12月1日から来年1月15日までの「建設業年末年始労働災害防止強調期間」の周知に向けポスターを作製した。

 モデルの久間田琳加さんとドラマなどで活躍する女優の小芝風花さんを起用。「無事故の歳末 明るい正月」のメッセージを添え、安全衛生意識を高揚する。

 価格は200円(税込み)。東京からの注文は建災防本部の教材管理課(電話03・3453・3391)、東京以外は道府県支部で受け付ける。

【延べ6.5万㎡、整備費567億円】東京アクアティクスセンター(江東区)がオープン

  東京都は、東京五輪・パラリンピックで競泳などの会場となる「東京アクアティクスセンター」(江東区)の完成披露式典を24日に開いた。施設は2月末に完成。当初は3月に式典を予定していたが新型コロナウイルスの影響で延期していた。

 25日から競技団体による大会利用や練習利用を開始。これで都が五輪に向け整備した新規恒久施設がすべてオープンした。

 式典であいさつした小池百合子知事は「新型コロナウイルスに打ち勝ち、安全・安心に開催できるよう国や組織委員会と連携して万全の準備をしたい」と決意を語った。水温管理に地中熱を活用するなど施設の環境配慮策もアピールした。式典では競泳とパラリンピック水泳、飛込、アーティスティックスイミングのトップ選手らによる「泳ぎ初め」も行われた。

 施設規模は地下1階地上4階建て延べ約6万5500平方メートル。基本設計は山下設計が手掛け、丹下都市建築設計とオーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッドが協力した。実施設計・施工は大林組・東光電気工事・エルゴテック・東洋熱工業異業種JVが担当した。整備費は567億円。


 観客席は仮設を含め約1万5000席。大会後は上層部の仮設席を取り外し、約5000席にスケールダウンさせる改修工事を予定している。都関係者によると、大会運営の簡素化に伴う仮設オーバーレイの計画変更は無い見通し。

 仮設席も既に多くが取り付けられている。仮設オーバーレイ工事は大林組が担当。延期決定を受け現在は中断した状態で、残りは五輪開幕から逆算して仕上げる。

【計画地は那覇市の奥武山公園】J1規格スタジアム建設へエリア整備方針等検討調査業務発注

  沖縄県は26日に「J1規格スタジアムに係るエリア全体の整備方針等検討調査業務」の委託先を決める公募型プロポーザルを公告した。

 同業務では奥武山公園(那覇市奥武山)に建設を計画しているサッカースタジアムの財政支出の抑制などを図るため、一体的に整備する複合機能などに関する検討を行う。応募書類提出期限は11月10日。同16日にプレゼンテーション・ヒアリングを行い、委託予定業者を選定する。

 応募資格は県内に主たる営業所があり過去5年間に国や地方自治体などが発注した同種業務の受注実績がある単体またはこれを含むJVなど。

 業務内容は▽県民らの意見聴取とそのための周知活動▽民間事業者ヒアリング▽奥武山公園の魅力向上に向けた複合機能の在り方検討委員会の開催▽複合機能を含むエリア全体の整備方針案策定-など。

 意見聴取の項目は利用状況やサッカー観戦以外に求めるスタジアムの機能、公園に新たに求める施設・機能、公園の整備イメージなど。意見聴取方法は県民がインターネット、那覇市民が無作為抽出の郵送、公園利用者が園内で配布するアンケート。民間事業者サウンディングでは新型コロナウイルス感染拡大後の投資意向などを調査する。

 在り方検討委員会は有識者や行政委員で構成し3回程度の会合を予定。整備方針案には複合機能の内容や整備範囲、配置、整備に必要な条件、公募内容・選定基準案などを盛り込む。

 業務履行期限は2021年3月31日。提案上限額は960万円(税込み)。手続きはスポーツ振興課が担当。

2020年10月26日月曜日

【回転窓】100年前の新星たち

  日本近代建築の礎を築いた建築家・辰野金吾は1919年、当時大流行したスペイン風邪を患い亡くなった。翌年、東京帝国大学(現東京大学)建築科の卒業を控えた若き建築家たちが「分離派建築会」を結成している▼日本近代建築の在り方を根本から問い直し、「我々は起(た)つ。」で始まる宣言文を世界に向けて発信。過去の様式建築から離脱し時代に即した芸術としての新たな建築の姿を世の中に問う新星たちは、大正時代の建築界に鮮烈なインパクトを与えたそうだ▼結成メンバーは石本喜久治、堀口捨己、山田守ら同級生6人。その後、山口文象、蔵田周忠などが加わり1928年まで活動を続けた。実社会に根差した建築家となった彼らはモダニズム建築を探求し多くの作品を残した▼新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に直面し、新時代を模索する現在。建築の芸術性や可能性を問い続けた分離派建築会の姿勢は多くの示唆を与えてくれるだろう▼分離派建築会の結成100年を記念した展覧会が東京・東新橋のパナソニック汐留美術館で開かれている。今後の道筋を過去に学ぶのも悪くない。

【最優秀はイラストレーター・高畠輝氏】「いいいろ塗装の日」ポスターデザコン入賞作品決定

 日本塗装工業会(日塗装、北原正会長)は、11月16日の「いいいろ塗装の日」をテーマにしたポスターデザイン画コンテストの入賞作品を決めた。

 186の応募作品の中から、最優秀賞には兵庫県宝塚市の高畠輝氏(イラストレーター)の作品が選ばれた。優秀賞4作品も選出。同13日に神戸市内で表彰式が行われる。

 最優秀賞の作品では「カラフルかつほのぼのとした画風が新鮮」「猫がクジラや好物の魚を描いているという発想が面白く、大人から子どもまで親しみが持てそう」といった点を評価。今後、日塗装のクリアファイルなどのデザインに使用される。

 作者の高畠氏は「猫がウォールアートを描くシーンはすぐに浮かび、さまざまな色を塗っていく作業はとても楽しく、作品にもワクワク感がうまく出たのでは」とコメントしている。

 優秀賞の受賞者は△岡田京子(学生)△桜井寿美代(フリーランス)△スプーンあきこ(イラストレーター)△宮田一範(会社員)-の4氏。

【初弾は旧渋沢邸の移築】清水建設、新技術・研修拠点整備(東京都江東区)に着手

  清水建設は東京都江東区で計画している新技術・研修拠点「潮見イノベーションセンター」の建設に着手する。

 総事業費は約500億円を計画。5棟構成を予定しており、まずは青森県六戸町にあった渋沢栄一の邸宅「旧渋沢邸」の移築を11月2日に開始する。移築工事に先立ち、同センター建設地で23日に地鎮祭を開いた。

 潮見イノベーションセンターは本館、研究施設、研修施設、歴史資料展示施設、旧渋沢邸の5棟で構成する。総延べ約2万5000平方メートルの規模。このうち木造建築の旧渋沢邸は2階建て延べ1204平方メートルの規模。明治時代に同社相談役を務めた渋沢栄一の邸宅として同社二代目店主・清水喜助が建設を手掛けた。建設地は現在の江東区永大。1878年に完成した。六戸町に移築されていた建物を所有者から譲り受け、新施設敷地内に再移築して保存する。唯一現存する清水喜助の建築作品という。

 19年2月に既存建物の解体・収去工事を行い、同11月に解体を終えた。収去した2万点以上の部材は清水建設の東京木工場(東京都江東区)などで保管し、補修・修繕を行っている。再築工事では収去部材を使って復元する。23年の完成を目指す。

 残りの研究施設、研修施設などの建物は現在設計を進めており、23年の施設オープンに向けて来春着工する予定だ。竣工後はセンターをオープンイノベーションの拠点として活用し、革新的な生産技術の開発や事業の多様化、人材育成を進める考え。

 地鎮祭では井上和幸社長が鍬、今木繁行代表取締役副社長が鋤を入れて工事の安全を祈願した。

【対話調査でスキームやリスクなど把握】国立劇場等再整備事業(東京都千代田区)、プロジェクト実施へ対話調査

  日本芸術文化振興会は東京都千代田区にある国立劇場など(総延べ床面積3・5万平方メートル)の再整備事業に向け、サウンディング(対話)型市場調査を実施する。

 PFIの付帯事業として導入を検討している民間収益事業が成立するかなどを把握するため、事業計画の課題や対応可能性などで意見を聞く。合築を想定している民間収益施設の提案も求める。再整備事業の確実、円滑な実施につなげる。

 26日に「国立劇場再整備事業に係るサウンディング型市場調査」の公募手続きを開始する。意見や提案を求める項目は民間収益施設の市場性と建物計画、民間収益事業の事業スキームとリスクなど。参加要件は再整備の事業主体として参画に関心と意欲のある法人。千代田区内で延べ床面積5万平方メートル以上の複合施設開発に不動産開発事業者として関与した実績なども求める。

 文化庁の「国立劇場の再整備に関するプロジェクトチーム」が7月に策定した整備計画によると、低層部に劇場を配置してカフェなどの民間収益施設を合築するPFI事業で、PFIのスキームはサービス購入型のBTO(建設・譲渡・運営)方式を前提に検討する。劇場部分以外の未利用容積を活用して民間収益施設を整備し、定期借地権契約で土地代の収入を得る予定。年度内に実施方針概略を策定、21年度に実施方針の公表した上で事業者を選定・公表する。22年度に契約を締結。29年度の新施設完成と開業を目指している。

 所在地は隼町4の1(敷地面積3万1244平方メートル)。建ぺい率50%、容積率約500%が上限。振興会がまとめた基本計画によると、新施設は延べ床面積5万1400平方メートル程度の規模を想定している。

【凜】東京・文京区土木部道路課整備工事係・丸山依留さん

 ◇後輩に寄り添える先輩に◇

  大学時代は土木工学科で測量や水利学、製図などを学んだ。ゼネコンや建設コンサルタントにも憧れたが、さまざまな仕事ができると考え区役所を進路に選択した。

 初めて配属されたのは土木部の管理課。区道と住宅などの境目を画定する業務を担当した。ミスを重ねてしまう時期もあったが先輩が粘り強く、温かく指導してくれた。「いい環境で育ててもらった。今後どんなことがあっても頑張らないと」と心を決めるきっかけになった。

 住民の大切な土地を扱う業務。「1ミリが重要になってくる」ため、境界を分かりやすく説明し理解してもらう必要がある。回答が難しい質問が寄せられた時、「しゃくし定規な対応で怒りを買ってしまった」ことも。「相手の立場に立って考える」大切さが身にしみて分かった。

 道路課に配属されて3年目。道路工事の測量や設計、監督業務などを担当している。道路は一度完成すると長期間使い続ける重要なインフラ。「不具合などを残さないように慎重に」工事を進めることを心掛ける。「完成後に感謝してもらえた瞬間」に大きなやりがいを感じる。

 かつて自分が助けてもらったように、後輩に寄り添える先輩になることが目標。部署内にまだ女性の後輩はいないが、「思っているより女性にも働きやすい職場」ということを、多くの人に伝えたいと思っている。

  (まるやま・える)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】土佐工業「女性向け作業着を自社で考案・市販化」

 建設業の女性を中心に広がっている、土佐工業(千葉県船橋市、柴田久恵社長)が販売するオリジナル作業着「けんせつ姫」。男性の着用を前提にデザインされていることの多い従来の作業着の常識を覆し、女性も着たくなるようなデザインを同社が考案した。2017年から市販している。

 サクラ柄の裏地がアクセント。袖を折ればシックな黒地の作業着に鮮やかなピンクのサクラが咲く仕掛けだ。パンツは作業中に下向きになったり、背伸びしたりしても下着が見えないように、股上は深めに裁縫している。

 お尻回りや太もも部分は少しゆとりを持たせて屈伸作業がしやすいよう工夫した。腰ベルトループは足場などに引っ掛からないよう、太いループにすることで安全性も高めた。

 ロンドン五輪が開催された12年当時、国内では20年五輪の東京開催案が浮上しており、「もし東京が開催地に決まったら、海外向けに日本の建設業をアピールできるのでは」(柴田社長)とのアイデアから、日本を象徴するサクラ柄のユニホームの考案に至った。ユニークなデザインは仕事先でも目にとまるらしく、「サクラ柄がすてきですね」などと声を掛けられることもあるそうだ。

【駆け出しのころ】長谷工コーポレーション常務執行役員・三森国吉氏

 ◇ものづくりの意志つなぐ◇

 船舶の設計技師だった祖父の影響もあり、子供のころから設計図に興味がありました。大学の先生の勧めもあり、長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)に入社。設計部門で働きたい思いはありましたが、当時は技術系の新人はみな現場勤務からのスタートでした。

 1年目は埼玉県川口市のマンション現場に配属。先輩たちも恐れるほどの厳しい所長の下、目配りや気配り、精神面の強さなど、現場技術者としての心構えをたたき込まれました。

 仕事では「みんなに気持ち良く仕事がしてもらえるよう、前日にしっかりと準備することが役目だ」と言われ、段取りの大切さを諭されました。現場の工程表も後ろから逆算で立てるよう指導され、各工程のポイントに合わせて効率良く作業を組み立てることを学びました。

 仮設足場が外れ、完成した建物が姿を現した時は感動の一言。設計ではなく施工一筋でいこうと決意したのを覚えています。

 2年目に担当した東京都内の現場では、料理好きの所長が残業する社員に夜食をよく作ってくれました。いつの間にか所長や作業所員たちの昼食を先輩2人と交代で作ることになりました。おかずの調理に加え、毎日の米炊きと食器洗いも一番若い自分の担当。包丁の扱い方もよく分からず、母親に料理のレシピを教わりながら調理を続けました。

 正直、現場業務と関係ない雑務に嫌気がさし、会社を辞めようかとも思いましたが、周囲の支えもあり頑張ることができました。結果的に忍耐力が付き、1年目とは違う面で勉強になりました。

 顧客のアフタークレームを含め関連情報を頭に入れ、施工図に反映したり、手描きの重ね図で不整合な箇所を確認したりなど、より良いものを造るために試行錯誤の毎日。5年目ごろには職人からの質問に即答できるようになり、技術者として自信が付いてきました。

 25年の現場勤務で計3800戸の分譲マンションを建設しました。最後の現場になった地元東京・南千住の再開発案件は特別です。実家が開発区域に含まれ不思議な縁を感じながら施工に当たりました。完成後にそのマンションを購入し今も住んでいます。

 施工中の現場に中学生の息子を連れて行き、所長として働く姿を見せたこともありました。息子は技術者になりませんでしたが、縁あって当社に入り営業部門で頑張っています。

 若い人たちには、ものづくりに関わるすべての人たちと心のつながりを大切にしてもらいたい。どれだけ技術が発展しても建設業は、より良いものを造ろうとする人たちの気持ちで成り立っていると思います。

入社4年目ころ、現場事務所で。
技術者として自信が付き始めた時期だった
 (みもり・くによし)1983年千葉大学工学部建築学科卒、長谷工コーポレーション入社。建設部門第三施工統括部長、執行役員などを経て2020年4月から現職。東京都出身、60歳。

2020年10月23日金曜日

【回転窓】美術と豊かさ

  国内初の日本画専門美術館として1966年に開館した山種美術館(東京都渋谷区)。速水御舟が描いた重要文化財の「炎舞」など優れた作品を所蔵している▼企業の寄付金や公的補助金にほぼ頼ることなく運営してきた。だが、新型コロナウイルスの影響で臨時休館を余儀なくされるなど大幅な収入減が続いているという▼初の試みとして今月始めたのがクラウドファンディング。6日間で当初目標の500万円に達し、運営資金の一つの柱にしようと1000万円に再設定した。22日午前8時時点で、447人が合計650万円超を寄付している▼同館は山種証券(現SMBC日興証券)の創業者で「相場の神様」と評された山崎種二が創立した。「金もうけも結構だが、このへんで一つ世の中のためになるようなことをやっておいたらどうか」。親しかった日本画の大家、横山大観の言葉で設立を決意したという▼経済が悪化しゆとりがなくなると日々の生活の維持ばかりに目がいきがち。もちろん仕方の無いことだが、一度失われると取り戻すのが難しい豊かさもある。成熟社会と言われる日本の懐深さが問われていると思う。

【街づくりのアイデア、募集します】神奈川県藤沢市、高校生ら対象にツイッター投稿呼び掛け

  神奈川県藤沢市は、高校生を対象に20年後の藤沢市をイメージした街づくりのアイデアを募る。25日からSNS(インターネット交流サイト)のツイッターで投稿を受け付ける。募集期間は11月25日まで。寄せられたアイデアは新たな市政運営の総合指針の策定などの参考にする。

 市内在住・在学の高校生か、生年月日が2002年4月2日~05年4月1日の人が応募できる。応募方法は、ふじキュン公式ツイッターをフォローし、「#ふじキュン課」を付けて投稿する。ふじキュンは市の公認マスコットキャラクター。

 ふじキュン課は高校生が自由な発想で意見を出し合う未来の藤沢大改造プロジェクト。県立湘南台高校(藤沢市円行)でソーシャルデザイン科目を履修する3年生らの発案で実現した。生徒らはプロジェクトの周知用ポスター製作などでも協力している。

 寄せられたアイデアは12月の市議会で報告する予定。市は「江の島沖と宇宙ステーションとの定期便を運行する」や「ふじキュンのテーマパークをつくる」といった自由で大胆な提案を期待している。

【事業費参考価格は257億円】広島市、サッカースタジアム等整備DB発注

  広島市は22日、設計・施工一括(DB)方式で行う「サッカースタジアム等整備工事」の委託先を選定する公募型プロポーザルを公告した。

 11月16~18日に参加表明を受け付け、12月1日に競争的対話を実施した後、2021年2月15、16日に技術提案、参考見積もり、VE提案を求める。同3月12日にヒアリングを行い、同3月17日にVE提案の採否を通知、同3月22~24日に改善された技術提案と参考見積もりを受け付ける。同3月30日にプレゼンテーションを実施、翌日に最優秀提案者を選定し通知する。事業費参考価格は257億0400万円。

 参加は2者以上のJVで、サッカースタジアムの施工を行う者は1者以上3者以下、ペデストリアンデッキの施工を行う者は1者以上2者以下、設計・工事監理を行う者の数は任意とする。設計企業は建築関係建設コンサルタント業務の「建築一般」と土木関係建設コンサルタント業務の「鋼構造及びコンクリート」「道路」に登録されている者で、延べ1万平方メートル以上の観覧席を有する球技場または陸上競技場の新築、増築、改築、大規模改修の実施設計、橋長が25メートル以上の鋼橋詳細設計の業務実績を有することなど。

 施工企業は単体または5者まで(サッカースタジアム施工企業は3者まで、ペデストリアンデッキ施工企業は2者まで)のJV。建築一式工事、鋼構造物工事、土木一式工事のすべてに認定されていること、サッカースタジアム施工企業は単体とJV代表者は総合評定値が建築一式工事で1200点以上、JVの代表者以外は900点以上あること、ペデストリアンデッキ施工企業は単体とJV代表者は鋼構造物工事の総合評定値が1200点以上、JVの代表者以外は900点以上あることなど。

 市は中央公園広場にサッカースタジアムを建設するとともに、効果的なにぎわい機能の導入などにより中央公園広場全体が一体的に機能するような広場エリアの再整備を行う計画。今回選定される事業者はサッカースタジアム新築、広場エリア整備、ペデストリアンデッキ新設を行う。サッカースタジアムは「世界に誇れるサッカースタジアム機能を核とし、多目的かつ多機能化した都心交流型スタジアム」をコンセプトに、県内外から広く集客し、効果が県内各地に及ぶことを目指す。

 計画地は中区基町15の中央公園広場約8万5600平方メートル(公園全体約42万7600平方メートル)。広場西側に観客席3万人規模のスタジアムを配置する。事業範囲はサッカースタジアム新築、広場エリア再整備、ペデストリアンデッキ新設に伴う基本設計・実施設計、工事監理、施工業務。事業期間は24年7月末まで。ただし、サッカースタジアム新築とペデストリアンデッキ新設の完成は同3月末とする。

2020年10月22日木曜日

【回転窓】富士の冬支度

  朝晩の冷え込みが厳しくなり、冬物への衣替えを進めている方も多かろう。自宅から見える富士山も雪化粧が裾野の方へと徐々に広がり、冬支度が進んでいるかのようだ▼日本人にとって特別な山である富士を国内外に広く知らしめたものとして、浮世絵の「富嶽三十六景」が挙げられるだろう。江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の代表作。19世紀に起こったジャポニスム(日本趣味)などにより、海外にも作品が知れ渡った▼色鮮やかに、巧みな描写・構図で表現された富士山は見飽きることがなく、多くの人々を魅了する。単なる風景画の域を超え、日本人の心の原風景を描き出しているようだ▼今夏に増改修工事が完了した日本武道館で、先月下旬から建物のライトアップが始まった。テーマは「満月の清らかな光が降り注ぐ霊峰・富士」。流線形の屋根と建物の頂点にある巨大な擬宝珠(ぎぼし)に黄色や白色のLED投光器を設置。月明かりに照らされた富士山を表現した▼照明デザインを担当した石井幹子さんは、「多くの人が優しい気持ちになってほしい」との思いを込めたという。澄んだ夜空に希望の光を照らしてほしい。

【細部まで忠実に再現、全長19㎝】宇部興産のダブルストレーラー、ミニカーに

 石灰石やセメントの前製品であるクリンカなどを運ぶ宇部興産のダブルストレーラーが、子ども向けのミニカーとして全国の専門店や量販店などで販売されている。車体の色や「UBE」のロゴ位置など細部まで忠実に再現している。

 ダイカスト製ミニカー「トミカ」シリーズとして販売している。サイズは幅24.5mm、高さ31mm。全長はトラクターと2両のトレーラーを連結した状態で190mmになり、トミカとしては大型のミニカーとなっている。実物の車両は全高3.6m、全長34mにもなるという。

 ダブルストレーラーは山口県の内陸部と沿岸部の工場を結ぶ全長31.94kmの宇部興産専用道路を1日10往復している。40t積みのトレーラー2両で最大80tの原材料などを搭載可能。一般の公道は法令により走行することができない。

 メーカー希望小売価格は900円。店舗以外にタカラトミー公式ショッピングモールなどでも販売している。

【TOTO調査、非接触に関心高まる】公衆トイレ、自動水栓望む声が9割

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を機に不特定多数の人が訪れる公共施設の「非接触」対応への関心が高まっている。

 TOTOが国内在住の日本人に行った調査で、公衆トイレに自動水栓を望む人が90%に上ることが分かった。同社では「より衛生的に手洗いができ、混雑を避けながら使用できる公衆トイレが望まれている」と分析している。

 調査は5月にインターネットで実施。「新型コロナ流行後、公衆トイレで手を洗う」と答えた人の中から20~60代の男女2000人を対象にした。公衆トイレで自動水栓があれば使いたいと回答した人は91%だった。非接触型のせっけんを使いたいと答えた人も87%に上り、水栓だけでなく、自動水せっけんを望む人も多いことが判明した。

 公衆トイレの混み具合を「とても気になる」と答えた人は37%、「気になる」と答えた32%と合わせると約7割が3密(密閉・密集・密接)を懸念していた。新型コロナ流行前は混雑を気にする人は45%だった。

 調査結果を踏まえ、TOTOは住宅・非住宅を問わず、非接触型商品の提案を推進する構えでいる。

【トイレに間仕切り、段ボールで】複合災害に備え、紙製品への関心高まる

  非常時に備えて紙製の災害対策用品を提供する動きが活発化している。軽量で運搬と備蓄がしやすいのに加え、リサイクルが可能ながら可燃ごみとして処分もできるのが利点。避難所の間仕切りやトイレに利用してもらおうと、行政機関や労働者が多く働く工場、一般向けにアピールする団体や企業が多い。

 自然災害が激甚化する中でコロナ禍に見舞われ、自然災害と感染症の複合災害への対応が求められており、備えの行方が注目される。

 岐阜県各務原市の建設会社のインサイトワーク(中嶋真嗣代表取締役)は組み立てタイプの防災トイレ「FUKU・福」を開発した。3種類の強化段ボール製の底板、測板、ふた付き便座の三つのパーツを組み合わせることで1分かからずに完成させられる。重量は1・5キロ(組み立て時)。380ミリ×455ミリ×105ミリのサイズで備蓄できる。

 5回分の防臭袋がセットになっている。同社は内装工事やリフォームを行っている。空間デザインも手掛ける中で、災害の増加を踏まえ紙製のトイレを開発することにした。近く市のふるさと納税の返礼品になるという。

 建設事業の経験や技術を生かした製品開発に取り組んでいる東京都中央区のカワハラ技研(川原愉代表取締役)は、備蓄型の組み立て式個室トイレ「ほぼ紙トイレ」を製品化した。工具を使わず2人で20分ほどで組み立てられる。耐水紙を用いており、屋外に設置可能。すべての部材を焼却処分できる。中小企業の新規性のある商品やサービスの普及を促す東京都の2019年度トライアル発注認定制度の対象に選ばれている。

 両社は東京都江東区で21~23日に開かれる危機管理産業展に出展した。インサイトワークは初めて参加した。展示会には全国建設業協同組合連合会(全建協連)が参加し、群馬県建設業協会が開発した避難所用の段ボール製間仕切り「KAMIKABE(かみかべ)」をアピールした。全建協連は傘下の組合や自治内などにかみかべを提供している。展示ブースを訪れたある医療関係者は、すき間がないために冬季の避難生活の質の向上に役立つとの見方を示した。女性が多く働く工場の管理者が非常時の対策用品として高い関心を持ってくれたという。

 避難所の質とともにコロナ禍で衛生機能が課題になっている。避難所の管理者や製品開発の担当者は非常時の処分までを含めた紙製品の利便性に改めて関心を寄せており、複合災害に備える製品やサービスの投入が続きそうだ。

2020年10月20日火曜日

【回転窓】秋の行楽シーズン

 10月も半ばを過ぎ、朝晩の冷え込みが気になり始めた。街を行き交う人に上着を羽織る人が増え、アースカラーの着こなしに秋の深まりを感じる▼暦の関係などもあり今年の秋は3連休が少ない。10月はゼロ、11月も1度だけと寂しい。Go Toトラベルなど旅行を後押しする施策が展開されているものの、「新型コロナウイルスが心配」と遠出に二の足を踏む人も多かろう▼苦境にあえぐ地方の観光地。影響は食肉業界にも及んでいる。高級ブランドとして名高い「神戸ビーフ」も需要の落ち込みに苦戦しているそう。兵庫県では畜産農家を応援するため、県内にある公立小中学校などの給食で神戸ビーフのステーキなどが登場している▼デパートの食料品売り場では100グラム数千円の値が付く高級品。通常でも買うにはなかなか勇気がいる。清水の舞台から飛び降りる覚悟ではないが、庶民には高根の花といっても過言ではないだろう▼〈秋深き 隣は何を する人ぞ〉(松尾芭蕉)。何げない装いや食事などで秋を感じる今日この頃。神戸ビーフに季節感はないのかもしれないが、冬の到来に向けて気持ちだけは盛り上げたい。

【手すりにつかまり、走らずに】エレベーター協会が全利用呼び掛け「やさしい思いやりをありがとう」

  日本エレベーター協会(藤澤孝会長)は11月10日の「エレベーターの日」に合わせ、「やさしい思いやりをありがとう」をキャッチフレーズにしたキャンペーンを全国で行う。

 鉄道事業者や地方自治体などの協力を得て、車両や構内などに全国統一ポスターやステッカーを掲示。安全・安心な利用を幅広く呼び掛ける。

 エレベーターの日は1890年11月10日に東京・浅草に完成した12階建ての展望塔「凌雲閣」に、国内初の電動式エレベーターが設置されたのが由来。昇降機の安全・安心な利用方法を伝える活動を毎年行っている。

 今年は子どもや高齢者、障害者などすべての人がエレベーター、エスカレーターを安全・安心に利用できるよう、「譲り合って乗る」「立ち止まって手すりにつかまる」ことを呼び掛ける。国土交通省が後援し、昇降機関係7団体が協賛する。問い合わせは同協会のホームページへ。

【先頭車両の形状変更、乗り心地も改善】JR東海、リニア新幹線の改良型試験車公開

 リニア中央新幹線の営業車両の仕様を固めようと、JR東海が改良型試験車の走行試験を8月から山梨県内で行っている。先頭車両の形状を変更し、座席は乗り心地を改善するため部材などを変更した。

 試験車を公開した19日、山梨県都留市の山梨リニア実験センターで、大島浩所長は「(従来の)L0系をブラッシュアップして新しい車両を造った。走行試験を始めたばかり。改良し、いいものを営業車両に取り入れたい。安全面、快適性など、やり残しをなくしたい」と技術開発に意欲を示した。時速500キロの高速走行時での騒音低減を改良効果の一つに挙げ、「これから定量的な評価をしたい」と述べた。


 延伸・更新工事が完了し山梨リニア実験線が2013年に延長42・8キロになって以降、1日平均2000キロの走行試験を行っている。走行距離は1997年の試験開始から15日時点で319万キロとなった。

【記者手帖】土木の役割とは

  海岸沿いの険しい崖に張り付くように整備された静岡県道416号静岡焼津線。車で通っていた時、道沿いに数百メートルにわたって古いコンクリート製の構造物が目に付いた。土砂に埋もれて一部は圧壊。草木も生い茂り、放棄されてから長いのだろうと思った◆帰宅後調べてみると「石部洞門」という名称だった。1940年代から段階的に整備された洞門は、71年7月に起こった斜面の大崩壊で一部が押しつぶされたという。道路を走っていた乗用車が不幸にも巻き込まれ1人が命を落としたそうだ◆災害後に建設省(現国土交通省)と県は復旧工法を協議。洞門では土砂崩れによる圧壊の危険が避けられないと判断し、崖を迂回(うかい)する海上橋の建設を決めた。着工は71年10月。わずか9カ月後の72年7月に延長360mの海上橋が完成した◆地震や水害、崖崩れ。日本は古くから自然災害と向き合ってきた。発生のたびに人々の暮らしを脅かし、少なくない数の命が奪われていく。そして土木技術は安全で安心できる社会づくりに貢献してきたのだろう。古い洞門を目にして土木の役割は何か、その一端を垣間見た気がする。(紀)

2020年10月19日月曜日

【回転窓】GoToできない修学旅行

  市立小学校の全児童が近所の総合公園へ遠足に出掛けていた。グループに分かれて学年を越えて交流し、お弁当を広げ、レクリエーションの合間におやつを食べて1日を過ごした▼コロナ禍で学校は一大イベントの修学旅行を短縮したり、社会科見学を中止せざるを得なかったりした。そこで学校再開後の行事予定に追加したのだと聞いた▼この市の首長が「修学旅行を中止した自治体はもう一度考え直してほしい」とSNS(インターネット交流サイト)でつぶやいていた。政府がGo Toトラベルを進める中で「なぜ子供たちだけが人生で一度きりの機会を奪われなければならないのでしょうか」とも▼市は新型コロナの感染予防対策の徹底を前提に、教育委員会に簡単に諦めないよう要請。その結果、3700人以上が修学旅行や農山村留学に参加した。ある保護者は「思い出をつくってくれた先生に感謝しかない」と返信した▼政府が観光振興に力を入れているのに修学旅行を中止した学校がある。修学旅行に行かれないのに政府は観光振興に熱を上げている。歴史の教科書でコロナ禍だった今秋はどう紹介されるのだろう。

【銀座駅のコンセプトは「憧れの街」】東京メトロ、銀座線5駅をリニューアル

  東京メトロは銀座線の銀座、日本橋、京橋、青山一丁目、外苑前の5駅をリニューアルした。「伝統×先端の融合」をコンセプトに工事を実施。安全に利用できるようホームドアやバリアフリー設備を整備するとともに、街の歴史や魅力が感じられるようコンコースやホームのデザインを工夫した。バックヤードの工事を継続する。

 銀座線は17年に開業90周年を迎えた。同社が報道陣に16日公開した銀座駅(東京都中央区)は、リニューアルに約220億円を投じ、丸ノ内線、日比谷線のホームも改装した。銀座の街の優雅さや高級感を表現し、柔らかい色の照明が構内を照らすようにした。銀座線の黄、丸ノ内線の赤、日比谷線のシルバーのラインカラーである黄、赤、銀に構内を色分けすることで、利用者が今どこにいるのかすぐにわかるようになっている=写真㊤

 銀座駅の出入り口上屋は周囲のビル群に溶け込むよう、ラインカラーが照らすガラスを用いた。改札口付近には路線ごとにライトアップした「光柱」を配置してある。天井には地上の街並みを投影する。ホーム部分は側壁に銀座の街の100年間の移り変わりを描き、乗客が銀座の歴史を体感できるデザインにした=写真㊦

 東京メトロの三丸力工務部第二建築工事所長は「電車の運行時間を除いた時間しか工事できず、新型コロナウイルスの影響で部品の供給も限られる中、工程調整に気を配った」と銀座駅の工事を振り返る。改装後の駅は「地域住民や乗客に愛着を持たれるよう運営したい」と語った。日建設計の担当者は「利用するすべての方にとっての分かりやすさを実現できる空間になったと思う」と自信をのぞかせた。


 リニューアルした5駅のデザインコンセプトは銀座駅が「憧れの街」、日本橋駅(中央区)が「橋の街」、京橋駅(同)が「時のギャラリー」、外苑前駅(港区)が「スポーツの杜」、青山一丁目駅(同)は「優雅な街並み」。

 日本橋駅は五街道の起点の日本橋に近く、江戸時代からの歴史が感じられるよう壁天井を木調で仕上げた。京橋駅は東京のガス灯発祥の地として、ガス灯を柱のモチーフにした。スポーツ施設へのアクセスが優れる外苑前駅は爽やかさが感じられるデザインを採用した。神宮球場方面の改札は、明るい天井にトラックをイメージしたラインが入っている。青山一丁目駅は、床のタイルの組み合わせを工夫し、石畳を表現した。桜の名所のため柱は桜の木肌のようなつやのあるデザインとなっている。

 5駅の設計者と施工者は次の通り。▽駅名=〈1〉設計者〈2〉施工者。

 ▽銀座=〈1〉日建設計〈2〉大成建設

 ▽日本橋=〈1〉交建設計〈2〉大林組・鹿島JV(銀座線)、大林組(東西線)

 ▽京橋=〈1〉メトロ開発〈2〉清水建設

 ▽外苑前、青山一丁目=〈1〉メトロ開発〈2〉安藤ハザマ

【ナイキと三井不レジが連携】東京・豊洲にユニバーサルデザインのスポーツパーク開業

 東京・豊洲に新時代のスポーツパークが誕生した。三井不動産レジデンシャルとナイキジャパンが期間限定でオープンした「TOKYO SPORT PLAYGROUND SPORT×ART」は競技経験や障害の有無、性別などを問わず運動が楽しめる。

 ナイキジャパンの担当者は「さまざまなバックグラウンドを持つ方にスポーツの喜びを実感してほしい」と多くの来場に期待する。

 所在地は豊洲6の4の1。東京ガスの所有地(敷地面積6995平方メートル)を三井不動産レジデンシャルが借りて整備した。「多様性と持続可能性の両方を満たす施設」(同社担当者)と出来栄えに胸を張る。バリアフリーを実現するインクルーシブデザインの考えを取り入れ、グラウンド内の回転遊具やクラブハウスのシャワールームは車いすのまま利用が可能。トイレも広いスペースや充実した機能を採用した。


 グラウンドを囲むランニングトラックの床材にナイキの使用済みスニーカーなどをリサイクルした「Nike Grind」を採用するなど環境保全にも配慮している。

 「豊洲をはじめとした湾岸エリアは他地域から移住した住民が多い。スポーツを通して街への愛着を深めてほしい」と三井不レジの担当者は話す。

 設計はジーエー建築設計社(埼玉県川口市、中川敬一郎代表取締役)、施工はコスモスモア(東京都渋谷区、枝廣寿雄社長)が担当した。運営期間は2021年9月20日までとなっている。

【凜】株木建設建築部(施工図担当)・萩野谷早紀さん

 ◇建築を通じて生活を変える◇

 入社は2019年。2年目の今は茨城本店で受注した建築工事の施工図作成を担当している。3月に晴れて1級建築士試験に合格した。7月から水戸市内にある健康増進施設の建設現場に常駐。図面と実物のスケールの違いに戸惑うことも多いが、職人の間で飛び交う専門用語の意味を一つ一つ聞きに行くなど、現場でしか学べないことを吸収しようと日々努力している。

 入社後1年間は先輩が描いた施工図をひたすらトレースした。仕事を終えると専門学校に直行。1級建築士試験に向け夜遅くまで勉強した。「会社の理解のおかげでまとまった勉強時間が取れた」。努力のかいあって初めての受験で難関を突破した。

 水戸市出身で2人姉妹の妹。「幼い頃から絵や工作が好きだった」といい、デザインが学べる大学に進んだ。在学中に出場した建築模型のコンテストで、審査員から高い評価を受けたことが、今も心の支えになっている。1級建築士を目指して通った専門学校で株木建設を知り、アットホームな社風と「地元に貢献したい」という思いで入社を決めた。

 将来は学校の設計に携わってみたいという。建築空間が使う人の人間関係に影響を及ぼすという問題意識がある。「建築を通じて生活をより良いものに変えていきたい」と話す。モットーは「何でも一生懸命やる」。夢へ向かってまっしぐらに進む。

 (はぎのや・さき)

【中堅世代】それぞれの建設業・269

目には見えない仕事にも会社は支えられている

 ◇仲間たちを支える会社の「花形」◇

  「地元に貢献できる仕事がしたい」。北濱昭広さん(仮名)は、強い思いを持って地元の大手電力会社に入社した。会社の「花形」と考えていた発電所での仕事に就くことを夢見ていたが、実際に配属されたのは思いもしなかったシステム開発の部署だった。戸惑い気持ちが揺らぎながらも現在は「会社で重要な役割を担っている」誇りを胸に、日々仕事と向き合っている。

 高校卒業まで過ごした地元を離れ、自宅から遠く離れた国立大学に進学した。地元と距離を置いたことで「地元愛が一層強まった」。故郷に貢献できる仕事はないか。たどり着いた答えが電力会社。生活に欠かせない電力を届ける仕事に就こうと考えた。

 入社時に漠然とイメージしていたのは、発電所の維持管理といった業務に携わる自分の姿。だが配属されたのはグループが使用するシステム開発の部署だった。同期と離れ離れになったこともあり、「不安な気持ちでいっぱい」だった。

 グループで使うシステムの開発のため「基本的に外に成果が出てこない」。配属直後は「何が楽しいんだ」とふてくされ、入社時に抱いていた思いとのギャップに苦しんだ。いっそのこと辞めてしまおうか…。葛藤する日々が続いた。

 考えが変わったきっかけは営業職に就いた同期の言葉だった。「システムの使い心地が良い」という言葉に続いたのは「さすが精鋭集団だな」の一言。今考えると「冗談半分だったかもしれない」。それでも「大げさかもしれないが自分は選ばれし者」と、自身の仕事をポジティブに捉えることができた。

 直接的に日の目を見ることは少ないのかもしれない。けれどもグループで働く数千人の社員が、開発に携わったシステムを使って仕事をしている。「地域に貢献する仲間たちを支えている」という思いが芽生え、仕事に対する迷いはなくなった。

 考えが変わってから不安はなくなり、仕事も順調に回り出した。任せてもらう案件が増えスキルを磨く勉強も始めた。「気の持ちようでここまで変わるとは」と驚いた。

 キャリアを重ね今は後輩を育てる立場になった。中には、かつての自分と似たような気持ちを抱く後輩もいる。自分のような気持ちの変化が訪れるかは分からない。「さまざまな業務で会社が成り立っているということを分かってほしい」と願いつつ、日々接している。

 総合職で採用され3年がたった。「そろそろあるぞ」と先輩が異動の可能性をほのめかす。入社時に描いていた維持管理や海外プロジェクトなど、興味がある部署はたくさんあるが「それぞれの部署のやりがいがある」。これから先どうなるか分からない。だからこそ担当している仕事と真剣に向き合い、「本当の花形」と思うことが大切なのだと感じている。

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】塩谷建設「グレーと青の2色使いで100周年へ」

 富山県高岡市に本社を置く塩谷建設(塩谷洋平社長)は2019年3月に現在のユニホームにリニューアルした。リニューアルに当たり実施した社内アンケートでは「塩谷建設と分かるようなユニホームにしてほしい」というリクエストが最も多かったという。社員の要望に応え、新しいユニホームは胸と肩の後ろの2カ所にロゴマークが入る。前後のどちらからみても社名が分かるようになった。

 機能では胸ポケットの出し入れを横向きにした。フルハーネス型安全帯を着用しても物が出し入れしやすい気配りだ。旧ユニホームから引き継いだグレーと、同社のイメージカラーである青の2色使いが目を引く。

 リニューアルで中心的な役割を果たしたのは若手社員らで構成するプロジェクトチーム。会社からの条件は「100周年まで着続けられること」だったという。同社は塩谷組の社名で1954年に創業した。

 プロジェクトチームに参加し、当時新人だった社員は「当初は荷が重いと思ったが、100周年を迎える2050年代には自分たちの世代が会社の中心になっている。精いっぱい考え、自信のあるユニホームになった」と胸を張る。自慢のユニホームを着た社員が、今日も多くの現場で活躍している。

【駆け出しのころ】竹中土木取締役専務執行役員営業本部長・岩田充弘氏

 ◇人のつながりがいい仕事に◇

 デスクワーク中心の仕事が嫌だったこともあり、入社後はとにかく現場に出ることを希望しました。1年目は研修期間として下水処理場、東北新幹線の現場などで勤務。2年目にいきなり沖縄北部の山奥にある安波ダムの現場へ異動しました。

 街中での暮らしに慣れた自分にとって、周りに何もない場所での暮らしは想定外。ハブに職人がかまれたから気を付けろと脅かされ、十数人が一緒に寝泊まりする大部屋で体をはい回る虫に何度も起こされる毎日。こんなところでは暮らせないと、上司に退職の意思を伝えると「他のJV関係者にも迷惑が掛かるから1年は頑張ってみろ」と諭されました。

 人というのは面白いもので、あれだけ嫌悪していた現場暮らしも仕事を覚え環境に慣れてくると、楽しく感じるようになります。5年の長期勤務となり、自社だけでなくJVメンバーの方々とも現場内外での交流が深まりました。

 その後、建設省(現国土交通省)の土木研究所に2年余り出向し、会社に戻ってから四国横断自動車道のIC関連工事と阪神高速道路の現場にそれぞれ2年ほど勤務しました。30代半ばに再び沖縄へ戻り、JVスポンサーの技術者として金城ダムの現場に立ちました。この間の勤務地はすべてJVサブの現場。施工管理や現場の雰囲気はスポンサー企業によって特徴があり、各現場で多くを学びました。

 入社16年目から担当したのは神戸市内に現場があった長田箕谷線の街路築造工事。工事主任、作業所長として4年半ほど携わり、最も忘れがたい最後の現場勤務になりました。工事の半ばで阪神淡路大震災が発生。現場事務所に連絡が付かず、泊まっていた若手の安否も分かりません。大阪・豊中の自宅から自動車で普段は1時間も掛からない道のりも、通れる道路を探しながら半日掛けて現場に向かいました。

 仮設の事務所の中は物が散乱していましたが、幸い若手にけがはなく、現場自体も目立った損傷はありませんでした。ライフラインが寸断され一番困るのはトイレ。現場にあった散水車に近くを流れる川の水をため込み地元の方々に配りました。

 民家に近接した現場のため、地元から厳しい声もありましたが、震災の大変な時期を一緒に乗り越え工事への理解が深まりました。移動用のバイクを大阪から持ち込み、市の関係者との協議を重ねて被災1カ月後には工事を再開することができました。

 現場に限らず独りよがりでいい仕事はできません。人と人とのつながりがいろいろな場面で生きてきます。若い人たちには、一つ一つの体験や出会いを大切にしてほしいと思っています。

30代半ばに勤務した沖縄金城ダムの現場事務所で

 (いわた・みつひろ)1977年鹿児島大学工学部海洋土木開発工学科卒、竹中土木入社。執行役員経営戦略室長や常務執行役員大阪本店長などを経て2018年3月から現職。大阪府出身、65歳。

2020年10月16日金曜日

【設計は谷口吉生氏、1989年竣工】葛西臨海水族園施設更新(江戸川区)、既存施設の利活用検討へ

  東京都は、新施設への機能更新を計画している葛西臨海水族園(江戸川区)の既存施設の利活用に向けた検討に入る。14日に公表した「葛西臨海水族園の更新に向けた事業計画」に「新施設整備の取り組みと並行して(既存施設の)利活用の可能性とその採算性などについて検討」すると明記した。

 具体的な検討方法は未定で、有識者などによる会議体を設置するかどうかも固まっていない。所管部署の都建設局公園緑地部計画課は「本年度から検討への準備はしていきたい」としている。

 事業計画の策定を受け新施設整備への事業化手続きが本格化する。新施設は既存施設の隣接地に建設し、完成後に水族園機能をすべて移す。事業計画では新施設の展示の狙いや施設規模、事業手法を定めた。施設整備にはBTO(建設・移管・運営)方式のPFIを採用する方針。2021年度までをPFI法に基づく実施方針策定や事業者選定などに充てる。22年度以降に設計や工事を行い、26年度の開園を目指す。

 都はこれまで既存施設の後利用について、機能移設後に施設状態などを調査しなければ検討できないと説明してきた。昨年度まで運営した有識者会議「葛西臨海水族園事業計画検討会」でも議論の俎上(そじょう)に載せることはなかった。同検討会が3月にまとめた報告書で「既存施設の利活用の関する検討会の設置」を提言したことを受け、既存施設への向き合い方を若干軌道修正した格好だ。

 報告書では「新施設の設計・施工・運営など各段階でクオリティーをチェックするアドバイザリーボードの設置」も提言された。事業計画ではPFI事業実施の留意点として、新たな水族園像を要求水準書に的確に表現した上で、各段階で要求水準を満たすよう「水族館・博物館、環境教育、建築、設備、官民連携、経営などの専門家から助言を得ながら監理監督する」と書き込んだ。質の高い事業者を選定するための選定方法も検討課題に挙げた。

 建築家の谷口吉生氏が設計した既存施設は1989年に竣工。マグロが遊泳する全周90メートル程度のドーナツ型水槽など画期的な展示方法と、意匠や景観を兼ね備えた建築作品として評価が高い。日本建築学会や日本建築家協会(JIA)が保存・活用を求める要望書を出している。

 新施設は延べ2万2500平方メートル程度の規模を想定。既存施設に比べ学習・体験やバリアフリーのためのスペースを広げ、主要設備の交換や点検のメンテナンス性能も高める。類似水族館の実績や見積もりから施設整備費は約244億~276億円と試算している。

2020年10月15日木曜日

【プロジェクト実施へ民間提案募る】大宮公園再整備(さいたま市大宮区)、県が対話型調査へ

  埼玉県は15日、さいたま市大宮区にある大宮公園の再整備計画を具体化するため、サウンディング(対話)型市場調査を開始する。民間アイデアを聴取し2021年度に策定する再編構想の検討に役立てる。

 参加申請を11月2日まで受け付ける。意見・提案内容を記入した提案シートの提出期限は同9日。調査は11月16~同27日に実施する。

 大宮公園の再整備事業に関心を持つ企業やNPO法人などが対象。提案項目は▽ハード、ソフト両面からの事業アイデア▽事業手法や事業期間などのスキーム▽事業参入に関する課題-の三つ。提出書類は都市整備部公園スタジアム課公園企画担当で受け付ける。

 大宮公園の所在地は高鼻町4(敷地面積73・4ヘクタール)。園内には野球場やサッカー場などがある。競技施設などを再整備し、試合の有無に関係なく多くの人が楽しめる公園を目指す。

【回転窓】成長の証

  建材や家具はもちろん、ギターなど楽器の材料としても欠かせない木材。種類の違いや切り出す部位などによって音質に影響を与えるほか、木目の模様がデザインの良しあしにも関係してくる▼虎柄の木目(通称・トラ目)のギターは、見た目の派手さなどから、多くのミュージシャンの愛器となっている▼木の成長過程にできる年輪が木目となり、切り方などで木目の見え方もさまざま。木目の間隔が均等な柾目(まさめ)は伸縮・膨張の差による反りが出にくく、強度なども優れる。逆に木目の間隔が不規則な板目は反りは出やすいが、多様な模様がデザインとして生かされる▼木はストレスなく育てば、均一な年輪となる。だが毎年、同じように快適な気候が続くとは限らない。寒暖や雨量など、その時々の気候の変動が木の成長に影響。木にねじれやしわ寄せなどを起こし、内部の繊維が複雑に混じり合うことで、トラ目などの幻想的な木目(交差木理)を生み出す▼本紙も長年にわたり、建設産業の変化を紙面に刻み続けてきた。本日到達した2万号の節目も一つの年輪とし、建設産業と共にさらなる成長を目指したい。

【実施設計と施工は竹中工務店JV】東京・中野区新庁舎、21年7月の着工目指す

 東京・中野区は14日の記者会見で新庁舎整備事業の進捗(しんちょく)状況などを明らかにした。プロジェクトは実施設計に入っている。酒井直人区長は同日の会見で新庁舎に設ける機能などを説明。来年6月にも実施設計を完了し同7月の着工を目指す。

 竣工は2024年2月を予定している。実施設計と施工は、竹中工務店・協永建設・明成建設工業・武蔵野建設産業・INA新建築研究所JV。基本設計は日本設計が手掛けた。

 庁舎(中野4の8の1)を中野体育館の解体跡地(中野4の11、敷地面積8557平方メートル)に移転し新たに建設する。進行中の実施設計によると、新庁舎はS一部RC・SRC造地下2階地上11階塔屋1階建て延べ4万7390平方メートルの規模。外観には太陽光パネルや日射を抑制するひし形の膜を採用する。

 特徴的な機能は1階に設置する「イベントスペース」と、屋外に隣接する「集いの広場」。両施設を一体的に活用し、イベントの開催を想定している。会見で酒井区長はイベントなどを日常的に開催することで「区民に足を運んでもらえると思う」と説明した。

 庁舎建設地を含む中野駅の北口エリアは計画中の再開発事業などと並行し、交通広場や歩行者デッキが整備される見通し。デッキは新庁舎の2階部分に接続する計画で、酒井区長は「歩行者を中心とした空間を整備することで駅周辺のにぎわいや回遊性の向上につなげたい」としている。

【延べ床面積は1万~2万㎡】TX流山おおたかの森駅周辺に商業など3施設整備

フラップスの完成イメージ(東神開発提供)

  高島屋の子会社でショッピングセンターの開発・運営を手掛ける東神開発(東京都世田谷区、倉本真祐社長)は、つくばエクスプレス(TX)の流山おおたかの森駅周辺で開発している商業施設3棟の概要を13日発表した。駅の隣接地に流山おおたかの森SCの関連施設として、延べ約1・1万平方メートルの「FLAPS(フラップス)」と同約2万平方メートルの「ANNEX(アネックス)2」を設ける。オフィスや医療施設などが入る同約1万平方メートルの「NAGAREYAMAおおたかの森GARDENSアゼリアテラス」も配置する。

 同駅周辺は、住宅や商業施設などの開発プロジェクトが相次ぎ進行している。フラップスの建設地は駅南側に隣接するA3街区。建物はS造6階建て延べ約1万1300平方メートルの規模。設計・デザイン監修はマウントフジアーキテクツ一級建築士事務所。フジタの施工で来春の開業を目指している。1階に物販店やカフェ、アパレルや雑貨の店舗を2、3階に配置。4階に飲食店舗を設け、5、6階はサービス機能を導入する。

 アネックス2は駅北側のB43街区で2022年夏に開業する。施設規模はS造地下2階地上4階建て延べ約2万0500平方メートルを想定。設計・施工者は非公表。商業機能が中心で屋上にスポーツ施設を設ける予定だ。隣接するB45街区がアゼリアテラスの建設地。オフィスや医療施設、飲食店舗が入る。建物はS造10階建て延べ1万0200平方メートルの規模。設計は小堀哲夫建築設計事務所。施工は錢高組。9月に着工しており来秋の完成を目指している。

【工事予定期間は21年7月~23年4月】豊田スタジアム長寿命化改修設計技術協力業務、清水建設を委託先に選定

  愛知県豊田市は、公募型プロポーザルを実施していた「豊田スタジアム長寿命化事業設計技術協力業務」の委託先に清水建設を選んだ。

 施工予定者が設計を支援するECI方式を導入して実施設計を進めるため、6月10日に募集手続きを開始、8月20日まで技術提案書を受け付けた。その後2回のヒアリングを経て同社を契約候補者に決め、協定を結んだ。参加は2社だった。


 サッカーJリーグの公式戦やさまざまなスポーツ、イベントが開催される同スタジアムは、完成後約18年が経過、計画的な保全が必要になっている。このため市は、長寿命化を図る改修工事を進めることにした。ECIを導入するのは、実施設計段階から施工予定者に協力してもらい、改修期間中も最大限利用しながら、コストを抑制するのが狙い。

 同スタジアムは、S造地下2階地上4階建て。建築面積4万0734平方メートルのうち、今回改修対象面積は7025平方メートル。可動式屋根の防水改修、屋根・膜・駆動関連機器撤去、塗装改修(可動式屋根トラス梁、つなぎ梁、駆動装置等、キールトラス、サブトラス、ダンパーブレース、外部階段、屋根下メインマスト)を行う。改修設計はオーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッドが進めている。

 プロポーザルに当たっては▽ピッチ利用制限期間を1年以内にする▽工事中のイベント等実施時は休工し、資材・工具を一時撤収、利用者の万全な安全対策を講じる-の2点を必須条件として提案を求めた。

 同業務の履行期限は2021年3月17日。実施設計完了後、市内本店業者との2者JVを結成し、工事契約を結ぶ。工事期間は21年7月から23年4月までの予定。

【本紙2万号特集】日本総合研究所・寺島実郎会長に聞く「時代の変化に敏感な建設業へ」

 製造業と建設業を中心とするものづくり産業が日本経済の主役だった時代は21世紀に終わりを告げる-。この現実をわれわれの眼前に突き付けたのが、新型コロナウイルスの流行だった。日本総合研究所の寺島実郎会長は「新たな産業構造を真剣に構想しなければいけない」と警鐘を鳴らす。「建設業は情報産業」と説き、時代の変化を先取りする感度の高さを要求する。

 □「情報産業」に立ち返る覚悟を□

 製造業と建設業は戦後日本で産業構造の基軸だった。農業セクターからものづくりセクター、地方から大都市圏へストローのように雇用を吸収し「工業生産力モデル」を形成した。鉄鋼やエレクトロニクス、自動車にまつわるプロジェクトを建設業が並走して支えた。ただしピークは1990年前後。バブル崩壊から30年がたち産業構造は変化した。

 2000~19年に製造業と建設業の就業人口は400万人以上減少した=図表1参照。ものづくり産業から広義のサービス業に就業者が移動した構図が浮かび上がる。その間、失業率は改善した。だがサービス産業の給与が建設業に比べ年100万円ほど少ないことを見落としてはいけない。戦後日本の就業人口移動はより豊かな生活を保障した。ところが21世紀は生活の劣化を招いている。



 この状況下で新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が襲来した。特に感染リスクにさらされたのは物流や介護・看護、小売りなど生身の人間が現場を支えるリアルな部分のサービス産業だ。最も収入の低い階層の人たちがリスクを取らなければいけない「逆進性」のパラドックスを新型コロナはあぶり出した。

 都道府県別の食料自給率=図表2参照=に着目すると、東京都はわずか1%。それなのにコロナ禍の東京で食料パニックが起きなかったのは、リアルのサービス産業が機能していたからだ。コロナ禍でテレワークなどのデジタル技術が一気に浸透した背景にはリアルな部分の支えがあった。この先の産業構造を構築するには「デジタルとリアルの融合」という新しい視点、構想力が求められてくる。


 □「経済大国日本」という幻想□

 戦後日本の基幹産業にはメルトダウン現象が起きている。世界と日本の企業の株式時価総額=図表3参照=を見比べると、米アップルは2兆ドル(約205兆円)を超えている。日本のものづくり産業のトップを走るトヨタ自動車でさえ、アップルの10分の1。その昔「鉄は国家なり」と言われ、誰もが見上げていた日本製鉄は200分の1にも満たない。

 企業は市場価値を超えた投資はできず、プロジェクトを打てるべくもない。これまで建設業はプロジェクトエンジニアリングで技術を磨き前進してきた。ものづくり国家の基盤が揺らぐ今、肝心のプロジェクトエンジニアリング力が急速になえてきている。

 悩ましいのは「日本はアジアの先頭を走る経済国家」と幻想を抱く財界人がいまだに多いことだ。世界の国内総生産(GDP)シェア=図表4参照=で判断すると、1988年の日本は確かにアジアでそそり立つ経済国家だった。2019年には日本を除くアジア諸国のGDPが日本の4倍を超えた。国内には株価の高さに安心している向きがあるが、世界の感覚とは隔たりがある。最も大切なものづくり産業がマネーゲームのうねりに飲み込まれ埋没している。

 アベノミクスの異次元金融緩和と財政出動は株価を引き上げたが、実体経済を動かさなかった=図表5参照。建設業には額に汗して得られる価値や尊さがある。コロナ禍を契機にものづくりや実体経済を支える人たちの、健全な資本主義に対する危機感と怒りを取り戻さなければいけない。

 □実体経済復活へ新機軸を□

 日本をよみがえらせる方策を、実体経済に重きを置いて構想する。次なる産業の軸として「医療」「防災」「生活」にまつわる産業を育てることを提案したい。戦後日本は松下幸之助が提唱した「PHP」(繁栄によって平和と幸福を)の思想に象徴される。労使対立ではなく、まずは産業力をつけて繁栄を目指す。だがコロナ禍で単純にそうは言い切れないと学んだ。豊かさのための産業構造から、国民の安全・安心と幸福のための産業構造へ切り替えることが肝要だ。

 新型コロナを教訓に、一歩踏み出さないといけない。緊急事態宣言下、日本総研は日本医師会のシンクタンクと共にマスクや防護服、人工呼吸器の供給状況を緊急調査した。例えばマスクは8割を海外生産に頼っている。戦後日本の工業生産力モデル、国際分業論に立った通商国家モデルの危うさがそこにある。

 防災面では避難所の住環境が進歩から取り残されている。日本総研はヘリコプターで移動できるコンテナ型のユニットを提案している。感染症の検査・診療や衛生的な水回りなどをユニットで賄う。日本の防災力向上につながり、世界への輸出産業にも育ち得ると考えている。

 従来の視点より重心を下げ、産業構造を再構築する。新たな発想でプロジェクトエンジニアリングを試みる。建設業は工業生産力モデルの優等生として陶酔しているだけでは成長できない。だからといって過剰に自信を失うこともない。蓄積した技術に加え、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、防災産業や医療産業の実装化に取り組まなければいけない。危機感の深さがプロジェクトの深さを決める。

 □アジアの躍動を成長力に□

 高付加価値型の産業構造へ、知恵を出さなければいけない。例えば大量のツアー客をさばいて観光立国を目指すという議論は新型コロナにとどめを刺された。付加価値の高い産業を創出しなければ雇用条件は改善せず、新型コロナがあぶり出した格差と貧困という課題は乗り越えられない。

 急速に成長するアジアのダイナミズムをいかに吸収し、日本の成長力につなげていくか。キーワードは「対流」だ。東京から放射線状に延びた高速道路網を外縁でリンクさせ、クモの巣状にする。東京を取り巻く環状道路が「日本海物流」を生み、アジアダイナミズムを取り込む契機となる。

 観光の高付加価値化にはインダストリアルツーリズムが重要だと考えている。日本の先端的な試みに関心と敬愛を込めてやってくる人たちを引きつける。そのためには日本がアジアに発信できる魅力的なプロジェクトが必要だ。

 建設業はあらゆる産業にプロジェクトを通じて並走する。産業構造の変化にも並走できなければ建設業の未来はない。そういった意味で最も情報に敏感でなければいけない産業だと言える。

 かつては最も世界に目が開かれていた産業でもあった。今よりもっと貪欲だった。世界情勢への食いつくようなまなざしを記憶している。その後、いったんは戦後日本の工業生産力モデルの成功に酔いしれた。そこで培った基盤を踏み固めながら、次に動く覚悟はあるか。もう一度、建設業は情報産業であるという視点に立ち返るべきではないか。新型コロナが襲った今、その覚悟を決める時にきている。

2020年10月14日水曜日

【回転窓】ミラノの風景

  翻訳家で大学教授だった須賀敦子さんが初の随筆集『ミラノの風景』(白水社)を出版したのは61歳の時。数年前この本を読んで、20年近く前の体験をここまで深い内省を込めて語れるのかと驚いた▼須賀さんのイタリア生活は29歳から13年間に及ぶ。小さな書店で仕事を見つけ、仲間と語らい、そして夫との出会いと死別。そんな出来事が昨日のように新鮮かつ客観的に描かれている▼「私のミラノは狭く、やや長く、臆病に広がっていた」(『コルシア書店の仲間たち』)。そんな気持ちでミラノの街を眺め、人々を観察した。私的な異国体験なのに読者に素直に訴える▼ミラノはコロナ禍によって欧州で最も早い2月にロックダウン(都市封鎖)が行われた。6、13日付本紙最終面の日本みち研究所との共同緊急提言で、ミラノ在住のヴァンソン藤井由実さんがその時の様子や現状を語っている▼ヴァンソンさんはコロナ禍を利用してミラノは都心から車を少なくしているとし、街ににぎわいを戻すには「歩行者が安全に歩ける空間整備が必要」という。須賀さんが愛したミラノも人が行き交い、人の匂いを感じさせる街だった。

【踏みしめやすく走りやすい】日本道路、ランナー向け舗装のPV公開

 日本道路は健康貢献活動の一環として開発したランナー向け舗装「快適歩走」のプロモーションビデオ(PV)を制作、動画投稿サイトのユーチューブで公開した。元マラソン走者で解説者の金哲彦氏や青山学院大学陸上部の原晋監督が出演。ランナー目線で快適歩走の魅力を語っている。

 動画では原監督が「選手は(快適歩走を)ダッシュ練習やフリージョグなどに使っている」とランナーの使い方を紹介。金氏は「快適歩走が全国で採用されれば、みんながもっと楽しくウオーキングやジョギングをできるようになる」と快適歩走の魅力をアピールした。

 快適歩走は適度な柔らかさがある一方で、踏みしめやすく、走りやすい点が特長。舗装後に隣接部との段差がほとんど生じないため、隣接部の舗装構成を変えずに施工できる。赤や青などさまざまな色に対応できる。

 陸上競技場でエンボス層として使用されているウレタン樹脂を透水性アスコンの表面空隙(げき)部に充てんし、エンボス仕上げにする。ランナーや歩行者の足腰に負担がかかりにくい。ウレタン樹脂の弾性が着地時かかとにかかる力を吸収し、下層アスファルト舗装が蹴り出す時つま先にかかる力を効果的に舗装面に伝達する。着地時の衝撃をやわらげ、走りだす際に踏みしめやすくすることでランナーの走りやすさを向上させた。





【こちら人事部】前田道路「奨学金支援など福利厚生充実、長期研修で必要な知識習得」

 1930年に創業し、90年以上にわたって道路舗装の仕事に携わってきた前田道路。民間の小型工事に強みを持ち、工事部門は一般道路や高速道路、空港の整備やコンビニエンスストアの駐車場などといった身近にある舗装工事、製品部門はアスファルト合材の製造販売が主体となる。工事と製品の供給を自社で行うことでさまざまな工事に対応している。

 同社が採用活動で求める人物像は「何事にも前向きに情報を吸収する力や、素直に相手の意見を聞き入れるコミュニケーション能力のある人材」。現場の施工管理は、工事で携わるさまざまな関係者に的確な指示ができる対話能力や経験が必要になる。人事部の採用担当者は「施工管理は常に同じ現場で働くわけではない。異なる現場でもコミュニケーションをとれる高い対話能力が必要だ。そのためには、若いころに先輩や上司からのアドバイスを素直に受け止められる人材が望ましい」と話す。

 採用活動では多くの学生にエントリーしてもらうため、インターンシップ(就業体験)、企業説明会などで学生とのコミュニケーションの機会を積極的に設けている。今年は新型コロナウイルスの流行を受けウェブ説明会の実施などで、学生とのつながりを深めている。今後は中途も含めたリファラル採用の強化を予定しており、応募人数・採用人数の確保を目指す。

 同社の人材育成制度で特徴的なのが、技術系新入社員を対象とした1年間の長期研修だ。同社は若手社員の離職の抑制や、現場配属後の新入社員の負担軽減などを目的に19年度から新入社員研修を長期化した。1年間の研修で現場に必要な知識や資格の取得などに取り組んでいる。

 従来は1、2カ月程度の研修を経て現場に配属していた。しかし、現場での業務に必要な知識を十分に習得しないまま現場に配属されることで新入社員がキャパシティーオーバーに悩んだり、離職してしまったりすることが課題だった。手厚い研修で離職率が改善するなど、徐々に効果が出てきているという。

 より良い人材に来てもらうため、福利厚生の充実に取り組んでいる点が同社のアピールポイント。同社は近年、若い社員の生活面での負担を軽減する各種制度の拡充にも取り組んでいる。同社が18年度に導入した奨学金返還支援制度は10年間の間に奨学金最大120万円を会社が支給する。「繰り上げ返済ができることで若手社員の安心材料となっている」(人事部担当者)という。

 子育て世帯への支援も強化している。2019年度からは多子扶養手当を拡充した。従来の制度では第3子以降の子が18歳になるまで1人当たり月額2万5000円を支給していた。現在は第2子も月額1万円を手当として受け取れるようにしている。

 就職活動中の学生に向けて採用担当者は「建設業界は人々が安心して生活をする上で欠かせない仕事で、これからより技術的発展が求められる業界。前田道路はものづくりの会社だが、その中でも人を育てることに力を注いでいる」と同社の魅力を強調する。「より多くの方との出会いを大切にしているので、前田道路への応募を待っている」(人事部担当者)。

 〈新卒採用概要〉

 【新卒採用者数】 男性67人(うち技術系53人)、女性4人(4人、2020年度実績)

 【3年以内離職率】20・3%(17年度新卒)

 【平均勤続年数】 男性16・6年、女性9・4年(19年3月末時点)

 【平均年齢】   40・2歳(19年3月末時点)

2020年10月13日火曜日

【回転窓】日常と非日常

  例年は5月末~6月初めに開催されるテニスの国際大会・全仏オープン。コロナ禍で試合が延期され、先週末に男子シングルスの決勝戦が行われた▼優勝したのは赤土の王者、スペインのラファエル・ナダル選手。四大大会20度目の制覇で全仏は13度目。決勝で通算100勝を達成したが、全仏では過去2敗しかしておらず、勝率は驚異の98%に達する▼新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で閉塞(へいそく)感が漂う世の中。プロスポーツも依然として無観客や入場制限が続く。いつになったら通常に戻れるのか、多くの人がじりじりとした気持ちなっているであろう▼秋の足音がだんだんと大きくなり、冬が到来する前、絶好の行楽シーズンに入ろうとしている。どこに行こうか、何をしようか…。いつもなら家族や友人などとプランを練るところだが「もし新型コロナに感染したら」と考えるとためらいが湧いてくる▼日常を忘れさせてくれるプロスポーツの試合。応援しているチームが大舞台に臨むとあらば会場に行きたいという思いはなおさらだ。ルールを守って非日常を楽しむ。ウィズコロナの常識だろう。