2020年11月30日月曜日

【回転窓】星座を横切る未来の現場

 冬の夜空に輝くオリオン座。主要な恒星が七つある砂時計のような星座は、条件が整ったなら、真ん中に並んだ三つ星の下にある大星雲を肉眼でも目にすることができる▼「いつもと違った星座に見えるね」。山深くにあるキャンプ場で、手にしたランタンの明かりをしぼった親子が夜空を楽しそうに見上げていた▼今年は宇宙の明るい話題が多い。米国宇宙企業スペースXの宇宙船「クルードラゴン」が5月に国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングした。今月17日からは再び同社が打ち上げた宇宙船に搭乗した野口聡一宇宙飛行士がISSで長期滞在を開始。ISSは今週末から日本上空で観測できるようになるという▼宇宙探査に関するアルテミス協定への10月署名に伴って、日本の関係機関や企業の対応はさらに加速する見通し。建設関係も複数の企業が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と施工技術や材料研究などに取り組んでおり、動向が注目される▼商業利用の進展に伴って、宇宙が工事現場となる日は着実に近づいている。研究開発が実を結び、工事現場がオリオン座を横切るような未来を楽しみに待ちたい。

【最優秀賞は平安名ひかりさん】群馬県建設業青年経営者部会、イメージアップフォトコンの入賞作決定

平安名ひかりさんの「笑顔の絶えない現場」

 群馬県建設業青年経営者部会(河本尚樹部会長)は、2020年度の「建設業イメージアップ写真コンテスト」の最優秀賞を小林工業の平安名ひかりさんの作品「笑顔の絶えない現場」に決めた。群馬県建設業協会(青柳剛会長)の会員企業から応募のあった58作品から選定した。

 コンテストは、社会資本整備や災害対応といった建設業の社会的な役割のPRとイメージアップ、入職の促進を目的に行っている。

 最優秀賞を除く受賞作品は次の通り。△作品名=会員企業・応募者。敬称略。

 〈協会長賞〉シンクロパワー線路切り替え=河本工業・石川雄一郎

 〈優秀賞〉完成控え急ピッチで進む上信自動車道=木暮組・木暮新△吹付の刃=茂原建設・周東大二

 〈入選〉新技術のICT施工に取り組む若手技術者=宮下工業・柳井俊昭△新入社員同士の打ち合わせ風景=立見建設・城田喜章△太田市の夜と陸上競技場=石川建設・古賀俊樹△谷止工事からこんにちは=萩原工業・石井雅人。

【凜】前田建設天神プロジェクト作業所建築係員・村上枝里花さん

  ◇話題の現場で施工管理に奮闘◇

 1年の研修を経て配属されたのが、福岡市の中心部で進む「天神ビッグバン」プロジェクトの初弾に位置付けられる建築工事。今月上棟し、来年9月の竣工に向けた仕上げに入っていく現場で、段取りや工事写真による記録などを担当している。

 入社3年目。「勉強中」という現場では「次の作業で職人さんたちに何が必要か」を自分なりに考え、準備する。段取りがうまくいけば感謝されるが、失敗すれば迷惑を掛けてしまう。

 仕事での悔しい思いは別の現場などで働く同期に電話で話す。「同じような悩みを共有し合える大切な存在」という。

 北九州・門司の出身。港とレトロな建物が立ち並ぶ大好きな景色を見ながら育った。やがて街づくりに興味を抱くようになり、建築を志すことになった。

 現場での自分の役割はまだ小さい。それでも「いろんな人の手が加わって出来上がっていくことを日々実感する」。それが福岡の新しい街のシンボルとなる。

 将来は「街並み全体を形成するような都市計画にも携わってみたい」という夢を持ちながら、今は目の前にある施工管理の経験を積み重ねていくことにまい進していく。

 食べ歩きが好き。「SNS(インターネット交流サイト)でおいしそうなお店を見つけて休日に行ってみる」。最近は友人と京都の嵐山を訪れ、「お番菜の食べ放題を楽しんだ」とうれしそうに話す。

 (むらかみ・えりか)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】蜂谷工業「100周年で一新、社内外から好感」

  岡山市北区に本社を置く蜂谷工業(蜂谷泰祐社長)は、創立100周年を迎えた2017年に冬用のユニホームをリニューアルした。

 従来のユニホームとは異なる上下のバイカラーが特徴。一目で「蜂谷工業」と分かるスタイルがコンセプト。学生や子供、女性にも好感を持ってもらえるように格好良く、知的に見えるデザインに仕上げている。

 生地は伸縮性に優れ、保温性も考慮した機能素材を採用。ズボンのポケットはタブレットが入るサイズにすることで現場のニーズに対応した。上着に採用したブルーの生地は地元岡山の名産でもあるデニムをイメージした。

 リニューアルに携わった河本達也総務経理部長によると、ユニホームは就職活動のイベントなどで学生に好評という。新ユニホームに込めた思いを「蜂谷工業に入社して第一線で活躍することが夢となるようなユニホームを目指した」(同社)。現場の社員は社外から「遠くから見てもあれは蜂谷工業の社員さんだと分かる。かっこいいデザインですね」と声を掛けられることもあり、「蜂谷工業の一社員としての自覚が一層高まる」と話している。

【駆け出しのころ】青木あすなろ建設常務執行役員大阪土木本店長・田野慎一郎氏

  ◇明日に向かって前進◇

 電力分野で土木の仕事をしていた父親の姿を見ていたこともあり、幼いころから土木構造物は身近な存在でした。大学院では橋梁の構造関係を専門に研究し、橋の中で最も好きなのはアーチ橋。当時まだ一般的でなかったコンピューターによる数値解析手法の一つ有限要素法(FEM)も学びました。

 就職先はゼネコンと決めており、青木建設(現青木あすなろ建設)に入社。現場勤務では大学、大学院で学んだ橋梁の工事に縁がなく、最初の造成現場を除いてすべてダムの工事を担当しました。

 新入社員研修後の勤務地は京都市の洛西地区総合開発の造成現場。約168ヘクタールに及ぶ大規模現場で測量計算、測量、そして墨出しといった一連の作業を繰り返す日々が続き、鶴亀が彫られた墨つぼの使い方は完璧にマスターしました。

 真夏の炎天下での測量作業は想像を絶するほど過酷です。喉が乾きどうしても我慢できず、気付いた時には砂ぼこりを防ぐために現場内を走行していた散水車を追いかけ、まいている水を飲んでいました。その話を聞いた先輩は「散水車の水をどこからくみ上げているかを確認した方がいい」と笑っていました。水の出所は造成地にある調節池。恥ずかしさと合わせ、軽率な行動は改めなければと痛感しました。

 次の配属先は建設省(現国土交通省)が発注した熊本県内のダム現場。約8年勤務しダム建設のいろはを学びました。着任早々、上司から「資格を取れ」「仕事は自分で努力し、誰かが手伝ってくれるとは思うな」「期限に間に合わない仕事は良い内容でも0点、仕事の期限は絶対厳守」と諭されました。初対面だった上司からの言葉にとても戸惑ったのを覚えています。

 経験が乏しい若手だった私は、三つの言葉が意味するところをすぐに理解できませんでした。けれども仕事に取り組む中で重要な礎だと気付くことができました。

 初めてのダム現場は分からないことばかり。落ち込む私に先輩たちは時に厳しく、時に優しく指導してくれました。技術だけでなく私生活でもさまざまなアドバイスをもらい、徐々に落ち込む回数も減りました。

 当時は目の前のことに必死で分かりませんでしたが、今思えばコミュニケーションが非常に良好な現場でした。地元の方々ともよく交流し、さばいたばかりのぼたん肉をごちそうになることも。レアの肉を食べておなかの調子を崩してしまいましたが、先輩たちから初めての地元対応を褒めてもらったのもいい思い出です。

 いつの時代もコミュニケーションを積極的に取り、信頼関係を深めることの大切さは変わりません。今後も若手が落ち込んでいる時「明日に向かって前進」と思える職場づくりにまい進します。

入社1年目、洛西地区総合開発に関連する造成工事の現場事務所で

 (たの・しんいちろう)1988年佐賀大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了、青木建設(現青木あすなろ建設)入社。大阪土木本店九州支店長、同副本店長などを経て2016年4月から現職。福岡県出身、58歳。

2020年11月27日金曜日

【コンクリート表面遮水壁型ロックフィルダムを採用】水機構南摩ダム本体工事(栃木県鹿沼市)、202億円で大成建設に

  水資源機構は25日、栃木県西部で進めている思川開発事業で、鹿沼市に計画する「南摩ダム本体建設工事」の施工者を202億円で大成建設に決めたと公表した。

 2日に一般競争入札(WTO対象、総合評価方式)を開札、低入札価格調査を実施していた。入札には大成建設を含め2社2JVが参加した。年内をめどに契約する予定。予定価格と調査基準価格は契約後に公表する。

 南摩ダム(高さ86・5メートル、体積240万立方メートル、総貯水容量5100万立方メートル)の堤体を建設する。貯水池側のコンクリートが遮水機能を担うコンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム(CFRD)で、水機構が堤体本体にCFRDを採用するのは初めて。工事内容はダム土工、フィル堤体工、選択取水塔工など各一式。工事場所は栃木県鹿沼市上南摩町。工期は2025年3月31日まで。

 思川開発事業は洪水調節や流水機能の維持、水道用水供給を目的に実施。支川の黒川、大芦川とダムをつなぐ導水路や送水路などの工事が進行している。

 入札結果は次の通り。▽業者名=〈1〉入札価格〈2〉評価値(技術点と価格点は契約後公表)。

 ▽大成建設=〈1〉202億円〈2〉60・000▽大林組=〈1〉240億円〈2〉40・441▽熊谷組・日本国土開発・青木あすなろ建設JV=〈1〉242億円〈2〉35・849▽鹿島・戸田建設・竹中土木JV=〈1〉276億2600万円〈2〉26・707。

【定住者1万人めざす】安比高原(岩手県八幡平市)で街づくり構想始動、ホテルや商業施設整備へ

  岩手ホテルアンドリゾート(盛岡市、黒澤洋史社長)は25日、岩手県八幡平市にある日本を代表するリゾート地、安比高原で新たな街づくり構想「バレー構想プロジェクト」を本格始動すると発表した。

 現在建設中のインターナショナルスクールをはじめ、商業施設や定住型別荘、富裕層向けのホテルなどを段階的に整備する。事業完了時期は未定だが、当面の目標として1万人規模の定住人口創出を目指す。

 街づくり構想は、安比高原のグローバル化に対応したリゾート地として進化させるのが狙い。「観光・教育・健康」をコンセプトに据え、インターナショナルスクールや商業施設、定住型別荘、富裕層向けのホテルなどを段階的に整備する。

 現在、第1弾事業として岩手ホテルアンドリゾートの子会社「H.A.デベロップメント」が学校設置者に代わって建設主体となり、英国の名門私立校・ハロウスクールが日本で初めて開校するインターナショナルスクールの校舎や寄宿舎など8棟総延べ約2・5万平方メートルの施設を建設中。設計を大建設計、施工を鹿島が担当している。事業費は非公表。

 岩手ホテルアンドリゾートは現地で38室で構成するラグジュアリーホテルも建設しており、2021年冬に開業する予定。商業や定住型別荘などの整備計画は未定で、建設主体の選定に関してはテナント出店者の誘致活動を進めながら詰めていく。

 安比高原はスキーやゴルフ、温泉などが年間を通じて楽しめる国内有数のリゾート地。国内最大規模の安比高原スキー場や、17年に日本女子プロゴルフ選手権の会場となった安比高原ゴルフクラブ、ホテル安比グランドなど計八つのホテル(計2009室)がある。

【最高速度規制、時速120kmに】新東名の6車線化工事完了、12月22日に全線開通

  中日本高速道路会社が新東名高速道路の御殿場JCT~浜松いなさJCT間で進めていた6車線(片側3車線)化工事が完成し、12月22日午後2時に全線開通する。これに合わせ時速120kmの最高速度規制も本格運用される。

 新東名御殿場JCT~浜松いなさJCT間の約145km区間は2012年に4車線で開通。同社は18年度から6車線化を進めている。土工部は路肩部の土を取り除き、橋梁部とトンネル部はラバーポールを撤去。道幅を確保し、舗装や区画線を整備した。トンネル部は増えた車線に合わせ照明位置も変更した。

 残っていた長泉沼津IC~新静岡IC間(上り線)の約53km、藤枝岡部IC~島田金谷IC間(上下線)の約15kmが完成し、全線が6車線で供用されることでダブル連結トラックやトラック隊列走行の安全確保、物流の効率化、渋滞解消など多くの効果が期待されている。

【回転窓】コロナ禍での可能性

 コロナ禍で音楽業界が苦境に立たされている。ライブ活動の再開を後押ししようと、文化庁や日本芸能実演家団体協議会らがプロジェクトを展開中だ▼シンガー・ソングライターの松任谷由実さんは「ライブは私の人生そのもの」との思いからアンバサダーとして協力。「音楽の灯を絶やさないように一緒に進んでいきましょう」と呼び掛けている▼1979年にリリースされた松原みきさんのデビューシングル「真夜中のドア/stay with me」が、世界で話題になっている。定額制の音楽配信サービスがきっかけ。インドネシアでは1カ月に3万回の再生を記録したそうだ▼都会的な雰囲気が人気を呼んだ「シティーポップス」と呼ばれるジャンルの一曲。山下達郎さんや竹内まりやさんが代表格で、70~80年代に大流行した。それが今、海外で再評価されている▼魅力的なコンテンツであれば国境も時代も超える。生演奏が持つ力も強い。松任谷さんは「リアルでもリモートでもいいからライブに参加してください」と訴える。多様な手段を最大限生かして感染拡大を防ぎつつ、エンターテインメントを楽しみたい。

【現場の職場環境、より快適に】大成建設、3現場に「ウエルネス作業所」を整備

  大成建設がものづくりの最前線になる工事現場の作業所で職場環境を高める取り組みを推進している。「ウエルネス作業所」と名付けた作業所を3現場に整備した。仮設型ワークプレイスと捉え、作業の負担軽減や作業環境の改善、社員と作業員のコミュニケーション促進、心身の健康増進に配慮した快適な空間を創出。生産性やモチベーションの向上、ストレス低減などにつなげていく。

 ウエルネス作業所の取り組みは▽赤坂中学校等整備工事作業所(東京都港区)▽下高井戸調整池工事作業所(同杉並区)▽千葉市新庁舎整備工事作業所(千葉市)-の3カ所で開始した。

 作業所は工事期間などに応じてリース会社に条件や要望を提示し建設する。ウエルネス作業所は設計本部に設置したワーキンググループが参画。作業所の要望に基づく提案やリース会社への指示などを通じ、働きやすさや健康増進を追求した空間づくりを支援する。

 作業所ごとに異なるニーズに対応するため、職場環境の多彩な選択肢「ウエルネスレシピ」を作成。「ボリューム」「プランニング」「エレメント」の3カテゴリーで、100に及ぶレシピから最適な項目を採用する。


 赤坂中の作業所は事務所と売店、作業員休憩所を分棟配置にしてデッキで接続。内部に半屋外で気分転換が可能なサンルーム、男女別のシャワールーム、オープンキッチンなど設けた。

 屋外に外部ワークプレイス「アクティブプラザ」も設けている。コミュニケーションを促したり心地よい空間を生み出したりする工夫を随所に取り入れた。現場からは「ストレスが減り、コミュニケーションも活発になった」などの声が寄せられている。

 同社は社員や作業員へのヒアリング、各作業所の要望に応じたレシピ更新などを通じ職場環境のさらなる改善に取り組んでいく。

2020年11月24日火曜日

【回転窓】働く姿は見られている

  東日本大震災からまもなく10年。発災当時、小学校低学年だった世代も高校生になり進路を考える年ごろになっている▼岩手、宮城、福島での被災体験だけでなく、災害報道に触れたり、被災地を訪ねたりした経験が高校生たちの心に深く刻まれている。国土交通省と建設産業人材確保・育成推進協議会(人材協)が共催する「高校生の作文コンクール」の受賞者のうち、震災が進路を決めるきっかけになった高校生は少なくない▼本年度の国交大臣賞を受賞した淺沼小春さん(岩手県立盛岡工業高校2年)もその一人。「地元に戻って復興に貢献したい」と土木を学び、「10年後の私が見たいのはかつてと同じ風景の故郷ではなく、生まれ変わり活気の戻った町です」と未来を描く▼震災の悲しみやつらさを乗り越えながら夢に向かっていきたいとつづる作文には、被災地の復興に力を尽くす建設業の姿がある。若者たちは建設業の社会的使命を身近に感じながら、将来を託せる仕事かどうかを見ている▼働く人が誇りとやりがいを持ち、生き生きとものづくりに打ち込む。その姿は見られていると、一人一人が意識を持たなくては。

【記者手帖】交通系ICカードとの別れ

 少々遅いのかもしれないが、電車の乗り降りに使用する交通系ICカードがスマートフォンに移行できると先日知った。カードを持ち歩かずに済み、落としてしまう心配もない。アプリでチャージできるため券売機に並ぶ手間も省ける。日頃から取材で電車を使う機会が多かったので、どんなものか試してみることにした◆手続きはいたってシンプル。カード裏面のID番号をアプリに入力した後、スマートフォンをカードの上に置いて数秒間待つだけ。翌日、恐る恐るスマートフォンを改札機にかざすと無事ゲートが開いてホッとした◆スマホのバッテリーが切れてしまった場合はどうなるのか?心配になって調べてみると、予備電源が残っている間はICカードとして使用できるという。停電など充電できない場合の不安は残るが、日常的な使用に支障はなさそうだった◆忘れてはいけないのが機能移行後、ICカードは使用できなくなる点だ。自分もその1人なのだが、SNS(インターネット交流サイト)でも「気付かなかった」という書き込みがちらほら。カード派のユーザーで移植を検討されている方がいたら、くれぐれも注意を。(暉)

2020年11月20日金曜日

【回転窓】激変した就職戦線

  2021年3月卒業予定の大学生の就職内定率が落ち込んでいる。厚生労働、文部科学両省の調査によると、10月1日時点の内定率は69・8%。前年同期比7・0ポイント減で、リーマン・ショック後に次ぐ過去2番目の下がり幅となった▼新型コロナウイルスなどで業績が悪化した企業で採用が絞られたほか、緊急事態宣言などで活動時期が後ろ倒しになった影響もあるとみられる。売り手市場で推移してきた就職戦線がここまで激変するとは▼政府も学生の就職活動を支援する新卒応援ハローワークの活用促進など支援策を展開。加藤勝信官房長官は17日の記者会見で「第2の就職氷河期世代をつくらないよう全力を挙げていく」と表明した▼建設業は、コロナ禍でも比較的堅調に採用を続けている。他産業を目指していたものの、路線変更を余儀なくされた若者が、来春入ってくるかもしれない▼そうした人材には、技術・技能とともに、産業としての存在意義を伝えていくことが不可欠。コロナ禍に見舞われたが、社会を支える仕事に就けて結果的に良かった-。そう思ってもらえるように専門紙として魅力を発信していきたい。

【「ジグザグ乗り」で密回避】文京学院大生がエスカレーターの乗り方提案

 文京学院大学に通う学生がコロナ禍のエスカレーターの安全な乗り方として「ジグザグ乗り」を提案した。1ステップを空けながら左右交互に乗ることで、前後の利用者と間隔は3ステップ空き、密を避ける。

 手すりにソーシャルディスタンスを誘導するデザインも考案。今後はジグザグ乗りによるエスカレーターの安全利用を啓発するとともに、デザインを試行してもらえる場所にアプローチする。

 経済学部の新田都志子教授(流通・マーケティング研究)のゼミに在籍する学生たちは2017年度から「エスカレーター安全利用啓発活動」を展開。デザインの力で「手すりにつかまる」「止まって乗る」など行動変容に取り組んできた。

 本年度は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から「ジグザグ乗り」と「ソーシャルディスタンス誘導デザイン」を考案。利用者の密に対する気持ちを軽減するだけでなく、歩行による転倒や衝突を抑制。左右どちらも気兼ねなく乗れる効果も期待できる。

【豪雨被害受け方針転換】蒲島郁夫熊本県知事、球磨川流域治水で「流水型ダム」要望表明

川辺川ダムの建設予定地。仮排水路トンネルなどは完成している

  熊本県の蒲島郁夫知事は19日、2020年7月豪雨で被災した球磨川流域の治水対策の方向性として「(治水専用の)新たな流水型ダムを国に求める」と県議会全員協議会で表明した。建設中止となっている川辺川ダムの現行計画の「完全な廃止」も国に要望。その上で環境に配慮した流水型ダムと河川整備、遊水地の活用などを総合的に組み合わせた「緑の流域治水」を目指す考えだ。

続きはHP

【笑いの力で土木の魅力伝える】土木学会、漫才コンビ・元気丸を土木広報大使に任命

  漫才で土木の魅力を伝えたい-。11月18日の「土木の日」に合わせ、土木学会(家田仁会長)が漫才コンビ・元気丸を土木広報大使に任命した。任期は2年。元気丸は「土木あるある」や「土木エピソード」といった現場監督の経験を生かした漫才が持ち味。広報大使として、土木への理解を広める活動に力を入れる。

 土木広報大使は「伝わる広報」をキーワードに、同学会が取り組んできた広報活動の一環。学生時代に知り合い、ともに土木の現場監督を経て芸の道を志した元気丸を初代に選んだ。元気丸は広島市出身の水戸竜司さん(32)と北岡一成さん(31)が2014年に結成。呉工業高等専門学校で学び、建設会社で勤務した経験がある。2級土木施工管理技士の資格を持つ。

 18日に東京都新宿区の土木学会で土木広報大使の委嘱式が開かれた。ボケ担当の北岡さんは「大役に抜てきしてもらい、黒部ダムが完成した時のような喜びを感じている」と笑いを誘った。「いったん離れたことで土木のすごさや素晴らしさ、ありがたさに気付いた」と強調。「より多くの方に知ってもらい、土木への理解を深めてもらえるよう、土木の窓口としてしっかり活動したい」と意気込みを語った。

 ツッコミ担当の水戸さんは「好きの反対は嫌いではなく無関心だ」とのマザーテレサの言葉を引用。「土木も関心さえ持ってもらえれば、どんどん好きになってもらえる」と述べた。「1の関心を10、10から100にするよりも、0の関心を1にする方が難しい。漫才や演芸の力は有効に使える。より良い土木漫才に精進し、次も続投したい」と早くも次期大使への意欲を見せた。

 土木の日は1987年に制定された。学会の創立記念日である11月24日までの1週間を「くらしと土木の週間」として、一般市民を対象としたイベントや活動を展開している。

 当たり前の豊かな暮らしを支える土木と市民を結ぶ中心的役割を担うのが2015年に設立した土木広報センター。小松淳センター長は元気丸の2人に対し「いろいろなメディアに出て、土木を広報してもらいたい」と期待を込めた。塚田幸広専務理事は「土木学会は学会という固いイメージがある。土木は楽しいということをどう伝えるかスクラップ・アンド・ビルドで取り組んでいる。突破口を開いてほしい」とエールを送った。

 元気丸はオフィスまめかな所属。土木学会と建設技術研究所が東京都中央区の地域コミュニティーFMラジオ局・中央エフエムで放送している番組「ドボクのラジオ」(通称ドボラジ)にも出演した。

2020年11月19日木曜日

【回転窓】「脱はんこ」騒動

 「脱はんこ」の動きが世間を騒がしている。新型コロナウイルスの感染拡大を機に、押印のために出社するといった旧来のビジネス慣習などを問題視。不要な押印をなくす圧力が一気に高まった▼政府の発表によると、押印を求める行政手続き全1万4992のうち、廃止を決定または廃止の方向としたのは1万4909(99・4%)。押印が必要な手続きは、金融機関への届け出印や印鑑証明が求められる自動車の新規登録などの83に絞られる▼国内有数のはんこ生産地である山梨県では「日本の印章制度・文化を守る山梨県議会議員連盟」が発足した。印章は手続きのデジタル化と共存できるとし、脱はんこに反対を表明。地場産業保護に向けた動きが活発化している▼はんこ大手のシヤチハタは、社内外で文書を申請したり、電子印鑑を押して承認したりできる電子決済サービスを24日に始める。電子サービスの強化で新たな需要を取り込む狙いだ▼ニューノーマルな社会へと移行する過渡期には、新旧の価値観がぶつかり合うのは必然。それぞれの価値を認めつつ、変革の流れが押し戻されないようしっかり議論してほしい。

【訓練で身に付けた技能を発揮!!】関電工、技能五輪全国大会で2選手が金メダル獲得

電工職種で金メダルを獲得した橋本選手
  愛知県で13~16日に開催された「第58回技能五輪全国大会」で、関電工の橋本嶺治選手(千葉県代表)が電工職種、板橋優斗選手(茨城県代表)が配管職種で金メダルを獲得した。日ごろの訓練で身に付けた高い技能を披露。板橋選手は「今回の受賞は指導員の支えや同期選手の存在も大きかった」と金メダル獲得の喜びを語っている。

 「競技では作業に集中し終始良いペースで進めることができた」と話すのは橋本選手。訓練では時間の適切な使い方や訓練の質を高めることを心掛けていたという。当日に内容が公表される課題は持ち前の対応力で乗り切った。

板橋選手は配管職種で金メダルに

 両選手は2022年に中国・上海で開催予定の「第46回技能五輪国際大会」に配管と電工の代表として出場する。関電工から2職種で国際大会に出場するのは初めて。

 技能五輪全国大会は地方予選などを勝ち上がった23歳以下の青年技能者が日ごろの成果を競い合う。厚生労働省、中央職業能力開発協会、愛知県の3者が主催した。

【宇都宮ブレックス本拠地、Bリーグ施設基準改定に対応】宇都宮市、佐藤栄一市長が新アリーナ整備の検討表明

  宇都宮市は、男子プロバスケット・Bリーグに加盟する「宇都宮ブレックス」の新本拠地となるアリーナ整備を検討している。佐藤栄一市長が16日の会見で明らかにした。

 宇都宮ブレックスは現在、ブレックスアリーナ宇都宮(宇都宮市体育館、元今泉5の6の18)を本拠地として使用している。Bリーグは2026年をめどに新リーグ「プレミアリーグ」を創設する構想がある。参入条件として「チームが自由に使えるアリーナの確保」が挙がっている。

 市体育館は市民利用も多く条件を満たしていない。24年3月には少なくとも「(確保のための)計画が固まっている」ことが条件となる見込みという。チームが自由に使える施設はチームの試合や練習に常時使用できることが条件。使用中でない場合は他に貸し出すことも認められる。

 市はBリーグの方針を踏まえ、8月から宇都宮ブレックスと意見交換を進めている。今後も意見交換を進め、候補地、施設の概要、整備スケジュールなどを検討していく。

 建設地は民間の遊休地、公有地などから選定する。敷地面積は1万平方メートル以上が必要となる見込み。市長は会見で「民間主導の整備」をイメージに挙げた。整備手法も今後固めていく。

2020年11月18日水曜日

【回転窓】柿の木もたぬ家もなし

 実家が空き家になって3年近くたつ。今年はコロナ禍で帰省ができず、どうなっているのか心配だったが、先日出張帰りにこっそりと立ち寄った▼庭は雑草で覆われ、家の壁にはツタがはっていた。半日かけて草を刈り、伸びた枝を切る。最後に除草剤をまいたが効果はいつまで続くものやら。主を失った家は荒れる一方だが、庭先の柿の木だけは何もなかったように多くの実を付けていた▼柿は日本発祥の果物とされるが、今では世界中にある。英語でもフランス語でも「カキ」と呼ばれ、その種類は1000を超す。ただし、そのまま食べられるのは甘柿の「富有」や「伊豆」「じょうもん」など数種類だけ▼渋柿は干して乾燥させたり、湯に浸したりすると渋が抜けておいしく食べられる。手間を掛ければ、どんなものでもおいしくなるという見本のようだ▼「里ふりて/柿の木もたぬ/家もなし」(松尾芭蕉)。昔は多くの農家が庭に柿の木を植えていた。桃栗三年柿八年というが、柿の木は生育が遅いため、実がなるには時間がかかる。空き家になった実家で両親が育てた柿を食べながら、時の流れに思いをはせてみた。

【若き技能者が技競う】技能五輪・情報NW施工職種、協和エクシオ・海老原徹選手が2連覇達成!!

  愛知県で13~16日に開催された「第58回技能五輪全国大会」の情報ネットワーク施工職種で、協和エクシオの海老原徹選手(埼玉県代表)が金メダルを獲得し2連覇を達成した。

 海老原選手は2022年に中国・上海で開催予定の「第46回技能五輪国際大会」に、情報ネットワーク施工職種の代表として出場する見通し。決まれば2大会ぶりの出場になる。

 情報ネットワーク施工職種には24人が出場した。競技時間は2日間で計約8時間。トラブルシューティングや光ファイバー融着接続、ビル構内を想定した配線施工などの課題に挑戦した。海老原選手は厳しい訓練で身に付けた高い技能を大舞台でも発揮。同社に所属する選手が情報ネットワーク施工職種で金メダルを獲得したのは通算8回目となる。

 技能五輪全国大会は地方予選などを勝ち上がった23歳以下の青年技能者が日ごろの成果を競い合う。厚生労働省、中央職業能力開発協会、愛知県の3者が主催した。

【ユネスコ評価機関が登録勧告】日本の伝統建築修復技能、無形文化遺産に

檜皮での屋根葺き(文化庁提供)

  文化庁は17日、日本の伝統的な木造建築を修復する職人の技術をまとめた「伝統建築工匠の技」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関が無形文化遺産に登録するよう勧告したと発表した。12月14~19日に仏パリで開かれる政府間委員会で正式決定される見通し。登録されれば2018年の「来訪神:仮面・仮装の神々」以来で、国内の無形文化遺産は22件となる。

 登録が勧告されたのは、木造建造物を受け継ぐための伝統技術。文化財保存に不可欠な技術として国が認定する「選定保存技術」のうち、木工や檜皮(ひわだ)葺(ぶ)き、装飾、左官、畳など伝統建築修理の17技術。政府は18年にユネスコへ申請を提案したが、審査が先送りとなり技術の件数を増やし、19年に再提案した。

古式の木工技術による修理(文化庁提供)

 提案書では「木や草、土など脆弱(ぜいじゃく)な自然素材で地震や台風に耐える構造と豊かな建築空間を生み出す。世界最古の木造建造物、法隆寺をはじめ歴史的建築遺産に欠かせない保存修理で建築当初の部材とやむを得ず取り換える部材との調和や一体化を実現する高度な技術。棟梁(とうりょう)を中心とする職種を越えた組織の下、伝統を受け継ぎながら工夫を重ねて発展してきた」などと訴えていた。

 勧告は「無形文化遺産全般の重要性の可視化や認知向上に貢献できる好例。無形文化遺産と有形文化遺産である建造物との本質的な関係に光を当て、持続可能な開発に沿った提案だ」などと評価した。

 選定保存技術と保存団体は次の通り。

 ▽建造物修理=文化財建造物保存技術協会▽建造物木工=同、日本伝統建築技術保存会▽檜皮葺き・〓(きへんに市)(こけら)葺き=全国社寺等屋根工事技術保存会▽茅(かや)葺き=同▽檜皮採取=同▽屋根板製作=同▽茅採取=日本茅葺き文化協会▽建造物装飾=社寺建造物美術保存技術協会▽建造物彩色=日光社寺文化財保存会▽建造物漆塗=同▽屋根瓦葺き〈本瓦葺き〉=日本伝統瓦技術保存会▽左官〈日本壁〉=全国文化財壁技術保存会▽建具製作=全国伝統建具技術保存会▽畳製作=文化財畳保存会▽装〓(さんずいに黄の旧字)(そうこう)修理技術=国宝修理装〓(さんずいに黄の旧字)師連盟▽日本産漆生産・精製=日本文化財漆協会、日本うるし掻(か)き技術保存会▽縁付金箔(きんぱく)製造=金沢金箔伝統技術保存会。

2020年11月17日火曜日

【回転窓】やれば、できる

  素粒子ニュートリノの観測に成功し、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東京大学特別栄誉教授が12日に94歳で亡くなった▼理論的に存在が予測されていたが、誰も観測できずにいた謎の物質ニュートリノ。小柴さんが東大助教授に就いたのが1958年。70年に教授になったというから、長きにわたって研究に打ち込み世紀の発見にこぎ着けた▼超新星爆発で生じたニュートリノの観測を支えたのが岐阜県飛騨市の神岡鉱山地下に設けた巨大観測装置「カミオカンデ」。3000トンもの水が蓄えられた円筒状の装置はもともと陽子崩壊を観測するためのものだった▼あらゆる物質を通り抜けるニュートリノが水の分子と衝突した時にごくまれに発生する光を捉える。カミオカンデで観測を開始したのは87年1月。翌月にニュートリノの観測に成功した。定年退官する1カ月前だったそうだ▼今週月曜日、本紙の4面にハイパーカミオカンデの整備に向けた関連業務の発注記事が載っていた。3代目の観測装置。小柴さんが残した言葉「やれば、できる」はきっと、意思を継いだ研究者らの心に響き続けるのだろう。

【最優秀賞は山国川床上浸水対策特別緊急事業など】土木学会デザイン賞2020の受賞作品決定

山国川床上浸水対策特別緊急事業

  土木学会(家田仁会長)は16日、「土木学会デザイン賞2020」の受賞作品を発表した。応募20作品を審査し、最優秀賞に「山国川床上浸水対策特別緊急事業」(大分県中津市)、「東京駅丸の内駅前広場及び行幸通り整備〈東京駅丸の内駅舎から皇居に至る一体的な都市空間整備〉」(東京都千代田区)、「東部丘陵線-Linimo-」(名古屋市~愛知県豊田市)の3作品を選定。優秀賞4作品、奨励賞5作品も選んだ。授賞式は2021年1月23日に東京・四谷の学会講堂で行う。

東京駅丸の内駅前広場及び行幸通り整備

 デザイン賞は優れた公共的な空間や構造物の設計作品の表彰を通じて、土木デザインや設計者・デザイナーの重要性を社会に広める目的で、同学会景観・デザイン委員会が01年度に創設した。

東部丘稜線ーLinmo-

 審査に当たった同賞選考小委員会の中井祐委員長(東京大学大学院教授)は「(受賞作は)デザインの必然性を語るより高次の主体の存在を感じさせる。周囲の空間、環境、風景の特性や価値を把握し尊重し、引き出そうとする謙虚な姿勢から導かれている。その作為があるからこそ周囲の魅力や価値に気付かされる、そういうデザインだ」と講評している。各賞の概要はホームページで公開している。

 優秀賞、奨励賞の受賞作品は次の通り。

 【優秀賞】

 ▽勘六橋(福岡県直方市)

 ▽京都市四条通歩道拡幅事業/歩いて楽しいまちなか戦略事業(京都市)

 ▽瀬の再生と土木遺産の再現「八の字堰」(熊本県八代市)

 ▽虎渓用水広場(岐阜県多治見市)

 【奨励賞】

 ▽大分昭和通り・交差点四隅広場(大分市)

 ▽百間川分流部改築事業(岡山市)

 ▽高山駅前広場及び自由通路(岐阜県高山市)

 ▽奈義町多世代交流広場ナギテラス(岡山県奈義町)

 ▽浅野川四橋の景観照明(金沢市)

【最有力候補はJR東静岡駅北口】静岡市、アリーナ整備・運営事業(葵区)で対話調査実施へ

 静岡市は16日、JR東静岡駅北口を最有力候補としているアリーナの整備・運営に関するサウンディング(対話)公募型市場調査の実施要領を公表した。

 これまでも民間事業者などへのヒアリングは行っていたが、施設規模や事業手法などの方向性を固めるため幅広く意見を求める。参加申し込みの期限は27日。12月3日から18日まで対話を行う。調査結果の概要は2021年3月に公表するほか、建設地も本年度内に決定する。

 計画しているアリーナは従来の体育館とは異なり、市で開催機会が少なかったプロスポーツ観戦や大規模コンサートなどの鑑賞が可能な「観る」機能を重視した施設とする。候補地は東静岡駅北口(葵区東静岡1)の市有地約2・4ヘクタール。現在、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーでアリーナ誘致関連調査を進めている。

 アリーナの想定規模は5000~1万席程度。対話調査では、事業性や敷地面積、近隣の同種・同規模施設との競合の可能性や優位性などのほか、施設機能や規模、想定する付加機能・施設、整備・運営スキーム、必要な契約条件、リスク分担、今後のスケジュール、市への期待・要望事項など幅広く意見を聞く。意見を踏まえ建設地を決定するほか、21年度に施設計画を固める予定だ。

【建機操作、リアルに味わえます】3goo、任天堂Switch用ゲームソフトを発売

  3goo(サングー、東京都渋谷区、ディ・コスタンゾ・ニコラ代表取締役)は、建設現場でさまざまな重機を操ることができる任天堂Switchパッケージ専用ゲームソフト「コンストラクション シミュレーター 2&3ダブルパック」=写真=を発売した。シリーズ2と3を収録したもので、油圧ショベルや大型クレーンなど土木・建築の現場で活躍する建設機械をリアリティーたっぷりに操作できる。価格は4600円。

 「コンストラクション シミュレーター」シリーズは、建築会社の社長となって、さまざまな案件の中から自社の規模に見合った最適な契約を取り付け、効率的かつ的確に現場作業を実行するゲームソフト。重機操作のスキルを磨いて案件を完成させれば、資金を元手に機器を調達してより大規模な仕事が受託できる。子どものころに誰もが憧れた「はたらく車」を操縦する楽しさが味わえる。

 発売に合わせてさまざまな建設車両が活躍するローンチトレーラーを公開。ゲームでは「CAT」ブランドで有名な米キャタピラーの建設車両のコックピットを緻密に再現。制作の舞台裏なども紹介している。

【記者手帖】「バズる」だけでなく

  記者をしていて初めて「バズる」という経験をした。ある建物が取り壊されることを記事に書いた。後で知ったが、そこはサブカルチャーの「聖地」だったようだ。ツイッターはすごい。聖地の解体にショックを受け、別れを惜しむ人たちによって記事が瞬く間に拡散された。多くは普段、建設専門紙を読まないはずだ。全くの想定外。だが正直に言おう。記事を書いた本人としては、まんざらでもない◆いけない、いけない。はたとわれに返る。記事が衆目を集めるのは確かにうれしいが、それだけでいいとは思えない。本当はたった一人でもいい。記事を必要としている人に届いてほしい。見えない読者を頭に浮かべながら記事を書いている◆ある日、仕事とは別の場で偶然、一人の職人さんに出会った。建設専門紙の記者だと伝えると、心に残っている記事の話をしてくれた。驚いている私を見て、彼は叫んだ。「あの記事を書いたのは君だったのか!」◆その時を思い出し、ほくそ笑んでいることも正直に言おう。自慢話のようで恥ずかしい。だが、こんな経験がもっとできるよう今日も頑張るのだ。(ぬ)

2020年11月16日月曜日

【ISU基準のリンクも】千葉県船橋市にスケートリンク、12月13日開業

三井不動産アイスパーク船橋の完成イメージ
(提供:三井不動産)

  全国でスケートリンクの整備や運営を手掛けるパティネレジャー(東京都豊島区、荻原明則社長)は12月、千葉県船橋市に新スケートリンク「三井不動産アイスパーク船橋」をオープンする。二つのリンクを備えた施設。建物はS造平屋一部2階建て延べ5447平方メートルの規模で、JFEシビルが設計・施工を担当した。開業は12月13日を予定している。

 建設地は船橋市浜町2の1の53。JR京葉線南船橋駅から南西に約700メートルの距離にある。リンクは国際スケート連盟(ISU)の基準に準拠したAリンク(60×30メートル)と、練習場としての機能を担うBリンク(24×38メートル)の二つ。休憩コーナーやスタジオ、会議室、スケートショップなども配置する。施設周辺には約2ヘクタールの緑地空間も整備する。

 施設名称は三井不がネーミングライツを取得している。スケートリンクは通年営業。来春からはフィギュアスケートアカデミーを開校する予定という。世界で活躍できる若手選手の育成と、生涯スポーツとしてスケートを楽しむ2種類のコースを開講する。

【回転窓】工夫ある情報発信の効果に期待

 季節が進み東京近郊の低山の木々も色づき始めた。都県境の山奥にある高速道路の渋滞対策工事の現場には、山菜採りやハイキングで山に入った人がひょっこり訪れることがあるという▼高速道路の工事は、人里から離れた現場が少なくない。愛らしい動物とともに2メートルの大蛇に遭遇してしまうこともあるが、移ろう季節を間近に感じて仕事ができるのが楽しみの一つなのだと現場関係者が話してくれた▼この工事の発注者は初めての現場公開に踏み切った。渋滞対策の取り組みをアピールする方法を考えていたところ、工事事務所のSNS(インターネット交流サイト)に現場公開を求めるメッセージが多く届き、一般の人を招く前に報道向けの見学会を催すことにした▼「失礼ながら練習を兼ねて皆さんに来ていただきました」と担当者。一般向けの見学も念頭に、提供する情報を吟味し、絵になる現場の景色を意識した正直な担当者の丁寧な説明がありがたかった▼インフラの管理者がSNSに紅葉や雪に映える構造物の画像をアップしている。工夫を凝らして発信した情報で理解者やファンがさらに増えていくことを願う。

【凜】大気社環境システム事業部企画部事業戦略部SDGs推進室・赤星綾子さん

 ◇誰も我慢しない空間を

 「省エネで誰も我慢しない、空間づくり」が建築設備に携わる技術者としての目標という。入社後7年間、工事の最前線で奮闘した。4月の異動で現在の部署に。SDGs(持続可能な開発目標)推進活動の一環として、二酸化炭素(CO2)排出量削減の対策提案を担当している。

 大学で建築学を専攻。環境系の研究室を選んだのは「建設業が環境に与える影響の大きさと、身の回りを取り巻く設備に関心があった」からだ。社会の一員として役に立つことを一番に考え「環境に関わる仕事がしたい」という思いで、大気社への就職を決めた。

 入社後は改修工事に携わった。限られた時間で顧客や多数の工事関係者と工期内に良いものをつくり上げることが最大の目標。経験を積んで小規模な工事の所長を任され「自身の枠にとどまらず他者の仕事を把握することの重要性」を痛感した。

 今の仕事では顧客のニーズを把握し、既存の知見に新たなアイデアを加えて省エネを達成できる設備を提案することが必要だ。現場とは異なる緊張感があり、持ち前のプラス思考で乗り切ろうと奮闘している。

 国内外で高まる「脱炭素」へのニーズと、SDGsが掲げる「誰ひとり取り残さない社会づくり」。社会の発展や快適性を諦めずに、「誰にも我慢させない、快適でCO2削減に貢献するアイデアを提案できる技術者になる」。そう遠くない将来必ず実現したい姿だ。

 (兼技術統括部設計部国内設計室配属、あかほし・あやこ)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】共同カイテック「全世代の人が着たくなるようなユニホーム」

 電力幹線や屋上・壁面緑化など各種システムの製造・販売を手掛ける共同カイテック(東京都渋谷区、吉田建社長)は、創業70周年記念事業の一環で、ユニホームを刷新する。「全世代の人が着たくなるようなユニホーム」をコンセプトにデザインを練り上げた。

 上着はネイビー、パンツはグレーを基調としたシックな色合いを採用し、コーポレートカラーの赤色を随所に盛り込んだ。より動きやすい素材や夏場のムレ防止機能の導入、2段階によるウエストのサイズ調整など機能も強化。ペンなどを入れられる肩ポケットや、チャック付きのズボンポケットなど収納面でも充実を図った。男性用のほか、女性用の三つのサイズも用意した。

 現在のユニホームは1992年から着用している。30年弱が経過しデザイン面での古さが課題だった。若手社員4人による社内プロジェクトを1月に立ち上げ刷新をリード。現場や製造など部門によって気になる汚れが異なるため、幅広くヒアリングを行い詰めていったという。これから社員のサイズ集計など準備を進め、2021年5月ころから支給していく予定だ。

【駆け出しのころ】東洋建設取締役常務執行役員土木事業本部長・大林東壽氏

  ◇現場で学び成長の糧に

 自然を相手にする仕事に関心がありました。東洋建設へ入社後は九州支店に配属。最初の半年は熊本県内の大規模浚渫・護岸工事の現場に立ち、右も左も分からず周囲に言われたことをこなす日々でした。

 次も同じ熊本で天草地方の作業所に移ります。2年目の秋には小さな漁港の防波堤工事の作業所長を任されました。周囲の他の工事と合わせて統括所長がサポートしてくれましたが、翌日の作業が不安で眠れない時のため、枕元にはウイスキーを常備していました。

 見よう見まねで組んだ担当工事の実行予算を統括所長に手渡すと、赤ペンで各工種の歩掛かりを全部書き込んでくれました。現場の基本は歩掛かりの把握であり、原価管理の基本である実行予算のイロハをたたき込まれました。

 干満の差が大きい現場で、潮が一番引く夜間に支保工の解体作業を行いました。冬の寒風の中、ゴム長を履いてのぬかるみでの作業は、若いながらもきつかったことを覚えています。

 作業員の中には年配の方や気性の激しい方もおり、現場内のもめごとを仲裁するのも一苦労。双方の意見をしっかり聞き、作業所長である自分の考えを伝え、指示を出すように心掛けました。また、年配者には後でフォローするなど、コミュニケーションには特に意識して取り組みました。

 相手の意見を尊重しつつも、自分の意見をきちんと伝えなければ現場は回りません。全体工期を踏まえ、各工種の作業工程の兼ね合いを図りながら、みんなが納得して作業することが大切です。

 九州では海上土木を中心に現場を回り、入社12年目に東京支店へ異動。都市土木で求められる高難度の技術にカルチャーショックを受けました。近くの別の現場で所長をしていた先輩技術者に相談したところ、「十年余り現場でやってきた実績を自信にしろ」とげきを飛ばされ、モチベーションを保つことができました。

 関東は地質が複雑なことから、構造計算や設計に関する技術などを重点的に学びました。最後の現場勤務となった都内の地下駐車場工事では、地元からのクレーム対応や地下埋設物の移設・防護の協議など、自然はもとより人間関係にも気を使いながらのリスク対応で心身が鍛えられました。

 5年前に本社の土木部長に就いた時、ベトナムの現場が自然災害に遭い、早期復旧の対応を任されました。海外勤務の経験はなく、不安もありましたが、久々の現場での陣頭指揮に気持ちが奮い立ちました。現場で学んできたことが、いかなる時でも役に立ち、成長の糧になっているのだと実感しました。若い人たちにも多くの現場を回りながらいろいろなことを学び、成長してもらいたいです。

入社6年目ころ。熊本・天草の港湾工事現場で

 (おおばやし・はるひさ)1982年鹿児島大学工学部海洋開発土木工学科卒、東洋建設入社。執行役員土木事業本部土木部長、同国際支店副支店長兼工事部長などを経て2019年から現職。大分県出身、61歳。

2020年11月13日金曜日

【子供たちが本と親しめる空間を】安藤忠雄氏寄贈の児童図書館(神戸市中央区)が起工

  建築家の安藤忠雄氏が神戸市の都市公園・東遊園地(中央区加納町)に整備し、市に寄贈する児童図書館「こども本の森 神戸」の建設工事が起工し、12日に同所で地鎮祭が開かれた。

 子どもたちに読書で豊かな感性を養い次代を担ってほしいという思いから安藤氏が設計を手掛け、工事監理も行う。神事には安藤氏や神戸市関係者、施工を担当する竹中工務店など関係者が多数出席した。工期は2021年12月まで。22年春にオープンする予定。

 建設場所は東遊園地の南側エリアで、規模はRC造2階建て延べ約600平方メートル(建築面積約600平方メートル)。外装はコンクリート打ち放し仕上げ、内部には木製壁面書架を計画する。蔵書数は約2万冊を予定し、広く寄贈を受け付ける。

 図書の貸し出しはしないが、本を持って外に出て園内で自由に読めるようにする。東遊園地では市がPark-PFI(公募設置管理制度)で再整備を計画しており、にぎわい創出の相乗効果が期待される。

 神事前に神戸市の久元喜造市長が報道取材に応じ、「安藤氏のご厚意に深く感謝申し上げる。阪神・淡路大震災の鎮魂モニュメントがある東遊園地で図書館が整備される意義は大きい。外で読書ができる、多くの人に開かれた公園として再生することを願っている」とコメントした。

 神事では安藤氏が鋤、竹中工務店の難波正人取締役兼執行役員副社長が鍬をそれぞれ入れ、工事の安全を祈願した。

 神事後の会見で、安藤氏は「山と海に囲まれた美しい神戸の街で、子どもたちには幼少期にスマートフォンばかり触るのではなく、読書を通じて強く育ってほしい。三宮駅からやや離れた立地条件も、歩くことで子どもたちを強くする。震災の記憶・教訓を受け継ぎながら、20~30年後に図書館が東遊園地にあって良かったと思ってもらえれば幸いだ」と語った。

【名古屋城近くに巨大立坑、施工は大林組JV】JR東海、リニア名城非常口(名古屋市中区)を初公開

  JR東海は12日、名古屋市中区に建設しているリニア中央新幹線の名城非常口=写真=を報道陣に公開した。大深度区間の本線トンネルを掘削するシールドマシンの発進地点となり、開業後は換気、保守、避難の設備となる。施工は大林組・戸田建設・ジェイアール東海建設JV。2016年11月7日に着工した。地中連続壁の構築と掘削を行い、9月19日に底面のコンクリート打設が完了した。現在は内部躯体を構築中。竣工は22年7月を予定している。

 中京圏の都市部の非常口を公開するのは初めて。所在地は名古屋城近くの三の丸2丁目。非常口は深さ89メートル、直径約41メートル。

 底面と側壁、地中連続壁はRC造、底盤の厚さは約5・6メートルある。非常口からは、第一中京圏トンネル(約34・2キロ)の一部となる名古屋駅方面と春日井市方面それぞれのトンネルを掘削するシールドマシンが発進する。勝川非常口(愛知県春日井市)まで5・8キロを掘削した後、名城非常口にマシンを戻し、名古屋駅(名古屋市中村区)へ1・8キロ掘削する。非常口の完成後、発進準備に入る。シールド工事は前田建設・三井住友建設・大日本土木JVが行う。

2020年11月11日水曜日

【回転窓】コロナ下でのアイデア

 「拾えるものは根こそぎ拾ってやれ」。横山秀夫の小説『臨場』に登場する検視官である主人公の口癖だ。テレビドラマになったのでご存じの方も多かろう▼臨場はその場所に臨むとの意だが、警察組織では事件現場で初動捜査に当たることを指す。余り聞き慣れない言葉だが建設業界でも最近よく耳にする▼「遠隔臨場」。ウエアラブルカメラなどによる映像と音声の双方向通信を使用して、事件現場ではなく建設現場で段階確認や材料確認、立ち会いを行うことと、国土交通省の試行要領に書かれていた。コロナ下での「密」を防ぎ、受発注者双方で業務の効率化を狙ったものだ▼コロナ禍がもたらした新たな働き方はさまざまなアイデアを生んでいる。岡山市北区に本社を置くまつもとコーポレーションは「ムービングオフィス」を3台導入した。現場事務所の代わりになる改造車で、車内には机や電源、空調設備などが整備されている▼同社の溝渕善彦氏によると「現場職員が本支店に戻って事務作業する手間が省ける」という。現場で働く人たちの負担が少しでも緩和されるアイデアが次々と出てくることを期待したい。

【新たな働き方の一つ、定着するか】大手デベ、ワーケーション需要取り込みへ環境整備

19年5月に三菱地所が開業した「WORK&ation Site 南紀白浜」

  リゾート地や温泉地などで仕事をする「ワーケーション」の需要に応える動きが拡大している。大手デベロッパーが専用の施設を整備したり、ワーケーション利用を想定した宿泊プランを販売したりしている。ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた新たな働き方として、不動産業界らが動向を注視している。

 2017年からワーケーション事業を検討してきたのは三菱地所。営業企画部の田村可奈主事によると、検討のきっかけは「生産的な働き方、ビジネスやイノベーションの創出、優秀な人材の確保に有利な職場環境の提供」だったという。

 同社は19年5月に「WORK×ation Site南紀白浜」(和歌山県白浜町)、今年7月に「同軽井沢」(長野県軽井沢町)の二つのワーケーション施設をオープンした。施設を予約できたり観光スポットを紹介したりするポータルサイトも設けた。

 新型コロナウイルス感染症の流行で、田村主事は「思い描いていた働き方の未来の世界が前倒しとなった」と話す。「テレワークが普及する中、ニーズは増えていく」とにらみ、新規施設の開業など事業拡大を虎視眈々(たんたん)と狙う。

 既存のリゾートホテルなどを使った取り組みも出ている。森トラストは3カ所のマリオットホテルにスモールオフィス「Cozy Works」を整備した。東急不動産グループやオリックスグループは、運営する宿泊施設でワーケーションの利用を促すプランを展開。印刷機を無料で利用できたりといったサービスを提供する。

 ワーケーションの利用者からは「決められた時間内でより集中できた」(三菱地所)といった、生産性向上につながったという感想が出ている。「仕事と癒やしを両立できた」(東急不動産)など、リゾート地ならではの心地良さを楽しんだ利用者もいる。

 「平日の利用も増えてくると思う」(オリックス)、「夏に家族連れで訪れた人がいた」(森トラスト)と、事業に手応えを感じる声もある。一方で、「さまざまな場所で仕事をする『ノマドワーカー』のような存在が増えるだろうか」(同)、「需要が伸びるかはまだ眉唾もの」(東急不)と、ワーケーションの浸透に懐疑的な考えがあるのも事実だ。

 コロナ禍で落ち込んだ観光需要の回復策として、国や行政はワーケーションに期待を寄せる。菅義偉首相は9月29日の観光戦略実行推進会議で、国内観光のさらなる回復に向け「ワーケーションなどをはじめとした幅広い対策が必要だ」との考えを示した。

 和歌山県は、自治体の取り組みについて情報発信する「ワーケーション自治体協議会」の幹事を務めるなど、ワーケーション普及に力を入れる。「まず来てもらって、その地域を好きになってほしい」と語る県担当者。ワーケーションをきっかけに地域の魅力を発信することで、「リピーターを増やし定住人口の増加につなげる」戦略を描く。

 依然低迷する宿泊施設などの稼働率を引き上げ、産業や地域の振興につながるのか-。この先を決めるのは一過性にとどまらない官民の知恵と工夫だろう。

【静岡県裾野市にスマートシティー】トヨタ「ウーブン・シティ」、来年2月23日に着工

  トヨタ自動車は静岡県裾野市で計画している実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」の建設工事に来年2月23日に着手する。

 6日のオンライン決算記者会見で豊田章男社長が明らかにした。暮らしを支える新技術やサービスを実験的に導入し検証する都市を整備する。着工予定はこれまで2021年初頭としていた。

 計画地は年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本・東富士工場跡地。都市では自動運転や人工知能(AI)、ロボットなどの実証実験を行い、先端技術の開発を推進する。完成後の初期段階は同社の従業員や関係者ら約2000人が住む予定。高齢者や子どものほか発明家も居住し、新たなアイデアの創出に貢献する。

 ウーブン・シティは最大で約70・8ヘクタールの規模になる見通し。都市設計などをデンマーク出身の建築家ビャルケ・インゲルス氏が手がける。地上には自動車運転専用と歩行者専用、歩行者とスモールモビリティ(小型の移動手段)の3本を設置する。

 1月に公表した計画によると、建物の建設には主に木材を利用し、屋根には太陽光発電パネルを設置する方針。燃料電池発電などを含め、インフラはすべて地下に設置するとしている。

【舗装打ち換えや床板防水などで長寿命化】阪神高速1号環状線(南行き)、大規模リニューアル工事進む

  阪神高速道路会社は10日、同日午前4時から始めた1号環状線(南行き)のリニューアル工事の現場を公開した。前回の大規模改修から19年が経過し、長寿命化を目的に舗装や伸縮装置の補修などを行う。

 区間は梅田~夕陽丘間(延長5・8キロ)と守口線の一部。環状線は20日まで、守口線は27日まで終日通行止めにして工事を進める。舗装は3工区に分け、施工を世紀東急工業、鹿島道路、大林道路が担当する。

 環状線は供用から50年以上が経過し、車両の大型化や大型車が繰り返し通行することでコンクリート床版などの損傷が多数発生している。100年先も安全・快適に利用してもらう「高速道路リニューアルプロジェクト」の一環として大規模補修工事を実施する。福島~湊町間は21年度に工事を進める。

 今回の工事では全体の97%に当たる約9万7000平方メートルの舗装を打ち換え、排水性舗装や滑りにくい密粒ギャップ舗装を採用。従来の高耐久ポーラスアスファルト舗装より騒音低減効果が向上する小粒径ポーラスアスファルト舗装も一部区間で施工する。鋼床版のアスファルトを撤去する「IH式舗装撤去工法」も導入し補修工事の作業効率を向上させる。コンクリート床版には高性能床版防水を施工し、床版への浸水を防ぐことで構造物の長寿命化を図る。

 ジョイント部では耐久性の高い伸縮継ぎ手に取り換えるほか、伸縮継ぎ手の撤去も行い、車両走行時の騒音・振動の大幅な低減につなげる。

 守口線では床版の損傷が進んだ橋桁の取り換えを計画し、従来より薄型・軽量で耐久性の高い「超高強度繊維補強コンクリート(UFC)」を採用。事前作業や工場製作を活用しながら工事を進め、17日間で作業を終える。

 リニューアル工事の総工費は約50億円。延べ約1万2000人の作業員が従事し、車両は約6000台投入する。伸縮継ぎ手の補修工事はキンキ道路、スバル興業、ケイアールティが担当する。

 阪神高速道路大阪保全部保全管理課の兒玉崇課長代理は「沿線住民や高速道路利用者、周辺道路の利用者らに迷惑をかけるが、迂回(うかい)ルートを案内しているほか、電車などの利用時間を変更するなど協力してほしい」と呼び掛けている。

2020年11月10日火曜日

【回転窓】訴える力

  米大統領選は7日に民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝利を確実にした。現職のドナルド・トランプ氏は敗北を認めておらず、司法に場を移して徹底抗戦の構え。先行きは今なお不透明だが世の中の流れは新大統領誕生に傾いている▼バイデン氏が事実上の勝利宣言をした7日夜(日本時間8日午前)の演説。「分断ではなく団結を目指す大統領になることを誓う。赤い州でも青い州でもなく合衆国だけを見る」と訴えた姿は多くの人の印象に残ったであろう▼選挙をともに戦い副大統領に就任予定のカマラ・ハリス上院議員もそうなのだが演説の上手さに感心した。登壇して周囲を見渡し一言。反応を見てもう一言。右の口角を上げウインクするように笑うのはバイデン氏が得意な自己表現か▼子どもの頃からディベートが当たり前のように行われる米国。政治家にとって話す能力と聞く能力の高さは絶対条件で、議論の力を磨いてこそ上に登っていけるのだろう▼翻って開会中の臨時国会。与野党の論戦は相も変わらずのように思えてならない。すっかり定着してしまったかみ合わないご飯論法。そろそろ卒業しては?

【7色展開、使って楽しいと評判】大成建設らのくるくるメジャー、「グッドデザイン・ベスト100」に

  大成建設と新潟精機(新潟県三条市、五十嵐利行社長)が共同開発した小型・最軽量の汎用(はんよう)型スチールメジャー「くるくるメジャー」が、2020年度グッドデザイン賞(日本デザイン振興会主催)を受賞した。

 受賞案件の中でも、高い評価を得た100件に贈られる「グッドデザイン・ベスト100(グッドデザイン金賞等特別賞候補)」にも選出された。

 くるくるメジャーは建設現場の計測、撮影作業などの効率化を目的に開発。かわいらしいフォームと7色のカラーバリエーションが一般ユーザーからも高い評価を得た。建設業だけでなく製造業、学校工作、日曜大工などの「ものづくり」に関わる幅広い年齢層で気軽に利用できる「使って楽しいメジャー」として活用されているという。

 グッドデザインベスト100の審査委員は「『重たくて当たり前』だった計量工具を『軽くて操作性が高い方がいい』と再設計することは女性作業員だけでなく、全ての人にとって働き方を変える良いヒントになる」と評価した。

【モダニズム建築の代表作】後藤慶二設計の旧中野刑務所正門、曳き家で保存へ

  東京・中野区は9日、建築家の後藤慶二(1883~1919年)が設計した「旧中野刑務所正門」の保存策として、建物を解体せずに移築する曳き家を採用する方針を固めた。同じ敷地内に建設を予定している小学校の教育環境の確保と、正門の保存・公開の両立を重視した。

 区は9日の区議会区民委員会と子ども文教委員会に正門の取り扱い方針案を報告した。正門を現地から西側約100メートルにずらす計画で、工事にかかる概算経費は約4億9600万円と試算した。区議会で予算が議決されれば、2021年度から基本計画策定、22年度から設計に入る。移転工事は24年度から約2年半を想定している。

 正門はれんが造りで、大正期のモダニズム建築の代表作として知られる。国有地の旧矯正管区用地(新井3の45の1)の敷地内にある。敷地は区が国から取得し、区立平和の森小学校の移転先として活用する予定。学校整備に当たっては、正門の保存を望む声が多く寄せられていた。

 正門の保存を巡っては、昨年1月に区が現地保存する方針を決定。その後、幅広い保存方法を検討すべきだという意見があり、区が学術調査を行った。曳き家が技術的に可能であることが判明。正門の文化財的価値を重視する現地での保存か、移転し学校の建設用地を確保する曳き家の2択で再検討していた。

 正門の曳き家による保存が決定した場合、平和の森小の新校舎は来年度に基本計画を策定する。22、23年度に設計をまとめ正門の移転工事完了後に着工する。供用開始は当初計画から約4年遅れの27年度になる見通しだ。

【故竹山実氏の代表作、維持管理費など考慮】晴海客船ターミナル(東京都中央区)、五輪閉幕後に解体へ

  東京都は中央区の晴海ふ頭にある「晴海客船ターミナル」を解体する。解体工事に向けた実施設計業務を近く民間委託し、来年の東京五輪・パラリンピック閉幕以降、早期に解体工事に着手する方針だ。

 9月には江東区青海沖に「東京国際クルーズターミナル」が開業。東京港の客船ターミナル機能が新施設に移ることから、既存施設の維持管理コストなどを考慮し解体を決めた。

 晴海客船ターミナルの所在地は中央区晴海5の7の1ほか。建物構造はRC造。建築面積は8470平方メートル、延べ床面積は1万7639平方メートル。1991年に竣工した。9月に亡くなった建築家・竹山実氏の代表作として知られる。

 所管部署の都港湾局が「令和2年度晴海客船ターミナル解体その他実施設計」の希望制指名競争入札を9日に公告した。希望申請を13日まで受け付ける。開札は12月9日。「建築設計」の登録業者が参加できる。

 委託業務では解体工事や、受水槽・ポンプ室の解体に伴う船舶給水用配管の直結化に関する実施設計を行う。解体工事では杭基礎のフーチングまでを除去する。実施設計の履行期間は2021年6月9日まで。

 解体工事の予定工期は21~22年度。東京五輪・パラリンピック時は周辺一帯が選手村として利用されるため工事着手は大会閉幕以降となる。

 東京国際クルーズターミナルは岸壁を現在の1バース・延長430メートルから2バース・延長680メートルに延伸する計画がある。都港湾局の担当者によると、2バース目の供用開始までは「晴海ふ頭での客船の受け入れは続ける」。施設解体後も何らかの形で受け入れ態勢を整えるという。2バース目の供用開始以降は晴海ふ頭の客船受け入れ機能を廃止し、跡地を緑地とする予定だ。

2020年11月9日月曜日

【回転窓】美しい風景の復旧を

  風の台風15号に続き大雨の台風19号に見舞われた昨年と打って変わり、今年は7~10月の台風シーズンに台風の上陸が一つもなかった。だが7月豪雨が全国各地に爪痕を残した▼早期の復旧・復興とともに事前の防災対策の重要性がますます高まっている。災害に備え機能を強化しつつ、自然と調和するよう風景も整える、そんな災害復旧事業が戦後すぐに実現している▼1945年9月の枕崎台風で被災した「史跡名勝厳島」(広島県廿日市市)の復旧工事は通常の砂防工事ではなく、史跡にふさわしい姿での復旧が求められた。砂防と庭園の専門家が協働し土石流で堆積した巨石を巧みに利用しながら、紅葉の名所として知られる紅葉谷公園の風景や厳島の歴史的風致との調和を図った▼庭園砂防と称される日本庭園風の美しい砂防施設は自然の景色に溶け込む。戦後の混乱期にさまざまな人の尽力により復旧整備され、今に至るまで宮島を守り続ける▼庭園砂防施設の歴史的価値や意匠性が評価され戦後土木施設で初めて重要文化財(重文)に指定される。ふるさとの風景の復旧・復興を後押しするきっかけになってほしい。

【安全対策徹底し準備進む】中央道新小仏トンネル建設、2021年春に掘削開始へ

  ◇鹿島が仮設道路工事の安全対策徹底◇

 中日本高速道路会社八王子支社は、中央自動車道(中央道)上り線の小仏渋滞対策事業で建設する約2・3キロの「新小仏トンネル」の掘削に来春着手する。供用路線の北側に約5キロのトンネル、橋梁(約0・8キロ)、土工部(約1・9キロ)を新設し、1車線増やす計画。現地はトンネル掘削などのための仮設工事道路の建設をはじめ、鹿島が本線に隣接するエリアで安全対策を徹底した準備工事を進めている。

 中央道上り線は、東京都八王子市と相模原市緑区の都県境にある小仏トンネル付近で激しい渋滞が起きやすい。長い上り坂で、トンネル手前は登坂車線を含む3車線が2車線になり、約40キロの渋滞が発生することもある。渋滞対策では、既設の登坂車線からトンネルの先の八王子JCTに至る付加車線を設ける。新底沢大橋、新小仏トンネルを新設し、車線の運用を見直す区間にある本線の土工部と3橋を拡幅する。

 新底沢大橋と新小仏トンネル、土工部と本線3橋にそれぞれアクセスする工事用道路を造る「小仏渋滞対策底沢地区工事用道路工事」「同八王子地区工事用道路工事」をともに鹿島が施工している。「新小仏トンネル工事」は清水建設・東亜建設工業JVが担当し、来春の掘削に向けて年内に工事着手する。「新底沢大橋工事」は入札手続きを行っている。

 底沢地区の工事は、山梨方面に向かう中央道下り線の南側で実施中。中日本高速会社八王子工事事務所の馬場弘二副所長は「上り線の渋滞対策のための工事を下り線側で行っている。道路の利用者から『なぜ下り線で工事をしているのか』と問い合わせがくる」と現状を説明する。新小仏トンネルを構築する上り線の北側は山に面し、掘削箇所には下り線の南側から中央道上・下線の上を越えてアクセスする。工事用車両は下り線の小仏トンネルを抜けた先で工事エリアを出入りすることになる。


 底沢地区の工事は約1・8万立方メートルの切り土掘削、約540メートルの仮桟橋工、3カ所の補強土壁工などを行う。大型クレーンの揚重作業が本線の交通に影響しないよう、レーザーでブームの動きを監視する体制を整えた。定期の安全大会で、基本を含めた事故を防ぐ対策の確認を徹底している。

 新小仏トンネルなどの付加車線は既設の上り線から最大100メートルほど離れる区間がある。60~70メートルほどの横坑を機械掘削した上で、トンネル本体は両方向に掘削する。既存の小仏トンネルを建設した際の記録や知見を生かし、「渋滞をなくし、スムーズに中央道を走ってもらえるよう努力する」(馬場副所長)方針だ。

 既存の登坂車線から八王子JCTへの新しいルートを造る事業に利用者の関心は高い。工事事務所のツイッターには現場公開を求めるメッセージが寄せられているという。

【凜】大成温調西日本支社大阪支店・川野稚菜さん

  ◇多くの現場に関わり成長したい◇

 建物に興味があり、大学に進学する時、工学部の建築学科を選んだ。研究室は建築設備関連。空気の流れや熱源の場所など「デザインや意匠の視点からでは見えない部分が見られる」面白さに気付いた。就職活動を経て卒業後に念願の設備工事業界に飛び込んだ。

 入社後は新築の現場に配属されて経験を積み、入社3年目の今年7月に初めて改修工事の担当に就き、一人で現場に常駐している。工程管理や人員配置などに奮闘する日々。初めての出来事に困惑することもある。ただ「どう改修していくか一つ一つ学んで実践するところに改修現場の面白さがある」と話す。

 経験した工事は少ないが最も印象に残っているのは病院の新築プロジェクト。「特殊な設備が多く勉強になった」。協力会社との連絡を心掛けスムーズに工事が進んだ現場で達成感も大きかった。

 「さまざまな地域で工事に携わる」のが今の希望。多くの現場に立ち、成長の糧にしたいという思いが強い。現場の大変さを実感しながらも「たくさんの人と一つの目標に向かい、建物を完成させた時のやりがいは格別」と頬を緩ませる。

 趣味は登山。地元の大分に帰省した時にはよく登りに行く。オンとオフを切り替えるため休日はいくら疲れていても必ず外出する。心も体もリフレッシュするので、週初めの足取りはいつも以上に軽い。

 (第二技術部第一課、かわの・わかな)

【中堅世代】それぞれの建設業・271

良好な職場環境は優れた成果につながる

 ◇若くてもプロフェッショナルとして◇

  「自分が魅力的に感じた職場の雰囲気を後進にも伝えたい」。大手ゼネコンの研究所で、先端技術を活用した土木インフラの施工技術の開発に携わる川崎幸恵(仮名)さんは就職してから抱き続けている思いを打ち明ける。

 昔からものづくりに興味があったものの、土木が特別好きだったわけではない。大学進学時は建築系の学部を志望したが不合格に。同時に受験していた土木工学系の学部に入った。「最初は何をするところかも分からなかった」。当時を思い出しほほ笑む。

 大学で学ぶうちに土木が利水や地盤、街づくりなど社会を支える学問だったことに気付き、研究者の道を志すようになった。「縁の下の力持ちとして社会に貢献する姿勢」に心を引かれるようになった。

 もっと土木を学びたいという思いをかなえるため、公共デザインを研究する大学院に進学。希望を胸に研究室へ飛び込んだが、周りは同じ専門課程の人たち。話題が狭い範囲に限定されてしまうことが多かった。「専門に特化するより、最初に興味を持った土木が持つ幅広い世界に触れてみたい」といつも考えた。博士課程の終わりにはこのまま大学に残るか、民間に就職するか選択に苦悩した。

 今の会社に出会ったのは、悩みを抱えながら訪れたインターンシップ(就業体験)がきっかけだった。

 ゼネコンの研究所を訪れると環境や建築、コンクリートなどさまざまな分野の研究者が集い、気さくに話しながら新技術の開発に打ち込んでいた。「開発中の新技術で意見を聞かれたこともよく覚えている」。自分を一人のプロフェッショナルとして扱ってくれたことがうれしく、「専門や年齢にこだわらず、自分を高めることができる理想の環境に思えた」と当時を振り返る。入社試験に合格し晴れてゼネコンの研究職に。キャリアを重ねていつの間にか20年目を迎えた。

 民間の技術開発は他社との厳しい競争を強いられる。スピードが要求される技術開発。計画立案や試験、データ解析などを短期間でこなす必要がある。無理なく実現してこられたのは、自身が憧れた風通しの良い職場のチーム力のおかげだ。研究に行き詰まった時、助けてくれたのは同僚や先輩だった。

 川崎さんもベテラン社員となり、後輩をリードする場面が増えた。現在携わっているデジタル技術の研究は今まで以上に開発スピードが速く、注目度も高い。確実な成果を求められている。日々の忙しさで後輩の相談に応じる機会が少なくなり、「なかなか面倒を見ることができない」と頭を悩ませることもある。

 慌ただしい中でも後輩と接する時に心掛けるのは、インターンシップで初めて訪れた時の自分ならどう思うかということ。「若いから」と下に見ず、プロフェッショナルとして扱われれば誰でもうれしいはず。「自分が最初にこの職場で感じた喜びを伝えられたら」。その思いが心の真ん中にある。

【やっぱり!マイユニホーム!!】牧野電設「男女共に着られるデザイン好評」

 東京都練馬区に本社を置く電気設備会社の牧野電設(牧野長社長)が2017年から着用しているユニホームは、淡いグリーンを基調とした爽やかな配色が特徴。社員の平均年齢が30歳、男女比はほぼ半々という同社で、男女問わずに着用できるデザインが社員から好評だ。

 生地にはスーパーストレッチ素材を採用し、以前の作業着にはない運動性を実現した。夏用には吸汗速乾機能を付け、冬用は保温性を高めるために繊維の混合比率に工夫を凝らした。グリーンと濃淡のグレーは夏用と冬用で共通の配色だが、グリーンの色合いを微妙に変えているのがポイントだ。

 ポケットの配置や大きさなどは現場社員の要望を反映。現場で使う冊子も入るサイズとなっており、かがんだ時に物が落ちにくいようボタンも付けている。ペン差しは左利きの人に配慮し腕の両サイドに設けた。

 施工管理職の20代の女性社員は「昔の制服はモスグリーンの単色で、それを着て電車に乗ったりファミレスに入ったりするのが恥ずかしかった」と話す。今の制服は「社員の使いやすさに配慮した性能と格好いいデザインで気に入っている」と、早くも愛着が湧いている。

【駆け出しのころ】東急建設執行役員建築事業本部原価企画統括部長・寺嶋浩氏

  ◇顧客起点で信頼深める◇

 デスクワークよりも現場でのものづくりが自分に向いているだろうと思いました。東急建設に入社後、初めて配属されたのは千葉県船橋市のマンション現場。発注者や設計事務所、職人など、いろんな人たちと関わり合う面白い仕事だと感じました。

 先輩たちに恵まれ、酒の席でも教科書には載っていない仕事のことを学びました。現場では作業の節目に焼き肉パーティーなどのイベントを開き、職人さんとのコミュニケーションは良好。職人の気持ちを理解していないと、作業が円滑に進まないことを教えてもらいました。

 所長になるまで現場勤務を志望していましたが、30代に転機を迎えて東京支店の積算部門に異動。次代を担う積算担当の確保・育成で、私に白羽の矢が立ちます。何回か打診を断りましたが、最後は受け入れることになりました。

 そうしたやりとりを経て担当した積算業務でしたが、見事にはまります。受発注者双方にとってより良いプロジェクトを「われわれ(積算部門)がコストを通じてつくり上げていく」と先輩から諭されました。事業全体に関わる積算のすごさを感じたのを覚えています。

 積算関連のシステム構築などに取り組む中で積算を深く学び、その魅力に気付かされます。数字を扱っていろいろなものを作り上げるのが楽しく、自分が積算に向いている人間だということが分かりました。

 現場以上に業務の時間配分が厳しく、毎日時間に追われ、緊張の日々が続きました。年単位のスパンの現場では調整に比較的余裕がありますが、積算はさまざまなやりとりで予定に隙間がありません。余裕を持たせながら、ぎりぎりの中で工程を組み立てることの大切さを学びました。

 発注者の事業自体を成功させるためにどう取り組むか。コストエンジニアという立場でコストをプランニングしながら、事業を成功させることで相手との信頼関係が深まります。

 当社単独での超高層ビルの初施工案件では、一般的な工種別ではなく、部屋別・エリア別といった切り口でコストの内訳を明示するよう要請されました。時間厳守の中、寝る間を惜しんで両方の切り口の見積書を出せる専用システムを構築。発注者側の意向に沿った見積もりを作るという積算担当の責務を果たせました。

 人間同士、意見がかみ合わないこともありますが、自社ではなく顧客起点で説明責任を果たすことが重要です。コストが増える理由だけでなく、どのようにすればコストが抑えられるのかも含めたやりとりを通じて、相手との信頼関係を深める。若い人たちにも顧客との信頼関係を築きながら、仕事の面白さを感じてもらえればと思います。

入社1年目、初めて施工図を書いた現場事務所での一枚

 (てらしま・ひろし)1986年明治大学工学部建築学科卒、東急建設入社。建築本部プロジェクト推進部長、建築事業本部原価企画統括部長(現任)などを経て2019年4月から現職。石川県出身、57歳。

2020年11月5日木曜日

【回転窓】エーゲ海の教訓

 地中海の北東部にあたるエーゲ海。ギリシャ側のバルカン半島とトルコ側のアナトリア半島に囲まれ、大小約2500もの島々が浮かぶ多島海として知られる▼活発な火山活動により、噴火や地震、津波などの自然災害が頻発するエリアでもある。高度に発達した文明を持つ人々のおごりが神の怒りに触れ、地震と津波によって一昼夜で海中に沈んだとされるアトランティスの伝説も残る▼先月30日、エーゲ海を震源とするマグニチュード7・0の大きな地震が発生。津波による被害も出ている。特に甚大な被害に見舞われたトルコ西部イズミルでは、家屋倒壊や津波被害で少なくとも数千人が住む家を失ったという▼今回の地震で被災したトルコ、ギリシャの両国首脳は電話会談で互いに弔意を伝え合い、ツイッターの投稿で団結の姿勢を強調。東地中海の管轄権などを巡り険悪な関係にあった両国だが、災害対応での連携を優先させる▼どれだけ文明が発達しても、自然災害の脅威をなくすことは難しい。「自助・共助・公助」による災害に強い国づくりは各国共通の課題。慢心せず、世界が団結して脅威に立ち向かってほしい。