2021年4月30日金曜日

【回転窓】プラスの効果

  春の大型連休に入った。新型コロナウイルス感染拡大を受けた3度目の緊急事態宣言の発令、まん延防止等重点措置の適用を受け、遠出を避けてステイホームで過ごす方も多かろう▼緊急事態宣言下の措置では、酒類を提供する飲食店への休業要請など、これまでの対策から一歩踏み込んだものもある。だが路上での飲酒の増加など、新たな社会的問題も目立ってきた▼飲食の機会が半強制的に減り、仕事関係の飲み会の対応にも影響が見られる。3月に行った民間の意識調査によると、上司に誘われた飲み会に行きたくない時は7割が、取引先の誘いでも6割が「断る」と回答。コロナ禍で在宅勤務が増えるなど、断りやすい雰囲気が助長されているようだ▼夜の付き合いが減ってプライベートの時間が増え、家族とのだんらんが増えたことはプラスの効果か。我慢を強いられる抑圧的な環境を前向きに捉え、普段の生活習慣を見直し健康増進に取り組む人もいる▼それぞれの立場で様相は異なり、苦境に立たされている人も少なくない。みんなで楽しく会食するプラスの効果は、アフターコロナでも変わらず大切にしたい。

【施工は戸田建設JV、5月6日開庁】山形県長井市の駅舎一体型庁舎完成

  山形県長井市が昨年7月から山形鉄道フラワー長井線の長井駅東側で新駅舎と一体的に建設してきた新庁舎が完成した。

 新駅舎と合築した市の「まちなか交流施設」と新庁舎が融合した南北に延びる全長170メートルのデザインが特徴。鉄道駅一体型の市庁舎は全国初になる。設計は秦・伊藤設計(山形市)、施工は戸田建設・那須建設(長井市)・大泉建設(同)JVが担当した。5月6日に開庁する予定だ。

 長井駅東側の敷地約1万8800平方メートルに新庁舎と、新駅舎を含むまちなか交流施設を一体的に建設。老朽化した現庁舎(第1・2庁舎)や、市内に分散している教育委員会庁舎や保健センターなど7カ所の行政機能を集約した。新庁舎とまちなか交流施設を合わせた建物の規模はSRC造3階一部4階建て延べ8320平方メートル。工事費は約41億円。

 南側の新庁舎は駅へのアクセス利便性に考慮し、1階に総合案内と利用頻度の高い窓口部門を設置した。

 北側のまちなか交流施設は1階に市民交流ホール、2階に市民防災研修室を配置した。3階は議場や執務室が入る議会エリアとした。1階には山形鉄道本社や長井駅の改札口も入る。

 メインアプローチがある庁舎の東側は採光用の大きなガラス面と市の歴史ある商屋建築の木格子をイメージした縦型フィンを設置。西側は窓面積を抑えエネルギーロスの削減を図るとともに、フラワー長井線を利用して訪れる乗客を迎える最初の顔としてデザインした。

【「あつ森」活用し若い世代に防災啓発】中部地域づくり協会、水害避難学習動画作成

 中部地域づくり協会は、任天堂が発売しているゲームソフト「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」を活用した水害時の避難学習動画を作成し公開した。動画投稿サイト・ユーチューブの同協会公式チャンネルで見ることができる。

 動画では大雨に見舞われたゲーム内のキャラクターが、自宅の2階以上や知人・親戚の家、近所の高い建物へ避難する様子を映し、指定された避難所以外にも選択肢があることを啓発。子どもや若い世代に水害時の早期避難とハザードマップ確認など日頃の備えの大切さを知ってもらう内容になっている。

 同協会は、防災意識の向上を目的に浸水疑似体験映像や防災啓発冊子をホームページで公開。今回は子どもたちも関心を持てるよう、人気ゲームを活用し動画を作成した。

【4段階で工事実施、改修面積8.9万㎡】関空第1ターミナル改修、大林組と契約

4階新保安検査場の完成イメージ

  関西エアポート(山谷佳之社長兼最高経営責任者〈CEO〉)は、関西国際空港第1ターミナル(T1)のリノベーション工事で大林組と契約を結んだ。コロナ禍で工事スケジュールが遅れたが、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)までに国際線の出発エリアや新保安検査場など主要機能の供用を目指す。5月28日から本格的に工事を始める。契約額は非公表。

 リノベーション工事は4段階で進め、第1段階では国内線エリアの増築・改修と本館3階国際線到着動線を増築。第2段階で2階中央に国際線出発エリアを新設し、一般エリアに商業施設を設ける。第3段階で4階保安検査場エリアの増築や3階国際線ラウンジを新設。第4段階では2階国際線の出発エリア(南北)の拡張を予定する。全体の改修面積は約8万9000平方メートル。

 保安検査場を集約するほか、自動チェックインやスマートレーン、自動化ゲートを設けて混雑を緩和。国内、国際両線のエリアを見直し、国内線を南ウイングに移す一方、既存国内線エリアを国際線に変更することで一体的に運用する。国際線の出発エリアの面積は60%拡大し、駐機スポットは34カ所から39カ所に増やす。総事業費は約700億円を見込む。

 22年秋ごろに2階の新国内線エリアなどの運用を開始し、23年冬ごろに2階国際線出発エリア(中央)の供用を予定。万博前の25年春ごろに4階新保安検査場と3階国際線ラウンジの運用を予定。その後、26年秋ごろに2階国際線出発エリアの南北商業施設が運用する予定。

 山谷社長は「今後の航空需要に着実に対応するとともに、万博の際にはファーストパビリオンにふさわしい機能を提供し、快適で新しい旅の体験ができる空港を目指す」とコメント。大林組の蓮輪賢治社長は「ファーストパビリオンとして万博の盛り上げに貢献できるよう、品質の確保はもとより、施工中の安全衛生管理にも万全の対策を講じるなど全力で尽くす」と述べている。

【事業費700億円、来年1月の着工目指す】長崎スタジアムシティプロジェクト、実施設計・施工の優先交渉権者に竹中工務店ら

スタジアムなどの鳥瞰イメージ
(構想段階のため変更の可能性がある。ジャパネットHD提供)

  長崎市にある造船所跡地を大規模開発する「長崎スタジアムシティプロジェクト」で、実施設計と施工の優先交渉権者が決まった。スタジアムやホテルを建設するI工区は竹中工務店、アリーナやエネルギーセンターを整備するII工区は戸田建設を選定。戸田建設はオフィス棟を建設するIII工区も担う予定。駐車場棟(IV工区)の優先交渉権者は松尾建設。

 プロジェクトは通販大手・ジャパネットホールディングス(HD)のグループ会社、リージョナルクリエーション長崎(長崎市、高田旭人社長)が企画・運営。来年1月の着工を予定している。完成目標は2024年。事業費は700億円を計画している。

 建設地は三菱重工業長崎造船所幸町工場跡地(長崎市幸町ほか、約6・9ヘクタール)。サッカーJリーグV・ファーレン長崎のホームとなる約2万席のスタジアム、約5000席のアリーナ、約270室のホテル、オフィス、商業施設などを建設する。

 竹中工務店はスタジアム棟・ホテル棟・南商業棟(S・RC造16階建て延べ約10万6800平方メートル)、戸田建設はアリーナ・サブアリーナ棟・エネルギーセンター棟(SRC・RC一部S造4階建て延べ約2万6300平方メートル)とオフィス棟(S造13階建て延べ約4万1800平方メートル)、松尾建設は駐車場棟(S造6階建て延べ約2万平方メートル)をそれぞれ施工する予定。実施設計は基本設計担当者とJVを結成して行う。

 PM(プロジェクトマネジメント)業務はジョーンズラングラサール、CM(コンストラクションマネジメント)業務は三菱地所設計、基本設計業務は環境デザイン研究所・安井建築設計事務所JVが担当。

2021年4月27日火曜日

【記者手帖】インフラのありがたさ

 コロナ禍で息の詰まる日が続く。たまには息抜きも必要と思い、新たな趣味として山登りを始めた。野外で他の登山客と距離をとれば密を避けられるし、何よりも自粛疲れで凝り固まった体を動かしたかった。首都圏に「まん延防止等重点措置」が適用される直前、丹沢の大山に登った◆中腹にある大山阿夫利神社の下社までは険しい「男坂」を進んだ。登山客を拒むような石積みの急階段が続き、日ごろ怠けている筋肉と心肺がすぐに悲鳴を上げた。下社を参拝した後に入った登山道も男坂に負けず劣らずの厳しさ。何度も休憩を挟み、悪路に文句を言いながらなんとか頂上までたどり着き、美しい景色を堪能できた◆下山途中で体力が尽き、下社からケーブルカーに乗ると、ふもとの参道まであっという間に到着。登りの苦労を思うと、インフラのありがたさが骨身にしみた◆あれだけ苦しめられた階段も、先人が一つ一つ石を積み上げて整備してくれたからこそ上ることができたのだ。今度、大山を登るときは文句ではなく感謝の言葉を言えるよう、もう少し体力を付けたい。(ま)

【回転窓】巣ごもりと書店の関係は?

  以前はどこの街にもあった書店。子どもの頃は毎週のように週刊漫画を買いに行き、顔なじみになった店番のお姉さんと話すのが楽しみだった▼活字離れや電子書籍の台頭もあって紙書籍の需要は減少。書店も苦戦を強いられ、倒産に追い込まれる店舗が後を絶たない状況だった▼そんな流れの中で、2020年度の書店倒産数(負債総額1000万円以上)が大幅に減ったそうだ。帝国データバンクの調査によると昨年度の倒産は12件で前年度から半減。00年度以降で最も少なかった▼若年層を中心に本を読まない人が増え、書籍のデジタル化もあって売り上げが頭打ちだった書店。お店を助けたのは映画が爆発的にヒットした『鬼滅の刃』などの売り上げがあるという。「書店によってはコミックの売り上げが前年から1割以上増加した」ケースもあり、「経営に持ち直しの動きもみられている」▼3度目の緊急事態宣言が発令されるなどコロナ禍は続く。家にいる機会が多くなり「どうやって過ごそうか」と思案する中でコミックや本を選択する人がいるのだろう。もうすぐ大型連休。有意義な巣ごもり方法を考えるとするか。

【品川開発Ⅰ期、2024年度街開きは維持】JR東日本、鉄道遺構「高輪築堤」の一部を現地保存

 JR東日本は東京都港区で進める品川開発プロジェクト(I期)の計画地で出土した鉄道遺構「高輪築堤」を一部保存する。

 有識者委員会の報告を踏まえ、橋梁部を含む約80メートルと公園隣接部の約40メートルを現地保存し、信号機土台部を含む約30メートルを移築保存する。区教育委員会と連携して記録保存調査も進める。設計変更などに伴い300億~400億円の費用が必要になるという。I期の2024年度の街開きは変更しない。

 高輪築堤は1872年に日本で初めて開業した鉄道路線の一部。品川開発プロジェクトで都市計画決定されたI期の1~4街区と、構想段階(II期)の5、6街区にわたって約800メートル出土した。

 同社は1~4街区の敷地計約7・2万平方メートルに、160メートル超の複数の超高層ビルなど総延べ約85万平方メートルの整備を計画している。保存や移築の在り方を検討してきた有識者委員会が取りまとめた調査・保存方針を踏まえ、現地保存や公開などの検討に着手する。

 象徴的な「第7橋梁」が位置する3街区は、橋梁部を含む約80メートルを現地保存し、建設当時の風景をそのまま感じられるように公開する。2街区では残存状況が良好な公園隣接部約40メートルも現地保存。文化の発信拠点となる施設と一体的に公開する。4街区で出土した信号機土台部を含む約30メートルは、高輪ゲートウェイ駅前の国道15号沿いの広場に移築保存する方向で検討、調整する。


 記録保存調査の範囲は1~4街区の約700メートル。道路下など築堤を土の中に埋めたまま現地保存できる範囲は調査対象から除く。

 港区教育委員会と連携し、考古学や鉄道史など各分野の知見に基づき調査を実施。築堤から取り外した石や杭を計測・記録するほか、築堤内部の土層状況も調査・記録する。

 現地保存や公開に向け、3街区の建物などの計画を変更する。プロジェクトは国家戦略特別区域会議などを経て内閣総理大臣が都市計画決定している。同社は変更手続きを国、東京都、港区など関係行政と連携して進める。



2021年4月26日月曜日

【首都高日本橋区間地下化】都心環状線、5カ所で試掘工事着手へ

  首都高速道路会社は、都心環状線の日本橋区間地下化事業(神田橋JCT~江戸橋JCT間、約1・8キロ)に向け、東京都千代田区と中央区の計5カ所で試掘工事に着手する。シールドトンネルなどを計画する上で重要な工程の一つ。首都高の地下化プロジェクトは着実に前進する。

 更新・建設局は「(高改負)高速都心環状線(日本橋地区)他試掘等工事」の一般競争入札を22日に公告した。申請書と技術資料の提出は5月14日まで更新・建設局総務・経理課への持参など(申請書は電子入札システムも可)で受け付ける。6月17日に開札する。発注見通しによる工事規模は2億~4億円(税込み)。

 受注者が着工までに発注者に対して週休2日に取り組む旨を協議した上で工事を実施する「週休2日制工事(受注者希望方式)」を適用する。工事契約後に監督職員と協議が整った場合、CIMの対象とすることもできる。

 入札には、土木工事でB等級の認定を受けている単体が参加できる。2006年度以降に都市部の往復4車線以上の道路上で床付け面の深さが2メートル以上の車線規制を伴う掘削工事を施工した実績なども求める。

 都心環状線(日本橋区間)の地下化に関する試掘と、さいたま市中央区と埼玉県鴻巣市を結ぶ新大宮上尾道路(延長25・1キロ)の与野~上尾南区間8キロの新設で、ヤードの整備に向けた舗装の撤去などを一括して任せる。工事区間長は、日本橋区間が約1キロ、新大宮上尾道路区間が約0・4キロ。工事のための街路規制を計486日間(同日に複数カ所)計上している。

 都心環状線の地下埋設物調査として、5カ所で試掘工事を実施する。総対象面積は約2209平方メートルに及ぶ。内訳は▽小網町付近約1070平方メートル▽一石橋右岸側付近約527平方メートル▽常盤橋付近約372平方メートル▽新常盤橋付近約42平方メートル▽三越前駅付近約198平方メートル。このほか、護岸構造調査としての掘削工2カ所、躯体調査の掘削工1カ所も実施する。ボーリング孔の構築は、水上と陸上でボーリング(計63カ所、約828メートル)を実施する。

【凜】千葉市公園建設課・三部早紀さん

  ◇造園の知識生かし早く一人前に◇

 今の仕事に就いたのは「公務員だからというより緑に携わる仕事がしたかった」から。子どものころよく遊んだ緑地に桑の林があり、散歩の時に父親が「桑の実は食べられる」などいろいろなことを教えてくれた。話を聞いているうちに、自然と植物に興味を持つようになった。大学に進学する時、「仕事にするなら好きなことをやりたい」と農業大学を選んだ。

 大学で造園を学び、風景学から富士山の文化遺産を調べる研究室に所属した。富士吉田から5合目まで実際に登って、富士山信仰(富士講)の遺跡調査も行った。登る途中で「気付くと生活音だけでなく森の音や生き物の音もなくなり、全くの無音になる」という不思議な体験をしたのが今も心に残っている。

 働き始めて今年で5年目。大学で学んだ造園の知識は「一目見れば枝切りの時期が分かる」ほど仕事に生かされている。長所は「コツコツやること」だが、「経験がまだ足りない」と自己評価は厳しめ。「資格を取って早く技術者として一人前になりたい」と話す。

 尊敬する人物は入庁して最初の上司。「しっかりスケジュールを組んで工程管理ができる」ようになることが目標だ。

 家でもコウモリランやハオルチアなど観葉植物を育てている。植物を見ていると「宝石のようなきれいなものを見ている感じ」で心が癒やされるという。

 (さんべ・さき)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】建設コンサルタンツ協会「素材や機能にこだわり」

  建設コンサルタンツ協会(建コン協、高野登会長)が協会ロゴの「JCCΛ」の商標登録を機に、災害対応用のユニホームを製作した。

 災害が発生し国や自治体から建コン協に支援要請があった時などに着用する。冬用と通年用のジャケット、安全ベストの3種類を用意。右腕には公募で選んだシンボルマークが入る。

 通年用の白いジャケットは超軽量でストレッチやはっ水、防汚などの機能を持つ。左腕にスマートフォンホルダーを設け、現代の働き方に対応した。青ベースの冬用ジャケットには白い縁取りのあるロゴを配置している。

 広報専門委員会の長部孝彦委員によると、製作の3年前からサンプルを取り寄せ「素材や機能、プリントの剥がれがないことを確認して製品を選んだ」という。「自信を持って取り組むことができた」(長部委員)。

 実際に着用した会員は「通年用のジャケットはとにかく軽く、小さくたためるため、持ち運びに負担がない」と出来栄えに満足な様子。冬用も「スタイリッシュで暖かく、素材の進化を感じる。安全ベストと腕章を組み合わせ、着用者の安全確保にもつながる」と話している。

【駆け出しのころ】五洋建設執行役員建築部門担当(設備)・川延直樹氏

  ◇トレンド追いかけ楽しむ◇

 就職活動をしていた時、海洋土木が主力の五洋建設には、これから建築を伸ばそうという勢いを感じました。

 最初に配属された横浜支店ではまず、研修も兼ねて大型マンション現場に常駐しました。他の現場を兼務する設備担当の上司に指導を受けながら、図面の整合調整をはじめ顧客や設計事務所との打ち合わせなどに奔走。新人ながらやりきったという思いがありました。

 設備担当の技術者として3年目以降は複数の現場を掛け持ちしました。業務量は多かったですが、さまざまな人との出会いからコミュニケーション能力が高まったと思います。設備の基礎的な知識やスキルは、サブコンの方々から学んだところも少なくありません。事業者との打ち合わせではさまざまなニーズに合わせた調整力も必要です。生産系などの専門施設では施主の方が技術的なことを熟知されており、こちらの提案を承諾してもらうのに苦労しました。

 20代後半で常駐した大型清掃工場の現場も人との出会いがその後の糧になりました。現場の収まりや取り合いなどについて、プラント会社の建築担当とかんかんがくがくの議論をする毎日。建築担当者にも堂々とものが言えるようになろうと決意したことが、1級建築士の資格を取得するきっかけでした。

 12年目に当社発祥の地にある中国支店へ異動になりました。歴史と実績のある支店でしたので、従来のやり方にこだわりが強かったと記憶しています。業務の無駄をなくし最適化するため、論理的に改善効果を説明するなど、支店で設備部門の業務変革に力を注ぎました。

 中国・四国・九州地方で当時最も高い166メートルの超高層複合ビルの建設工事は思い出深い現場の一つです。自分にとっても初の超高層案件。内装と設備のユニット化や独自に設計した消防設備など、試行錯誤しながら新しいやり方を積極的に取り入れました。

 バブル崩壊後の不況期には多くの企業がリストラを断行しました。早期退職などで周りの社員が辞めていく姿を見て、将来に悩んだこともありました。大学時代の恩師から「バブル期に建てた施設は設備を今後更新するから、これからの主役は設備だよ」と励まされました。

 特定の人や組織にしかできないことを、誰でもできるようにすることを常に心掛けてきました。その時々のトレンドを取り入れ、より良いものにすることが重要です。特に建築設備はメーカーの技術競争もあり変化が早い分野。創意工夫を凝らし機能や性能をグレードアップし、利用者に快適さや安心・安全を届ける。若い人たちはそこにやりがいを感じながら、楽しんで仕事をしてほしいと思います。

入社5年目、工事事務所で施工図などを夜遅くまで確認していた

 (かわのべ・なおき)1987年関東学院大学工学部建築設備工学科卒、五洋建設入社。東京建築支店設備部長や建築部門建築本部設備部長などを経て2019年4月から現職。神奈川県出身、57歳。

2021年4月22日木曜日

【回転窓】睡眠の時間と質

  春眠暁を覚えず--。朝晩の寒さも和らぎ春の爽やかな気候に、ついつい長寝をしてしまう方も多かろう。毎日の通勤では電車の心地よい揺れも加わり、眠気に誘われることもしばしば▼厚生労働省が1月に公表した健康実態調査結果によると、最も多かった睡眠時間は「6時間以上~7時間未満」で32・8%。睡眠時間の取れている度合いでは、3~4割が「日中、眠気を感じた」や「睡眠全体の質に満足できなかった」と回答していた▼寝具メーカーの西川が「睡眠の日(9月3日)」に毎年公表している睡眠白書によると、昨年調査で約1万人の半数が「不眠症の疑いが高い」ことが分かった。特に20代、30代の働き盛り世代で割合が高かった▼睡眠をキーワードにした商品やサービスは多い。先進の情報通信技術で眠りの改善につなげようとする動きも目立つ。カシオ計算機とアシックスは睡眠時の計測データなどを活用した健康関連の新事業を検討中という▼さまざまなストレスにさらされる現代社会では「質の高い睡眠」へのニーズは増す一方。より快適な眠りを得られる住宅など、建設分野の取り組みにもぜひ期待したい。

【設計・施工は鹿島・住友電気工業JV】秋田洋上風力発電、風車設置へ洋上工事着手

秋田港に入港したSEP船「ザラタン号」(秋田洋上風力発電提供)

  秋田県の秋田・能代両港で大型洋上風力発電事業の洋上工事がスタートする。港湾区域で事業を進める特定目的会社(SPC)の秋田洋上風力発電(秋田市、岡垣啓司社長)は、20日に秋田港飯島ふ頭で洋上工事の安全祈願祭を開いた。

 式典には秋田洋上風力発電や設計・施工を担う鹿島・住友電気工業JVをはじめ、来賓として東北地方整備局秋田港湾事務所や県などの関係者が出席。地元の伝統行事である「なまはげ」の演舞も披露された。

 本格着工に向け、鹿島JVが洋上風力発電設備の据え付け実績が豊富な英シージャックス社の日本法人を通じて大型のSEP(自己昇降式作業台)船「ザラタン号」を導入。工事の無事故・無災害を祈った。

 秋田洋上風力発電は、国内初の商用洋上風力発電事業として秋田港に13基、能代港に20基の風力発電機を設置する。発電規模は合わせて140メガワットで、全て20年間にわたり東北電力に売電する。今月下旬には本格的な洋上工事に着手し、SEP船を使って風力発電設備の基礎部材(モノパイル、トランジションピース)を据え付ける。2022年末までに商業運転開始を目指す。総事業費は約1000億円。

2021年4月21日水曜日

【焼失前の姿、BIMで再現】米オートデスク、ノートルダム大聖堂の修復支援

BIMで再現したノートルダム大聖堂

  米オートデスクが2019年4月の火災で焼失したノートルダム大聖堂(フランス・パリ)の修復を支援している。大聖堂の保全と修復などを担当する現地公施設法人の依頼を受け、倒壊前の状態をBIMで再現。鮮明に描かれた3Dモデルは修復作業を後押しする技術になりそうだ。

 オートデスクが開発するリアリティー・キャプチャ技術で作製した3Dデータを利用した。BIMで歴史的なデジタル記録を仕上げたり、最新技術で火災後の3Dモデルも作製したりしている。公施設法人のジャン=ルイ・ジョルグラン理事長は「ノートルダム大聖堂にとって、修復現場の監督・管理用に設計されたデジタル技術は不可欠だ。最先端の設計・建設技術とBIMを通じたオートデスクの支援によって、大聖堂の再建が現実になりつつある」とコメントした。

 オートデスクは火災発生後、フランスのヘリテージ財団を通じ資金と技術を提供するなど、修復事業を支援してきた。

【横浜臨海部に新名物】泉陽興業の常設都市型ロープウェーが22日開業

  レジャー関連施設の企画や運営などを手掛ける泉陽興業(大阪市浪速区、山田勇作社長)が22日、横浜市西区のみなとみらい(MM)21地区で、国内初の常設都市型循環式ロープウエー「横浜エアキャビン」を開業する。

 JR京浜東北根岸線の桜木町駅東口駅前広場と新港ふ頭の運河パークを約5分で結ぶ。延長は約630メートル。横浜都心臨海部の回遊性向上や新たなにぎわい創出を目指す。

 ルートは汽車道沿いの海上で、停留所は桜木町駅前と運河パークの2カ所。支柱は地上2基(高さ約10メートル)と海上3基(約40メートル)。キャビン(8人乗り)数は36基。ロープウエー本体の製造と組み立ては日本ケーブルが担当。海上基礎工事は東亜建設工業、駅舎の設計は山下設計、建設はピーエス三菱が担当した。照明計画は世界的な照明デザイナー・石井幹子氏が監修している。

 ロープウエー事業は市が2017年に公募した「まちを楽しむ多彩な交通の充実」で採用した提案の一つ。横浜都心臨海部に新たな交通ネットワークを形成するとともに、移動自体を楽しむことと新たな景観づくりなどがコンセプトだ。

 17日には関係者らを招き試乗会を開催。約1500人がランドマークタワーや横浜新市庁舎などが一望できる空中散歩を一足早く楽しんだ。

【記者手帖】ドボジョブームが終わる時

  「『ドボジョ』ブーム、早く終わらないかな」--。ゼネコンに勤めるある女性土木技術者がそう漏らしていた。建設業界は空前のドボジョブーム。入社当初から貴重な女性技術者として扱われ社内外のメディアに登場してきた。建設業界の発展のためにと理解していても、仕事を抜けて取材に応じる自分を同期の男性社員がどう思っているのか、気になってしまうという◆女性技術者の積極登用をうたうある地場ゼネコンから案内のあった現場見学会。事前に資料を読んでいておや?と思った。少なくとも過去に3回、別の大規模現場の取材で見掛けた女性の名前を見つけたからだ◆彼女はメディアに取り上げられる現場から現場に、数カ月の短期間で異動していたことが分かった。はたから見ればさまざまな現場で多くの女性技術者が活躍しているように見える。それが女性技術者「積極登用」のからくりかと思うと、複雑な気持ちになった◆別のゼネコンの社長は「世の中はもうLGBT(性的少数者)への対応にまでシフトしている」と指摘する。女性更衣室の設置や女性技術者の登用などに力を注ぐ建設業。世の中の動きとのギャップに危機感を募らせる◆建設業界の女性活躍はまだ過渡期にある。男女関係なく働きやすい環境が整う時こそ、ドボジョブームが終わるのだろう (ゆ)

【凜】JICA地球ひろば地球案内人・岡山萌美さん

  ◇世界とのつながりを伝えたい◇

 東京・市谷にある国際協力の情報発信拠点「JICA地球ひろば」で案内役を務める。

 高校や大学で途上国に思い入れのある恩師に出会った。大学のボランティア部で青少年育成に関わり、「経験を生かそう」と、卒業と同時に青年海外協力隊としてモンゴルで青少年活動に従事しようと決めた。訓練の直前に東日本大震災が発生。海外に初めて救援隊を派遣するなどモンゴルの日本への支援を知り、「恩返し」の気持ちも抱いて2011年6月に旅立った。

 首都ウランバートルから約500キロ離れた北部のスフバートル市で、職業訓練校の15~18歳の生徒にピアノやダンスなどを放課後に教えた。働くための技術習得を優先する生徒らと向き合う中で心掛けたのは「諦めずにできることを増やしてもらおう」。意欲と連帯感の高揚が間近に分かり、職業訓練校の音楽の全国大会に出場。多くを学ぶことができた貴重な2年間となった。

 中学校講師や協力隊訓練所スタッフなどを経て、20年8月から案内人に。震災から10年、ひろばは企画展「災害にもっと強い世界をめざして」を実施中。「日本の災害経験が途上国の防災・復興にどう生かされているか、災害に備え自分たちにできることを考えてもらいたい」。協力隊の経験も中高生らに伝え、「世界とのつながり」を意識してもらおうと考えている。

 (おかやま・めぐみ)

【中堅世代】それぞれの建設業・285

建コン各社で経験者を採用するケースも多い

 ◇自分の可能性を信じて◇

  人材不足に陥る建設関連業界で、専門知識を持った経験者を採用するケースは少なくない。大手建設コンサルタントで広報・投資家向け情報提供(IR)業務に従事する海崎響さん(仮名)もその一人。自分に合った仕事が何かを悩むうち、気付けばIT関係や金融機関など複数企業を渡り歩いてきた。転職の多い自分を迎え入れてくれた今の会社に貢献したい一心で仕事に励む。

 自然豊かな地方都市で生まれ育った。学生時代から化学が得意で、地元の大学で繊維工学を専攻した。就職氷河期の真っただ中にあった当時、大学院への進学も考えた。大学の恩師からIT関連企業でシステムエンジニア(SE)の仕事を紹介された。大学で学んだ知識が役に立つのかという迷いもあったが、「これも何かの縁だ」と割り切り、SEの世界に飛び込んだ。

 入社後は主に会計管理用ソフトウエアの開発に携わった。責任ある仕事を任されるようになったある時、大手証券会社が人材募集を行っているとの情報を目にした。これまでの経験を生かし、「関心のあった証券の仕事に携わりたい」と感じ転職を決意。技術営業がメインの部署に配属されたものの、実際に働いてみると「自分の肌に合わない」と思うように。

 証券や金融機関にばかり固執していたが、SE時代に培った予算管理やファイナンスの知識を他業界にも生かせるはずだ。漠然とした不安は日増しに強くなり転職が頭をよぎる。人材派遣会社に相談するうち、紹介されたのは建設コンサルという未知の領域だった。生活を支える社会インフラの役割を知れば知るほど、興味がわくようになった。自分の知識と経験が生かせると確信し、思い切って採用試験を受けた。

 「うちの職場には社会に貢献したいと思う社員が多い」。配属された広報・IR部の上司は笑顔でこう話していた。技術力と知的生産性が会社を支える建設コンサル。事務職は技術職に比べて「弱い立場」と捉えていた。上司の話を聞いたり、投資家に自社の役割や魅力をアピールしたりしているうちに、「現在のセクションはさまざまな部署を橋渡しする役割を担っている」と実感。意識がガラッと変わった瞬間だった。

 最も力を入れているのは新会社の立ち上げに向けた準備。2022年4月に東証が現在の上場区分を見直す予定で、新会社は最上位に当たる「プライム市場」への移行を目指している。ガバナンス(企業統治)強化や開示情報の英文化などクリアすべき課題は山積する。同時に自分がステップアップを図る千載一遇のチャンスと捉え、「必死に食らいついていく」覚悟だ。

 自分の可能性を信じる。今の心の支えであり「好きと思えるようになれば、いつかは報われるはずだ」。そんな自分の能力に賭けてくれた会社には感謝の気持ちしかない。今後を左右しかねない新会社の発足という最重要案件に気を引き締めて臨む。

【駆け出しのころ】東亜建設工業執行役員土木事業本部技術部長・川森聡氏

  ◇体験からいろいろな学びを◇

 北海道の日本海側の小平町で生まれ育ち、幼いころから海辺でよく遊んでいました。隣の留萌市には世界の中でも特に波が厳しい「三大波濤(はとう)港」の一つに挙げられる留萌港があり、荒波のエネルギーのすさまじさを間近で見てきました。

 就職活動ではマリコンを志望し、大学の教授からの勧めもあって当社に入社しました。高校時代に留萌港でフローティングドック(FD)からケーソンが進水する様子を「変わった船だな」と眺めていたのが、当社のFDだったことを後から知って不思議な縁を感じました。

 最初に配属された秋田港でのFDによる防波堤ケーソンの製作現場では、技術的なこと以上に苦労したのが言葉の壁。地元の作業員だけでなく、発注者の方もなまりがきつく、会話を理解するのに半年以上かかりました。作業員には兼業農家の方が多く、田植えや稲刈りなど繁忙期は現場に出てきません。地元ならではの諸事情も踏まえて工程を組むことが求められました。

 3年目には大規模な水産加工団地の汚水管改修工事で現場所長を任されます。濃度の高い硫化水素が発生し、過去に管内清掃作業員が亡くなっている工区の担当となり、まずはおはらいからスタートしました。深夜作業の現場で夜中にガス警報器が鳴り響くと、髪の毛が逆立つほどのストレスを感じました。当時、結婚が決まっていなかったら会社を辞めていたかもしれません。

 一人現場でどうすればいいか分からず、同じ工事で他社工区の所長の方々に教えを請いながら作業を進めました。各工区の良いとこ取りのおかげで一番早く竣工。周りの方々に助けられ、大変ありがたかったです。

 7年目に異動した土木本部の設計部時代に阪神淡路大震災が発生し、顧客の工場で護岸の復旧作業に携わりました。緊急時で規格にばらつきがある鋼管杭に合わせて設計するのに苦労したのを覚えています。

 若い時から責任ある立場で仕事をさせてもらいました。技術的なことだけでなく、仕事に対する責任感などを養い、逃げたり楽したりすると逆に大変になることも学びました。細かいところでけちらず、作業員を中心に働きやすい環境を整えることが、円滑な現場運営につながります。

 30代の7年間を過ごした横浜支店で学んだのは、発祥の地で他社に負けないことはもちろん、当社だけ得するのではなく、周りにも目配りすること。当社社員として仕事に対する根本的な部分を教えてもらいました。

 土木の仕事は人の生活とつながり、暮らしを助ける。だからこそ、より良いものを造り、後世に恥ずかしくないものを残すことがわれわれの使命です。若い人には頭で考える前に、体験からいろいろ学んでほしい。体で覚えたことはいつまでも忘れません。

入社1年目、ケーソン製作のため秋田港に停泊していたFDで

 (かわもり・さとし)1987年室蘭工業大学工学部土木工学科卒、東亜建設工業入社。東北支店次長、土木事業本部技術部長(現任)などを経て、2020年4月から現職。北海道出身、57歳。

2021年4月19日月曜日

【回転窓】チューリップと青空と編隊

  いただいた球根から育てた5株のチューリップが咲きそろった。イタリアのスポーツカーのような赤に黄が差し色。かがんで見てくれた小学1年生になったばかりの児童の姿がほほ笑ましかった▼チューリップは気温に反応する傾熱性が特徴。昼と気温差のある夜には花が閉じるが、咲いたままの日がずいぶんと増えた。季節は着実に進んでいる▼チューリップが咲き誇り、工夫を凝らして飾られる富山・砺波チューリップ公園。今年のチューリップフェアは立山黒部の「雪の大谷」を模した高さ4メートルの回廊や、3段植えのオランダ風花壇などが登場する。その上空を航空自衛隊のブルーインパルスが22日に展示飛行する▼70回を迎えるフェアの開幕と富山駐屯地の拡張工事竣工を記念するとともに、新型コロナウイルスに対応する医療従事者と関係者、県民に感謝を込めて。富山県を飛行するのは初めてという▼東京を飛んだ昨年5月29日には多くの人が感謝の気持ちを込めて空を見上げた。穀物の成長を促す恵みの雨が降る二十四節気の穀雨の季節だけれど、色とりどりの花と青空に6機編隊が映える天気になるよう祈っている。

【3連アーチ橋をスライドし継続利用】栃木県ら、中橋(足利市)架替事業に着手

 栃木県と足利市、関東地方整備局の3者は2021年度、渡良瀬川に架かる「中橋」(足利市)の架け替え事業に着手する。災害対策を強化するため橋の架け替えと堤防のかさ上げを同時に実施する計画。21年度は詳細設計と橋梁下部工の着工を目指す。発注主体や入札契約手続きの時期などは未定。3者で構成する「渡良瀬川中橋架替に関する連絡協議会」で詳細を詰める。

 中橋の所在地は通2。1936年に架けられた3連アーチは市を代表する景観として親しまれている。橋長は約300メートル、県道足利千代田線の一部として県が管理している。

 昨年7月に3者で合意した基本方針によると、現在の橋の3連アーチ部分を下流側にスライドし、歩行者と自転車の通行路として再利用する。現在の位置に新しい橋梁を架設し自動車の通行空間とし、同時に堤防をかさ上げして水害発生に備える。工事方法や迂回(うかい)路の確保などは詳細設計で詰める。接続道路を含めた計画延長は640メートル、事業費は約107億円を想定する。

 中橋周辺の堤防高さは国の計画に対して左岸側が約3メートル、右岸側も約2メートル低い状態にある。渡良瀬川で大規模な洪水が発生した場合、市街地で浸水被害が起こる可能性がある。

 同局は事業実施の前段階として19年度に「R1中橋橋梁及び取付道路予備設計業務」を八千代エンジニヤリングに委託。同業務の成果などをも踏まえ、20年7月に「渡良瀬川中流部の流下能力向上対策における計画段階評価検討委員会」で事業の実施を決めた。

【ダイナミックで美しい姿切り取る】写真家・山崎エリナさん、電気炉製鋼に焦点当てた写真集発刊

  写真家の山崎エリナさんが電気炉製鋼の現場にスポットを当てて撮影した作品を収めた写真集『鉄に生きる~サスティナブルメタル電気炉製鋼の世界~』が、グッドブックス(東京都中央区)から出版された。日本の鉄鋼技術を支える姿に密着して、ダイナミックで美しい姿を切り取った。

 原料のスクラップの山から、効率的な溶解、不純物の濃度を短時間で下げる精錬、圧延など各工程を撮影。「鉄と向き合う人たちのまっすぐな姿勢を閉じ込めた」(山崎さん)。品質の高い鉄製品を生み出す職人技や誇りを伝える内容となっている。

 銑鉄製品の製造などを手掛ける北越メタル(新潟県長岡市、棚橋社長)が撮影に協力した。山崎さんは、インフラの維持管理に密着した写真集「インフラメンテナンス~日本列島365日、道路はこうして守られている」で、インフラメンテナンス大賞の優秀賞を獲得した。その出版記念写真展に同社役員が足を運んだことが撮影につながったという。定価は2420円(税込み)。

2021年4月16日金曜日

【東大・酒井雄也准教授が開発】接着成分使わず砂の硬化体製造、月面基地建設も視野に

  東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授は、触媒を使って砂同士を直接接着し、硬化体を製造する技術を開発した。

 これまでコンクリートの主材料として適さなかった形状の砂なども活用できるようになり、場所を問わず建設材料の調達が可能になる。月面など地球外で基地を建設する場合も、現地の砂を使って比較的省エネルギーで建設材料を製造できる。

 開発した技術では砂、アルコール、触媒を密閉容器に入れて加熱・冷却し、砂の化学結合を切断・再生すると硬化体を製造できる。セメントや樹脂などの接着成分は不要。製造後に生じるアルコールと触媒の廃液は再利用できる。

 硬化体を製造できるのは砂、砂利、ガラスなどの二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする材料。これらの材料は地球上だけでなく月面や火星でも入手できるため、資源の枯渇を回避できる。製造に必要なエネルギーは従来よりも削減できる。例えば月面の砂を使って建設材料を製造する場合、既存技術では1000度以上の熱で溶融する必要があった。開発した技術は240度程度で製造が可能という。温室効果ガスの排出抑制にもつながる。

 主要な建設材料であるコンクリートはセメント、砂、砂利に水を加えて製造する。コンクリートに使う砂や砂利は世界的に不足しており、多くの国で輸出が禁止されている。また、砂の形状によってはコンクリートへの活用が困難な場合もあり、建設材料の確保が課題となっていた。

【2棟総延べ18万㎡、総投資額1100億円】大林組ら5社、MM21地区53街区開発の工事着手

  大林組ら5社グループは14日、横浜市西区で計画する「みなとみらい(MM)21中央地区53街区」の建設工事に着手した。ホテルやオフィスなどが入る2棟総延べ約18万平方メートルの複合ビルを建設する。設計・施工は大林組。24年3月末の完成を目指す。

 大林組以外のメンバーは京浜急行電鉄、日鉄興和不動産、ヤマハ、みなとみらい53EAST。同事業は都市再生特別措置法に基づく民間都市再生事業計画の認可を受けている。建設地はみなとみらい5の1の1ほか(敷地面積2万0620平方メートル)。横浜高速鉄道みなとみらい線の新高島駅に近接する。

 建物はWESTとEASTの2棟構成。WEST棟は地下1階地上30階建て塔屋2階で、1~3階に店舗が入居し4階と25階が共有スペース。5~24階がオフィス。26~30階にホテルが入る。高さは約158メートル。

 EAST棟は地下1階地上16階建て塔屋1階。1~3階に店舗、オフィス、オープンイノベーションスペースなどが入り、4階は共有スペース。5~15階がオフィスになる。高さは約90メートル。2棟の総延べ床面積は18万3132平方メートル。総投資額は約1100億円を想定している。

 隣接する街区とつながるペデストリアンデッキや、魅力あるコモンスペース(広場状空地)も整備。街全体の価値を高め、にぎわい創出につなげる。

【公開日は5月28日】日本設計、YouTubeで熊本城天守閣の復旧技術など発信へ

 日本設計は、熊本地震で被災した熊本城(熊本市中央区)の天守閣復旧を記念し、5月28日に動画投稿サイト・ユーチューブで内部を公開する。同社を含む復旧に携わった専門家が集結し、熊本城の歴史や修復工事で採用された技術や知見を披露する。来訪者が工事の進捗(しんちょく)を見学する新設の特別見学通路も紹介する。

 2016年4月に発生した地震で、熊本城の石垣は7万9000平方メートルに達する総表面積のうち、約3割に当たる2万3600平方メートルが崩落した。天守閣を含め甚大な被害に見舞われた熊本城の復旧で同社は修復設計を担当。地域のシンボルである熊本城の来訪者に「開かれた復旧工事」を見てもらうため、特別見学通路の設置も提案した。

 公開する動画タイトルは「熊本城の過去・現在・未来」。26日に一般公開が始まる天守閣の復旧を記念し、天守閣の内部空間や見学通路の映像を配信する。設計に携わった同社と施工を担当した大林組の社員ら関係者がパネルディスカッションを行う。時間は午後4~6時。参加無料。日本設計のユーチューブチャンネルで視聴可能だ。

【レーダードームの設置支援など担当】飛島建設・後藤猛氏が南極観測隊夏隊から帰国

  第62次南極観測隊(夏隊)のメンバーとして南極の昭和基地に派遣されていた飛島建設首都建築支店の後藤猛氏が、任務を終えて2月に帰国した。参加は今回で3回目となる。新型コロナウイルスの影響を受け、現地での活動期間は約1カ月と例年の1カ月半~2カ月よりも短縮した。

 現地では「今までで一番天候に恵まれた」(後藤氏)こともあり、老朽化建物の解体などといった作業を順調に進捗(しんちょく)させた。

 夏隊のうち、設営部門(土木・建築、現場監督)の隊員として参加した。メインで行った作業は環境科学棟と観測倉庫の解体工事。倉庫は全ての建屋の解体を、環境科学棟は床部分を残して解体を完了した。

 新設する降水レーダードームの設置支援工事では、国内で仮組みした半円形のドームを現地で設置。八角形の基礎を構築し、その上にドームを設置した。作業中は設置場所そばのヘリポートで空輸活動が行われていたことから、互いに緩衝しないようスケジュールを調整しての作業となった。


 通常、南極での作業は強風などの悪天候で中断することも多い。加えて今回は約1カ月と例年よりもタイトスケジュールとなったが、天候で作業を中断することがほとんどなく、作業に専念できた。後藤氏は「(観測隊に参加したことで)人脈の広がりができた。これは宝物」と振り返った。

2021年4月15日木曜日

【92年前に完成のモダニズム建築】東京拘置所旧庁舎保存改修(東京都葛飾区)、施工は清水建設に

保存・改修する東京拘置所旧庁舎(法務省矯正局提供)

  法務省は、92年前に完成しモダニズム建築の一つとして知られる「東京拘置所旧庁舎」(東京都葛飾区)の保存に向けた改修工事の施工者を16億8630万円(税込み)で清水建設に決めた。9日に一般競争入札(WTO対象)を開札した。入札には清水建設と竹中工務店の2社が参加。2回の入札後、同社の入札価格が予定価格(契約締結後公表)を上回ったため、不落随契へ移行した。

 工事件名は「東京拘置所旧庁舎保存改修工事」。東京拘置所の旧庁舎は、前身の小菅刑務所の管理棟として旧司法省(法務省)の技師だった蒲原重雄(1898~1932年)が設計し、建設工事は受刑者が担う形で29年に完成した。工事では旧庁舎を構成する西棟(RC造3階建て延べ2013平方メートル)、東棟(S造3階建て延べ1295平方メートル)の耐震補強と改修を行う。

 建築と設備を一括で任せる。外塀の補強や外構も整備する。工事で使用する主な資機材は、建築のコンクリート270立方メートル、鉄筋19トン、鉄骨80トン、ガラス1050平方メートルなど。所在地は小菅1の35の1(敷地面積14・9ヘクタール)。工期は2022年3月11日まで。改修の実施設計は佐藤総合計画が担当した。

 旧庁舎は白鳥が羽ばたくような意匠が特徴的な建物で、1999年には「DOCOMOMO japan」(ドコモモ・ジャパン、代表・渡邉研司東海大学教授)の「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定されている。

【昭和を再現、二リューアルに100億円投資】西武園ゆうえんち(埼玉県所沢市)、5月19日にグランドオープン

 西武鉄道と西武園ゆうえんち(埼玉県所沢市、藤井拓巳社長)は、リニューアルしている「西武園ゆうえんち」(埼玉県所沢市)の再開業日を5月19日に決めた。

 2020年の開業70周年を記念して過去最大規模のリニューアルを実施。約100億円の総事業費で新アトラクションの導入などを実施している。施工は西武建設が担当している。

 藤井社長は13日に東京都内で会見し「懐かしいけど新しい、新しいのに懐かしい」と新たな遊園地のコンセプトを説明。「多くの方の心をエモーショナルに揺さぶり、温かい幸福感を感じてもらえる場所になることを願っている」と話した。

 遊園地のエントランスに直結し、1960年代の日本をイメージした「夕日の丘商店街」を新たに整備する。合計30の店舗や、青果店の店主や交番の警察官など商店街の住人に扮(ふん)したスタッフを配置し、来場者を巻き込むライブ・パフォーマンスを展開する。

公開したリニューアル後のキービジュアル
(TM&ⓒTOHO CO.,LTD.ⓒTEZUKA PRODUCTIONS)

 商店街を北に進んだエリアには「レッツゴー!レオランド」が誕生する。漫画家・手塚治虫の作品「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」に登場するキャラクターがテーマのエリア。四つのライド・アトラクションや、巨大すごろくなどで来園者に楽しんでもらう。

 園内の西側には「ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦」を開業する。映画「ゴジラ」をテーマとした世界初のライド・アトラクションとなる。映画監督の山崎貴氏が手掛けた映像と緻密に設計されたライドの動きを組み合わせ、スリルと爽快感が味わえるという。

 西武園ゆうえんちの所在地は山口2964。西武鉄道山口線西武園ゆうえんち駅に隣接する。敷地面積は約20万平方メートル。リニューアル後はアトラクション20施設、飲食施設12店舗の規模となる。

【インフラ復旧が大幅に進展】熊本地震から5年、「創造的復興」見据え布石も

  熊本地震の発生から5年を迎えた。熊本県と県内市町村の公共土木施設の災害復旧工事はほぼ完了。大規模斜面崩壊により被災した南阿蘇村の道路や鉄道は開通し、阿蘇地域へのアクセスは回復・強化された。熊本城は天守閣の復旧工事が終わり、より強靱で魅力ある施設に生まれ変わった。「創造的復興」の実現に向け、将来の発展を見据えたプロジェクトも動きだしている。

 県によると熊本地震とその後の梅雨前線豪雨などで被災した公共土木施設の16年発生災害復旧事業の県・市町村発注工事は2月末現在で4897件のうち4893件(99・9%)が契約を終え、4837件(98・8%)が完了した。

 被災した市町の庁舎は20年度までにすべて建て替えに向けた工事が始まり、県は新たな防災拠点「(仮称)県央広域本部・防災センター合築庁舎」の整備に1月着工した。復興のシンボルである熊本城は天守閣の復旧工事が完了。耐震性能強化と併せてエレベーターを新設し、展示内容も熊本地震の被災を加えて刷新された。26日から一般公開される。

 阿蘇地域では南阿蘇村立野地区の斜面対策工事が完了し、JR豊肥本線が20年8月に全線運転を再開した。同10月には国道57号の現道部、災害復旧事業として現道北側で整備が進められていた「国道57号北側復旧ルート」が同時開通した。

 架け替え工事が進められていた国道325号の新たな阿蘇大橋も3月に開通。九州を代表する観光地の一つである阿蘇地域へのアクセスルートの待望の復活に、蒲島郁夫熊本県知事は「観光や産業の復活・再生に大きな効果をもたらす」と期待する。

 同村では崩落した阿蘇大橋を震災遺構として保存する工事が21年度に計画されるなど、被災の記憶を伝承する取り組みも始まっている。

 大きな被害を受けた益城町では県道熊本高森線の4車線化や復興土地区画整理事業が順調に進む。町内では20年12月から1月にかけて東海大学の新キャンパス、民営化された阿蘇くまもと空港の新旅客ターミナルビル、菓子メーカーの新工場などが相次いで着工した。

 県は空港周辺地域に大学の学術機関や企業の研究開発部門などを集積し新産業創出拠点を形成するプロジェクトを始動。コロナ禍の東京一極集中から地方分散への転換を好機と捉え、米国のシリコンバレーの熊本版を目指す。


2021年4月13日火曜日

【回転窓】スポーツが与える感動と喜び

  米ジョージア州のオーガスタで行われていた男子ゴルフのメジャー大会、マスターズ・トーナメントで松山英樹選手が初優勝した▼日本男子のメジャー制覇は初めて。月曜日の朝、出勤時間とにらめっこしながらテレビ中継を見た方も多かろう。自身もマスターズに何度も挑戦し厚い壁に阻まれてきた番組解説の中嶋常幸さんは、涙で声を詰まらせながら「おめでとう」と快挙を祝福していた▼白血病から復帰し東京五輪の代表選考も兼ねた日本選手権で五輪出場の内定を勝ち取った池江璃花子選手。右ひじのけがを克服し、大リーグで投手と打者の二刀流を実現したエンゼルスの大谷翔平選手。血のにじむような努力と不屈の精神で偉業を成し遂げるアスリートの姿は多くの人に感動と喜びを与える▼大きな大会やプロの試合でなくても、スポーツに打ち込み必死になる姿を見ると心から応援したくなる。子どもの運動会、サッカーや野球の試合。わが子を必死で応援しついつい大きな声を出してしまい先生や審判にとがめられてしまう親御さんの気持ちはよく分かる▼偉業を達成した松山選手。さらなる飛躍を陰ながら応援したい。

【グレーと紺のカラーリングが印象的】日本国土開発、35年ぶりにユニホーム刷新

  日本国土開発がユニホームを35年ぶりにリニューアルする。10日に迎えた創立70周年記念事業の一環。フルハーネス安全帯の着用に対応したデザインにしたり、熱中症対策としてファン付き作業服をラインアップに加えたりする。女性用ユニホームも初めて製作した。6月から順次切り替えていく。

 リニューアルしたのは長袖シャツと秋冬ブルゾン、春夏・秋冬用のパンツ。ブルゾンとパンツのポケット位置は、フルハーネス安全帯を着用していても使えるよう考慮した。背面の反射材もハーネスが当たらない位置にして暗所での安全性を高めた。現場でタブレット端末を使用する機会が増えているため、ブルゾン前面に8インチの液晶タブレットが収納できる大型ポケットを設けた。

 生地には二酸化炭素(CO2)排出量の削減に寄与する植物由来PET生地を採用。SDGs(持続可能な開発目標)の理念に沿った環境配慮型のユニホームにした。

【記者手帖】驚き桃の木山椒の木

 スポーツは人に感動を与えるとよく言われる。自分の場合はスポーツは人をびっくりさせるだった。第93回選抜高校野球大会、俗に言う「春の甲子園」が1日に神奈川の東海大相模高校の優勝で幕を閉じた。毎年楽しみにしているほどの熱狂的な甲子園ファンではないが、出身県の出場校は気に掛けている◆今回の出場校を見て驚いた。自分が高校生時代は女子校だった高校が出場していたためだ。共学になったのは5年前という。創部から日が浅いのに、甲子園出場に導くとは優れた指導者がいるものだと感心した◆監督の名前を見ると見覚えがあった。記憶を巡らせると小学校の同級生と一致した。自分が所属していたスポーツ少年団とは違い、彼はリトルリーグに所属していた。中学、高校、大学と野球を続け、他県の高校で長く監督を務めていたようだ◆惜しくも1回戦で敗れたが、最終回に1点差まで追い詰める粘り強さを見せた。今後の活躍が楽しみだ。まもなく東京五輪。開催までに紆余(うよ)曲折あったが、感動や驚きに満ちあふれた大会になることを望む。(田)

2021年4月12日月曜日

【三菱地所とTBSHD、2棟総延べ22万㎡規模】赤坂二・六丁目地区開発(東京都港区)の環境アセス書案作成

 三菱地所とTBSホールディングス(HD)は、東京都港区で計画する複合開発「(仮称)赤坂二・六丁目地区開発計画」の環境影響評価(環境アセス)書案をまとめた。

 総延べ約22万平方メートル規模となる「東館」「西館」の2棟を建設する。環境影響調査業務と設計は三菱地所設計が担当。2022年度から準備工事に取りかかる。西館が27年度、東館は28年度の完成を目指す。

 計画地は赤坂2の14ほか(敷地面積1万4200平方メートル)。既存のオフィスビル「国際新赤坂ビル」の東館と西館をそれぞれ建て替える。

 東京都庁などで9日に縦覧を開始した評価書案によると、新東館は地下4階地上44階建て塔屋1階延べ17万9000平方メートル。最高高さは約240メートルとなる。低層部に商業、業務機能を高層部に配置する。新西館の規模は地下2階地上23階塔屋1階建て延べ4万2000平方メートル、最高高さ約120メートル。劇場やホールを低層部に配置する。高層部にホテルが入る。2棟とも構造は地下SRC・RC造地上S造。約500台分の駐車場を設ける。

 ビル建て替えに合わせて地域冷暖房施設を整備する。約6400平方メートルの面積を計画する緑化計画などで、生物多様性の確保につなげる。東京メトロ赤坂駅にアクセスできる地下コンコースを設け、歩行者動線を拡充する。事業は国家戦略特別区域会議で、都市再生プロジェクトにエントリーしている。今年にも都市計画手続きを終える見通しだ。

【レストランや休憩所など整備】飛鳥山公園(東京都北区)Park-PFI、大日本コンサルグループに

 東京・北区は「飛鳥山公園の魅力向上事業(公募設置管理制度導入)」の事業者に大日本コンサルタントら4者グループを選定したと8日公表した。

 Park-PFI(公募設置管理制度)を採用し園内を再整備。レストランや休憩所なども設ける。月内に事業実施の基本協定を結ぶ。5月以降、設計や工事などに入る。開園は2022年度を予定している。

 グループの構成員は日比谷アメニス、内藤ハウス、東京北区観光協会の3者。提案した事業コンセプトは「Comingle飛鳥山~彩り豊かな生活を楽しむ王子地域の社交場~」。園内にレストラン(平屋約200平方メートル)を設け、休憩所なども整備する。広場や通路、花壇、ベンチなどを配置。トイレもリフォームする。

 飛鳥山公園の所在地は王子1の1の3。敷地面積は7・38ヘクタールで1873年に開園した。園内には渋沢栄一の旧邸宅の一部「旧渋沢庭園」をはじめ、史料館や博物館などもある。

【凜】東京・世田谷区庁舎整備担当部長・佐藤絵里さん

  ◇愛着ある庁舎と前へ◇

 地域特性を生かした建築を理想に大学院で熱環境の研究に取り組んだ。街が形成されていく現場に関心を持つようになり、さまざまな街の顔を持つ世田谷区の採用試験を受けた。建築家・前川國男(1905~86年)が設計した思想あるたたずまいの庁舎も魅力だった。

 業務に対する考え方が変わったのは国土交通省への出向がきっかけ。国の立場で見ると地方の実態はどうしても見えにくい。基礎自治体の現場で感じる問題意識の大切さを痛感。区役所に戻ってから密集市街地の改善事業を担当し、その思いはさらに強くなった。

 例えば道路の拡幅工事は多様な背景を持つ住民との調整が必要になる。土木工事などハード対策に目が向きがちだが、沿道にある一軒一軒と対面しながら「福祉や環境、産業、さまざまな視点を持って行う総合的な仕事」だと実感した。

 現在は庁舎の建て替え事業を担う部署で陣頭指揮を執る。区への就職を決めた際の原点の改築を任され、「まさか自分が担当することになるとは…」と巡り合わせに思いをはせる。東日本大震災から10年。現庁舎に愛着はあるが「大きな転換期」として整備の必要性を説く。

 新庁舎は災害対策拠点としての耐震性、多様化する働き方や区民ニーズに対応する柔軟性を備える。7月に着工を控え、区民自治の拠点を目指して新庁舎の仕事に全力を注ぐ。

 (さとう・えり)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】寿建設「快適さと動きやすさ重視」

  2年前に社内の業務改善提案制度でユニホームの刷新を求める意見が提出されたことを受け、1日から新しい作業服を導入した。全面的変更は25年以上ぶり。これまでより柔らかい素材を採用し、快適な着心地と動きやすさを重視した。

 緑色がメインだった色調も変更。コーポレートカラーの青色を基調にした。左肩には、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のロゴを縫い付け、目標達成に貢献する企業姿勢を打ち出した。

 企業用ユニホームの企画・販売などを手掛けるユニフォームネット(東京都千代田区、荒川広志社長)、福島県高等理容美容学院の協力を得てデザインを検討。コスト面でオリジナルのデザインを導入するのは難しいと判断した。

 既製デザインの中から最適な上着とシャツ、ズボンの組み合わせを同学院の学生9人に提案してもらい、昨年4月の社員大会で全社員による投票で決定。ユニホームの一新に合わせ、女性社員の服にも青色を基調とするリボンタイを採用した。森崎英五朗社長は「コロナ禍で大変だが、ユニホームの刷新を機に前進していきたい」と話している。

【駆け出しのころ】東鉄工業執行役員内部統制室長・小林邦夫氏

  ◇それぞれの現場で「一所懸命」◇

 長男で地元志向が強かったこともあり、当初は内定をもらった栃木の建設会社に就職しようと思っていました。実家の近所に住んでいた当社宇都宮支店(当時)の方に話を伺う機会があり、もう少し広いエリアで仕事をすることへの関心が強まりました。

 昔は転勤が少なかったことから、入社から19年異動なく宇都宮支店で勤務しました。最初の現場は渡良瀬遊水地の護岸工事。現場所長や主任も30歳以下の若いチームの一員となり、協力業者の方々との宿舎暮らしもアットホームな雰囲気ですぐに順応できました。

 仕事では測量の怖さと大切さを学びました。洗掘防止のためのシートパイルを打つ際、高さと通りを明確にする丁張りがいつの間にかずれていたことに気付かず、打ち込み作業の途中で所長に指摘されました。周辺が軟弱地盤であり、くい打ち用の重機の走行によって地盤が動いたことが判明。幸いにも打ち込んだシートパイルは基準内に収まっていたので事なきを得ましたが、学校では教わらないことが現場では起きるのだと肝に銘じました。

 2年目以降、道路や鉄道、河川などさまざまな現場を経験してきました。特に線路下に道路などを通す横断工事の現場勤務が多く、各現場で異なる特殊工法を経験できたのは技術者として大きな財産になったと思います。

 宇都宮外環状線をJR宇都宮線の下に通す工事は、30代後半で主任として勤務した思い出深い現場の一つ。県が開通時期を対外的に発表し、線路下とアプローチ部周辺の百数十メートルの区間を20カ月で完工させなければならないという厳しい工程となりました。

 ライフラインや他の工事との調整を円滑に進める上で、地元でさまざまな工事に従事しながら築いた多分野の方々とのつながりが生きました。時間がない中でヤードを確保するために工事用桟橋を設置したり、各工種を無駄なく回す施工サイクルを構築したりするなど、工期短縮に知恵を絞りました。

 対象区間の事業を受託したJR東日本の東京工事事務所は、普段から大きな企業と付き合っており、小さな地方支店にはやれないのではないかといった雰囲気を感じました。地方でも技術力で負けていないところを見せてやろうと発奮し、無事に開通に間に合わせることができました。

 現場ごとに仕事内容や施工環境、事業者も異なります。その場その場で誠実に「一所懸命」やることを心掛けてきました。でき上がった道路などを家族と通った時はうれしかったです。

 入社3年目ごろから一人で現場を任されることも多く、苦しかったですが技術者として力が付きました。若手にも悩みながら、まず自分で考えてほしい。その積み重ねが自信となり、やりがいにもつながります。

入社1年目、宇都宮支店の社員旅行で
(前列右端が本人)

 (こばやし・くにお)1978年芝浦工業大学工学部土木科卒、東鉄工業入社。執行役員八王子支店長や東鉄技術学園長、東京土木支店長などを経て2020年6月から現職。栃木県出身、65歳。

2021年4月9日金曜日

【2棟総延べ29万㎡規模】八重洲二丁目北地区再開発、街区名称は「東京ミッドタウン八重洲」に

 三井不動産は、参加組合員として参画する「八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業」(東京都中央区)の街区名称を「東京ミッドタウン八重洲」に決めた。三井不が展開する大型複合施設ブランド「東京ミッドタウン」として、3カ所目の施設となる。

 2棟総延べ約29万平方メートルのビルを整備する大規模プロジェクト。2022年8月末の竣工を目指す。

 対象区域はJR東京駅の東側に近接する八重洲2ほか(区域面積約1・5ヘクタール)。事業では区域をA-1とA-2の2街区に分け、1棟ずつ複合ビルを整備する。建物はA-1街区が地下4階地上45階建てペントハウス2階延べ約28万3900平方メートル、A-2街区は地下2階地上7階建てペントハウス1階延べ約5850平方メートルの規模となる。

 首都圏の大規模オフィスとして初の「完全タッチレスオフィス」を実現する。顔認証によるオフィス入退館システムなどを導入し非接触で執務室に入れる。入居テナントのニーズに応じて、太陽光発電など再生可能エネルギーが使用できるサービスも提供する。

 事業の施行者は八重洲二丁目北地区市街地再開発組合。コンサルタントは都市ぷろ計画事務所。ビルの基本設計・監理は日本設計、実施設計は日本設計と竹中工務店。竹中工務店が施工している。マスターアーキテクトは、米デザイン事務所のピカード・チルトンが手掛けている。

【工事現場の土ぼこりをシャットアウト!!】鹿島、粉じん飛散防止材を開発

  土ぼこりをシャットアウト--。鹿島が生分解性と耐候性を兼ね備えた液体状の粉じん飛散防止材を開発した。土に散布すると翌日には表土部分が融着融合して固い膜を形成する。紫外線や降雨、強風などへの耐候性に優れ約半年間効果が持続する。

 水生生物に対する安全性は確認済み。現場周辺環境への影響を低減できる。土壌微生物が防止材を分解するため、時間が経過すると通常の土に戻る。価格は既製品と同程度。代理店を通じて販売している。

 開発した「MAK(マク)フォーマー.20」の原料には、ポリ酢酸ビニールや安定化材など安全な材料を使用している。液体と粉体になっており水を加えてかき混ぜ、エンジンポンプを使いホースで散布する。


 千葉県市川市の工事に適用し有効性を確認した。土壌被膜の形成で約5カ月の試験期間に粉じん飛散量が基準値を大きく下回ったという。今後はのり面の侵食防止や種子吹き付けによるのり面緑化工事など、より広い用途で活用を目指す。

2021年4月8日木曜日

【回転窓】復興のシンボル

  2016年4月の熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城。戦国武将の加藤清正が築城した難攻不落の名城として知られ、震災後は「復興のシンボル」として修復作業が進む▼天守閣の復旧工事が完了し、大型連休前の26日から一般公開が始まる。全面リニューアルでエレベーターなどバリアフリー対応も徹底し、多くの人たちが最上階の展望室に上れるようになる▼地震発生から10日後に被災地を取材で巡った時、熊本城は立ち入り禁止で復旧のめども立たない状態だった。石垣が崩れ、倒壊寸前のところを角石だけで支えていた「飯田丸五階櫓」は今春、解体作業を終え石垣の積み直し作業に着手するという▼熊本市が昨年12月に実施したアンケートによると、「復興が進んでいると感じる」「どちらかというと感じる」と回答した人は9割を超えた。一方、約7割の人が「地震の記憶や教訓を忘れがちになっている」と答え、震災5年を前に風化が懸念される▼熊本城の復旧が被災者らの心の支えになってきた面もあるだろう。震災を風化させず、防災・減災の推進に向けて「復興のシンボル」の果たす役割はさらに大きくなる。

【ギャラリーを併設、くつろぎ空間創出】コメダ、都立浮間公園(板橋区、北区)に新店舗出店

  東京都は板橋、北両区にまたがる都立浮間公園の一部敷地を活用し飲食店を設置・運営する民間事業者に、喫茶店チェーンのコメダ(名古屋市東区、臼井興胤社長)を選定した。

   事業者選定手続きには2者が参加した。都と同社は今後基本協定を結び、2022年6月までの店舗開業を目指す。

 コメダの提案によると、浮間公園のシンボルとして親しまれている風車と調和するデザインを建物に採用。飲食店舗だけでなく休憩所を兼ねたギャラリーも設け、来園者がくつろげる空間を創出する。生ごみなどを堆肥として再利用し、店舗前にチューリップの花壇を整備する。

 都が都立公園に新たなにぎわいを創出する「多面的活用プロジェクト」の一環となる。木場公園(江東区)では、東急コミュニティーが整備・運営事業者となる飲食店が昨年8月に開業した。

【オペレーターの負担軽減、レンタルも視野】鹿島と竹中工務店、タワークレーン遠隔操作システムを初導入


  鹿島と竹中工務店はアクティオ、カナモトと共同開発したタワークレーン遠隔操作システムを東京都内の建築現場に導入した。現場内のコンテナハウスに、操縦席や確認用のモニターなどを据え付け、従来の運転席と同じように操作できる環境を整備。建設資材の揚重への活用を始めた。タワークレーンの遠隔操作の実工事への適用は国内初。今後は、大阪市内の建築工事に適用するほか、清水建設を加えた3社連携で普及・展開を図る。レンタルを見据えて3台の専用コックピットを製作中という。

 開発したタワークレーン遠隔操作システム「TawaRemo(タワレモ)」は、タワークレーンと同じレバーなどを採用して操作性を再現。前方やつり荷の状態、クレーン後方部、ワイヤなどを画面で見ながら作業する。荷重や異常信号などを表示するモニターも、タワークレーンと同様の物を備えた。今回導入したのは軽量の簡易タイプだが、クレーンの揺れに合わせて振動する専用コックピットも用意する。

 タワークレーンの運転席は高所にあり昇降が必要になる。一日中高所で拘束され身体的負担も大きかった。遠隔操作を取り入れることで作業環境が改善でき、操作技能の伝承もしやすくなる。

 工場での動作確認や安全性検証とともに、労働基準監督署による検査を経て実現に至った。鹿島と竹中工務店、清水建設による技術連携の一環となる。今後は、異なる現場で稼働する複数のタワークレーンを集約して操作する拠点構築を見据える。「技術的には固まっており、徐々に事例を増やしたい」(鹿島)、「自動化もスタートしている。着々と共同で開発していく」(竹中工務店)としている。

【黒川紀章氏設計、メタボリズム理論を表現】工学院大学ら、「カプセルハウスK」(長野県御代田町)を保存再生

カプセルハウスKの外観(山田新治撮影)

 工学院大学ら2者は、建築家の黒川紀章氏(1934~2007年)が所有していた別荘「カプセルハウスK」(長野県御代田町、73年完成)の保存事業を5月に開始する。           生物が新陳代謝する様子をデザインに取り入れた「メタボリズム理論」に基づき、別荘はカプセル状の躯体が四つ突き出た外観を持つ。歴史的価値の高い建築物を保存活用する一環で、工学院大らは一般公開する予定だ。

 保存活用は工学院大の建築学部鈴木俊彦研究室とMIRAIKUROKAWA DESIGN STUDIO(東京都港区、黒川未来夫代表取締役)の2者が担う。RC一部S造地下1階地上2階建て延べ約103平方メートルの規模。黒川氏設計の集合住宅「中銀カプセルタワービル」(東京都中央区、1972年竣工)をほうふつとさせるデザインが特徴だ。

 カプセルは用途や生活様式に合わせて取り外しが可能。別荘は19年から黒川氏の長男である未来夫氏が管理していた。6月には宿泊客も受け入れる。

2021年4月7日水曜日

【回転窓】引っ越しの春

  入学や就職、転勤など春は引っ越しの多い季節。住み慣れた町を離れ、見知らぬ土地での生活はこれから起きる出来事に期待が膨らむ一方で、不安も交錯する▼浮世絵師の葛飾北斎は90歳の生涯を終えるまで、93回引っ越した。転居を繰り返す理由は諸説あるが、有力なのが「掃除ぎらい」。絵に集中するあまり家事をせず、部屋の中が散らかると引っ越した▼遠隔地に居を移すのではなく、生誕地の葛飾郡(東京都葛飾区・墨田区・江東区・江戸川区)の中で、転々と住まいを変えた。3万点を超える作品は、掃除の時間も惜しんで描いたのかもしれない▼作家の津島佑子さんは、北斎の引っ越し癖を小学生のころ伝記で知り、感動したと書いている(『引越』中村武志編、作品社)。自分も引っ越したい。そう思っていた10歳の時転居する。引っ越し前夜、荷造りした段ボールの間で横になったが、その家で起きたことが走馬灯のように思い出され、引っ越しはそれを切り捨てるように思えたという▼引っ越しは単に住まいを変えるだけではない。人の気持ちも新たにする。この春、転居された方に良い出会いがありますように。

【過酷な環境乗り越え設備更新に貢献】関電工、南極観測隊から社員2人が帰国

  関電工の社員で南極地域観測第61次越冬隊の村松浩太さん(参加期間2019年11月~21年2月)と第62次夏隊の正治徹一さん(20年11月~21年2月)が任務を終え、2月下旬に帰国した。

 2人は太陽光発電パネルの取り付けや照明器具の交換などを担当。6日に東京都内の本社で会見し「厳しい環境での作業だったが、貴重な経験ができた」(村松さん)などと語った。2人は営業統轄本部施工品質ユニット技術企画部に所属している。

 2人は情報・システム研究機構国立極地研究所の要請で参加。村松さんは「南極隊に会社が参加していることを知り、挑戦したい」と立候補した。正治さんは「研修時に南極隊の話を聞いて興味を持った」と赴任の経緯を話す。

 南極ではブリザードが吹き荒れることもあり除雪作業を行いながらも、南極の昭和基地内の電気・空調設備の設営や保守管理などを担った。普段の業務では使わない移動式クレーンを駆使して資材の荷揚げや運搬など幅広い業務に当たった。昭和基地には古い設備が多く、蛍光灯の照明器具がある。発電機の容量もあるため照明器具をLED化して発電機の負荷低減に尽力した。

任務を終え帰国した村松さん㊧と正治さん

 南極の業務を通じて村松さんは「他分野の人と関わることで育ってきた環境や考え方、価値観、発想を知れた。刺激になった」と振り返る。正治さんは「限られた時間や道具の中で効率よく作業するにはどうしたらいいか勉強になった」と今後の業務に生かす姿勢だ。

 同社は1986年の第28次観測隊から越冬隊に25回、夏隊で13回、社員を派遣している。現在は上原誠さんが第62次越冬隊に参加している。